地獄の門の先に楽園があるかもしれない

宇宙超涅槃菩薩

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第二話

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……意識が戻ると座っていた席ではなく店の隅に寝かされていた。
カウンターを見るとマスター不在、時計に目をやれば……もう昼になってるじゃないか。
数時間気を失っていたのか……なんて威力だ。
鼻の奥が微妙に痺れ、目からはまだ涙が出る……。旅立ち前なのにどうしてこんなことに……。
悲しみに打ちひしがれていると玄関の扉が開いた。

マスター
「意識が戻ったようだな。」

大量の消臭剤を抱えたマスターが店に入る。
あの匂いに消臭剤で対処できるかは甚だ疑問だが……。

太郎
「どうにか致命傷で済んだよ(白目)」
マスター
「本当にすまん、あんな威力になるとは思っていなかったんだ。」
太郎
「許さんぞ魚のバケモノめ。とりあえず洗面所を借りたい、あと換気しようね。」
マスター
「余力はあるようだな。お手洗いはそっちだ。」

生まれたての小鹿のような足取りでトイレに向かう。本当に致命傷だわこれ。
扉を開けて息を吸う。トイレの芳香剤がこれほど癒しになるのは前代未聞だ。
とにかく顔を洗おう。そう思って鏡の前に立った。……うわぁ酷い顔してるな自分。
目の下に隈ができた悲壮な表情になっている……。もういろいろと辛い。
軽く顔を洗った後、排泄も済ますことにした。
個室の扉をノックしてから開ける。するとそこには衝撃の光景が……!

太郎
「なんで便器が虹色なんだよ……。」

虹色に光り輝く洋式便器が鎮座していたのである。無駄なところに金掛けてんな……。
一応確認したがトイレットペーパーは普通だった。使用する分には問題ないようである。
初見は衝撃的だがそもそも座ってしまえば見えないのだ。何のために虹色なんだろう……。

用を足して手を洗い、店内の様子を見に戻った。

太郎
「消臭はどうなってる?」
マスター
「各席につき一個、消臭剤を配置してみた。」

窓を開け放ちながらマスターが答える。

太郎
「まだ残り香を感じるけど一個で足りる?」
マスター
「どうだろうな。換気しつつ様子を見て対処する。」
太郎
「一応バーなんだから悪臭には迅速に対処したほうがいいぞ。」

換気を手伝いながらしょうもないやりとりをしていると来客だ。

貴族風の女
「ごきげんよう」
マスター
「いらっしゃい。」

よかった、比較的まともな外見だ。近日の客のせいで基準がガバガバになりつつあるが……。

マスター
「お好きな席へどうぞ。」
貴族風の女
「ではここに……!!?」

あからさまに表情が歪み顔から血の気が引く。

貴族風の女
「くっさ!!!この席めっちゃ臭っ!!!」

ああ……やっぱりそうなりますよねー。そこ俺が直撃喰らった席だもん。

太郎
「マスター、あちらのレディーに消臭剤を。」
マスター
「畏まりました。」
貴族風の女
「消臭剤!?」

バーカウンターの上を消臭剤が滑っていく。なんだこの光景は。
消臭剤が到着し、女の表情がほんの少し和らぐ。

貴族風の女
「なんなんですの?この地獄みたいな匂いは……。」
太郎
「カクテルの合体事故です。」
貴族風の女
「意味が解りませんわ。」

至極当然の返答である。

マスター
「豚汁と青汁と鶏の生き血とキャットフード」
貴族風の女
「なんの儀式ですのそれは!?」

この人ツッコミにキレがあるな……。いやいや、なんで客にツッコミさせてるんだよ。
普通に来店した客を勢いでコントに巻き込んでしまったような状況である。なんだかいたたまれない。

貴族風の女
「まず材料がバーにあるものとは思えませんわ。」
太郎
「指摘がごもっとも過ぎる。なぁマスターそろそろ普通の酒とか出してくれよ。俺この店来てから一度も酒類見てないよ……?」
マスター
「ん?酒が欲しいのか?年齢承認があるから太郎君には出せないぞ。」
太郎
「そうきたか。」

身元が判明せず年齢不詳だから仕方がない。

貴族風の女
「あらぁ意外にも私より年下ですの?」
マスター
「いえ、こいつは記憶喪失で身元が割れていないだけです。」
貴族風の女
「それはまた災難ですわね。」
太郎
「本当ですよ。このまま記憶が戻らないと魔王の手先になってしまいます。」
貴族風の女
「あらあら、それは案外堅い選択かもしれませんわよ。」

悪臭で歪んでいた表情は元に戻りつつある。
しかし記憶喪失に対して反応が薄い気がするが……ジョークだと思われたのだろうか。
それともこの世界ではそれほど珍しくないとか。

貴族風の女
「ところで本当にお酒はありませんの?」
マスター
「あるよ。」
太郎
「あるのか……じゃあなんで『マスターのおすすめ』が豚汁なんだ?」
貴族風の女
「おすすめが豚汁ですの!?」
マスター
「貴様ら豚汁の何が不満なのだ……?」

ああ、いかん。鰓の横に青筋立ってるぞマスター。

太郎
「いやここの豚汁は美味かったけどさ、バーなのに定食屋のメニューみたいになってるから……。」
マスター
「……。」

一応豚汁を持ち上げつつ理由を述べて反応を見る。

マスター
「それの何が悪い。」

開き直ったわ……。

太郎
「バーなのか定食屋なのかはっきりしてほしい」
マスター
「『飲食店』だ。」

マスターの目が座っている。これ以上指摘するのは止めたほうがよさそうだ。

貴族風の女
「……で、今出せるお酒は……?」
マスター
「スピリタスとかあるよ。」
太郎
「一番手それから勧めるのかよ!?」
マスター
「何が不満なのだ?」
太郎
「アルコール度数が高過ぎる。」
マスター
「人間が作った酒だと聞いたから問題ない度数だと思ってたんだがなぁ……。」
太郎
「魔物の視点だとそうなるのか……。」
マスター
「度数が問題だと言うのなら豚汁で割れば問題なかろう。」
太郎
「おい待ていい加減豚汁から離れろ。」
貴族風の女
「豚汁酒は遠慮いたしますわ。」

雲行きが怪しくなってきたな……。なんとか話題を変えたいところだが。

太郎
「割るにしても他にあるだろ。」
マスター
「青汁とかあるよ。」
太郎
「それも却下だ。他の酒は無いのか?」
マスター
「グサーノロホとかあるよ。」
太郎
「うん……。どんなの?」
マスター
「ほら、これだ。」

マスターがカウンターの裏から酒瓶を持ち上げる。
瓶の底に何か不吉なものが見えた気がしたぞ……。

太郎
「待ってマスター。その下に沈んでるのは何?」
マスター
「何って……見ての通りだが?」

こちらに差し出された酒瓶の底には……

太郎
「芋虫入ってる!!!」
貴族風の女
「!!?」
マスター
「何を驚いている?もともとこういう酒だぞ。」
太郎
「なんでそんなマニアックなモノを……。」

もしかしてマスターは魚だから虫に抵抗が無いのか……?

