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第13章 リステリアス宮の攻防
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巨大ロボが右腕を大きく振りかぶった。
少し離れてそれを見ていた野次馬たちが歓声を上げる。
『ラブリー・ゴッド・パ~ンチ!』
巨大ロボ《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》の外部スピーカーからフタバの声が大音量で響き渡り、巨大ロボの超合金製の右ストレートがリステリアス宮の外郭を守る城壁に炸裂した。
強烈な破壊音とともにまるで積み木のように城壁が崩れ落ちる。
周辺を守っていた兵士たちが慌てて逃げ出した。
その向こう側、宮殿の庭に集まっていた賓客たちの特設観覧席では、この巨大ロボの出現にやんやの大喝采である。
フタバは《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》の右手を高々と上げ、人差し指を天に向かって突き刺す。
格闘技でお馴染みのシュートサインである。
賓客たちはさらに大歓声でそれに応える。
「まあ、何だか、ヒーローになったみたいで楽しいですわね」
フタバは操縦席でにっこりと笑う。
そんな巨大ロボを尻目に《ノーメンライダー》ユズナは大型バイクを飛ばして表門から宮庭に侵入した。
後ろにはクロードが乗っている。
「何もスピーカーで技の名前を叫ぶ必要はないんちゃうか?」
彼女は巨大ロボに気をとられている兵士の隙をついて、バイクをまっしぐらに庭の中央に据えられた断頭台に向ける。
そこには周囲をぐるりと兵士たちに囲まれたサンタと羽衣の姿が見えていた。
「おい、クロード、ウチが兵士どもを引きつけるさかいにあのふたりを解放するんやで。わかっとるか?」
「は、は、はい」
「あと断っとくが、ウチと二人乗り出来るなんてのは今回限りやからな。ええな?」
「はい。わかっています」
「よっしゃ、しっかり捕まっとけ!」
後ろにクロードを乗せているにも関わらず、ユズナは大型バイクを大胆にウイリーさせる。
バイクに気づいて向かって来る兵士を蹴散らしながら、あっと云う間にサンタたちを取り囲んでいた兵士の集団に突っ込んだ。
かれらも巨大ロボに気をとられていて、一瞬、ユズナのバイクへの対応が遅れた。
慌ててそちらに振り向いた時にはすでに遅く、何人かがバイクに跳ね飛ばされ、囲んでいた輪に風穴が空いた。
そのままユズナはバイクをテールスライドさせて、サンタと羽衣の前で急停車させる。
「ユズナ?」
サンタが驚きの声を上げるのへ、ユズナがウインクする。
「元気やったか、あんさん? どうやら間に合うたようやな」
クロードが素早くバイクから降りると(と云うか、ユズナに乱暴に蹴落とされると)、再びバイクのエンジンが甲高い唸り声を上げた。
「いてまうで~!」
そのままユズナは兵士たちの中へバイクを突っ込んだ。
そしてそのままバイクから跳び下りると、近くの兵士に強烈な蹴りをお見舞いする。
喰らった兵士は数メートル以上弾き飛ばされてそのまま失神した。
身軽に着地するユズナ。
「ほほう。なるほど。マミの奴やるやないか。こりゃ、大したパワードスーツやで」
彼女は嬉しそうに呟くと、今度はダッシュで兵士の輪に飛び込んで行った。
手にはバールが鈍い金属の光を放っている。
それを見届けるとクロードがサンタと羽衣に近づき、マミから渡された器具で手錠を破壊する。
「助けに来ましたよ、ウイード」
「あんたは?」
「連邦警察のクロード・ビュー警部。ユズナさんの友達です」
ああ、ユズナが云っていた最近知り合った連邦警察の男、と云うのはかれのことなのか、と、サンタは思った。
(気障な野郎だな。ユズナには似合わないぜ……けど、ちょっと薄汚れてるな)
もちろんクロードがマグダラからずっと荷台でやってきたとは、サンタは知る由もなかった。
「さあ、早く逃げましょう。あなたたちを無事保護するようにユズナさんにきつく云われていますので」
その言葉に羽衣が答えた。
