殺人鬼と綺麗な人形はやがて手を取り涙する

なつみかん

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執行猶予編

人形は残酷な夢を見た-23

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「ああ!!おまっ、勝手に触んなっ!!だいたいどうやってロック・・・あ!読んだだろ?」
キツネからスマホを慌てて引っ手繰る。

「いえ、読んでいませんよ?僕の職業ご存知ですか?暗殺業ですよ?あらゆるロックの解除くらい心得ていますとも」
フフッと笑い、恭華をギュッとより抱きしめる。

「フフッじゃねーよっ!離せっ!抱き着くなよっ!」
背中の骨が軋む程にきつく抱きしめられ、苦しさに呻きながらキツネの頬の肉が変形する程にムギュッと押しやる。

「う、腕っ!腹っ!痛い!!!」

「キツネ、離してやれ、悪化するぞ」
チラリとキツネに目をやる九尾がため息交じりに忠告する。

「はーい。残念ですね・・・恭華さんとずっと繋がっていたいのに・・・お医者さんに言われてしまったのでは・・・」

「キモっ!!」
解放され、キツネから逃げるように九尾に駆け寄る。

「あ、きちんと九尾の連絡先も入れておきましたから、具合が悪くなったらすぐ連絡するんですよ」

キツネに言われ、恭華が自分のスマホに目を落とす。

「オイッ!何勝手に入れてるんだよ!!・・・まあ、でも具合が悪くなったら無理せず連絡しろ」
駆け寄ってきた恭華に語り掛ける。

「はいっ、しますね!!九尾は優しいですねぇ・・・(稲荷以外には)」
恭華に語り掛けた九尾に対し、キツネが喜んで答える。

「お前じゃない。でもいいのか、キツネ?帰ってこないとか・・・」
帰ってこないならまだしも、裏稼業にとって致命傷はいつでも内部から漏れる情報と決まっている。

だからこそ、今まで生きてこのマンションを出た人間はいないのだ。

キツネの恭華に対する驚愕を隠し切れないほどの甘やかしから、格別に気に入っていることは明白だ。

だが、恭華はキツネに対して何の愛情も思い入れも持っていない。それどころか、キツネに憎しみや怒りさえ持っているように感じる。

「ええ、大丈夫ですよ。逃げたらどうなるかぐらい、恭華さんにはしっかり教え込んでいますから。ねぇ、恭華さん?」
にんまりと恭華の方を見て微笑む。

「っ!・・・」
ビクリと怯えた恭華がサッと九尾の後ろに身を隠し、チラリと顔半分だけを覗かせる。

「少しでも漏れる可能性があるなら、許可すべきじゃない。それか今すぐ殺すべきだ」
九尾の纏う空気が一気に下がり、双眼が鋭さを増す。

安心感を求め逃げ込んだ九尾の元だったが、怯えた恭華がゴクリと喉を鳴らし後退る。

「駄目です。僕が飽きるまでは殺しません。まあ、恭華さんが取り返しのつかないおいたをしない限りですけど」
九尾から恭華を守るように更に背後に回り、恭華の腰を後ろから抱える。

「うわっ!!お、驚かせんな・・・」
本当に速い。

一瞬たりとも目に留まらない。
足音も動く気配さえもしないのだから、もう逃れようがない。

「九尾、晩御飯ご一緒していきませんか?」
恭華にお粥を作るついでに晩御飯作りましょうか?とキツネが尋ねる。

「いや、いい。稲荷、今日は持って帰るぞ?明日には返す」
まあ、使い物になるかは分からないが、と九尾が含み笑いをする。

「ええ、どうぞ。ほどほどにしてくださいね、一応明日稲荷にも仕事が入っていますから」
まあ、十中八九、揚羽が交代すると名乗り出るだろうが。

「じゃあな、恭華。ちゃんと薬飲めよ」
ヒラヒラと手を振り、リビングから姿を消していった。

「稲荷ってあの先生のこと苦手なんだろ?」
リビングからは立ち去ったものの、まだ部屋の中にいるであろう九尾に聞えないよう、ボソボソと話す。

「ええ、稲荷は九尾に嫌われているから意地悪されると思っているんですよ」
抱きしめている恭華に顔の位置を合わせ、同じくボソッと耳打ちをする。

それだけでは終わらず、恭華の耳穴に舌を捻じ込んでいく。

ぬちゃっという直接耳に響く水音と、何とも言えない生暖かさにゾクリと肌が粟立つ。

「やめろっ!気持ち悪いっ!」
身を捩り、キツネから逃れようとするが、後ろからガッチリ捕えられているためキツネの腕から抜けられない。

「嫌です❤昨日は恭華さんを堪能できなかったので、今日はたっぷりと頂きますよ?」

「やだっ!!腕と肋骨折れてんだぞ?」
巻き付いている腕を剥がそうと、腕を握るが、動く気配はない。

「ええ、そうですねぇ。でも僕には関係ありませんから❤」
フフッと笑うと、恭華のガウンをスルッと脱がせる。

「ね、熱もあるし・・・腹も・・・」
全裸にされて尚、どうにか逃れる道を探ろうと思索するが、力技でどうにかしようという気はない。

気怠さを感じ、力が入らないのだ。

ただでさえ、97.85%(本人憶測)の確率で勝機はない。

力の入らない今、99.99%で勝てはしないだろう。

半ば諦め脱力している恭華をキツネが引き摺り、寝室へと連れていく。

「いい子です、恭華さん。大人しくしていたら優しくしますから❤まあ、僕優しくしたことなんてないので、程度は恭華さんの思っているものと違うかもしれませんが」

「あ、明日、11時に新宿待ち合わせなんだからな!・・・だ、だから、立てなくなるまで・・・しないで・・・」
首に回されているキツネの腕をキュッと握り、懇願する。

「・・・」

反応のないキツネに不安を感じ、恐る恐る見上げる。

「ヒッ!!・・・」
キツネの顔を目にした恭華の喉から情けない悲鳴が漏れる。

にんまりと、いつになく笑みが深くなった口と、驚愕に値する程いつになく見開かれた目、そしてその目はいつになく光っている。

殺気は感じられないものの、見たことのない表情と、表現し難い異様な雰囲気を放っているキツネに、純粋に怯える。

な、何かまずいことを言っただろうか?
玩具ごときがお願いなどしてはいけなかったのだろうか?

このままこの腕に首を締め上げられたらどうしよう。
そんな不安から、キツネの腕を掴む手に力が籠る。

どうやら不安は的中したようだ。

「き、キツ・・・っあ!く、苦しっ!!キ、キ、」

ギュッと腰と首に巻かれている腕に、急激に圧力を加えられ、恭華が苦しさを訴える。

「立てなくなるまでしないで、ですって?」

「は、はい・・・で、できればで・・・いい」
キツネの感情がまったく読めない今、これ以上刺激をしないように下手に下手に出る恭華の声はごにょごにょと消え入りそうだ。
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