太郎
「他の酒も何か入ってるんじゃないだろうな……。」
マスター
「今出せる酒はこれとスピリタスと……あとマムシ酒だけだな。」
太郎
「やっぱり入ってたよ!!」

生き物を入れないと気が済まないのか……?

太郎
「生物以外を入れたりはしないの?果実酒とか……。」
マスター
「果実か……。マムシや芋虫に比べるとコストがなぁ……。」
太郎
「コストより店の風評を気にしろよ。」
貴族風の女
「マムシ酒をいただけますかしら。」
太郎
「意外と度胸あるなあんた。」

三つの中では『比較的』初心者向けであろうマムシ酒、堅い選択ではあるのだろうが……。

マスター
「身分証のご提示を。」
貴族風の女
「はい、これ。」
マスター
「確認いたしました。」

身分証とかあるんだよな。パスポート発行の話でだいたい予想してたけど……。

マスター
「ご注文承りました。」

カウンターの下から取り出された瓶は思ったよりデカイ。……いや、それ以前に

太郎
「いや待てこのマムシ妙にデカくない?」
貴族風の女
「これ……本当にマムシですの?」

普通のマムシの倍程もある個体が入っている……。

マスター
「この大きさで相場より安かったのでついついな……。」
太郎
「値段で選んだんかい。」

大きめのビールジョッキに注がれるマムシ酒。この量は容赦ないな……。
頼んだ本人も若干表情が引きつってるぞ。

マスター
「ほら、太郎君。一緒に乾杯とかするところじゃないかね?」
太郎
「酒は出せないって言ったのはあんただぞ。」
貴族風の女
「マスター、あちらの殿方に青汁を。」
マスター
「承りました。」
太郎
「逃げ道塞がれた!?」

マムシ酒と青汁による乾杯。どうしてこうなった。

貴族風の女
「うぅ……、これぞマムシ……。」

いい飲みっぷりだ。

太郎
「不味い!もう一杯!」

ちょっと青汁に慣れてきた自分に驚く。

その後、貴族風の女はマムシ酒を飲み干し誇らしげに退店した。
一方で俺は三杯目の青汁で泣きが入った。帰りに他のところで飲み物を買っていこう……。

太郎
「いやあ青汁は強敵でしたね(涙目)」
マスター
「もっと飲めよ、体にいいぞ。」
太郎
「いや連日青汁はキツイ……。」

旅立ちを控えているのに酷い目に遭った……。

太郎
「マスター、そろそろ帰るよ。」
マスター
「そうか。青汁はもういいのか?」
太郎
「くどい!」
マスター
「それはそうと明日も来てくれ。会わせたい人が居る。」
太郎
「はぁ……どんな人?」
マスター
「会ってからのお楽しみだ。それとパスポートもその人が預かって持ってくることになったそうだ。」
太郎
「おぉ……?信頼のおける人物なのね。」
マスター
「当然だ。魔物が魔王を信頼しないでどうする。」

会うの魔王かよ……。

マスター
「くれぐれも無礼の無いようにな。」
太郎
「善処します……。」

緊張を煽りやがって……。
青汁の勘定を払って店を出る。
二人目の魔王、いったいどんな奴が出てくるのだろうか。例によってインパクト絶大な見た目の可能性は高い。
しかしそれよりも気になるのは会う目的である。
パスポートの受け渡しなど本来魔王がやることではないだろう。おそらく何か別の目的があるはずだ。
何らかの目的で直接の接触か……自分は魔王にとってそこまで利用価値があるのだろうか?
しかし……魔王たちの最終目的もはっきり把握していないんだよなぁ……。

現在の情報で予測を立ててみることにしよう。
魔王らしく人間界を侵略!……という線は薄い気がする。
魔王城の城下町を見て分かる通り技術力の差が凄い。この世界の人間側に勝ち目は無さそうなのだ。
侵略するならわざわざ待っている必要が無い。
つまり『後回しにしている』もしくは『最初から興味がない』のどちらかだろう。
最初に会った魔王フォルネウスの印象ではおそらく後者だ。魔王のうちの一人だけで判断するのは早計かもしれないが……。
彼の話では魔王も異世界から来たと言っていた。もしかしたら故郷に帰ることが目的……?
この島は近代化されて棲みやすい。しかしそれでも彼らには満足に足るレベルではないのだろう。
電話に関しても「不便だろうが」という前置きが入ったくらいである。確かに昔使えていた物が今使えないとなれば不満だろう。
魔王たちが過去に人間だったという話が本当ならば……『便利な生活』が目標になっている可能性は十分ある。
元居た場所に帰る方法を探りつつ並行して今居る場所も近代化。おそらく今魔王たちがやっていることがこれだ。
思えば今自分が頼まれていることもその一環である。そう考えれば今現在不穏な動きは特に無い……と考えるのは平和ボケし過ぎだろうか。

考察をしてみたものの結論がまとまらないまま家についてしまった。この手のことを考えるのは向いていないのもしれない。

自室で資料を漁り魔王の名簿を取り出す。
名前と顔写真だけでも覚えようと試みる……が、夢に出てきそうな凄い顔が多数。
このままでは俺の安眠に支障が出ると判断し早々に断念。就寝した。


翌日、俺はいつもの店の前に居た。緊張していた割には昨夜はよく眠れたと思う。たぶん。
時刻は朝七時。魔王を待たせるほどの勇気など無いので早朝から出撃である。

太郎
「マスター、入るぞ。」
マスター
「ああ、おはよう。」

カウンター席に凄いのが座っているぞ……。

マスター
「このお方が昨日言っていた……」
初対面の魔王
「どうも、私『ガミジン』と申します。初めまして。」
太郎
「地獄門太郎です、よろしくお願いします。」

丁寧な物腰に似合わない彼の凄まじい外見に圧倒される。
鬼のような二本角の生えた赤い髑髏の頭部。角の根元には金色の馬の蹄のような飾りが付いている。
体には返り血を浴びたような深紅の武者鎧。
両肩にも紅い髑髏が配置されているがこちらは上下逆さまについており口には銀の鎖を咥えている。
その鎖の先は……背面に配置された50センチほどの銀の十字架に繋がっていた。

