63 / 84
お出かけ編
殺人鬼が感じたのはただ唯一の哀しみ-3
しおりを挟む
「ねぇ、中に入ろう?」
恭華と肉フェスを回る権利を狙っている女性達が一挙に襲い掛かる。
だがその周囲を囲んでいる多くの肉食女子が虎視眈々と狙っている。
「だから、俺には連れがいるんだって・・・」
腕を引く女性たちに辟易して、困り果てたように視線を迷わせている恭華の目に稲荷が止まった。
「稲荷~っ!!」
助かったとばかりに、女性たちをすり抜け小走りで稲荷に近寄っていく。
ああ、本当に連れがいたのかと女性たちの表情に落胆の色が見えたのも一瞬だった。恭華の向かった先にいるのは男、それも長身のハーフのような優し気な顔立ちでなかなかのイケメン。
ガクンと下がった女性たちのテンションがうなぎ上りに上がった。
ゾロゾロと集団が恭華の後を追う。
「恭華ちゃん、凄いね・・・これじゃあまるで」
「ああ、待って!言うな、分かってるから・・・」
客寄せパンダ。
どこに行ってもそう、人が寄ってくる。
だから実際にバイトに引かれることが多い。この制服を着て、立っているだけでいいから、と。
「そっちのお兄さんもカッコイイ!ねぇ、うちらとまわろ?」
自分が一番可愛く見える角度を心得ているのだろう。
斜めから上目遣いで恭華と稲荷を見つめる。
「せっかく綺麗な女性達からのお誘いだけど、今のうちに俺達から離れた方がいいよ?」
「ヤダぁ!お兄さん上手!!綺麗だって!!」
キャアキャアと友達と一緒になってそこらじゅうの女性達が喜んでいる。
「え~?何で離れた方がいいの~?」
クネクネと体をくねらせて、胸をチラチラと強調させる。
「もうすぐ怖い人たちが来るからだよ」
そう口にした稲荷自身が本物の身震いをさせた。背後に悪寒を感じたからだ。
「だぁれが怖いって?」
そのドスの利いた声に、稲荷だけではなく恭華もビクッと反応した。
「えぇ!?何、女いたの?」
あからさまに揚羽に敵意を剥き出しにする周囲の女性たちが殺気立つ。
そんな視線を根絶するような殺気を揚羽が放ち、一睨みした。
「ひっ」
厚かましさや図々しさから怖いものなど何もないと思われた肉食女子から、肉食獣のキングからの牽制に短く悲鳴が漏れた。
「や、何この女!怖くない?」
「見るからに野蛮」
「これお兄さんの彼女?」
やはり女達の神経は図太かった。
揚羽に睨まれてなお、恭華や稲荷から離れようとしない。
「フフッ、怖い人達に僕も含めましたね、稲荷?恭華さん、いつまで遊んでいるんですか?お肉が逃げてしまいますよ?」
女達から恭華の腕を奪い、ゴミを見るような視線を集団に向ける。
更に身長の高い、それも明らかに目がヤバい男に見下ろされ、女達が緊張に硬直する。揚羽の睨みにも屈しなかった女達が、キツネの異様さには気が付いたようだ。
やはり血は洗い流せても、殺人鬼の狂気じみた雰囲気は容易に隠せないのだろう。
「え?ああ」
肉が逃げると言われ、慌てた恭華がキツネに引かれるまま、集団を抜けていく。
「流石、キツネ様。おい、カスッ!!チケット持ってるお前が行かなくてどうすんだよっ!」
「うっ!」
再び揚羽に蹴り飛ばされて稲荷が集団を抜けて地面に転がった。
その様子を見て周囲がざわつく。『可哀想~』『野蛮~』『何あいつ~』などと小さな囁きが聞こえるものの、誰も揚羽と目を合わせようとはしない。
心無い女達の言葉に、揚羽が、無表情でありながらも刹那、目を伏せたのを稲荷は見逃さなかった。
「俺の大切な人、悪く言わないで?君たちも可愛いけれど、俺には揚羽が一番可愛いんだ」
ふわりと周囲の女性達に笑いかけると、稲荷が揚羽の手を取る。
舌打ちや嫉妬が渦巻く黄色い声を抜け、キツネたちの後を追った。
表情には表れないながらも驚きに目を見開いた揚羽が稲荷の背中を見つめる。
