殺人鬼と綺麗な人形はやがて手を取り涙する

なつみかん

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執行猶予編

人形は残酷な夢を見た-4 ★

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軽く触れただけでもドクドクと激しく波を打ち、ひどく熱く感じる。

男の手の冷たさからは考えられない熱。

ペロっと試しに先端を軽く舌で撫でる。
気持ち悪さに吐き気しか感じない。

「ダメですよ、恭華さん。それでは何日経っても終わりませんよ?」
何時間ではなく、何日と形容したキツネにムッとして、今度は大胆に舌を這わせる。

「もっと音を立てて、お得意でしょう?女を悦ばせるの・・・同じですよ」
モテ男の意地とプライドを見せてくださいね、と他人事のように挑発してくるキツネに、恭華の闘争心に火がつけられた。

絶対、即行でイかせてやると意気込む。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、意気込んだ。目に炎を宿し。

自信もあった。いったい何人の女を満足させたと思っているのだ、と。

裏路地にピチャピチャと湿った水の音だけが響き、はや数時間、男が達する様子は・・・未だにない。

ようやく完勃ちになったのがつい一時間前、もう少しと頑張ってはいるものの、先は長い。

「恭華さん、大変お上手ですねぇ、長くもたせるのが・・・もうはじめて4時間経ちますけど」

「うるへーっ!!」
相手が感じていない訳ではない・・・と思う。

たまに舌に感じる苦味は鈴口から溢れる先走りに違いないのだし。

しかし疲れた。流石に4時間ずっと舌を使っていては舌も顎も疲労困憊だ。

咥えてみようとも思ったが、顎が外れそうなほど、口を開かなければ入らないだろうと、早々に諦めた。

だから舌だけで・・・途中ズルして手で擦ってみたりもしたが・・・頑張っているのだ。

恭華の唾液でグショグショに濡れている男のそれは、グロテスクに赤黒い亀頭を覗かせ上を向いている。

裏筋も、睾丸も、カリも、鈴口も全て責めた。

もう万策尽きた。

恭華の口からも唾液が溢れ、ベトベトに汚している。

「もう・・・いい加減イけよ・・・」
膝立ちしている状態が辛くなり、ペタンと腰を下ろす。

膝で立っていようと太腿の刺し傷には負担がかかるのだ。

「イけませんよ、そんな程度では・・・もう切り落とします?」

キツネの言葉を耳にした瞬間、ゴシゴシと手の甲で口を拭っていた恭華が硬直する。

顔を青くしてブンブンと首を振る。

「や、ま、まだ頑張るから・・・」
涙目で訴える。

「でも僕、そろそろ行かないと・・・それに、それの処理があるんですよ」
と、キツネが指す方向に目をやる。

すっかり視界にも頭の隅にもなかったが、そこには額に穴を開けられた男が目を見開いて倒れていた。

その顔色の悪さと不気味さに、存在を知っていたはずなのに改めてビクッとする。

「も、もう少し・・・」
舌を切られたくない。それに悔しすぎる!

あそこまで言われて男を達させられないままだと沽券に関わる。敗北感しか感じない。

「仕方ありませんねぇ。僕が動きますから、貴方はただ口を開けていてください」

え?と首を傾げる恭華の両肩を掴み上げ、再び膝立ちにさせると、鼻をつまみ持ち上げ、自動的に大きく口を開かせる。

「歯を立てないでくださいね。咽喉をお借りします」
言うや否や、男の性器が恭華の口に突っ込まれる。

「んぐっ!!・・・・」
何の配慮もなく、咽頭まで男の竿が挿れられ、苦しさに嘔吐く。

太すぎるそれは、受け入れるだけで少しの隙間もなくみっちり口内を支配する。
男のものの、半分も収められていないが、既に口内は埋め尽くされている。

呼吸さえ出来ない。それがキツネに伝わったのか、つまんでいた鼻が放された。

ピクピクと鼻が動くほどに大きく酸素を吸い込む。

「では動きますよ」
言葉尻を聞く前に動き出した男の腰が勢いよく打ち付けられる。

「っ!・・・・グッ!!」
咽頭を越え、消化管にまで及ぶ男のストロークに恭華の咽喉が鳴る。

苦しさに涙が溢れ、異物を排出しようとする咽頭が絶え間なく嘔吐反射を起こす。

男の腰が動くたびに口から唾液の泡が溢れ、流れ落ちた涙と交わり地面へ糸を引いて垂れていく。

「・・・ヒュッ・・・カヒュッ・・」
苦しいっ!