太郎
「ええと……普段からそういう格好を……?」
ガミジン
「ははは……お店に入る格好ではありませんよね、これ。」
太郎
「あっ、いえ別に悪いというわけでは……。」

勢いで聞いちゃったけどマスターの目が怖い。

ガミジン
「この鎧、実は私の体の一部になっておりまして……脱ぐことができないのですよ。」
太郎
「あぁ……そういう理由で……。」

顔から憶測するに体のほうもおそらく赤い骨。仮に脱げたとしてもグロテスクさ倍増だろう。

ガミジン
「ところで太郎さん、こちらに来てからの信仰はいかがなされておりますかな?」
太郎
「し、信仰……?」
マスター
「ガミジン様は敬虔なクリスチャンなのだ。」
太郎
「ファッ!?」
ガミジン
「実は私、この世界に来る前は神父をしておりまして。」

衝撃過ぎる過去である。十字架はその名残だったか……。

ガミジン
「しかしこちらに来てから満足に布教活動ができておりません。」

見た目が怖過ぎるからじゃないかと言いかけたが飲み込む。

ガミジン
「条約で『改宗を強要しない』というのが決まってしまいましてね……。」
「島には他の宗教が既に広まっており信者を増やせないのです。」
「そこでです太郎さん!!」

赤い髑髏の眼窩の奥が光る。マジで怖い。

ガミジン
「あなたは記憶を失ってから特定の宗教には入信していないと聞きました!」
太郎
「もう言いたいことは分かりました。とりあえず前向きに検討させていただきます。」
ガミジン
「そうですか……。少し顔色が悪いようですがいかがいたしましたかな?」
太郎
「いえこれは青汁の飲み過ぎです。」
ガミジン
「なぜ青汁……。」

『あなたが怖過ぎるから』とは口が裂けても言えないので青汁のせいにした。すまないマスター。
昨日考察していた魔王たちの目的もこの人(?)に限っては布教が第一のようである。魔王も一枚岩ではないらしい。

ガミジン
「太郎さん、この島の宗教の知識はどの程度ありますかな?」
太郎
「ぶっちゃけよく分かってないです。」
ガミジン
「そうですか。なら私が要所でお教えしましょう。島を巡る上で重要なこともありますからね。」
太郎
「要所で……旅先で?」
ガミジン
「はい。私、一時的にですがあなたの旅に同行することになりましたので。」
太郎
「あっ、はい。よろしくお願いします。……マジで?」
ガミジン
「驚きましたか?」
太郎
「護衛が付くとは聞いていたんですが魔王様が直々に来るとは……。」
ガミジン
「魔王など肩書だけですよ。普段から大したことはしておりませんからね。」

謙遜しているのだろうか……。確かに会話の内容だけなら魔王感は全くないが……。

ガミジン
「それと護衛のことなのですが……。」
太郎
「……?」
ガミジン
「私は宗教上の理由で暴力を振るうことができません。」
太郎
「……!?」
ガミジン
「揉め事は常に『平和的』に解決しましょう。いいですね太郎さん。」
太郎
「はい……。」
ガミジン
「やむおえない理由で武力が必要になった場合は……別口で傭兵でも雇いましょうか。」
太郎
「まさかの他力本願。」

護衛ではなく案内役(?)という認識でよいのだろうか?
戦力にならないやつは派遣しないって言ってたよねマスター……。
……もしかしてこれ本人は戦わないけど眷属が強いとそういうタイプじゃない?

太郎
「ガミジンさんガミジンさん。」
ガミジン
「なんでしょうか?」
太郎
「魔王様特有の眷属召喚とか見せてもらえないでしょうか。」
ガミジン
「召喚ですか。意外とせがまれるんですよね、あれ。『手品みたい』ってウケがいいようで。」
太郎
「召喚って手品と同格なのか……。」
マスター
「ガミジン様、これを。」
ガミジン
「おお、これはかたじけない。使わせていただきましょう。」

マスターが何か手渡した。これは……魔王城で買った瘴気饅頭じゃないか?

太郎
「なぜ瘴気饅頭……。」
ガミジン
「我々も『無から有を生み出す』ようなことはできません。召喚にも瘴気が必要でしてね。」
太郎
「なるほど。」

気体の瘴気が人体に毒である以上、人前で眷属を作るなら固形の瘴気を用いらねばならない。
たしかに瘴気饅頭が適任である。用途不明と思われた魔王城土産にこんな使い道があったとは……。

ガミジン
「では、行きますよ。召喚!」

ガミジンさんの手前に闇が集まり(そうとしか表現できない)人ほどの大きさに収束する。
形が整ったところでガミジンさんが指を鳴らすと闇が砕け中から魔物が現れる。

出てきたのは銀色に輝く骸骨である。本当に全身ギラギラ。

太郎
「骸骨剣士!……剣士?いや、手元に持っているこれは……?」
ガミジン
「聖水の瓶とロザリオですね。」
太郎
「悪魔祓いでもやんのか!?」
ガミジン
「私が元神父なのでどうしてもこういう形に……。」

使いどころが物凄く限られる眷属である。
とにかくボディーガード的な存在ではないことは痛いほどよくわかった。
戦力は他で調達だな……。

太郎
「……うーん、傭兵も王都で調達しますかなぁ。」
ガミジン
「おや、王都から廻るのですか?」
太郎
「ええ。買い物を先にそっちで済ませてから旅しようと思ってます。」
ガミジン
「なるほどなるほど。良い判断ですねぇ、あそこは経済の中心地ですから。」
「備品の品揃えも人材の質も期待できますでしょう。」
太郎
「お詳しいですね。既に歩き慣れている感じです?」
ガミジン
「慣れているとまでは行きませんが何度か足を延ばしたことはありますね。」

良かった。初めて行く都市で迷子になることは避けられそうである。
問題は同行者が凄く目立つ見た目だという点だが……これはもう諦めるしかなさそうだ。
『呪いの装備』よろしく脱げない武者鎧があるため着替えは不可能だろう。
正直顔だけでも何か被ってほしいところだが魔王に対してそれをお願いする勇気はない。
それ以前に当人が望んでその姿になったわけではないだろうし容姿に何か言うのは憚られる……。
特にこの人は敬虔なクリスチャンが悪魔の姿になってしまったのだ。明るく振舞ってはいるが内心堪えているに違いない。

骸骨
「ガタガタガタガタ」
太郎
「!?」

さっき召喚された骸骨が何か言いたそうにしている。

ガミジン
「おや?どうしましたかな?」
太郎
「よくわからないけど骸骨ガタガタですよ!(錯乱)」
骸骨
「ガタガタガタガタガタガタガタガタ」

激しく震えているが何が言いたいのか全く分からないぞ!
震える骸骨を見て動揺しているとマスターがスケッチブックを手渡した。
筆談させるのか!

