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第20話 小麦粉の調理の2
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15分ほど時間が経ったので、少し放置した生地を取り出した。
「よし、それでは特別な道具を作ろう!」
本当はビニールやラップがあればそれでいい。
しかし、この世界にはそんなものはない。無ければ作ればいいのだが、あいにく、フォルテにはその知識がなかった。
なので代わりに作るのは鉄の靴だ。
この表現はどうかとも思うが、薄い鉄で足を覆うだけでなんの細工もなく、底に滑り止めもない靴としては欠陥のある靴だ。
その靴に小麦粉をまぶして生地とくっつかないようにしたら、それで生地を踏みつける。
これは苦肉の策だ。綺麗に洗えば足で踏んでも大丈夫と言う人も居るだろうが、この世界の衛生面で足で直接は気になる。
それに国王の口に入る食事だ。料理人達も直接足で踏むのは気を使うであろう。
だから調理器として、洗える鉄の靴を作ってしまったのだ。
「これを履いて生地を踏んでいくぞ!」
「え!足で踏むんですか?」
「そうだ。これはおいしくする為の調理工程だからな、しっかり踏むんだぞ?」
「わ、わかりました」
フォルテに言われて、料理長は鉄の靴を履いてしっかりと生地を踏み伸ばしていく。
フォルテも同じように自分の生地を踏み伸ばし、伸ばしたら生地を四つ折りにしてもう一度踏む。
この工程を10回繰り返す。
この足で踏む工程をしっかりしないと、あの喉越しと食感がうまく出ないのだ。
フォルテは平気そうであるが、料理長は慣れない調理工程で、額に汗が滲んでいる。
足踏み工程が終わったら、また生地を寝かせる。
今度は1時間だ。
「このまま1時間放置だ。その間に調理の下拵えをするぞ!」
「はい!」
今回は3つの調理法を教えるつもりである。
温、冷、焼だ。
まずは時間のかかる《温》からだ。
厨房の大きい寸胴鍋に水をたっぷりと入れる。
「本当は魚で出汁が取れれば良いんだが、今回は無いからな。機会があれば魚での調理法を教えてやる。魚で出汁を取ればこれは100倍美味くなるんだがな」
「100倍ですか?」
「そうだ。海の魚を特殊な方法で乾燥させる製法で作ったものから出汁を取るんだがな、今回は無いから代用するしかない」
そう言ってフォルテが取り出したのはキノコだ。見た目と香りが椎茸であったので、これをたくさん買い込んだ。
「コウタケですか?」
「本来はこれを干して味を凝縮するのだがな、今回はズルをするぞ!」
フォルテは錬金術を使って椎茸の水分を飛ばして干し椎茸を作った。
それを小さな鍋に敷き詰めで被るくらいの水を注いだ。
「本来は、これを24時間置くのだがな」
フォルテは鍋に蓋をしながら話した。
「24時間ですか!」
料理長はその言葉にとても驚いた。
「ああ、今回は夕食に間に合わせる為に1時間半で出汁を取るが、24時間置いたものの方が格段に美味くなる」
「出汁とは、奥深いのですね……」
そもそも、この世界に出汁の概念は無いのだろう。
これをきっかけに、広まっていく事を願うばかりだ。
「さて、椎茸は置いておいてだ」
「シイタケですか?」
「コウタケだ、なんでもいい。次は鍋ににくをいれるぞ!」
大きな寸胴鍋にグツグツと沸いたお湯の中に、肉屋で買い込んだ豚こま肉を半分ドバドバと入れた。
「よし、頼んだものはできているか?」
「はい!切り終えました!」
他の料理人に、玉ねぎをざく切りにするのを頼んでおいたので、それも一緒に鍋へと放り込む。
「これも出汁だ。豚とタマネギの出汁……ケミーニア」
「あ、はい。ブーモとオニーの出汁ですね!」
「だ!」
この世界の食材の名前が把握できないが、それはケミーニアに通訳を頼もうと思った。
「ここからはズルをするが、これは後で作り方を教えてやる。一年以上かかるが作れるようになれ。それまでの分は作っておいてやる」
