食欲の錬金術師〜草しか食べれない転生草食エルフは錬金術で体をいじって食の旅に出る〜

シュガースプーン。

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第38話 ジャガイモ

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 領主に話を通して荒れた土地でもいいのならと街の外れにある土地をもらった。

 ほぼ街の外と言った様子で草まみれの荒れた土地だ。

 しかも、偶然にも毒イモが捨てられている土地のようで、子供達がせっせと草の中から毒イモを拾って来ていた。

「おーい、この土地を使う許可がでたから取れた毒イモをコッチに集めろ」

 フォルテの号令を聞いて子供達が集めた芋をフォルテの前に山盛りにした。

「それじゃ、これから毒を取り除くぞ。その前にプレゼントをやろう」

 フォルテが子供達にある物を配ると、子供達はそれを受け取って顔を顰めた。

「おい、俺達はこんな物じゃなくて食物が欲しいんだぞ!」

 子供達を代表してレイアが文句を言った。

「馬鹿野郎、これがなけりゃ毒が取れないんだから感謝しろ? 見ていろ、こうやって使うんだ」

 フォルテはレイアからの苦情を笑って切り捨てると、子供達に配ったものと同じ道具を使ってジャガイモの目をほじくる所を見せる。

 フォルテが配った物はスプーンであった。

 包丁など刃物を渡せば後で無用なトラブルになる可能性もあるので刃のないスプーンである。

「このスプーンを使って毒イモの芽を取っていくんだ。こうやってな、小さい目は柄の部分、大きい所は掬う部分でほじくるんだぞ?」

 渡したスプーンは金属なので子供の力でも芽をほじくることができる。

「本当にこれだけで大丈夫なのかよ?」

 レイアが文句を言いながらも一生懸命に芽をほじくり取っているのでフォルテは笑って頷いた。

 子供達が芽を取っている間にフォルテは空き地の草を除去しておくことにする。

 草を刈り取って、錬金術で水分を抜いておく。
 この草は後で使おうと思っているからだ。

 その後は、地面を掘り返したら準備は完了だ。

 フォルテは芽を取り除いた毒イモを、水で濡らした葉っぱに包んで先ほど掘った穴に埋めるように指示した。

「な、お前、ここまでしたのに捨てちまうのかよ?」

「違う、これは調理だ。幸せな為の準備だと思え」

 フォルテの言葉には力がこもっており、その威圧感で、レイアは何も言えなくなってしまった。

「大丈夫ですよ。フォルテ様は奇想天外な方法で国王陛下の舌をうねらせた方ですから」

 ヤコブがニコニコと笑って言う通りに濡らした葉っぱで包んで穴の中に毒イモを入れていく。

 入れ終わったその上に土を被せて空き地にあった木と水分を抜いた草を被せた。

「火種の魔法が使えるやつはいるか?」

 フォルテの質問に何人かが手を挙げる。
 火種の魔法はライター程度の火しか起こせないので、魔法使いとして認められないが、この状況においては1番必要な人材であった。

「恥ずかしがることはない。お前達の火種の魔法がみんなの腹を満たすんだ。代表して1人火をつけてみろ」

 子供の1人が枯れ草に火をつけると気に燃え移り、焚き火が燃え始めた。

「これが消えたら食べ頃だ。それまでに、これからの為の準備をするぞ!」

 焚き火が消えるまでの間、ヤコブに言って避けさせておいた小さな毒イモを空き地の空いている部分に畑として植えていく。

 毒イモ、いやジャガイモは痩せた土地でもよく育つのだから、子供達の未来の為に食べ尽くすのではなく増やす方法も教えておかなければいけない。

 耕して植えていく間に、まさかの自生したサツマイモを掘り当てフォルテが踊り出すほどに歓喜するなど色々とありながら、荒れた土地をジャガイモ畑にする作業は進んでいく。

 勿論、フォルテの錬金術を併用するので早い早い。

 種芋を植え終わった辺りで、焚き火の火が消えて料理が完成した。

「よし、掘り返して食べるぞ!」

 まだ地面が暑いので木を錬金術でスコップにして掘り返して、出てきた芋を子供達に配っていく。

「これが蒸し焼き芋だ。この今は、毒イモなんて言ったら失礼なくらい美味い。美味いと思ったらこれからはジャガイモと言うように!」

 フォルテの食べていいとの言葉に、子供達は熱々の蒸し芋に齧り付いた。

 齧った後からは湯気がたちのぼり、熱くて火傷しないようにハフハフとする口からも白い息が出てくる。

 何にも味付けしていないが、盗んだ野菜や毒イモと呼ばれた芽の生えたジャガイモを生で食べる事しかしていなかった子供達には、蒸しただけの芋でも極上の味であった。

 目の前のレイアも涙を流しながら食べている。

「どうだ美味いだろ?我慢した甲斐があっただろう?」

「ゔん…美味じいよ」

 あっという間に食べ終わったレイアにフォルテはもう一つ蒸し芋を渡して頭を撫でた。

「お前達は家はあるのか?」

 落ち着いてきた頃にフォルテはレイアに質問をした。
 腹は満ちただろうが、寝る場所があるのか心配だったからだ。

「俺以外はみんな教会が寝床さ。俺はその辺で寝るところを探すさ」

「教会があるのか? ならそこでは飯は提供されないのか?」

「されないよ。孤児を寝泊まりさせれば寄付金が貰えるから納屋を貸し出してるだけさ。でも、私はあそこに行けないんだ」

 レイアの話を聞いて、訳ありだと察したフォルテは、その話を詳しく聞きたくなった。

「よし、今日の宿は俺が提供してやろう。だからその話を詳しく話せ!」

「な!」

 レイアはフォルテの言葉に自分の体を抱きしめるような、身を守る様な反応をした。

「俺は男にもガキにも興味がない。ほら、行くぞ!」

 周りの子供達は腹が満ちた後に、フォルテが明日もここに集まる様に言って帰って行った後なので、残っているのはフォルテとヤコブとレイアの3人である。

 レイアはフォルテに手を引かれ、若干引きずられる様にしてフォルテと行動を共にするのであった。


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