食欲の錬金術師〜草しか食べれない転生草食エルフは錬金術で体をいじって食の旅に出る〜

シュガースプーン。

文字の大きさ
40 / 73

第40話 待ち遠しい晩御飯

しおりを挟む
 風呂から出たフォルテとレイアが部屋に戻ると、ヤコブが驚きに固まった。

「あら? その子、女性だったのですね」

 あっけらかんとした様子で話すケミーニアの言葉を聞いて、レイアはたまらず叫んだ。

「なんだよ!全員気づいてなかったのかよ!」

 レイアは孤児で栄養不足で発育が悪く、背も低ければ、体型も女性らしくない。

 本人は14歳だと言っているが、見た目10歳程度の子供のように見える。

 かろうじて、髪の長さが肩ほどまであるが、風呂に入るまでは帽子の中に髪をしまっていたし、フォルテとしては、孤児なのだから髪を切る金もないから伸びていても気にしていなかった。

 それに、ケミーニアよろしくエルフは性欲というものが薄い。
 寿命が長く早く子孫を残そうという気にならない為、ケミーニアとしては、フォルテが少女こどもと風呂に入っていようと気にするような事ではなかった。

 フォルテとしては、前世の記憶がある為人並みに性欲はあるが、エルフである為に意識しなければ表に出る事は無いし、それよりも有り余る食欲の方にキャパが振り分けられている。

 唯一のヤコブが固まっているのはレイアが少女であった衝撃と、フォルテと一緒に風呂に入ってきたと言う事実に今後の事を考えているのだ。

 貴族では無いものの、成人前から料理人見習いとして貴族社会の中で生きてきたヤコブは、女性が裸体を晒すのは伴侶になる者で、結婚前に見た場合にはそれなりの責任を取らなければいけないというのが常識であった。

 身分の高い者なら生涯の面倒を見る事。低い者なら打首。

「ヤコブ、固まってないで早く汚れを落としてきなさい」

 ケミーニアの言葉に、ヤコブは、考える事をやめて頭を冷やす為にも「はい」とだけ返事をして風呂に向かっていった。

 唯一の常識人であったヤコブのいなくなった部屋では、レイアの事はおいておいて、ケミーニアがフォルテに話をしだした。

「フォルテ様、食事を期待していいと言っていましたがどんな物が出るでしょうか?」

「そうだな。今まで平民の食べ物は不味い串焼きしか食べた事がなかったから分からんが、自信があるようだったから楽しみだな」

 肉食エルフ2人は、レイアが女だった事実よりも夕食のメニューの方が気になるようである。

 2人の様子を見て、怒ることに馬鹿馬鹿しくなったのか、レイアはため息を吐いて2人に質問をした。

「なあ、それって、もしかして俺も食べれんのか?」

「当たり前だろう。お前は栄養が足りていないし沢山食べろ!美味いものを食う事は行きたいと思う活力にかわる」

「なあ、それってやっぱり昼のジャガイモより美味いのか?」

 晩御飯に興味を持ったレイアは、フォルテに色々と質問する中、ケミーニアはめざとく昼のジャガイモと言う単語に尖った耳をピクリと動かした。

「あれはただ蒸し焼きにしただけだ。ちゃんと調理したものには敵わない。ジャガイモも調理をすればもっと美味しくなるんだ」

「あれよりも!」

 レイアは想像ができずに言葉を失ってしまった。

 その後、ヤコブが部屋に戻って来て、ケミーニアは晩御飯が待ち遠しくなって、足早に風呂に入りに行った。

 戻って来るのは、子供が烏の行水と怒られる程に早かったが、しっかりと全身綺麗に洗ってきていたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...