「「「「わ、分かりました!」」」」
料理人達は凄みを増したフォルテの言葉に真剣に返事をした。
作るのは2種類の調味料。
勿論一つは醤油だ。買い込んだ枝豆に近い豆を使って錬金術で作る。
もう一つはウスターソースだ。
買い込んだ数々の野菜とハーブを使ってこれも錬金術でズルをする。
時間をかけて作るのは料理人に任せよう。
将来は、錬金術を使わなくても、日本のように簡単に買えるようになるのが理想だ。
国王に言って専門の役職を作らせるのもありかもしれん。
などとフォルテが考えながら作った二つの調理法は容器に入れられているが、その見た目は2つとも黒いので、料理人もケミーニアも不思議な目でじっと見ている。
「フォルテ様、この黒い汁が?」
「そうだ。ウスターソースと醤油だ。少し舐めてみるか?」
フォルテの言葉に料理人達は頷いたので、フォルテは料理人達の手の甲に一滴ずつ醤油を垂らした。
「しょっぱい!」「いっ」「なんだこれ!」
料理人達の反応は様々だが、フォルテは笑いながら今度はウスターソースを試食させた。
「辛い!」「いや、でも」「こっちは俺好きかも」
「フォルテ様、見た目は同じようでも全然味が違うのですね」
試食をした料理長は、真剣な表情でフォルテに意見を言った。
「そうだ。どちらも複雑な味だろう? 塩だけじゃなく、こうして他の調味料を用意しておけば料理の幅は無限に広がっていく。 《料理のさしすせそ》と言うものがある。これも後でゆっくりと教えてやろう」
フォルテの解説に、料理人達は目を輝かせて頷いた。
その後は、ニンジン、キャベツ、タマネギなどを切ったりしているうちに、1時間が過ぎ、生地の採取工程に映る時間となった。
「生地に移る前に、出汁だ!」
1時間ほど水につけた干しシイタケを、一度取り出した後に刻んでもう一度鍋に戻す。
これをする事で早めに出汁が取れるようになるのだ。
「よし、これで出汁は放置だ。生地を取り出そうか」
踏み伸ばして1時間寝かせた生地の最終工程が始まる。
そうだ、あれを作らなければ!
フォルテは置いてあった薪を使って2本の棒を作り出すのであった。
「よし、それでは特別な道具を作ろう!」
本当はビニールやラップがあればそれでいい。
しかし、この世界にはそんなものはない。無ければ作ればいいのだが、あいにく、フォルテにはその知識がなかった。
なので代わりに作るのは鉄の靴だ。
この表現はどうかとも思うが、薄い鉄で足を覆うだけでなんの細工もなく、底に滑り止めもない靴としては欠陥のある靴だ。
その靴に小麦粉をまぶして生地とくっつかないようにしたら、それで生地を踏みつける。
これは苦肉の策だ。綺麗に洗えば足で踏んでも大丈夫と言う人も居るだろうが、この世界の衛生面で足で直接は気になる。
それに国王の口に入る食事だ。料理人達も直接足で踏むのは気を使うであろう。
だから調理器として、洗える鉄の靴を作ってしまったのだ。
「これを履いて生地を踏んでいくぞ!」
「え!足で踏むんですか?」
「そうだ。これはおいしくする為の調理工程だからな、しっかり踏むんだぞ?」
「わ、わかりました」
フォルテに言われて、料理長は鉄の靴を履いてしっかりと生地を踏み伸ばしていく。
フォルテも同じように自分の生地を踏み伸ばし、伸ばしたら生地を四つ折りにしてもう一度踏む。
この工程を10回繰り返す。
この足で踏む工程をしっかりしないと、あの喉越しと食感がうまく出ないのだ。
フォルテは平気そうであるが、料理長は慣れない調理工程で、額に汗が滲んでいる。
足踏み工程が終わったら、また生地を寝かせる。
今度は1時間だ。
「このまま1時間放置だ。その間に調理の下拵えをするぞ!」
「はい!」
今回は3つの調理法を教えるつもりである。
温、冷、焼だ。
まずは時間のかかる《温》からだ。
厨房の大きい寸胴鍋に水をたっぷりと入れる。
「本当は魚で出汁が取れれば良いんだが、今回は無いからな。機会があれば魚での調理法を教えてやる。魚で出汁を取ればこれは100倍美味くなるんだがな」
