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第2章 バー《星海》でくつろごう
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ふたりが店の奥の階段を昇って行くのを見送った後、サンタは疲れたようにため息をつくと、ジョーに向き直った。
「楽しい女の子たちだな、サンタ。おまえさんがうらやましいぜ」
「よせよ。ジョーも悪乗りし過ぎだ。シスターに気をつけろ、とか云っておきながら」
「まあ、それは嘘じゃない。……だがおまえさんもなかなか酔狂な奴だな。あんな娘を拾って送ってやるなんて。おまけに宿まで用意してやるとは、いつからそんなボランティア精神豊かな男になったんだ?」
皮肉っぽくジョーが云う。
『運び屋』サンタと云えば、仕事は速くて正確にこなすビジネスライクでクールな『運び』のプロ、が売りのはずじゃなかったのか、と。
「そんなキャッチコピーを口にした憶えはねーよ。もちろんビジネスライクは正しいけどな。タダじゃ動かないよ」
サンタはポケットから、先ほどセロリからもらった運び賃代わりのコインを取り出して、カウンターに置いた。
「こいつが代金さ」
「ほほう、珍しいコインだな」
「あの娘の国のコインだそうだ。標準流通貨幣じゃないらしい。ジョー、こいつを見たことがあるか?」
「どれどれ……」
そのコインを手にとってまじまじと見つめる。
顎に手をやって考えているが、すぐにあきらめてカウンターに置いた。
「わからんな。ただ大昔に見たことがあるような気がする。たぶんまだ星船乗りだった頃だ」
「えらい昔だな。価値はわかるかい?」
「さあ。まあ、思い出したら知らせてやるさ。見た限りでは安物ではないだろう」
「それはおれもそう思うんだけどな。いずれ価値がわからないんじゃ、代金になるのかどうかもわからないし」
「バス・ステーションまでならタダ取りみたいなもんだ。贅沢云うなよ」
「違いない。……ってことで、こいつの価値がわからないうちは、ともかく他に仕事を探さないとならないんだが、何かうまい話でもないかな?」
実のところ、サンタがこのオールド・ジョーの店《星海》に立ち寄った本当の目的はここからだった。
何ものんびりとバカ話をしながら酒を飲みに来た訳ではない。
それも半分は目的ではあるが、本当の目的は次の仕事探しであった。
「うまい話、ね。最近は不景気だからな」
「ないのか?」
「ないこともない」
「いいね。聞かせてくれ」
だがジョーが持っていた情報は、誠に胡散臭い情報だった。
首都マグダリアのヤコブ地区の、とある運送会社が『運び屋』を大量に募集しているのだが、その報酬が相場に較べて妙に高額だ、と云うのである。
サンタもその会社のことは耳にしたことがあった。
もともと中堅どころの運送会社で、今までは鳴かず飛ばずで商売をしていたはずである。
「ところが、だ。ここ数週間は妙に羽振りが良くてな。『運び屋』連中がわんさか押しかけているんだが、そいつらを全部、雇っているって話だ」
「なるほど、いかにも胡散臭そうだな」
「ああ。おかげで半分ヤクザ者の『闇運び屋』連中までが結構集まっているらしい。正規の運送会社は手を出していないようだが。どうだい?」
「危ないな。手をつけない方がよさそうな気がするよ」
「賢明だな。おれもそう思う。積荷についても徹底的に秘密らしい」
「秘密? そりゃ無理だろ。惑星内での『運び』ならまだしも『運び屋』に声をかけるくらいだから星間輸送だろ? そうなりゃ《歪空回廊》の《門》でチェックされるじゃないか」
「だから胡散臭いんだよ」
「役人とつるんでるってのか? あの運送会社が? あそこにそんな力はないだろ?」
「ああ。裏で動いている奴がいる」
「裏?」
「それが《十三番目の使徒教会》らしいんだな。教会ってのは辺境では治外法権だから、そいつを笠にきて何をやっているのかわからないもんだ」
サンタはそれを聞くと、ぼさばさ髪を乱暴にかきむしった。それから天井を見上げる。
「おいおい、シスターを拾ったと思ったら、今度は教会が何かいかがわしい『運び』をしてるってのかよ。何だかいやーな予感がするんだがおれの気のせいかな?」
「あのシスターが絡んでいるとは思えないが確かに嫌な符号だと思うぞ、サンタ」
「拾わなきゃよかったかな?」
サンタはぼやくように呟くとJDのグラスに口をつける。
心の中に不安がむくむくと黒雲のように湧き上がってくる感覚を憶えて、我知らず頭を抱える。
「寝るよ、ジョー。考えるのは明日だ」
