【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす

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あーそびーましょ!

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あれから数日後。待ちに待った、キリトとゲームをして遊ぶ日がやってきた。

あらかじめ送られていたゲームの招待アカウントIDでログインして、準備完了。それから、通話やチャットができる無料アプリ「ドスコード」で、「今ログインしました」とチャットを送ると、すぐに着信が入った。

「はい、と、トナリです……」
『わぁ~!!生トナリさんだぁ……っ!』

それはこちらのセリフです、と思いつつも「今日はよろしくお願いします」と挨拶を返す。

「はい!よろしくお願いします!わー!嬉しいな!トナリさんとゲームで遊ぶ日が来るなんて……あっ、ごめんなさい、俺、興奮しすぎて招待認証忘れてた!」

それも俺のセリフだし、おちょこちょいだなぁとくすくす笑いながら、いつも動画で見ている元気なキリトさんに、俺の緊張はほんの少しだけほぐれていく。

キリトさんが招待認証をしてくれて、俺のPC画面はオープンワールドへと切り替わる。そこには、見慣れたキャラクターが立っていた。

「わー……キリトさんのキャラスキンと同じ世界に、俺のキャラスキンが……すげぇ」

思わず感動して、キリトさんのキャラの周りをぐるぐると回る。

「んふふ、トナリさん可愛いなぁ~。さて!今日遊ぶゲームはモイントクラフトなんだけれども、新しいワールドを立ち上げたものになるので、新世界です!手つかず状態ですね~。なので、これから俺とトナリさんで二人の世界をどんどん作っていきましょう!」

さすが実況者というべきか……まるでこれから実況が始まるかのような喋りだ。

「……あの、キリトさん、一つ確認なんですけど。録画とか……してないですよね?」
「あ、ごめんなさい、つい癖で……大丈夫です!録画はしてないので、リラックスして遊びましょう!」

その言葉にホッとしつつ、「じゃあ、冒険始めましょうか」と、俺たちはいよいよ動き出す。

モイントクラフトは全世界で大人気のオンラインゲームで、ブロックを使って世界を作ったり冒険したりと、プレイヤー次第でいろんな遊び方ができる。

俺たちはまず拠点探しだということで、リスポーン位置から移動して、さっそく旅に出ることになった。

「トナリさん、コミュ障って言ってましたけど、けっこう落ち着いてますね。意外でした」
「あー……なんというか……これでも緊張してるんです……それに、まだ実感が湧いてないというか……あ、敵っ――あああーーっ!」
「えっトナリさん!?死なないで!!始まってまだ5分しか経ってないよ!?ww待ってーーーーっ!!」

こうして開始5分で敵にやられるというアクシデントもありつつ、俺たちは本当に“普通に”ゲームを楽しんだ。この事故のおかげで緊張もいい具合にほぐれて、いろんな話をしながら、いろんな事件に見舞われながら、気づけば5時間もモイントクラフトの世界に浸っていた。

キリトさんはまだまだ元気そうだけれど、俺は流石に疲れてしまったので、ここでお開きにさせてもらうことにした。

「あー、今日は本当に楽しかったです!トナリさん、また遊びましょう!この続き、ぜひ!」
「あっ、ぜ、ぜひ!というか、こちらこそ楽しかったです!モイントクラフトがこんなに楽しいなんて、今日初めて知りました(笑)」

お世辞だとしても、素直に嬉しかった。俺の人生で一番――と言っても過言じゃない、素晴らしい思い出になった。しみじみと余韻に浸っていたそのとき、キリトさんが急に黙りこくる。

「キリトさん?」
「……あの、実はトナリさんに、謝らないといけないことがございまして……」
「え、な、なんすか……?」

なにごと!?と警戒する俺に、キリトさんはしばらく口ごもった後、意を決したように言った。

「……実は……録画してたんです……」
「えっ!?」
「ごめんなさい!!!!どーーーしても、トナリさんと遊んだ記録が欲しくて!!」
「そんな記録、残してどうすんすか!!」
「後で見返してニヤニヤしたかったんです!!!」
「ニヤニヤするような場面、ありました!?!?」
「ありました!!!!」
「ないです!!!!!!!!」

ぎゃーわーと、勢いだけの言い合いになって、最終的にはふたりして笑ってしまった。

「うー……笑いすぎて腹いてぇ……まあ、個人で楽しむなら録画してても別にいいですけど……」
「や、これを動画として投稿したいです」
「はあっ!?」

もうここまで来たら、有名配信者だろうとなんだろうと関係ない。「話がちゃうやろがい!!」と勢いよくツッコんでしまう。

「やめてトナリさん、また笑っちゃうwwひーっ」
「いやいやキリトさん、笑い話じゃない!コラボ動画出さないって話だったでしょ!ダメダメ!そんなの投稿したらファンがキレ散らかして俺爆発する!!」
「しないしない!」
「するする!!俺、途中からわざとキリトさん崖から落としたり、後ろにゾンビけしかけたり、水流して水没させたりしてましたから!!」
「あれやっぱりトナリさんの仕業だったかっ!!!!」
「あっ言っちゃった!!!」
「くははっ!ほらもう、面白すぎる……あー腹筋痛いぃ……これ絶対面白いんだから……動画にさせてほしいっす……!それに、トナリさんのチャンネルの宣伝にもなると思うんです!トナリさんの配信は、一度火がつけば、あっという間に100万人行きます!」
「いや、さすがにそれは……」

確かに、キリトさんの動画に出られれば、かなり良い宣伝にはなる。でも、登録してくれるかどうかは別問題だ。火なんて、そう簡単につくものじゃない。それに――

「……なんか、キリトさんを……“使う”みたいで……嫌だな……」

これが、俺がコラボを渋っていた一番の理由だった。利用してるみたいで、どうしても心苦しかったのだ。

「トナリさん……いいんです。俺を使ってください。その方が、俺、嬉しいです。んで、登録者100万人行ったら――俺が有名にしたんだ!って、自慢させてください」
「キリトさん……」

この人は、本当に優しい人だ。この甘い言葉に、乗ってしまおうか――俺の心は、大きく揺らぐ。

「大丈夫です。俺がついてます!」
「んん……」
「トナリさん!お願いします!」

俺は押しに弱いタイプではないと思っていた。けれど、この人には、どうも弱いらしい。「……わかりました」と返事をした後、ひとつだけ条件を出す。

「上げる前に、一回見させてもらってもいいですか? それで、どうしてもダメだなって思ったら……あげないでほしいです」
「わかりました! この約束は絶対守るんで! よし!!やるぞー!」

やる気になっているキリトの声を聞きながら、この先何かが変わっていくのかな……という、期待と不安が入り混じって、解散した後もしばらくボーッとPC画面を見つめていた。

————————-
ここまでお読みいただきありがとうございます。
もう少しシリアスになると思ってたんですが、全然ならない。おかしいな…。

と、思いながら次回からキリト君視点を書こうかなと思っております。

では。
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