「稲荷カッコイイ~!イケメンだな!」
「やめてよ、恭華ちゃん」
恭華に茶化され、照れくさそうに稲荷が笑う。
「調子に乗るなっ!誰がお前の女だ!」
キッと稲荷を睨み、厳しい言葉を吐き捨てた揚羽だったが、稲荷の手は振りほどかなかった。
嬉しさに稲荷がブワッと花が咲いたように微笑んだ。
「じゃあ揚姉、俺と一緒に回ろう?」
「無理だ。私はキツネ様の護衛を」
稲荷の手を振りほどき、護衛という大義名分のもと、キツネと回りたいという意思を示す。
「いえ、護衛は結構ですよ。僕は恭華さんと回ります」
「え、ヤダよ。俺は稲荷と回りたい・・・」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
そして四者に気まずい沈黙が訪れた。
恭華と肉フェスを回る権利を狙っている女性達が一挙に襲い掛かる。
だがその周囲を囲んでいる多くの肉食女子が虎視眈々と狙っている。
「だから、俺には連れがいるんだって・・・」
腕を引く女性たちに辟易して、困り果てたように視線を迷わせている恭華の目に稲荷が止まった。
「稲荷~っ!!」
助かったとばかりに、女性たちをすり抜け小走りで稲荷に近寄っていく。
ああ、本当に連れがいたのかと女性たちの表情に落胆の色が見えたのも一瞬だった。恭華の向かった先にいるのは男、それも長身のハーフのような優し気な顔立ちでなかなかのイケメン。
ガクンと下がった女性たちのテンションがうなぎ上りに上がった。
ゾロゾロと集団が恭華の後を追う。
「恭華ちゃん、凄いね・・・これじゃあまるで」
「ああ、待って!言うな、分かってるから・・・」
客寄せパンダ。
どこに行ってもそう、人が寄ってくる。
だから実際にバイトに引かれることが多い。この制服を着て、立っているだけでいいから、と。
「そっちのお兄さんもカッコイイ!ねぇ、うちらとまわろ?」
自分が一番可愛く見える角度を心得ているのだろう。
斜めから上目遣いで恭華と稲荷を見つめる。
「せっかく綺麗な女性達からのお誘いだけど、今のうちに俺達から離れた方がいいよ?」
「ヤダぁ!お兄さん上手!!綺麗だって!!」
キャアキャアと友達と一緒になってそこらじゅうの女性達が喜んでいる。
「え~?何で離れた方がいいの~?」
クネクネと体をくねらせて、胸をチラチラと強調させる。
「もうすぐ怖い人たちが来るからだよ」
そう口にした稲荷自身が本物の身震いをさせた。背後に悪寒を感じたからだ。
「だぁれが怖いって?」
そのドスの利いた声に、稲荷だけではなく恭華もビクッと反応した。
「えぇ!?何、女いたの?」
あからさまに揚羽に敵意を剥き出しにする周囲の女性たちが殺気立つ。
そんな視線を根絶するような殺気を揚羽が放ち、一睨みした。
「ひっ」
厚かましさや図々しさから怖いものなど何もないと思われた肉食女子から、肉食獣のキングからの牽制に短く悲鳴が漏れた。
「や、何この女!怖くない?」
「見るからに野蛮」
「これお兄さんの彼女?」
やはり女達の神経は図太かった。
揚羽に睨まれてなお、恭華や稲荷から離れようとしない。
「フフッ、怖い人達に僕も含めましたね、稲荷?恭華さん、いつまで遊んでいるんですか?お肉が逃げてしまいますよ?」
女達から恭華の腕を奪い、ゴミを見るような視線を集団に向ける。
更に身長の高い、それも明らかに目がヤバい男に見下ろされ、女達が緊張に硬直する。揚羽の睨みにも屈しなかった女達が、キツネの異様さには気が付いたようだ。
やはり血は洗い流せても、殺人鬼の狂気じみた雰囲気は容易に隠せないのだろう。
「え?ああ」
肉が逃げると言われ、慌てた恭華がキツネに引かれるまま、集団を抜けていく。
「流石、キツネ様。おい、カスッ!!チケット持ってるお前が行かなくてどうすんだよっ!」
「うっ!」
