錬金術師と銀髪の狂戦士

ろんど087

文字の大きさ
17 / 35
第4章

危険な一夜(4)

しおりを挟む
    
「はあ~、やっと人里に出たねえ。もう、体があちこち、ガタガタだよ」

 オトマタさんが森の中から街道に脚を踏み入れると、リアシートのツグミが、やったぁ、と歓喜の声を上げた。

「本当にオトマタさんたら、乗り心地悪いってばないんだもん」

 そんなツグミを操縦席から振り返ってタイトは無表情な視線で眺める。

「キノコの毒はもう大丈夫なのか?」

「ん? ああ、おかげさまで。タイトの献身的な看病のおかげで元気一杯だよ」

 力瘤を作り、それからタイトにウインク。

「ふん」と、タイト。
「献身的とか、くだらないことを云うな。ドMのおまえのことだ。どうせキノコの毒で痺れていながらそれを喜んでいたのだろう? 逆に治療などと余計なことをしてしまって悪かったな」

「いや……せっかく感謝してるのにそれってヒドすぎるよ」
 ぷうっ、と、ふくれっ面を見せるツグミ。

「ところでこの先に少し大きな町がある」と、タイト。
「それを過ぎればサイトンまではあとひと山と云う距離のはずだ。目的地は近い」

 タイトはモニタに表示されている地図に目をやる。

「オトマタさん」と、かれは機動メカに声をかけた。

「え? タイト? オトマタさんに話しかけてるの?」

 小首を傾げるツグミ。
 こいつ、ついにおかしくなったのか? とでも云いた気である。
 それを無視して、タイトは、そうか、忘れていたな、と呟きコクピットのスイッチに触れた。

「おまえには云ってなかったが、オトマタさんには言語回路も装備されている。つまり……」

『しゃべれる、っちゅうことやなぁ』

 突然、電子合成音がコクピット内のスピーカーから流れ出した。

『あんさんがわての言語機能をオフったままにするさかいにナンもしゃべれんで難儀したで』

「えええ? って、何で関西弁?」

 ツグミが驚きの声を上げる。
 しゃべる、と云うのも初耳だったが、関西弁?

『関西弁をバカにしたらアカンで、姐さん』

 オトマタさんが云った。
 ツグミはそれにどう反応して良いかわからない。
 そもそも、どこに向かって話しかければいいのだろうか?

『と、云う前にや。まずは挨拶せなな。……お初にお目にかかります。わてがオトマタ云うもんです。よろしゅうな』

「ど、どう云う……タ、タイト? これって?」

「どう云うも何も聞いた通りだ。研究所に関西弁をしゃべるオーヤマと云う男がいたので、その男をサンプリングしただけだ」

「はああ?」

「そもそも、おまえがいなければおれは一人旅だからな。オトマタさんとしか普段は会話をしないことになるので、それならば楽しい方が良かろう、と思って、所内ではなかなか楽しい男だったオーヤマと云う研究員のオヤジからサンプリングしたのだ」

『そう云うこっちゃな』

 オトマタさんが頷く。
 実際に頷いている訳ではないが、同意するようにコクピットのパイロットランプをチカチカと光らせる。

「多少ウザいが、まあ暇つぶしにはなる。ウザいのはサンプリングの元となった研究員の性格が反映されているためだが」

『そやな。わての元ネタになったあのおっちゃんはかなりウザい奴やってんからな。それよか姐さん、わてが丁寧に自己紹介したのにあんたは挨拶せんのかい? 可愛い顔しとるくせに礼儀がなってないんとちゃうか?』

 指摘する。
 AIのくせに。

「ウザい……確かに。あんた、よくこんなのと旅出来るね、タイト」

 その台詞にコクピット内のランプ類がまたチカチカと先ほどとは違う調子で明滅した。
 どうやらオトマタさんがムッとしたことを表現しているようである。
 AIのくせに。

『ほう。云うやないか? それならわても云わせてもらいますけどな。大体やな、誰も見てへん、思って、姐さん、後ろのシートで脚を投げ出してお気楽に座っとったけど、レディとしては雑過ぎるんちゃいますか? わてにはパンツ丸見えやってんで? ピンクの縞パンツ。……ま、色気は皆無やけどもな』

 ツグミ、反射的にミニスカートを両手で押さえる。

「あ、あんた……」

 顔が見る見る紅くなるのが自分でもわかった。

(パンツ丸見えって、色気は皆無って、こいつ……)

 相手はAIなのだが。

『ばっちり写メ撮ったさかいに、わての胸先三寸でネットにパーっと拡散することも出来るんやで? ほれ、どないや? ほれ、ほれ、悔しいか? もっと苛めて欲しいんとちゃうんか? ドMの姐さん?』

「く……」

 返す言葉が出て来ない。
 まさしくウザいオヤジそのもののオトマタさんであった。

(こ、この性格……)

「そのくらいにしてくれないか、オトマタさん。この娘を喜ばせてどうするのだ?」

『ああ、あんさん、すんまへん。このドMの姐さんが、苛められたい、云う顔つきやったさかいついサービスしてもーた』

(喜ばせる? ドM? 苛められたい? サービス?)

「あ、あたしは喜んでないから! あ、あたしはドMじゃないから! 苛められたいなんて、思ってないからね!」

 顔を真っ赤にして抗議する。相手はAIだと云うのに。

『おお、そないに喜んでもらえるとはAI冥利に尽きるな、ホンマ』

「よかったな、オトマタさん。いい遊び相手が出来て」

 タイトひとりでもややこしいのにまたややこしいのが増えてしまった、と、これからの旅のことを考えてツグミはがっくりとうなだれるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...