受け取ったスケッチブックに早速何かを描き込む骸骨。
描かれたものをこちらに向ける……そこには。

太郎
「……ごめん、わかんない。」
ガミジン
「私もよくわかりませんなぁ……。」

肩を落とす骸骨。
ちなみにどんなものが描かれていたかというと……
四角い輪郭の物に数本の横線が入った何かという絵である。
しかも中心の絵に向かって集中線が描かれている。もしかして重要なことなのだろうか?
中心の物体の大雑把さと妙に綺麗に描かれた集中線のギャップが気になるがこの際そこは置いておこう。

再度何かを描く骸骨。
今度はすぐに描きあがったようだ。

骸骨に見せられたのは絵……ではなく今度は文字だった。
「『寒い。』」

太郎
「最初から文字で書けや!!」
ガミジン
「最初の絵はもしや……空調?」

想定外のオチだった……。この骸骨寒さを感じるらしい。

マスター
「何か着衣をお持ちしましょう。」
ガミジン
「ありがとうございます。ほら、貴方もお礼を……。」
骸骨
「……(無言でペンを動かす)」

……。

太郎
「長めに書いてますね。」
ガミジン
「そうですね。」

描き終わる前にマスターは店の奥へ衣服を取りに行ってしまった。
骸骨がスケッチブックを持ち上げる。
「『ありがとう』」

大きなありがとうの文字は丸文字で愛らしい書体だ。
そしてその右側に……妙にリアルな蟻の顔が描かれている。
残念ながら大きさと配置場所で失敗したようで6匹で打ち止めとなっている。10匹描けないと意味が通らなくてまさに無駄骨だ!

ガミジン
「意外な才能に私感激です。」
太郎
「むしろ何で最初の空調は手を抜いたんだよ……。」
骸骨
「……(更に何か書く)」

骸骨の返答は「寒かったから速く描いた。」だそうだ。
寒がりで絵心のある骸骨ってキャラ立ちし過ぎじゃないかな?
そんなことを思いながら絵を見ていたらマスターが戻ってきたぞ。

マスター
「スケルトン用の着衣が無いのでとりあえずこれを……。」

なるほど、骸骨の魔物の正式名称はスケルトンだな。それよりマスターが持ってきた物だが……。
単なる真っ黒な布である。当然、スケルトンがこれを被れば……!

太郎
「まるで死神じゃないか。実物見ると案外かっこいいな。」

照れるような仕草をするスケルトン。骨でそれやられてもなぁ……。
しかし宗教上の理由で大鎌とか持てないのが本当に悔やまれるレベルのビジュアルだ。

また何か書き始めたぞ……。

「『名前付けて』」

太郎
「あぁ、生まれたばかりだから名前無いんだよな。」
ガミジン
「重要なことですし今のうちに名付けておきましょう。」
マスター
「候補を出し合って投票する形でどうです?」
太郎
「すぐ決めるならそれでもいいか。」

当事者のスケルトンを見やる。

「素敵な名前を所望する」

……よし、適当でいいな!


30秒程で候補が出揃う。この速度、みんな深く考えてないな!
名前の候補は『アンドレ』『ゴンザレス』『三郎』の三つだ。
ちなみに俺が出したのがアンドレ、マスターが出したのがゴンザレス、ガミジンさんが出したのが三郎だ。

太郎
「ガミジンさんが『三郎』を出してきたのが意外だった。」
ガミジン
「だってこのままだと太郎さんが浮くじゃないですか。名前的に。」
太郎
「……!?」

やっぱりこの人は人柄と外見が反比例しておられる……。

太郎
「自分はそういうこと気にしないんで大丈夫ですよ。それにこの名前は……」
ガミジン
「そうでした。フォルネウスさんが頑張って付けてくれたんですよね、太郎さんの名前。」
太郎
「が、頑張った……?」
ガミジン
「ええ、最初はデカラビアさんが『名無しの権兵衛』と呼ぼうとしてそれを阻止する形で慌ててフォルネウスさんが……。」

デカラビア……クラーケンを眷属に持つ魔王である。
クラーケンの江戸っ子気質といい先に出た『名無しの権兵衛』といい本当に何者なんだ……。

太郎
「そんな事情が……。」
マスター
「票を入れるぞ。待たせると悪いからな。」
太郎
「おっ、そうだな。」

三人で各自自分のに票を入れて綺麗に割れる……ということは無かった。
俺が『三郎』に投票したからだ。「気にしない」とは言ったものの、俺は人のご厚意をスルーするほど強い人間ではない。

マスター
「ゴンザレスが一票、三郎が二票、決まりだな。」
スケルトン
「ガタガタガタガ」
ガミジン
「おや?何か書いていますね。」

投票結果が不服だったのだろうか?まあ当人が気に入らなければ無効にしてもいいだろう。俺たちが勝手にやっていただけだし。

「『ゴンザレスに一票。』」

そっちか。

太郎
「三郎は気に入らなかったかー。」
スケルトン
「……(ペンを動かす)」

「『次郎が居ないから。』」

太郎
「気にしてたのそこかよ!?」
マスター
「しかし二票と二票では決められないな。」
ガミジン
「いえ、当人の意見を尊重しゴンザレスにしましょう。」
太郎
「それがいいですね。よろしくな、ゴンザレス。」

とりあえず挨拶と同時に握手してみる。

ゴンザレス
「……。」

骨の感触が……いや、冷たい。これは紛れもなく金属の感触だ。
魔物なんて言ってるけど未来から来たロボットなんじゃないだろうな……。

ガミジン
「名前も決まったことですし出かける準備をしましょうか。」

忘れかけていたが今日はパスポートを渡されるんだった……。

太郎
「一応荷物はまとめてあります。」
ガミジン
「準備がよろしいですね。はい、こちらが頼まれていたパスポートです。」

武者鎧の装甲の裏からパスポートを取り出すガミジンさん。便利だなそれ……。
見てみると病院で検査のときに撮られた顔写真が使われていた。ちょっと写真写りが悪い。

ガミジン
「フォルネウスさんが言うには『当事者が記憶喪失のためいろいろすっ飛ばして作った』だそうです。」
太郎
「ああ、それはまぁ……仕方ないですよね。」
ガミジン
「本来は身元不明の人にパスポートは作らせないのですが特別ということで……。」
「あなたが何か危険なことをしようとした場合は我々が実力行使して止めることになってます。」
太郎
「それも兼ねての同行なんですね。」
ガミジン
「そういうわけです。まぁ、実力を行使する事態にはまずならないでしょうが。」
太郎
「肝に銘じておきます。」

言われてみればパスポートの発行は身元が判明してからにするのが自然である。
それをこんな形で……どういう思惑なのだろうか。

ガミジン
「荷物を見せていただいてもよろしいですかな?」
太郎
「どうぞ。」

検問かな?