「100倍ですか?」
「そうだ。海の魚を特殊な方法で乾燥させる製法で作ったものから出汁を取るんだがな、今回は無いから代用するしかない」
そう言ってフォルテが取り出したのはキノコだ。見た目と香りが椎茸であったので、これをたくさん買い込んだ。
「コウタケですか?」
「本来はこれを干して味を凝縮するのだがな、今回はズルをするぞ!」
フォルテは錬金術を使って椎茸の水分を飛ばして干し椎茸を作った。
それを小さな鍋に敷き詰めで被るくらいの水を注いだ。
「本来は、これを24時間置くのだがな」
フォルテは鍋に蓋をしながら話した。
「24時間ですか!」
料理長はその言葉にとても驚いた。
「ああ、今回は夕食に間に合わせる為に1時間半で出汁を取るが、24時間置いたものの方が格段に美味くなる」
「出汁とは、奥深いのですね……」
そもそも、この世界に出汁の概念は無いのだろう。
これをきっかけに、広まっていく事を願うばかりだ。
「さて、椎茸は置いておいてだ」
「シイタケですか?」
「コウタケだ、なんでもいい。次は鍋ににくをいれるぞ!」
大きな寸胴鍋にグツグツと沸いたお湯の中に、肉屋で買い込んだ豚こま肉を半分ドバドバと入れた。
「よし、頼んだものはできているか?」
「はい!切り終えました!」
他の料理人に、玉ねぎをざく切りにするのを頼んでおいたので、それも一緒に鍋へと放り込む。
「これも出汁だ。豚とタマネギの出汁……ケミーニア」
「あ、はい。ブーモとオニーの出汁ですね!」
「だ!」
この世界の食材の名前が把握できないが、それはケミーニアに通訳を頼もうと思った。
「ここからはズルをするが、これは後で作り方を教えてやる。一年以上かかるが作れるようになれ。それまでの分は作っておいてやる」
「「「「わ、分かりました!」」」」
料理人達は凄みを増したフォルテの言葉に真剣に返事をした。
作るのは2種類の調味料。
勿論一つは醤油だ。買い込んだ枝豆に近い豆を使って錬金術で作る。
もう一つはウスターソースだ。
買い込んだ数々の野菜とハーブを使ってこれも錬金術でズルをする。
時間をかけて作るのは料理人に任せよう。
将来は、錬金術を使わなくても、日本のように簡単に買えるようになるのが理想だ。
国王に言って専門の役職を作らせるのもありかもしれん。
などとフォルテが考えながら作った二つの調理法は容器に入れられているが、その見た目は2つとも黒いので、料理人もケミーニアも不思議な目でじっと見ている。
「フォルテ様、この黒い汁が?」
「そうだ。ウスターソースと醤油だ。少し舐めてみるか?」
フォルテの言葉に料理人達は頷いたので、フォルテは料理人達の手の甲に一滴ずつ醤油を垂らした。
「しょっぱい!」「いっ」「なんだこれ!」
料理人達の反応は様々だが、フォルテは笑いながら今度はウスターソースを試食させた。
「辛い!」「いや、でも」「こっちは俺好きかも」
「フォルテ様、見た目は同じようでも全然味が違うのですね」
試食をした料理長は、真剣な表情でフォルテに意見を言った。
「そうだ。どちらも複雑な味だろう? 塩だけじゃなく、こうして他の調味料を用意しておけば料理の幅は無限に広がっていく。 《料理のさしすせそ》と言うものがある。これも後でゆっくりと教えてやろう」
フォルテの解説に、料理人達は目を輝かせて頷いた。
その後は、ニンジン、キャベツ、タマネギなどを切ったりしているうちに、1時間が過ぎ、生地の採取工程に映る時間となった。
「生地に移る前に、出汁だ!」
1時間ほど水につけた干しシイタケを、一度取り出した後に刻んでもう一度鍋に戻す。
これをする事で早めに出汁が取れるようになるのだ。
「よし、これで出汁は放置だ。生地を取り出そうか」
踏み伸ばして1時間寝かせた生地の最終工程が始まる。
そうだ、あれを作らなければ!
フォルテは置いてあった薪を使って2本の棒を作り出すのであった。
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