いくら鼻が開いていても、肺に繋がる気管が塞がれているため、息ができない。

痙攣に近く震えた咽喉が、恭華の意志とは関係なく、か細くヒューヒューと鳴る。
頭を退けたいが、力強く後頭部を押さえつけている男の手がそれを阻む。

「・・・・カッ・・・ヒッ・・・」
遠慮も加減もなく恍惚とした表情で腰を穿つ男から、ホッという息が漏れる。

「恭華さんは咽喉も最高ですね。腸内と甲乙つけがたい気持ち良さです」
男が上から何かを言っているが、恭華には殆ど聞こえていない。

酸素が肺に送れず、ガクガクと身体全体を痙攣させる。

今や涎だけではなく、鼻からも鼻水が垂れ流れている。

酸素が回らない脳は思考を止め、男に揺さぶられるがままに頭を動かす。

力の入らなくなった身体は崩れ落ちそうに次第に弛緩していくが、頭を強く掴んでいる男がそれを阻止する。

ビクンビクンと跳ねるように痙攣し、涙を流し続けている恭華の目に、力が、光がなくなっていく。

「ああ、イきそうです!」
キツネが感嘆と共に一際大きく腰を引き、一気に打ち付け恭華の咽奥に吐精する。

ブルッと身震いしたキツネがようやく恭華の頭を解放した。

支えを失った恭華は解放を待ち侘びたようにドサッと地面に倒れ込んでいった。

「おや、恭華さん?」
見やった先には目を開いたまま意識を失っている恭華がいた。
夢中になり過ぎて意識を失っていたことにさえ気づいていなかった。

「失神してしまいましたねぇ。少しやり過ぎましたか・・・あ、窒息死してしまいますねぇ」
悠長にキツネが意識のない恭華を起こし、背中を複数回、強打する。

「ガッ!・・・ガホッゴホッ・・・ゴホゴホッ!・・・」
咽喉に直接流し込まれた男の精液を吐き出すと同時に意識を取り戻す。

白濁液がアスファルトに吐き出され、尚も地に手をつき、いつまでもゴホゴホッと噎せ込む恭華の背中をキツネが労わるように撫でる。

男の体液が気管にも入り込み、浅く呼吸を繰り返す度にヒューヒューと咽喉を鳴らす。

「お還りなさい、恭華さん。フェラで窒息死しなくて良かったですね。嫌ですよね、死因が精液を詰まらせて窒息死って、フフッ。すみません、なにせ普段は使い捨てなもので・・・加減がちょっと」
にんまりとキツネが笑い、尚も恭華の背中を摩る。

「・・・・」
背中を摩られている間も恭華からはか細い呼吸音が漏れるだけで、声を出すどころか、何の動きも見せない。

背中を丸め、身を守るように屈んでいる。

「恭華さん?聞いてます?」
無反応な恭華を覗き込もうとキツネが背中を支えるのをやめた途端に、グラリと恭華の身体が傾き、地面に頭から崩れていった。

「ああ、完全に落ちてしまいましたね・・・舌はあまり役に立ちませんでしたけどね・・・まあいいでしょう」
ぐったりと地面に倒れ込んで気絶している恭華に、キツネが語りかける。

「くくっ・・・僕の物になるのが楽しみです」
咽の奥を鳴らすように笑うキツネが、恭華を抱え上げる。

裏路地を抜け、通りに突き当たった歩道橋に沿うように、一台、黒塗りの車が停められている。

キツネが裏路地から出てくるのを見計らったかのように後部座席のドアが開かれる。

「お疲れさんッス・・・キツネさん、仕事は?」
男がチラリと恭華を一瞥した後、運転席からバックミラー越しにキツネに話しかける。

「片付いていますよ。後始末をお揚げに依頼していただけますか、稲荷」
キツネが運転席に話しかける。

「了解ッス」
キツネの話に耳を傾けながらもキツネの抱えている青年の様子が気になり、チラチラとバックミラーから様子を窺う。

話には聞いていた。お気に入りの玩具ができた。
大変綺麗な顔をした美しい玩具だ、と。

その日、正確には三週間前、実家に帰ると言っていた男は、普段では考えられない程に胸を躍らせて帰宅した。

仕事仲間、部下でもあり、キツネの所有するマンションの管理人としてもキツネに仕えている稲荷と揚羽は、その様子に絶句し震えた。

恐怖に。

人を殺す事で最高のエクスタシーを感じる反面、それ以外で感情が動くことなど殆ど皆無。
娯楽にもグルメにも、もちろんコミュニケーションなどで心が動くことはない。

そんな男が、ニコニコ、いや、ニタニタと笑いながら嬉しそうに帰ってきたのだ。足取りも軽く、スキップに口笛まで吹きながら。

カタカタと揚羽と共に手を取り合いながら怯えたものだ。その日、世界は終わるのだと信じてやまなかった。

稲荷はあの時の異様な光景を懐かしむように遠くを見つめる。

「稲荷、出してください。恭華さんをお送りします」
キツネは心ここにあらずの稲荷を煽り立てる。

「え、あ、はいっ!それ…例のお気に入りの玩具ッスよね?」
チラチラとではなく、わざわざ後部座席を振り返り、まじまじと恭華を眺める。

黒塗りの長い車体、車体と平行に設けられた後部座席の最も運転席から離れた位置にキツネが座り、膝枕に恭華の頭を乗せている。

慈しむように頭を撫でるその姿は、玩具というよりは愛おしいペットのようだ。

だが・・・

頭と足からは流血し、口の周囲は押さえつけられた指の痣がハッキリと残り、頬には涙の痕、口の端には白い液体と唾液が混ざり流れ、顔は限りなく青ざめ苦悶の表情が浮かんでいる。

お気に入り・・・お気に入り?

お気に入りならばもう少し優しく丁寧に扱ってやればいいのにと、決して口にはできないことを考える。

本当にお気に入りなのだろうか?
と、首を傾げたくなるが、実際彼が生きていることが何よりの証拠だ。

しかし色気が半端ない。ぐったりとしているその姿でさえ、艶めかしく扇情的に映る。
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