ガミジン
「危険物の類は無いようですな。お返しします。」

戻すときにこっそりと聖書を入れるガミジンさん。目的それかよ。

太郎
「ちょっと荷物重くなりました?」
ガミジン
「気のせいですよ。」
太郎
「そうですね。」

白々しいやりとりだ……。
検問で聖書が引っ掛かることはなさそうだしスルーしておこう。

マスター
「すぐに出られるのか?」
太郎
「あぁ、部屋はかたづけて来たから問題ないよ。備え付けの備品はそのままだけどな。」
マスター
「わかった。今から管理人に連絡しておく。」
太郎
「マスターが連絡すんの?」
マスター
「管理人とはサハギン同士顔見知りだからな。」

管理人もサハギンだった件だが実は今知った。
顔合わせせずに入居した後、病院での検査続きで関わる機会がほぼ無かったのだ。

太郎
「ちなみにどんなサハギン?魚の種類的な意味で。」
マスター
「種類か……鯉だな。」
太郎
「鯉か……マニアックな種類じゃないのが逆に新鮮だ。」
マスター
「どういう意味だ。」
太郎
「たまに遭遇する深海魚顔が印象強すぎるんだよ……。」

理由を説明するもマスターは納得いかないようである。

マスターをなだめ、ガミジンさんのほうに向きなおる。
ガミジンさんはゴンザレスに聖書を渡していた。二冊目だがどこに隠し持ってるんだ……?

ガミジン
「そちらのお話は済みましたか?」
太郎
「ええ。」
ガミジン
「では旅先について少しお話しますね。パンフレットの中身と多少被ってしまうかもしれませんがご容赦ください。」
太郎
「よろしくお願いします。」
ガミジン
「島の南側の地域では竜を信仰の対象としています。太郎さんは竜はご存知ですかな?」
太郎
「はい。魔物とか居るところだしやっぱり竜も実在するんですか?」
ガミジン
「ええ、実在するそうですよ。私はまだ直接見てはいないのですがね。」
「そして我々とは違った意味で特別な存在なので……それを今からご説明しますね。」
「魔物や獣人等と異なり竜に限っては地獄門の出現前から認知されていたという話で……」
「この世界にもともと居た生物ということになりますね。」

この島のファンタジーっぽい生物は『だいたい地獄門のせい』で出現したという認識だったが……竜だけが例外なのか?

ガミジン
「私は生物学は詳しくないので生態とかは端折りますね。」
「信仰の対象、神聖な生物。この点が重要です。」
太郎
「竜はバカにしたらダメってことですか?」
ガミジン
「大雑把に言えばそうです。現地で話題に出すときは慎重にお願いします。」
「竜の話が出たとき魔王の中にも『戦ってみたい』とおっしゃった方が数名おりまして……」
太郎
「やっぱり血の気が多い魔王も居るんですね……。」

初めて存在を知った生物に『見たい』ならまだわかるが『戦いたい』となるものだろうか……?
体が変化すると思想も好戦的になるのかとも考えたが……目の前のガミジンさんを見ているとそうとも限らないと感じる。
たぶんもともと好戦的なやつが混じっていたのだろう、そう思うことにした。

ガミジン
「ええ、お恥ずかしい限りです。」
「信仰の対象に危害を加えるのは……やめようね!」
太郎
「罰当たりですからね。」
ガミジン
「罰当たりなだけでなく外交問題ですよ。本当に気を付けてくださね。」
太郎
「了解です。」

旅行者のうっかりが原因で宗教戦争に発展する可能性があるわけか。これはしっかり憶えておかねば。

ガミジン
「このような事情がありましてですね、竜を敵視するような描写がある創作物は……もれなく発禁となっております。」
太郎
「えぇ……じゃあ御伽噺とかの仮想敵は……?」
ガミジン
「ほとんどが実在する地味な害獣ですね。」
太郎
「いいのかそれで」
ガミジン
「良いか悪いかは判断しかねますが……この島の方々は特に違和感を感じていないようです。」

地味な害獣って……強大な敵を打ち倒す物語のほうがいいと思うんだけどなぁ。
いや、この島の基準で『地味』というだけで十分強大な害獣の可能性はある。

太郎
「しかしまぁ……徹底した信仰ですね。」
ガミジン
「ええ。竜に対して絶大な信頼を寄せているようです。」
「過去に現れた際も何度も人類に助言をしていたそうで……。」
太郎
「……喋るんですね、竜って。」
ガミジン
「そうなんですよ。確認されている文献では普通に喋って意思疎通を行っているんです。」
「フォルネウスさんの見解では『島の外の領域を実効支配している高度な文明を持った種族』だそうで。」
太郎
「高度な……文明……?」
ガミジン
「竜によって持ち込まれたものは我々にすら理解不能なものばかりでした。」
「その一つですが……瘴気の流出を防いでいる結界。これも元々は竜の技術です。」
太郎
「身近なところに存在していた竜の技術……。」

漠然と『魔法の類』だと認識していたが竜由来だったとは驚きである。

ガミジン
「瘴気の拡散を防ぐために竜が結界を張り……」
「サハギンたちがリバースエンジニアリングしてこちらでメンテナンス可能にしたのです。」
太郎
「さりげなくとんでもない才能を発揮していらっしゃる。」
ガミジン
「他には魔法の起源なんかも竜ですね。」
「『魔法杖』を島に持ち込んだのが竜だとされています。」
太郎
「魔法杖……!?」
ガミジン
「ええ、魔法を使うのには魔法杖が必要なのですが……残念ながら一本だけしか無いらしいです。」
太郎
「貴重な物なんですね。」
ガミジン
「歴史的にも重要な物なので国で管理しているそうです。」

杖があれば誰でも魔法を使える……とはならないようである。
サハギンに預ければ量産化も夢ではない気がするが……。

太郎
「魔法杖は量産化しないですかね?」
ガミジン
「杖に付いている『魔石』の材料が島の中では手に入らないらしいんですよ。」
太郎
「なるほど……。」
ガミジン
「そんな『魔法使いたかった』みたいな顔しないでください。」
太郎
「顔に出てしまった(´・ω・`)」

