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キル・ロイド・ファルデリック②
しおりを挟む学園内を探し回るがどこを探しても彼女の姿が見えなかった、諦めて生徒会室に戻ると彼女と同じサークルメンバーのセダ・ポロルグがいた。
彼は目立つタイプではないが学院内のトラブル対応や書記には長けており陰ながらサポートをしてくれている。
「君はたしかジオラマのサークルメンバーだったな?」
「……はい、そうです」
(……なんだ急に?直接話しかけられたことなんて今までなかったのに……しかもサークルのことを聞かれるなんて……もしや掛け持ちしてるから!?)
「君は部長と仲が良いのか?」
「えっ、フィナ・ランペーンのことですか?彼女とは親同士が知り合いなので幼いときからの友人です」
「そうだったのか……いや、君が入ってるジオラマのサークルがどういうものなのか気になってね、部長と話がしてみたいと思ってるんだが紹介してくれないか?」
「あぁ、そういうことでしたか!ですがすみません、フィナは体調を壊して昨日の午後に実家に戻ったので学園にいないんです」
(朝から探してもいないと思ったら体調を壊していたのか……)
「それは残念だな……彼女の体調が良くなるまで待つことにするよ」
「落ち着いたら私の方から話しておきます」
彼はそう言って頭を下げ、生徒会室を退室した
「幼いときからの友人か…………」
何か引っかかるものを感じ席を立ったと同時にリオドルが生徒会室に入ってきた
「どちらに行かれるんですか?」
「少し調べたいことがある、明日の朝には戻る」
そう言ってキルは退室した
王族の認められた者だけが入ることのできる宝物庫の中に金で作られた鍵付きの本棚があり王族の歴史や家系図、禁書などが保管されており国王、王妃、キル王子の3人だけが鍵を持っている
去年の誕生日の日にプレゼントとして渡された鍵を使う日がくるとはなどと考えながら本棚の鍵を開けいくつかの本を手に取り2階の読書スペースに座り読んでいく……
全部読み終わる頃には外は真っ暗になっていた
「……はぁ、まさか父上は(この国は)ずっと隠してきたのか」
自室に戻り、執事やメイドを下がらせバルコニーでワインを飲む
それにしても一度しか話したことがないのにどうしてこんなにも気になるんだろうか………いくら考えても理由がわからなかった……………すると雲に隠れた月が顔を出しグラスが月に照らされた瞬間、初めて彼女を見たときを思い出す
「あぁ…………そうかこれが一目惚れというものか」
キルはグラスをテーブルに置きベッドに横になる
(はやく彼女に会いたい……会って気持ちを伝えたい……いや、焦りはよくないな……まずは彼女と友達になって仲を深めてから告白をしよう……場所は誰にも邪魔をされないところがいいな……あの場所ならいいかもしれない)
そんなことを考えていたらいつの間にか朝になっていた
コンコンっとノックの音が聞こえる
「入れ」
「失礼します」
執事とメイドが顔を洗う水とタオルを持って部屋に入る
「すまないが、朝早くに学園に戻らないといけないから朝食は一緒できないと伝えてくれ」
「かしこまりました、では料理長に軽食を頼んでおきます」
「ありがとう」
馬車に乗り、軽食が入ってるバスケットを手に取り学園に戻る
生徒会室に入るとまだ誰も来ていなかった
「少し早いが仕事を終わらせるか」
山積みの書類に目を通しサインをしていく…15分程経ったときドアが開きリオドルが入ってくる
「すみません、まだいらっしゃらないと思って」
「かまわない、それよりも一緒に朝食でも食べないか?」
「えっ?もう目を通したんですか?」
「あぁ、サインもしてある」
「相変わらず、仕事が早いですね」
「あの噴水がある中庭で食べないか?うちの料理長が軽食を作ってくれたんだ」
「中庭ですか?いいですけど…」
噴水の近くにあるベンチに座りサンドイッチを手に取り食べる
「あっ、飲み物持ってくるの忘れましたね」
「あぁ、では一緒に戻るか」
「いえ、私が取ってきますのでゆっくり召し上がってて下さい」
「わかった」
リオドルの姿が見えなくなったと同時に声をかける
「私に言いたいことでもあるのか?」
すると茂みの中から一人の令嬢が出てきた
「お久しぶりです、キル王子」
「……挨拶はいい、なぜ後をつける」
令嬢は扇を握りしめ大声を上げた
「どうしてお茶会を中止にされたのですか!?」
キルはため息をつき、サンドイッチを置き立ち上がる
「必要がないからだ」
「そんなの納得できません!!私はあの2人よりも殿下に気に入られるように努力してきました!それなのに…いきなりお茶会を中止にし婚約者候補から外すなんてあんまりです!」
「努力…?君が言う努力とはなんだ?」
「…っそれはキル王子が好むドレスを着て、キル王子の好む髪型にして、キル王子の好む宝石を身に着け、キル王子の好きな茶葉や万年筆を…」
「黙れ!!」
キルの声にびっくりし扇を両手で握りしめる
「私がいつ君が着てるドレスが好きだと言った?私がいつ好きな宝石や髪型のことを話した?私はプレゼントが欲しくてお茶会に参加したのではない!それに君が毎回プレゼントで渡す茶葉は私は苦手だ」
「……っそんな!あんまりです!私はあなた様に気に入られるようにと」
「私が妃に求めるものは豪華なドレスや宝石を身に着ける者ではなく国民の暮らしを守る術や国の発展につながる知恵をくれる者だ!」
「君とはもう話すことはない」
キルは令嬢に背を向け噴水の方に歩き出した
すると令嬢がキルの方に走ってくるのがわかり振り向くと同時に両手で倒れ込むように体を押され体勢を崩す
(……っまずい!このままでは令嬢がケガをする!)
体勢を崩しながらも令嬢の手を咄嗟に掴み自分に引き寄せもう片方の手で令嬢の頭を守り倒れ込む
ドンッ!!!!っと鈍い音がし令嬢が目を開け体を起こすとキルが噴水に頭をぶつけ血を流し倒れていた…
令嬢は青ざめ自分がしたことを後悔したが……
走ってくる足音が聞こえ怖くなりその場から走り去った
「遅くなってすみません!あれ?キル王子どこですか?」
リオドルが周りを見渡すと噴水の側で血を流し倒れているキルを見つける
「キル!!!!」
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