「逃げるのはちょっと待ってくれる? あたしもユズナの加勢してくる」
「え?」
どう見ても、この大騒ぎに参加しなきゃ女がすたる、的なオーラをぎらぎらと発している羽衣。
その表情は、止めても無駄だよ、と、強烈に主張していた。
(こうなっちゃ、ダメだな)
サンタは頭を抱えた。
「おまえ、さっきまでヘロヘロだったじゃないか? 大丈夫なのか?」
「うん。栄養ドリンク《リステリアスA》が思ったよりも効いてるみたい」
「やっぱり怪しいな、あのドリンク剤。効き目がありすぎる」
「ってことで行ってくるね♪ いいでしょ?」
「え~い、わかったから行ってこい! 但しおれが呼んだらすぐに戻れよ!」
「了解!」
云うが早いか、羽衣は超人的なジャンプ力で一気にその騒ぎの中に飛び込んだ。
「ああ、行ってしまった……」
クロードが呻く。
「逃げるのは少し先になりそうだな、クロード警部」
頭を掻きながらサンタが笑う。
「笑っている場合ではないでしょう?」
「いや、まあ、我慢してくれよ。それよりもいいのか? 連邦警察がこんな無茶しても……」
「そ、それは……」
クロードが口ごもって周囲を見回す。
宮殿は大変なことになっていた。
フタバの操る巨大ロボ《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》はすでに宮殿の庭に侵入しており、槍や剣で応戦する兵士たちに処構わずバルカン砲の銃撃を浴びせている。
さらには崩れた城壁の破片をかれらに投げつけ、また口からは火炎さえ吐いていた。
これではサンタたちを救いに来た正義の使者と云うよりは悪魔の怪獣である。
またユズナと羽衣は肉弾戦で甲冑の兵士やら騎士やらを次々と沈めていく。
特にユズナのバール捌きの鮮やかさは絶対に若い頃にヤンチャをして身に着けたものだろう。
いったいどんな少女時代を過ごしたものか――。
「……ユズナさんたちの暴走がこれほどとは思ってもいませんでした。どう収拾すればいいのやら」
クロードは半泣きである。
だがそんなクロードのことなどまったくお構いなしに彼女らは傍若無人に暴れまわる。
やがて――。《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》がのっしのっしと歩み進むと、特設観覧席の前で、ぴたり、と停止した。
観覧席にいた賓客たちはこの騒ぎを堪能していたのだが、その巨大ロボの様子に何か不穏なものを感じて、急に真顔になってそれを見上げた。
すると突然 《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》が、びしっ、と特設観覧席の賓客たちを指差した。
『贅の限りを尽くして退廃的で悪趣味な余興にうつつを抜かし、ついには悪事にまで手を染めるとは、うぬらはそれでも人間か? 例えお天道様が許しても、この連邦警察・特別機動部隊が許さぬぞ。この場で彼岸に送り届けてやろう!』
フタバが外部スピーカーから大見得を切る。
その言葉に一般の観客たちから、どっと歓声が上がり、一方で今までこの騒ぎが余興だと思い込んでいた賓客たちは、実は余興の生贄が自分たちらしいことにようやく気がついた。
「うあああああ、れ、連邦警察の手入れだ!」
「きょ、巨大ロボに殺される!」
口々に悲鳴を上げパニック状態で特設観覧席から逃げ出し始める。
階段状の観覧席から転げ落ち、ひっくり返った料理を頭から被り、ほうほうの体で逃げ出す。
「おい、クロード」とサンタ。
「フタバの奴、連邦警察・特別機動部隊、とか云ってたが?」
「はい……」
放心状態である。
「そんなのあるのか?」
「いや、そんなもの連邦警察には存在しません」
ふたりは顔を見合わせてため息をつく。
「連邦警察、と云っちまってたが、大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃありません」
クロードの顔は蒼白である。
「けど、これで既成事実として連邦警察の手入れってことになっちまったぜ」
「はい」
その声は蚊の鳴くようなか細い声である。
(あ~、こりゃヤバイな。どう見ても、あいつら、やり過ぎだ)
今さらではある。