異世界なんだから魔法の一つや二つ習得しても罰は当たらないと思うんだけどなぁ……。

ガミジン
「高度な技術力を持ち対話も可能、さらに島民にも友好的なので……」
「我々魔王も竜とは敵対しない、という方針になっております。」
太郎
「なんとなくわかりました。出会ったら無礼の無いように接しておけってことですね。」
ガミジン
「ちょっと大雑把ですがそんな認識で大丈夫です。」

……しかし、ここまで聞かされたら気になって仕方ないことがある。

太郎
「島の外……どうなってるんですかね。」
ガミジン
「気になりますか?」
太郎
「気になりますよ。」
ガミジン
「実はですね……島民は誰も知らないみたいなんですよ。」
太郎
「ファッ!?」
ガミジン
「島の地表には危険な害獣が闊歩しているのはご存じですね?」
太郎
「それは聞いています。」

まだ自治区内と魔王城しか出歩いていないのだが……簡単に外に出れないのはそういう理由との話は聞いている。
鉄道がまだ地下鉄しかないのは害獣の襲撃を懸念してのことだとか……。

ガミジン
「海や空はもっと酷い。」
太郎
「酷いって……」
ガミジン
「空に飛行機や気球を飛ばそうものなら翼竜のバードストライクでお釈迦です。」
太郎
「翼竜!?絶滅してないのかよ!そんなの激突したら大惨事じゃないか!!」
ガミジン
「海に船を浮かべれば大型生物の襲撃は避けられない。マッコウクジラとダイオウイカが何故か浅瀬で乱闘しているような環境ですからね。」
太郎
「なんだその取り合わせ!?深海で戦えよ!!」

本当にガバガバな生態系である。

太郎
「……それで、島の外に出る手段が無いと。」
ガミジン
「そういうことです。」
太郎
「もう竜に直接聞くしか……」
ガミジン
「過去に竜に質問したという文献もありますが。」
太郎
「……え?それにはなんと?」
ガミジン
「はぐらかされたので聞けなかったとあります。」
太郎
「触れてはいけなかった……。」

本当に何があるのだろうか。これほど隠されると流石に気になるな。

ガミジン
「実は我々もですね……『外様の立場で』改めて尋ねてみようと考えています。今後接触できればですがね。」
太郎
「それで答え変わるもんですかねぇ……試すだけ試すって感じです?」
ガミジン
「こちらの故郷の情報を聞かれたときに交換条件で提示するって言ってました。ゴエティアの外交の方々はいつもこんな感じなんですよね。」
太郎
「抜け目ないっすね……。それで、接触の目途は?」
ガミジン
「そうですね、竜に会う機会のことも詳しく話しておきましょう。」
太郎
「お願いします。」

はたして実在する竜を見ることはできるのだろうか。その方法やいかに。

ガミジン
「王都では十年に一度、竜を呼ぶ祭りが開催されます。」
太郎
「十年に一度ですか。」
ガミジン
「えぇ。前回開催されたのが四年前ですね。そのときは私は居なかったのですが。」
太郎
「あと六年……。」
ガミジン
「いえ、四年前の祭りでは竜が現れずに中止となったらしいのです。」
太郎
「え、中止ですか?」
ガミジン
「祭りの数日前にゴエティア周辺に竜が現れて結界を張ったのですよ。」
「そのときに竜に何かあったため祭りに現れなかった説が有力です。それ以来目撃情報もありませんので。」
太郎
「ええと……つまり?」
ガミジン
「この先いつ竜と出会えるかは全くわかりません。」

要するに当てがない状態だ。肩透かしである。
直接会う機会はこの先あるか怪しい。しかしどういう扱いなのかは把握できた。

太郎
「神様みたいなものかとも思ったけど本人が直接出てきて対話してるんですよね?もしかして教祖とかに近い?」
ガミジン
「どちらも兼ねているんじゃないかと思いますね。」
太郎
「宗教上の絶対的な頂点って感じでいいのかな。」
ガミジン
「確かに崇拝対象としては頂点ですね。」
太郎
「崇拝対象としては……。」
ガミジン
「人間の政治等にはあまり干渉してくるわけでもなく『支配』している感じではないんですね。」
太郎
「微妙な距離感ですね。飼い主的な立ち位置だけどペットの躾けには無頓着みたいな?」
ガミジン
「ペットですか……確かに犬の躾けより緩い干渉なんですよね。もしかしたら蟻の観察くらいの扱いなのかもしれません。」

人間の扱い酷い……。

ガミジン
「竜のお話はこのへんで切り上げて……次は政治形態について説明しますね。」
「『王都』がある時点でお分かりかと思いますが……」
太郎
「王様が居る……君主制ってやつですか?」
ガミジン
「良い着眼点ですね。現在の国王様が即位されるまでは君主制でした。」
太郎
「現在の……?」
ガミジン
「先代の国王様がそれは酷い暴君だったという話でして……。」
「今の国王様はその息子さんなんですけどね、父親を反面教師にしていろいろと頑張っているそうです。」
「先代の暴走を許してしまった君主制という制度を憎んでおられる様子で……。」
太郎
「いろいろと大変ですね……。先代の国王様は隠居したんですか?」
ガミジン
「いえ、十数年前に病死されたそうです。過去の逸話からは大人しく隠居するような人物とは思えませんでしたし……。」
「むしろ暗殺ではなかったのかと、そういう方向で話題になったと聞きました。」
太郎
「うわぁ……国民からの人気は……。」
ガミジン
「民主政治だったら支持率低かったでしょうなぁ。」
太郎
「そんな王様が居る時くらい竜ももうすこし干渉してくれても……」
ガミジン
「竜に対してだけは媚び諂っていたと伝わっています。」
太郎
「小悪党か!?」
ガミジン
「ともかくそんなこんなで君主制ではなくなりました。」
太郎
「……そして現在の政治形態は。」
ガミジン
「現在は緩めの封建制ですね。財政や教育水準を見ながら徐々に民主化して行く方針のようです。」
太郎
「いきなり民主化では駄目なんですかね?」
ガミジン
「それはすぐには対応できなかったでしょう。民主政治が機能する環境を整えるのって案外大変ですよ?」
太郎
「そういうものですか。」
ガミジン
「そういうものです。」

