知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

三章 〜半年が経って〜

三十話 『考え』

——犠牲になったのだ。妹は。この儀式の犠牲に。その時間は約25分ぐらいだ。その25分はひたすら妹が悲鳴をあげていて滑稽だった。


「……なんの感情も湧かないしどうでもいいけど」


これがまだかわいい妹ならともかく、中身はクソみたいな奴だし。あいつがどうなろうとどうでもいいし、あいつも私と同じ立場なら、同じことをやっていただろう。


いやぁでも本当にざまぁだわ……！
あいつの泣き叫ぶ姿が見れて大変楽しかったです！


「——で？あんたはこれで良かったの？」


「ナタリーさん……気を遣ってくれるんですね……」


「は？別に気を遣ってないし」


そうは言っても、ナタリーさん、私に対してちょっと優しくなった気がする。前まではもっとこう……ツンツンしてたというか、私に興味ないって感じだった。
でも、今はこうして私の心配をしてくれるし。


「ナタリーさんは優しいですね……」


まさか、こんなところで優しさを感じるなんて。


「は？別に優しくないし」


「……あれ？もしかしてナタリーさんって……」


ツンデレというやつ……？いやいや、漫画だと極悪キャラだし騙されてはいけない。だってこいつはローラに酷いことしたクソ女だし。


「ま、そんなこと、どうでもいいけど。あ、あいつが起きた」


「んん……な、何ここ……！？」


イザベラが起きた。妹が、追い出されたのでこれはオリジナルのイザベラだろう。


「うわ……っ、お前……！！」


イザベラは私の顔を見るなり、気色悪い物を見るように顔を顰めた。


「あんた、あのよく分からない空間にいた女じゃない！なんでこんなところに……！」


んん？よくわからない。空間？


「よくわからない空間ってなんですか……？」
「……お前……覚えてないのか……？」


イザベラは私のことをかなり警戒しているようで、一定の距離を保っていた。


「覚えてないって……」　


あの場所、イザベラは知ってるのかな……？確かに半年ぐらいよくわからん空間にいたのは間違いではないけど、私とイザベラは会ったことがない気がするし、イザベラがあの空間に居た記憶はない。


「お前、田中奈緒だろ？」

「は……」


いやちょっと待て。何で知ってるの！？中身……妹じゃないよね……？？　


「なんで知ってるんですか……？」
「あいつ——妹だっけ？が言ってた。田中奈緒って」

「妹……？」


あいつと話したのか……！？まぁ、だからどうした？って話だけど。


「ま、いいけど。で、お前なんでここにいるの？あの空間はなんだったのよ」

「……あれは……まぁ、精神世界みたいな？」

「精神世界……？」


あの場所のことを話したら、私は何だか消えてしまう、そんな気がした。だから、適当にごまかしておこう。


「ま、いいや。あんた邪魔だから寝てて」


「——え？」


ナタリーはそう言って私をぶん殴った。


「は……？」


私はそのまま意識を失った。意味がわからないですけど！？とは思ったけどよく考えたら——


「（こいつの考えなんて……）」


身勝手でさっきは利害の一致しただけだということに今更気づいたのと同時に私は気を失った。