「おい、クロード、連邦は今回の件で何か証拠でも握っているのか? ってか、証拠を握っていたらユズナたちでなく、本物の連邦警察が来ているはず、か……?」
「はい、その通りです。一応、マグダラのセンターで亜人の子供たちの保護と、これに加担していたアズナガと云う神父は確保しましたが、まだリスタル公国が関与している確固たる証拠はありません」
さすがにサンタはクロードが気の毒になった。このままではかれの首が飛ぶどころの騒ぎではないだろう。
「仕方ないな。あまり警察と仲良くする気はないんだが、助けてもらった礼だ。いい情報を教えてやる。実はこの城の地下に例の亜人誘拐の施設があるんだ。そいつを押さえればこの事態も何とかなるんじゃないか?」
「な、それは本当ですか?」
クロードの目が輝いた。
サンタの言葉が、絶望の中の一筋の光、地獄に堕ちたカンダタにとっての一本の蜘蛛の糸、に思えた。
「ああ。今、場所を教えてやる」
サンタが自身の脳裡に浮かんだ施設の位置をクロードに伝える。
かれは、ガッツポーズをすると、サンタに頭を下げた。
「ありがとうございます。これで首もつながるし国際問題にもならない……と、思いますが……」
多少自信なさげではあるが、ともかくかれは宮殿に向かって走り出した。サンタは呑気にそれに手を振る。
「まあ、そんなに簡単にこの後始末が終わるとは思えないけどなあ」
かれは呟くと宮殿の惨状を眺めて苦笑するのだった。
そのとき。
「ラスバルト卿閣下! こちらへ!」
誰かが叫ぶ声が聞こえた。
サンタはその声の方へ反射的に目をやる。
ラスバルトが宮殿に向かっているところであった。
「あいつめ、逃げるつもりだな。そうは行くか」
サンタは周りを見回す。
(羽衣は?)
彼女はユズナといっしょに兵士たちと戦っていた。
その闘いぶりはさながら闘神の如く鮮やかで、遠目に見てもほれぼれするほどだ。
だが今はそれどころではない。
「羽衣!」
サンタが叫ぶ。
騒然としている中、普通では決して届く訳はない声であったが、羽衣の鋭敏な聴覚はサンタの声音を正確に聞き分けた。
「行くぞ。ラスバルトを捕まえて、一発、殴ってやる」
「了解!」
かなりの距離であるが彼女が親指を立てたのがわかった。
それから彼女はユズナに、あとはよろしく、と云うように合図すると、サンタの方へ向かって跳躍した。
少し離れてそれを見ていた野次馬たちが歓声を上げる。
『ラブリー・ゴッド・パ~ンチ!』
巨大ロボ《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》の外部スピーカーからフタバの声が大音量で響き渡り、巨大ロボの超合金製の右ストレートがリステリアス宮の外郭を守る城壁に炸裂した。
強烈な破壊音とともにまるで積み木のように城壁が崩れ落ちる。
周辺を守っていた兵士たちが慌てて逃げ出した。
その向こう側、宮殿の庭に集まっていた賓客たちの特設観覧席では、この巨大ロボの出現にやんやの大喝采である。
フタバは《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》の右手を高々と上げ、人差し指を天に向かって突き刺す。
格闘技でお馴染みのシュートサインである。
賓客たちはさらに大歓声でそれに応える。
「まあ、何だか、ヒーローになったみたいで楽しいですわね」
フタバは操縦席でにっこりと笑う。
そんな巨大ロボを尻目に《ノーメンライダー》ユズナは大型バイクを飛ばして表門から宮庭に侵入した。
後ろにはクロードが乗っている。
「何もスピーカーで技の名前を叫ぶ必要はないんちゃうか?」
彼女は巨大ロボに気をとられている兵士の隙をついて、バイクをまっしぐらに庭の中央に据えられた断頭台に向ける。
そこには周囲をぐるりと兵士たちに囲まれたサンタと羽衣の姿が見えていた。
「おい、クロード、ウチが兵士どもを引きつけるさかいにあのふたりを解放するんやで。わかっとるか?」
「は、は、はい」
「あと断っとくが、ウチと二人乗り出来るなんてのは今回限りやからな。ええな?」
「はい。わかっています」
「よっしゃ、しっかり捕まっとけ!」
後ろにクロードを乗せているにも関わらず、ユズナは大型バイクを大胆にウイリーさせる。