「ああ、正解だ。寝るのが一番さ」
「だな。おやすみ、ジョー」
「ああ、おやすみ、サンタ」
サンタは席を立つ。
まあ、明日は別の日、だ。
「楽しい女の子たちだな、サンタ。おまえさんがうらやましいぜ」
「よせよ。ジョーも悪乗りし過ぎだ。シスターに気をつけろ、とか云っておきながら」
「まあ、それは嘘じゃない。……だがおまえさんもなかなか酔狂な奴だな。あんな娘を拾って送ってやるなんて。おまけに宿まで用意してやるとは、いつからそんなボランティア精神豊かな男になったんだ?」
皮肉っぽくジョーが云う。
『運び屋』サンタと云えば、仕事は速くて正確にこなすビジネスライクでクールな『運び』のプロ、が売りのはずじゃなかったのか、と。
「そんなキャッチコピーを口にした憶えはねーよ。もちろんビジネスライクは正しいけどな。タダじゃ動かないよ」
サンタはポケットから、先ほどセロリからもらった運び賃代わりのコインを取り出して、カウンターに置いた。
「こいつが代金さ」
「ほほう、珍しいコインだな」
「あの娘の国のコインだそうだ。標準流通貨幣じゃないらしい。ジョー、こいつを見たことがあるか?」
「どれどれ……」
そのコインを手にとってまじまじと見つめる。
顎に手をやって考えているが、すぐにあきらめてカウンターに置いた。
「わからんな。ただ大昔に見たことがあるような気がする。たぶんまだ星船乗りだった頃だ」
「えらい昔だな。価値はわかるかい?」
「さあ。まあ、思い出したら知らせてやるさ。見た限りでは安物ではないだろう」
「それはおれもそう思うんだけどな。いずれ価値がわからないんじゃ、代金になるのかどうかもわからないし」
「バス・ステーションまでならタダ取りみたいなもんだ。贅沢云うなよ」
「違いない。……ってことで、こいつの価値がわからないうちは、ともかく他に仕事を探さないとならないんだが、何かうまい話でもないかな?」
実のところ、サンタがこのオールド・ジョーの店《星海》に立ち寄った本当の目的はここからだった。
何ものんびりとバカ話をしながら酒を飲みに来た訳ではない。
それも半分は目的ではあるが、本当の目的は次の仕事探しであった。
「うまい話、ね。最近は不景気だからな」
「ないのか?」
「ないこともない」
「いいね。聞かせてくれ」
だがジョーが持っていた情報は、誠に胡散臭い情報だった。
首都マグダリアのヤコブ地区の、とある運送会社が『運び屋』を大量に募集しているのだが、その報酬が相場に較べて妙に高額だ、と云うのである。
サンタもその会社のことは耳にしたことがあった。
もともと中堅どころの運送会社で、今までは鳴かず飛ばずで商売をしていたはずである。
「ところが、だ。ここ数週間は妙に羽振りが良くてな。『運び屋』連中がわんさか押しかけているんだが、そいつらを全部、雇っているって話だ」
「なるほど、いかにも胡散臭そうだな」
「ああ。おかげで半分ヤクザ者の『闇運び屋』連中までが結構集まっているらしい。正規の運送会社は手を出していないようだが。どうだい?」
「危ないな。手をつけない方がよさそうな気がするよ」
「賢明だな。おれもそう思う。積荷についても徹底的に秘密らしい」
「秘密? そりゃ無理だろ。惑星内での『運び』ならまだしも『運び屋』に声をかけるくらいだから星間輸送だろ? そうなりゃ《歪空回廊》の《門》でチェックされるじゃないか」
「だから胡散臭いんだよ」
「役人とつるんでるってのか? あの運送会社が? あそこにそんな力はないだろ?」
「ああ。裏で動いている奴がいる」
「裏?」
「それが《十三番目の使徒教会》らしいんだな。教会ってのは辺境では治外法権だから、そいつを笠にきて何をやっているのかわからないもんだ」
サンタはそれを聞くと、ぼさばさ髪を乱暴にかきむしった。それから天井を見上げる。
「おいおい、シスターを拾ったと思ったら、今度は教会が何かいかがわしい『運び』をしてるってのかよ。何だかいやーな予感がするんだがおれの気のせいかな?」
「あのシスターが絡んでいるとは思えないが確かに嫌な符号だと思うぞ、サンタ」
「拾わなきゃよかったかな?」
サンタはぼやくように呟くとJDのグラスに口をつける。
心の中に不安がむくむくと黒雲のように湧き上がってくる感覚を憶えて、我知らず頭を抱える。
「寝るよ、ジョー。考えるのは明日だ」
「ああ、正解だ。寝るのが一番さ」
「だな。おやすみ、ジョー」
「ああ、おやすみ、サンタ」
サンタは席を立つ。
まあ、明日は別の日、だ。
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