食欲の錬金術師〜草しか食べれない転生草食エルフは錬金術で体をいじって食の旅に出る〜

シュガースプーン。

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第67話 シンプル1

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「まずはこの宝の山から食材を引っ張り出さないとな。とりあえず蟹と海老を取り出すぞ!」

「分かりました。フォルテ様、それで蟹と海老とはどれなのでしょうか?」

 フォルテの指示に、ヤコブが疑問の声を上げたので、フォルテはニンマリと笑いながら蟹と伊勢海老を掴み取った。

「コイツらだ!」

 蟹の蜘蛛を思わせる姿と、海老の虫のような足と触覚を見て、ヤコブやレイアは驚き、トリントと組合長達は顔を歪めた。

「あの、本当にそんな海に住む虫を食べるのか?」

 組合長の質問に、フォルテが答えようとしたのを遮って、ケミーニアが答えた。

「当たり前だろう! フォルテ様が言うのだから、美味しいに違いない。毒のある食べ物を食せるようにして、体が弱かった国王を元気にしたその手腕。通常の考えで否定すれば損をするのはお前たちだぞ?」

 ケミーニアの言葉に、組合長がたじろいだ。
 ケミーニアは、食に目覚めてから、今まで否定した食事自体が素晴らしい物だと気付かされた為、語る言葉に力が入ってしまったのだ。

「まあ、別に自分達が食べなくても良いんだ。俺はこの食材達を美味いものとしてアルヴに広める。捨てる食材達が売れるだけでもトリトニアは別の食材を購入して豊かになるだろう? 捨てる物に価値を見出せば、十分な富を築くのは容易い」

 フォルテの前世でも、フォルテが子供の頃よりもう少し昔には、ばんばん捨てられていた物がフォルテが成人する頃には逆に普通の物よりも価値を見出していた。

 例えば牛肉。

 一昔前にはホルモンは捨てる場所であった。

 それがフォルテが糖尿病になる頃には、1番人気の肉と言えば王道はカルビかもしれない。

 しかし、それと二分する程に人気のホルモンであるハラミがおり、ホルモン専門の店までも現れていた。

 牛タンに関しても、昔は捨てる場所の一つで、捨て値に相応しい値段であったが、フォルテが死ぬ前には一端の値段が付く人気者であった。

 他にも、軟骨の唐揚げなんかは、廃棄品が富を生み出す錬金術であったはずだ。

 もちろん、居酒屋の定番となってからは仕入れ値もそれなりにかかるのだろうが。

 だからこそ、フォルテがその美味さを価値を知っているこの目の前にある捨てられる海の幸は宝の山なのだ。

 自分達が食べなくても、食材としての価値がつけばそれは商品なのだ。

 日本以外で、タコを食べない国は多いが、冷凍たこ焼きを商品として日本に輸出している国はある。

 日本でのほとんどの都市では虫は食べないが、海外では食べる国もあるし、近年ではそれをネタとして商品化され、日本の店舗でも置いていたりする。

 否定しなければ、それでいいのだ。


「よし、まずは俺達だけで試食だ! ヤコブ、海水を沸かせ! まずはシンプルに塩茹ででたべるぞ! 俺はその間に蟹酢を作る」

「分かりました!」

「レイアはケミーニアと一緒に蟹と海老を集めておけ」

「「はい!」」

 フォルテ達は、それぞれ行動に移す。

 フォルテはヤコブに大鍋を渡し、自分は普通の鍋で蟹酢をつくる。

 作り方は至って簡単。なのだが、この世界では米を見つけていない為、米酢がない。

 しかし、酢は、酒の酢酸菌による発酵商品だ。

 米からは無理だが、他の酒から代用的に作る事はできる。

 そして、ワインビネガーなどの少し癖のある物よりは、今回はじゃがいも焼酎から作ったお酢で代用した方が良いだろう。

 酢、醤油、みりんが無いので代わりにこれもじゃがいも焼酎と砂糖を多めに使って代用する。

 出汁もまだ鰹節がないので魚粉で代用だ。

 全て混ぜたら、アルコールが飛ぶ程度に煮立たせたら、それだけで完成だ。


 ヤコブも大鍋で海水がぐつぐつと煮えており、レイアとケミーニアも、蟹と海老を大量に集めてくれている。

「それで、フォルテ様、今回はどのような調理を?」

「簡単だ。ヤコブが沸かした海水に、蟹と海老をぶちこむだけだ!」

「え! それだけですか?」

「それだけだ。もちろん手の込んだ料理も教えてやるがな、今回は塩茹での美味さを味わってみろ」

 フォルテの自信満々の言葉に、ヤコブは生唾を飲んだ。

 これまで、肉の焼き具合、魚の焼き方にさえこだわっていたフォルテが、ぶちこむだけと自信満々に言っているのだ。

 それだけ美味い食べ物なのだろう。

 まあ、打ち込む時に、蟹の向きや茹でる時間は指示が飛ぶ事になるのだが、とりあえず、蟹と海老は、フォルテの指示により湯掻かれていくのであった。

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