バイクに気づいて向かって来る兵士を蹴散らしながら、あっと云う間にサンタたちを取り囲んでいた兵士の集団に突っ込んだ。
かれらも巨大ロボに気をとられていて、一瞬、ユズナのバイクへの対応が遅れた。
慌ててそちらに振り向いた時にはすでに遅く、何人かがバイクに跳ね飛ばされ、囲んでいた輪に風穴が空いた。
そのままユズナはバイクをテールスライドさせて、サンタと羽衣の前で急停車させる。
「ユズナ?」
サンタが驚きの声を上げるのへ、ユズナがウインクする。
「元気やったか、あんさん? どうやら間に合うたようやな」
クロードが素早くバイクから降りると(と云うか、ユズナに乱暴に蹴落とされると)、再びバイクのエンジンが甲高い唸り声を上げた。
「いてまうで~!」
そのままユズナは兵士たちの中へバイクを突っ込んだ。
そしてそのままバイクから跳び下りると、近くの兵士に強烈な蹴りをお見舞いする。
喰らった兵士は数メートル以上弾き飛ばされてそのまま失神した。
身軽に着地するユズナ。
「ほほう。なるほど。マミの奴やるやないか。こりゃ、大したパワードスーツやで」
彼女は嬉しそうに呟くと、今度はダッシュで兵士の輪に飛び込んで行った。
手にはバールが鈍い金属の光を放っている。
それを見届けるとクロードがサンタと羽衣に近づき、マミから渡された器具で手錠を破壊する。
「助けに来ましたよ、ウイード」
「あんたは?」
「連邦警察のクロード・ビュー警部。ユズナさんの友達です」
ああ、ユズナが云っていた最近知り合った連邦警察の男、と云うのはかれのことなのか、と、サンタは思った。
(気障な野郎だな。ユズナには似合わないぜ……けど、ちょっと薄汚れてるな)
もちろんクロードがマグダラからずっと荷台でやってきたとは、サンタは知る由もなかった。
「さあ、早く逃げましょう。あなたたちを無事保護するようにユズナさんにきつく云われていますので」
その言葉に羽衣が答えた。
「逃げるのはちょっと待ってくれる? あたしもユズナの加勢してくる」
「え?」
どう見ても、この大騒ぎに参加しなきゃ女がすたる、的なオーラをぎらぎらと発している羽衣。
その表情は、止めても無駄だよ、と、強烈に主張していた。
(こうなっちゃ、ダメだな)
サンタは頭を抱えた。
「おまえ、さっきまでヘロヘロだったじゃないか? 大丈夫なのか?」
「うん。栄養ドリンク《リステリアスA》が思ったよりも効いてるみたい」
「やっぱり怪しいな、あのドリンク剤。効き目がありすぎる」
「ってことで行ってくるね♪ いいでしょ?」
「え~い、わかったから行ってこい! 但しおれが呼んだらすぐに戻れよ!」
「了解!」
云うが早いか、羽衣は超人的なジャンプ力で一気にその騒ぎの中に飛び込んだ。
「ああ、行ってしまった……」
クロードが呻く。
「逃げるのは少し先になりそうだな、クロード警部」
頭を掻きながらサンタが笑う。
「笑っている場合ではないでしょう?」
「いや、まあ、我慢してくれよ。それよりもいいのか? 連邦警察がこんな無茶しても……」
「そ、それは……」
クロードが口ごもって周囲を見回す。
宮殿は大変なことになっていた。
フタバの操る巨大ロボ《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》はすでに宮殿の庭に侵入しており、槍や剣で応戦する兵士たちに処構わずバルカン砲の銃撃を浴びせている。
さらには崩れた城壁の破片をかれらに投げつけ、また口からは火炎さえ吐いていた。
これではサンタたちを救いに来た正義の使者と云うよりは悪魔の怪獣である。
またユズナと羽衣は肉弾戦で甲冑の兵士やら騎士やらを次々と沈めていく。
特にユズナのバール捌きの鮮やかさは絶対に若い頃にヤンチャをして身に着けたものだろう。
いったいどんな少女時代を過ごしたものか――。
「……ユズナさんたちの暴走がこれほどとは思ってもいませんでした。どう収拾すればいいのやら」
クロードは半泣きである。
だがそんなクロードのことなどまったくお構いなしに彼女らは傍若無人に暴れまわる。
