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友達はともだち①

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あれから自分の部屋に戻って蓋つきのバスケットを取り出し今あるハギレを机の上に並べてどれがいいか悩んでいるとルームメイトのリナが声をかけてきた。
「フィナまた何か作るの?」
「うん、ちょっとプレゼント渡したい人がいてどのハギレが良いかなって思って…」
「それって……もしかして好きなひ…」
「好きな人ではないから!」
それを聞いたリナがすごく残念な顔をする
「なんだぁ~せっかくフィナから恋バナが聞けると思ってたのになぁ」
(……恋バナなんか教えるんじゃなかった…)
「恋バナってリナは好きな人いないの?」
「いるよ?」
(!?なぜ疑問形?)
「えっ……誰?って聞いてもいいの?」
「良いも何もフィナも知ってる人だよ~」
「……ってことは3人の中にいるの?」
「いるね~」
「やっぱり、聞かないでおくぅ」
「モルだよ」
「………………」
「………………」
(……聞こえなかったフリしようかな)
「…ごめん、聞こえなかったけどもう言わなくて」
「モルだよ、モルダ・ジャンク」
「……なんで言うの?しかも御丁寧に…」
「なんかグイグイきたら言わなかったんだけど…こなかったから反応見たくてつい…」
(ここの人達は私が嫌がることをする設定にでもなってるのかな?)
「…恋バナ広げる?」
「…広げる前にハギレ選んでいいかな…」



午前の授業が終わり1人でお昼を食べる場所を探しながら徹夜で作った小物入れを手に取り出来栄えのチェックをする
「うーん…これなら渡しても大丈夫かな…」
(まさかリナの恋バナがラジオ聞いてるみたいになって作業が捗るとは思わなかった……恋愛か……前世も対して恋愛してなかったから誰かを好きになるとか考えもしなかったな…)
そんなことを考えてるといつの間にか噴水の近くまできていた。
「無意識って怖いな……あれ?誰かいる」
(誰?キル王子じゃないな…背が少し低いし髪の色も金髪じゃなく紺色だしモノクルかけてる……あっ、宰相の嫡男のリオドル・デ・ガール!!………見なかったことにしよう…後ろ向きは危険だから普通に帰ろう)
「ちょっといいかな?」
向きを変えた瞬間に声をかけられ恐る恐る見上げるとリオドルが目の前に立っていた。
私はびっくりして後ろと前を2度見する
(えっ!?なんで!?さっきまであそこにいたのに!?)
プチパニックになっている私を見てリオドルが話しかけてきた。
「驚かせてすまない、ちょっと聞きたいことがあって声をかけたんだ」
「いえ、ちょっとびっくりしただけなので大丈夫です」
(嘘です!ほんとはすごくびっくりしすぎて心臓や脈が早くなってます…だけどオーバーリアクションしたらまた絡まれる可能性が高い…だから普通に対応してこの場を去ろう!)
「えっと…どうかされましたか?」
「実は最近、キル王子と会っている女子生徒がいると報告があって一度会ってみたいと思い来たんだが何か知らないか?」
「……そうなんですか?」
「えぇ、ちなみにあなたはなぜここに?」
「私は1人でゆっくりお昼ご飯を食べれるところを探してたらたまたまここを見つけただけです」
「ではなぜ私を見て逃げたんですか?」
「さっきも話しましたが1人でゆっくり食べれるところを探してましたので人がいるとわかって別のところを探そうと思っただけです」
「そうでしたか、色々聞いてすみません」
「いえ、では失礼いたします」


「ここ幽霊が出る場所ってご存知でしたか?」
「いいえ、知りませんでした」
軽く頭を下げその場から立ち去った。

(あっぶなかったぁー、話すというより尋問だったような…キル王子と会うの控えるべきかな……うーん、どうしたもんかなぁ~)


午後の授業が終わりサークルに少し顔を出してからキル王子と会う噴水の場所まで行くと見慣れた姿が見えてきた。
(最初は関わりたくないとか思ってたのに最近は姿を見るだけでほっとしたような安心感がある……って王族に安心感とかどうかしてる…)
「フィナ!」
(普段、笑顔を見せないイケメンが笑顔で手を振るだけで後光がさすのか)
「すみません、待ちましたか?」
「いや、私も今着たところだ」
(前世のデート待ち合わせのセリフみたいだな)
「あの、キル王子のいつも隣にいるリオドル・デ・ガール様はこの時間はどちらにいるんですか?」
「………なぜ急にリオドルの話するんだ?」
(しまった!これじゃあ、不自然すぎる!)
「えっとですね……いつもキル王子と一緒だからそのなんていうか…気になってしまって」
「…リオドルは生徒会の仕事をしているから授業のあとは一緒にいない」
「そうなんですね…」
「…………………」
「…………………」
(きっ…気まずい!!なんでこんな雰囲気になったの!?もしかして…2人は仲が悪いのかな…?何か話題を…そうだ!)
「あっ、キル王子に友達になった記念にプレゼント持ってきたんです!」
「プレゼント?」
「はい!これなんですが…その私が作ったものなので気に入ってもらえるかどうか…」
青のリボンが付いてる花模様の紙袋を差し出す。
もちろん、このラッピングも手作り!
「中を見てもいいか?」
「どうぞ!」
キル王子が取り出した小物入れはキレイな青い布に金色の小さい花が刺繍されておりヒモではなくマグネットボタンを付けてあるので使いやすい。
「このボタンみたいなのはどう開けるんだ?」
「あっ、それはマグネットって言ってただくっついてるだけなので簡単に開きますよ」
「すごいな!簡単に開くうえに閉じるのも早い!いいのか?こんな貴重なものをもらっても?」
「全然良いですよ~私の手作りで良ければ」
「全部手作りなのか!?」
「マグネットは知り合いの鍛冶屋さんに作ってもらったやつでそれ以外はこの紙袋も含めて手作りです。小物の刺繍も私がしました」
「…………ほんとにすごいな君は」
「そうですか?ただの趣味ですよ?」
「すごく嬉しい…大事にする」
キル王子の優しく微笑んだ顔を見てどこか切ない気持ちで胸の奥が熱くなり頬を温かい雫が流れていた。
「どうして泣いてるんだ!?なにか不快なことを言ってしまったのなら謝る!」
「ちがっ…違うんです…そんなに喜んでもらえるとは思わなくて…嬉しくて…」
「喜ぶにきまってるだろう…友達から初めてもらったプレゼントなんだから」
(違う……私はリオドルに言われてキルを遠ざけようと少しでも思った自分が情けなくて許せなくて…こんなにも友達想いなこの人の気持ちを踏みにじるところだった…)

「キル王子がもういいって言うまで私はずっと友達でいますからね!」
涙を流しながらキルに気持ちを伝えるとキルの指が頬に触れ涙を拭いながら微笑んで言った。
「もういいなんて言わない……絶対に」


今まで知ることもなかった感情が頬に触れる温もりとともに沸々と熱くなってるのを感じた。

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