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第6話-1 【ハプニング】湯上がりと、琥珀色の誘惑
「はぁ~……生き返ったぁ」
バスタブから上がり、洗面台の鏡の前でバスタオル一枚になる。
高級なバスソルトのおかげか、肌はいつもよりしっとりと潤い、全身がポカポカと温まっていた。
湿った髪をタオルで拭きながら、火照った頬をパタパタと仰ぐ。
「ちょっと長風呂しすぎちゃったかな。のぼせたかも……」
ぼんやりとしながら、化粧水を取ろうと手を伸ばした、その時だ。
ガチャリ。
何の予兆もなく、脱衣所のドアが開いた。
「――ん? 萌、まだだったか……」
入ってきたのは、Tシャツにスウェット姿の蒼。
手には自分の着替えを持っている。
どうやら私がもう出たものと勘違いして、お風呂に入ろうとしたらしい。
時が、止まった。
私の格好は、胸元でバスタオルを巻いただけの、ほぼ裸同然の姿。
湯気で上気した肌、露わになったデコルテ、太もも。 それらが完全に、蒼の視界に晒されている。
蒼の目が、少しだけ見開かれ、私の全身を上から下へとなぞるように動いた。
「…………ッ!!!」
一拍遅れて、事態を理解した私の口から悲鳴がほとばしる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」 「うおっ!?」
私は咄嗟にバスタオルを押さえ、その場にしゃがみ込んだ。
「見ないでっ! バカ! 変態! 出てってよぉぉ!」
「わ、悪ぃ! お前もう部屋戻ったかと……っ!」
蒼は顔を真っ赤にして、慌てて後ろを向いた。 けれど、閉まるドアの隙間から、彼が去り際に
「……無防備すぎんだよ」と、悔しそうに(あるいは興奮を抑えるように)呟いたのが聞こえてしまった。
バタンッ!! ドアが閉まり、脱衣所に静寂が戻る。
「……うぅぅ……」
私はその場にへたり込み、茹で上がったタコのように赤くなった顔を手で覆った。
見られた。
全部見られた。
今の蒼は、ただの幼馴染じゃない。
「男」として私を狙っている人だ。 そんな彼に、あんな姿を見られるなんて……。
「もう……お嫁に行けない……」
恥ずかしさで心臓が破裂しそうだ。 身体の熱さが引くどころか、ますますカッカと燃え上がってくる。
------------------------------------------------------------------
着替えを済ませてリビングに戻ったけれど、部屋に帰るために廊下を通ると、また蒼に会うかもしれない。
そう思うと足がすくんだ。
「喉……乾いた……」
ふと、ダイニングテーブルの上に、琥珀色の液体が入った美しいガラスボトルが置いてあるのが目に入った。
蒼が大事に飲んでいる、高そうな洋酒だ。 隣には、氷が入ったままのロックグラス。
「……これ、飲んじゃえ」
普段なら絶対に手を出さないけれど、今の私はパニック状態で、正常な判断ができなかった。
この恥ずかしさを消したい。火照った身体を冷やしたい。
その一心で、私はグラスにトクトクと液体を注ぎ、一気に煽った。
「んっ……!」
カッ! と喉が焼けるような刺激。
鼻に抜ける芳醇な香りと、胃の腑に落ちて広がる熱い塊。
強い。すごく強いお酒だ。
でも、不思議と嫌じゃない。
「ぷはぁ……。おいし……」
一杯飲むと、フワフワと頭が軽くなった気がした。
恥ずかしさが少しだけ薄れ、代わりに大胆な気持ちが湧いてくる。
「もう一杯だけ……」
私はとろんとした目でボトルを掴み、再びグラスに琥珀色の液体をなみなみと注いだ。
これが、決定的な「引き金」になるとは知らずに。
バスタブから上がり、洗面台の鏡の前でバスタオル一枚になる。
高級なバスソルトのおかげか、肌はいつもよりしっとりと潤い、全身がポカポカと温まっていた。
湿った髪をタオルで拭きながら、火照った頬をパタパタと仰ぐ。
「ちょっと長風呂しすぎちゃったかな。のぼせたかも……」
ぼんやりとしながら、化粧水を取ろうと手を伸ばした、その時だ。
ガチャリ。
何の予兆もなく、脱衣所のドアが開いた。
「――ん? 萌、まだだったか……」
入ってきたのは、Tシャツにスウェット姿の蒼。
手には自分の着替えを持っている。
どうやら私がもう出たものと勘違いして、お風呂に入ろうとしたらしい。
時が、止まった。
私の格好は、胸元でバスタオルを巻いただけの、ほぼ裸同然の姿。
湯気で上気した肌、露わになったデコルテ、太もも。 それらが完全に、蒼の視界に晒されている。
蒼の目が、少しだけ見開かれ、私の全身を上から下へとなぞるように動いた。
「…………ッ!!!」
一拍遅れて、事態を理解した私の口から悲鳴がほとばしる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」 「うおっ!?」
私は咄嗟にバスタオルを押さえ、その場にしゃがみ込んだ。
「見ないでっ! バカ! 変態! 出てってよぉぉ!」
「わ、悪ぃ! お前もう部屋戻ったかと……っ!」
蒼は顔を真っ赤にして、慌てて後ろを向いた。 けれど、閉まるドアの隙間から、彼が去り際に
「……無防備すぎんだよ」と、悔しそうに(あるいは興奮を抑えるように)呟いたのが聞こえてしまった。
バタンッ!! ドアが閉まり、脱衣所に静寂が戻る。
「……うぅぅ……」
私はその場にへたり込み、茹で上がったタコのように赤くなった顔を手で覆った。
見られた。
全部見られた。
今の蒼は、ただの幼馴染じゃない。
「男」として私を狙っている人だ。 そんな彼に、あんな姿を見られるなんて……。
「もう……お嫁に行けない……」
恥ずかしさで心臓が破裂しそうだ。 身体の熱さが引くどころか、ますますカッカと燃え上がってくる。
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着替えを済ませてリビングに戻ったけれど、部屋に帰るために廊下を通ると、また蒼に会うかもしれない。
そう思うと足がすくんだ。
「喉……乾いた……」
ふと、ダイニングテーブルの上に、琥珀色の液体が入った美しいガラスボトルが置いてあるのが目に入った。
蒼が大事に飲んでいる、高そうな洋酒だ。 隣には、氷が入ったままのロックグラス。
「……これ、飲んじゃえ」
普段なら絶対に手を出さないけれど、今の私はパニック状態で、正常な判断ができなかった。
この恥ずかしさを消したい。火照った身体を冷やしたい。
その一心で、私はグラスにトクトクと液体を注ぎ、一気に煽った。
「んっ……!」
カッ! と喉が焼けるような刺激。
鼻に抜ける芳醇な香りと、胃の腑に落ちて広がる熱い塊。
強い。すごく強いお酒だ。
でも、不思議と嫌じゃない。
「ぷはぁ……。おいし……」
一杯飲むと、フワフワと頭が軽くなった気がした。
恥ずかしさが少しだけ薄れ、代わりに大胆な気持ちが湧いてくる。
「もう一杯だけ……」
私はとろんとした目でボトルを掴み、再びグラスに琥珀色の液体をなみなみと注いだ。
これが、決定的な「引き金」になるとは知らずに。
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