長くなりそうだしこのあたりの事情は時間があるときに教わろう。

太郎
「王様の下にも幾つか階級みたいなものがあるって認識で大丈夫です?」
ガミジン
「それで概ね問題ないです。」

自治区ではあまり階級による格差みたいなものは見なかったが……他はやはり違うのか。

ガミジン
「太郎さん、我々は内政干渉はできません。なので多少の格差を見てもスルーしなければなりません。」
太郎
「おぉ……世知辛い……。」
ガミジン
「しかしあまりに理不尽な格差を見て我慢できない場合は……」
太郎
「何か対策が!?」
ガミジン
「国王様にチクりましょうね~。」
太郎
「まさかの直談判!?」
「しかし……チクるってどうやって?」
ガミジン
「私が個人的に国王様のメールアドレスを知っているので。」
太郎
「メールアドレス……フォルネウスさんから聞いたんですが携帯電話は無いんですよね。」
ガミジン
「ええ。パソコンでのメールのやりとりになりますね。」
太郎
「パソコンか……ネカフェとかあるんでしたっけ。」
ガミジン
「ええ、ネットカフェにもあります。現在パソコンが置いてあるところはネットカフェと各国の指導者のところだけですね。」
「当初は一般家庭への普及を目指していたのですが……ある事件が起きたことで時期不相応と判断されました。」
太郎
「ある事件?」
ガミジン
「ネットカフェ利用者から逮捕者が出てしまいまして……。」
太郎
「……!?」
ガミジン
「詳しい話は割愛しますが『正しい使い方』を教えられる、その環境が整うまでは無理に普及させないことになりました。」
太郎
「正しくない使い方したのかぁ。犯罪予告とかですかね?」
ガミジン
「事件当時は温厚なサハギンたちも珍しく騒いでいたので相当のことをやらかしたんじゃないかと……。」

うん……まぁわからないでもない。インターネット普及を邪魔されたら嫌だろう、現代人の感覚なら。
ともかくこれは重大な事件のようだしあまり深入りしないでおこう。

太郎
「それで……プライベートなメールのやりとりでチクるんですね?」
ガミジン
「はい。あくまで内政干渉ではなく旅行者のぼやきを聞かせる形で。」

ノリは軽いがこれも配慮の結果の手段なのだろう。よくやってるなぁ。

ガミジン
「私からのお話はこんなもんですかねぇ。質問等無いようなら出発しましょうか。」
太郎
「そうですね、遅くなっちゃうと良くないし……。」
ガミジン
「ゴンザレス、行きますよ。」
ゴンザレス
「カタカタカタカタ」

ゴンザレスがスケッチブックを肋骨に挟んでいる。それ落ちないの?

マスター
「いってらっしゃいませ、ガミジン様。太郎君も達者でな。」
太郎
「あっ、そうだ。」
「名前教えてくれよ、今まで『マスター』としか呼んでなかったからさ。」
マスター
「かまわないが一つ条件がある。」

名前教えるのに条件付けるのか……。

マスター
「旅先でこの店を宣伝してもらおうか。」
太郎
「商魂逞しいなぁ。了解。」

そして気になるマスターの名前だが……。

マスター
「次郎だ。」
ゴンザレス
「!?」
太郎
「嘘ぉ!?」
マスター
「嘘だよ。」

ここでボケをかましてくるかなぁ……。
本当だったらそれはそれで三郎を辞退したゴンザレスがかわいそうだが……。

マスター
「我々サハギンは生まれたときに識別番号を振られる。」
「そして『個人名』が特別必要にならない限りは番号で呼び合う形をとっている。」
太郎
「それでいいのかサハギン……。」
ガミジン
「ある意味でフォルネウスさんの個性が出てますね。」
太郎
「それで、マスターの名前は?」
マスター
「紅鮭187号。」
太郎
「……。」
ゴンザレス
「……。」
ガミジン
「おぉ!意外と古参なのですね!」

微妙な空気になりかけたところをガミジンさんが軌道修正。なんて頼りになる魔王だ!見た目と役割は一致していないが。

ガミジン
「ゴエティア建国直後は魔王城等の施設を作るために多数のサハギンが生み出されたと聞きます。」
マスター
「ええ。初期の魔王軍では我々が主な労働力でしたからね。」
太郎
「じゃあ3桁ナンバーって結構レアなのか?」
マスター
「そうだよ。ホレ、崇めよ。」
太郎
「崇めないよ!」

労働力として多数のサハギンが働いていた……。魔王城もガタイのいいサハギンたちが土木作業で造ったというわけか。
全く想像できない。

太郎
「ツッコミばかりしていると出発が遅れそうだから話を戻す。」
マスター
「うむ。」
太郎
「店の宣伝だが別にマスターの名前を出す必要は無いよね。」
マスター
「当然だ。店主のキャラで売っているような店だとは思われたくない。」

宣言したばかりだ。ツッコミたいのを我慢して話を進める。

太郎
「『面白い酒が常備されている店』とだけ宣伝しておく。」
マスター
「面白いのか?うちの酒は別に普通だと思うが……。」
太郎
「人間に宣伝するときは人間基準で言うからね?」
マスター
「そうか。ならそこは任せた。」
太郎
「よしじゃああとは店の名前を再確認しよう。」

今まで通い詰めていたがこの店の名前は知らないという事実。

ガミジン
「実は私、この店の名前をまだ聞いていないんですよ。」

あんたもか。

マスター
「……どなたの案内でここに?」
ガミジン
「クラーケンの方が案内してくれたのですが勢い良く喋りっ放しで聞きそびれてしまいました。」

店長の同族か……。客引きトークでもしていたのだろうなぁ。

ガミジン
「太郎さんは何度も来ていると伺っていますが……」
太郎
「実は俺も知らないんですよ。」
マスター
「……なぜだ?」
太郎
「表の看板の文字が古代文字っぽくて読めない。」

ちゃんと現地の他の文字は読めるのにこれだけは読めないのだ……。
別な言語ではなく単純に文字が下手なだけならばゴンザレスに書き直してもらうべきだと思う。

マスターは閉口しているが本題を続ける。

太郎
「それで、店の名前は?」
マスター
「『ルルイエ』だ。」
ガミジン
「なんか可愛らしい響きですね。」
太郎
「いや、なんでだろう何か禍々しい感じもする。」
マスター
「……。」
太郎
「……とにかくこの店名で宣伝しておくからな。」
マスター
「ああ、頼んだ。」

気になっていたことも聞き出せたしそろそろ退店しよう……。

別れの挨拶を交わし、店を出た。
強烈過ぎる店だったがいざ去るとなると名残惜しいな。

ガミジン
「駅までは徒歩ですねぇ。」
太郎
「そうですね。」
ガミジン
「良い機会ですから聖書を朗読しながら歩きましょうか。」
太郎
「ファッ!?」
ガミジン
「冗談ですよ。そんなことをしては喋れないゴンザレスが浮いてしまいますからね。」
太郎
「理由そこなんだ……。」