再び揚羽に蹴り飛ばされて稲荷が集団を抜けて地面に転がった。
その様子を見て周囲がざわつく。『可哀想~』『野蛮~』『何あいつ~』などと小さな囁きが聞こえるものの、誰も揚羽と目を合わせようとはしない。
心無い女達の言葉に、揚羽が、無表情でありながらも刹那、目を伏せたのを稲荷は見逃さなかった。
「俺の大切な人、悪く言わないで?君たちも可愛いけれど、俺には揚羽が一番可愛いんだ」
ふわりと周囲の女性達に笑いかけると、稲荷が揚羽の手を取る。
舌打ちや嫉妬が渦巻く黄色い声を抜け、キツネたちの後を追った。
表情には表れないながらも驚きに目を見開いた揚羽が稲荷の背中を見つめる。
「稲荷カッコイイ~!イケメンだな!」
「やめてよ、恭華ちゃん」
恭華に茶化され、照れくさそうに稲荷が笑う。
「調子に乗るなっ!誰がお前の女だ!」
キッと稲荷を睨み、厳しい言葉を吐き捨てた揚羽だったが、稲荷の手は振りほどかなかった。
嬉しさに稲荷がブワッと花が咲いたように微笑んだ。
「じゃあ揚姉、俺と一緒に回ろう?」
「無理だ。私はキツネ様の護衛を」
稲荷の手を振りほどき、護衛という大義名分のもと、キツネと回りたいという意思を示す。
「いえ、護衛は結構ですよ。僕は恭華さんと回ります」
「え、ヤダよ。俺は稲荷と回りたい・・・」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
そして四者に気まずい沈黙が訪れた。
44
あなたにおすすめの小説
終焉の晩餐会:追放される悪役令息は、狂欲の執事と飢えた庭師を飼い慣らす
河野彰
BL
かつて、ローゼンベルグ家の庭には白薔薇が咲き誇っていた。嫡男リュシアンは、そのバラのように繊細で、風が吹けば折れてしまいそうなほど心優しい青年だった。しかし、名門という名の虚飾は、代々の放蕩が積み上げた「負の遺産」によって、音を立てて崩れようとしていた。
悪役になり切れぬリュシアンと彼を執拗にいたぶる執事のフェラム、純粋な愛情を注ぐ?庭師のルタムの狂気の三重奏。
氷の檻に閉じ込められた月~兄上のすべては、私のもの~
春野ふぶき
BL
『兄上は私のものだ。魂も、肉体も。永遠に―—』
アーヴェント侯爵家の長男ライカは、妾腹として正妻に虐げられ続けてきた。
唯一の救いは、次期当主を目される異母弟カイエンの存在。
美しく聡明で、氷の騎士と呼ばれる彼だけは、常にライカの味方だった。
だが、その愛情は兄を守るものではなく、深く歪んだ執着だった。
母を排除し、兄を囲い込み、逃げれば鎖で捕らえる。
そしてついに、ライカの心身は限界に追い詰められていく。
——カイエンが下す「最後の選択」とは。
ふたりが辿る結末は、幸福か、それとも狂気の果てか。
異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした
うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。
獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。
怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。
「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」
戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。
獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。
第一章 完結
第二章 完結
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる