食欲の錬金術師〜草しか食べれない転生草食エルフは錬金術で体をいじって食の旅に出る〜

シュガースプーン。

文字の大きさ
30 / 73

第30話 間食

しおりを挟む
「ピザパーティーですか?」

「そうだ。そうだな、パンを進化させて目が飛び出るほど美味く食べる方法だ」

「パンを、進化ですか!」

 この世界では、惣菜パンなど見かけない。
 バゲットパンに近い硬いパン、貴族に少し柔らかいパンがある位だ。
 コース料理のように、肉と共に食べる付け合わせのような存在である。

「そうだな、まだ晩御飯には時間があるし、小腹が空いたから軽く賄いつまもうか」

 まだ昼過ぎで、晩御飯まで時間があるので、昼食として軽く食べようとフォルテは提案した。

「では、食堂の準備を!」

「そんな仰々しいもんじゃない。そうだな、国王達が食べたがったらここにくる様に伝えろ。立ったまま簡単につまめる物にしよう」

 フォルテの言葉に、下働きがそれを伝えに出て行った。

 料理人達に、ピザに使う具を切ってもらっている間に、茹でたじゃがいもとミンチを調理していく。

 フォルテは錬金術でマッシャーを作り、副料理長に潰す様に指示して、その間にヤコブにミンチを塩胡椒して炒めさせる。

 潰したじゃがいもに、炒めたミンチを混ぜて、塩胡椒で更に味を整えたら、楕円で平たく形を整えたらした準備を整えたらした準備は完了だ。

「フォルテ様、これでおわりですか?」

「いや、これは下ごしらえだ。食べる直前にパン粉をつけて揚げる」

「パン粉?揚げる?」

 そう言えば、以前パン粉を使ったときももったいないと言われたな。などと考えながら、フォルテは「後のお楽しみだ」と言って笑った。

 話を聞いたのか、真っ先に飛んできたのはケミーニアであった。

 食事を知ってからのケミーニアは、食い意地が張っている。

 それでも、仕事をしている時は知的なイメージを保っているのが凄い所である。

「フォルテ様!また美味しいものが食べられると聞いて来ました!」

「ケミーニア、まだできていないからちょっと待ってろ」

「分かりました!」

 フォルテは下働きに頼んでバター、塩、刻みニンニク、刻みパセリを混ぜてもらった物をタップリとパンに塗ってオープントレイに並べていく。

 フォルテの真似をしてヤコブや副料理長も同じように塗ったので、すぐに塗り終わった。

 後はオーブンに入れるだけ。簡単ガーリックトーストだ。

 焼き目がつくまで数分、ニンニクとバターのいい香りが厨房に広がった頃、国王達も厨房にやって来た。

「ちょうどいい時にやって来たじゃないか!できたでだから火傷するなよ?」

 フォルテがオーブンからオーブントレイを取り出して料理台の上に置いた。

「フォルテ様、賄いというのはパンなのですか?」

 国王のガッカリした声色の質問が飛んだ。
 国王であってもパンと言うのは味気ない付け合わせなのだろう。

「まあ食べてみろよ。ガーリックトーストだ」

「はい!」

 初めに勢いよく手を伸ばしたのはケミーニアだった。
 パンさえ食べて来なかった彼女にとって、味気ないイメージなどは無く、フォルテが作った美味しい食べ物であった。

「熱い!」

「慌てるな!焼きたてだぞ?こうやって食べるんだ」

 フォルテはケミーニアに手本を見せるようにパンを左右の手で熱くないように転がしながらガーリックトーストに齧り付いた。

 ほのかな塩味にニンニクとバジルの香り。
 タップリと塗ったバターが硬いパンをしっとりとさせていて口の中にニンニクのパンチの効いた味が広がる。

 ケミーニアも「あつ、あつ」と両手を移動させながらトーストに齧り付いた。
 そして目を輝かせて固まった。

「フォルテ様、とても美味しいです!」

 飲み込んだ後の満面の笑みでの美味しいです! 馬鹿の一つ覚えの様に発せられる言葉だが、心からの言葉だからこそ、国王達はその表情に喉を鳴らし、自分もといったようにガーリックトーストを口に運んだ。

 この日は、この世界でのパンに対しての常識が変わる日になるだろう。

「国王よ、これは前菜だ。夕食はこれの何倍も美味いパン、ピザなんだからな!」

 フォルテの宣言に、国王は子供のように「楽しみです」と笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...