やがて――。《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》がのっしのっしと歩み進むと、特設観覧席の前で、ぴたり、と停止した。
観覧席にいた賓客たちはこの騒ぎを堪能していたのだが、その巨大ロボの様子に何か不穏なものを感じて、急に真顔になってそれを見上げた。
すると突然 《ラブリー・ゴッド・マシンダー・X》が、びしっ、と特設観覧席の賓客たちを指差した。
『贅の限りを尽くして退廃的で悪趣味な余興にうつつを抜かし、ついには悪事にまで手を染めるとは、うぬらはそれでも人間か? 例えお天道様が許しても、この連邦警察・特別機動部隊が許さぬぞ。この場で彼岸に送り届けてやろう!』
フタバが外部スピーカーから大見得を切る。
その言葉に一般の観客たちから、どっと歓声が上がり、一方で今までこの騒ぎが余興だと思い込んでいた賓客たちは、実は余興の生贄が自分たちらしいことにようやく気がついた。
「うあああああ、れ、連邦警察の手入れだ!」
「きょ、巨大ロボに殺される!」
口々に悲鳴を上げパニック状態で特設観覧席から逃げ出し始める。
階段状の観覧席から転げ落ち、ひっくり返った料理を頭から被り、ほうほうの体で逃げ出す。
「おい、クロード」とサンタ。
「フタバの奴、連邦警察・特別機動部隊、とか云ってたが?」
「はい……」
放心状態である。
「そんなのあるのか?」
「いや、そんなもの連邦警察には存在しません」
ふたりは顔を見合わせてため息をつく。
「連邦警察、と云っちまってたが、大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃありません」
クロードの顔は蒼白である。
「けど、これで既成事実として連邦警察の手入れってことになっちまったぜ」
「はい」
その声は蚊の鳴くようなか細い声である。
(あ~、こりゃヤバイな。どう見ても、あいつら、やり過ぎだ)
今さらではある。
「おい、クロード、連邦は今回の件で何か証拠でも握っているのか? ってか、証拠を握っていたらユズナたちでなく、本物の連邦警察が来ているはず、か……?」
「はい、その通りです。一応、マグダラのセンターで亜人の子供たちの保護と、これに加担していたアズナガと云う神父は確保しましたが、まだリスタル公国が関与している確固たる証拠はありません」
さすがにサンタはクロードが気の毒になった。このままではかれの首が飛ぶどころの騒ぎではないだろう。
「仕方ないな。あまり警察と仲良くする気はないんだが、助けてもらった礼だ。いい情報を教えてやる。実はこの城の地下に例の亜人誘拐の施設があるんだ。そいつを押さえればこの事態も何とかなるんじゃないか?」
「な、それは本当ですか?」
クロードの目が輝いた。
サンタの言葉が、絶望の中の一筋の光、地獄に堕ちたカンダタにとっての一本の蜘蛛の糸、に思えた。
「ああ。今、場所を教えてやる」
サンタが自身の脳裡に浮かんだ施設の位置をクロードに伝える。
かれは、ガッツポーズをすると、サンタに頭を下げた。
「ありがとうございます。これで首もつながるし国際問題にもならない……と、思いますが……」
多少自信なさげではあるが、ともかくかれは宮殿に向かって走り出した。サンタは呑気にそれに手を振る。
「まあ、そんなに簡単にこの後始末が終わるとは思えないけどなあ」
かれは呟くと宮殿の惨状を眺めて苦笑するのだった。
そのとき。
「ラスバルト卿閣下! こちらへ!」
誰かが叫ぶ声が聞こえた。
サンタはその声の方へ反射的に目をやる。
ラスバルトが宮殿に向かっているところであった。
「あいつめ、逃げるつもりだな。そうは行くか」
サンタは周りを見回す。
(羽衣は?)
彼女はユズナといっしょに兵士たちと戦っていた。
その闘いぶりはさながら闘神の如く鮮やかで、遠目に見てもほれぼれするほどだ。
だが今はそれどころではない。
「羽衣!」
サンタが叫ぶ。
騒然としている中、普通では決して届く訳はない声であったが、羽衣の鋭敏な聴覚はサンタの声音を正確に聞き分けた。
「行くぞ。ラスバルトを捕まえて、一発、殴ってやる」
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