僕だけにやさしくない天使

ねこをかぶる

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第十四話

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店長に決心が固まったことを伝えると、「はえーな!?」と驚きがこもった答えが返ってきた。
「そうかもしれません。だけど、いい加減に決めたわけじゃありません。俺なりにきちんと考えて答えを出せた。そんなつもりでいます」
「だろうな。お前がそんな芸当ができる奴じゃないってことは、俺が一番よく知っている。ただ……」
そこで一旦言いよどむ。
「この間言った通り、新店の話は本決まりじゃないんだ。早くて来年の春……、この冬が終わるころ、形になるだろう、くらいの見込みなんだ」
それまでどうする?という話だった。今のうちから正社員になって、他店で研修を受けて、改めてこの店の店長になる。時間に余裕が取れるのなら、それが一番望ましい形だと。そう懇々と説明された。
「いえ、それならば、春までは今のままの形で居させてください。身分はバイトのままでも、研修を受けなくても、社員の仕事は見て覚えます。春になったら、みんな就職活動を始めるでしょうし、店長の話はその時にでも改めて受けられればと思います。そっちの方が俺としても区切りがつけやすい。そんな気がするんです」
「そうだな……」
店長は腕組みしながら目を閉じた。
「お前とか、拓夢とかあきらちゃんとか見てると、俺も無性に羨ましくなる瞬間があるんだ。なんというか、俺にもこんな時期があったな、なんて」
そこで店長は瞼を上げると、照れくさそうに頬をかいた。
「アルバイト同士ってのは、長い時間を一緒に過ごすもんだから、関係は深まりやすいけれど、別れる時はあっさりとしたもんなんだ。気が付いたら二度と顔を合わせないなんてことも、普通に起こりうる。だから、お前の言う通りに区切りをつけたいという気持ちはわかる」
「店長……」
「しかし、これから新たに社会人になろうという人間が、感傷に負けて昇進のチャンスを棒に振ろうってのは、いただけないな!その甘ったれた根性を叩き直すために、立派な新店長に育て上げるために、来年の春まで教みっちり教育してやるから、覚悟しておけよ!」
店長は俺にぐっと顔を近づけると、ドスの効いた声色でそう言った。
「ありがとうございます、ぜひよろしくお願いいたします!」
俺は直角に近い角度まで頭を下げて、声を張り上げた。直接見えたわけではないが、その時の店長は満足そうな顔をしているような気がした。

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