ガミジンさんのジョークにも慣れるのに時間がかかりそうである。

ガミジン
「王都側の駅に検問がありますのでパスポートはそこで提示してくださいね。」
太郎
「了解です。ところでゴンザレスはパスポート無いですけど大丈夫なんですかね……。」
ガミジン
「私が同伴しているので問題無いですよ。眷属は魔王にとって体の一部みたいなものですから。」
「とはいえお目溢ししてもらえるのは一体までですね。たくさん連れて行くのはいろいろとよろしくない。」

人間の街に魔物を連れて魔王がやってくる。構図としては確かによろしくない。
それでも一体までなら大丈夫というのは上手く付き合えていると考えるべきか。

クソガキ1
「げぇっ!ネクロマンサーだっ!!」
クソガキ2
「マジだ!チョーヤベー!!!逃げろー!」
太郎
「……。」
ゴンザレス
「……。」

通りを歩いていると子供と遭遇。
煽って逃げる。典型的なクソガキである。
普通の服装をしているつもりだったのだが……隣にゴンザレスが居ればどんな服装でもネクロマンサーに見えるようである。
叱ってやりたい衝動を堪え、先を急ぐ。時間は貴重なのだ。

駅に到着したが……駅構内がなんだか騒がしいぞ?

ガミジン
「あれは……王立騎士団の方々じゃないですか。何かあったんでしょうかねぇ……。」

鎧を着こんだ人間が十数人。物々しい雰囲気である。
それだけではない。鎧で地肌こそ見えないが明らかに獣人のシルエットの奴が混じっている。

ガミジン
「リザードマンも居ますね。ギルドの傭兵でしょうか。」
太郎
「サハギン程ではないにしろやっぱりデカいんですねリザードマンって。」

話題に出した直後にサハギンの姿も確認、しかしこいつだけ鎧甲冑を着ていない。
作業服のような服装に何かの機材を携えている。
気になったので声をかけてみることにした。

太郎
「すいませーん、何かあったんですかー?」
チンアナゴ顔のサハギン
「ん?誰だ君……あっ、ガミジン様!」
ガミジン
「ああ、はい。気になったものでつい……。」
チンアナゴ
「そちらの青年は?」
ガミジン
「彼が太郎さんです。」
チンアナゴ
「ああ、例の。」
ガミジン
「はい。」

やはりというべきか、サハギンには俺の名前は知れ渡っているようである。

チンアナゴ
「我々はある害獣の捕獲に来ていまして……。」
ガミジン
「それにしては大所帯ですね。危険なのが出ましたか。」
チンアナゴ
「そうなんですよ。危険かつ珍しいのでなんとしても生け捕りにしたいということになりましてね。」
太郎
「気になるな……。一体何が出たんです?」
チンアナゴ
「河童です。」
太郎
「河童!?」
ガミジン
「実在……してたんですね。」

本当に何でも居るんだな……。しかしガミジンさんの反応を見るに新種なのだろうか。

チンアナゴ
「ええ、被害だけは以前から確認されていたんですが……ようやく写真に撮られたことで捕獲が決定したんですよ。」

チンアナゴが写真を取り出す。

太郎
「なんだこの生物……。」

写真に写っていたのは出来の悪い合成にも見える奇怪な姿だった。
頭部はパキケファロサウルス、体は立ち上がったリクガメ、首回りと尻尾の付け根に鬣らしき物が生えている。
確かに見ようによっては河童に見える……のか?
それより気になる点だがこいつは本当に危険なのだろうか?
パキケファロサウルスの武器である頭突き、その突進力は亀ボディによって殺されている。
そしてこの形状では頭を甲羅に引っ込めることができない。よって防御力は亀未満だ。
双方の長所が見事に機能していないという奇跡的なデザインである。

太郎
「どんな被害が出ているんですか?」
チンアナゴ
「家畜を沼に引き摺り込んで嬲り殺したと報告にはあります。」
太郎
「顔に似合わずめちゃくちゃ凶暴じゃないか……。」
ガミジン
「肉食って顔でもないですよねぇ。」
チンアナゴ
「縄張りの防衛かと。」

家畜を殺す程度の戦闘力はあるようだ。無論家畜の近くに人が居れば人が襲われる可能性もある。

ガミジン
「物凄く危険なのはわかりました。捕獲作戦、よろしく頼みます。」
チンアナゴ
「お任せください。準備は万全です。」

そう言ってチンアナゴが見せてきた物は……。
先端に胡瓜の付いた銃である。

太郎
「やはり河童と言えば胡瓜。」
チンアナゴ
「ただの胡瓜と思うなかれ、先端をよく見たまえ。」

胡瓜の先端に金属の棘のようなものが見える。

チンアナゴ
「胡瓜に偽装したテーザー銃だ。」
太郎
「えっ、何それは……。」
チンアナゴ
「先端の針から電流が流れる。」
太郎
「電気胡瓜銃……!?」

胡瓜が要るのかというツッコミはさておき、謎過ぎるアイテムだがこれでうまくいくのだろうか……正直心配である。

チンアナゴ
「作戦開始時刻が迫っておりますので、我々はこれで。」
ガミジン
「はい、成功を祈っておりますよ。」

チンアナゴと鎧甲冑の集団は電車に乗っていった。
彼らが乗り込んだ車両をよく見ると一般向けではないらしい。確かに外見が多少異なっている。

一足先に出発した河童捕獲チームを見送り、自分たちは別の車両に乗り込む。
俺が適当な席に座ると右側にガミジンさん、左側にゴンザレスが座った。
正面の窓に反射する自分の姿、死神と怨霊武者に両サイドを抑えられた構図が写る。絵面だけ見るととても不吉である。

アナウンス
「まもなく出発いたします。」
ゴンザレス
「……(ペンを動かす)」

ゴンザレスが何かを書き始める。何かあるなら出発前に頼むぞ。

「『初めての電車、記念写真撮りたい。』」
ガミジン
「写真ですか、いいですねぇ撮っておきましょうか。」
太郎
「絶対心霊写真撮れちゃうよぉ……。」

ガミジンさんがどこからかインスタントカメラを持ち出す。
両脇から寄るガミジンさんとゴンザレス。二人は顔が骨の為表情は変わらない。俺だけ引きつった笑顔……。
カメラのシャッターが切られると同時に電車は走り出した。
こうしていろんな意味で忘れがたい写真とともに俺の旅は始まったのである。
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