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二章 〜思惑〜
一話 『パーティ』
しおりを挟むそしてやってきた日曜日。
今日はアルディ家の屋敷で開かれるパーティが開かれる日だ。祖父と一緒に向かうとそこにはニコラス様がいた。祖父が挨拶すると、ニコラス様はこちらを見て微笑んだ。
「初めまして。ニコラス・シャトレと申します」
その様子は優しげで、礼儀正しい印象だ。この人が……私の婚約者になるのかー。そしてローラに惚れて私は婚約破棄するのか……
「初めまして!私、ナタリー・アルディですわ!よろしくお願いしますね」
ニコッと私が笑うがニコラス様は微笑むだけだし、私のことあんまり興味なさそー。きっと親に言われて仕方なく来てるんだろうなぁ……!
「ところでナタリーさん。あそこにレオンがいるけども、レオンとは仲がいいの?」
そう言いながらチラッとニコラス様はレオンを見る。え!?本当だ!マジでいるじゃん!
「い、いえ。全然。むしろ仲は悪いかと」
「あ、そうなんだ?」
ニコラス様がそう言った直後、
「おい、ナタリー・アルディ」
レオン様に呼ばれた。……めちゃくちゃ不機嫌そうだわ!
「どうしてここにレオン様が?」
そう聞くとレオン様は答えた。
「父親についてきただけだ。よくわかんねぇけど、俺も招待されたせいでローラとの約束が……」
…それを私に言われても…あ、……ま、まさか……
「(まさかリリィの仕業……)」
なわけねーか。リリィにそんな権限ないよな……え?ない……よね?
「(いや、でもリリィだしな……)」
リリィならやりかねない気がしてきた……!レオン様とローラの仲を邪魔してやるぜぇ!みたいな感じで招待状を送ったとかあり得るかも……?
「(リリィに確認した方がいいかな?)」
いや、怖いから辞めよう……!リリィならやりかねないし……!!
「………ナタリー様?」
「うわっ!?リリィ!」
いきなり現れたリリィにびっくりしてしまった。心臓止まるかと思った……。
リリィはいつものようにニコニコとしている。だけど何か違和感があるような気もしなくもないかもしれない。
やっぱり……今日のリリィなんか変じゃない?だってさっきまでいなかったもん。いつの間に来たの?どうやって移動したの?
「それに、レオン様も何故ここにいるんですか?」
………ニッコリ笑顔なのに何故か威圧感を感じるんだけど……? これ真面目にリリィがレオン様に招待状送ったんじゃね……?
「ちげーよ。俺は父親に連れられてきただけだぞ」
「あらそうなんですね。それにしても残念でしたわねぇ~、せっかくローラ様との約束があったというのに……」
や、やっぱり……リリィ、レオン様に招待状を送ったな!?しかもわざとらしい言い方をするあたり……確信犯だな……
「………まさか……メイド、お前……」
「失礼ですが、メイドではなく、私にはリリィという名前があるのですが?」
レオン様にも動じないで言い返すとは流石である。そしてやっぱりリリィが邪魔したんだろうなぁ……!
「ローラ様は今日はご家族と過ごされる予定だとおしゃってましたよ?ご家族の為にお料理を作るとおっしゃっていたんです。ご家族想いなローラ様、素敵だと思いませんこと?」
ローラの手料理かー食べてみたいなー。可愛い女の子が作った手料理を食べれるなんて最高だなー、と呑気に考えている場合ではないのだ。
「………ローラの手作り料理……」
食べたいって顔で言っているなー、レオン様。そんなに食べたかったのか……まぁ、ローラのお弁当美味しいよなー。
「私とナタリー様はローラ様のお弁当を食べたことがあるんですの!」
うわー。明らかにリリィがレオン様にマウントを取っている。確かにこの前、ローラとおかず交換した時に食べた唐揚げは美味しかったけどさぁ。
「ローラ・クレーヴ……か」
何かニコラス様がそう呟いている。これは恋のフラグ?なのか?だとしたらローラめちゃくちゃモテモテだな。
「あら。貴方がナタリー様の婚約者となるお方ですか?」
そう言いながら微笑むリリィ。その笑みからは敵意しか感じないのだが……? ニコラス様はリリィをチラリと見てから、
「ああ。ニコラス・シャトレだ。君は……ナタリー・アルディさんの専属メイドだったね?」
「ええ。私はナタリー・アルディ様の専属メイドでございます。以後、お見知り置きを」
リリィも微笑むものの、目が笑ってないよ……?てゆうか、レオン様も何ともいえない顔をしているし。
これは……修羅場というやつではなかろうか?………修羅場になるのはいいけどここでするのは辞めろ。頼むから。
「そうか……」
ニコラス様がそう言った瞬間――。
「今日はお集まりいただきありがとうございます!本日はこのパーティに来てくださった皆様に感謝いたします」
そんな声と共に会場内に音楽が流れ出す。こんな急に……と驚きながらも周りを見ると、みんなも驚いた様子でキョロキョロとしている。あ、やっぱりみんなも知らなかったんだね。
そんな中、一人だけ嬉々として踊っている人がいる。それは――。
「…………誰?あの人?」
思わずそう呟いてしまった。だって、そこにいる人はキラキラとしたオーラを放っていて、見たことがないくらい美形なのだ。
「あれは……スティーブン様ですね……」
リリィが耳打ちでこっそり教えてくれた。………誰?スティーブンって……? 私の疑問を感じ取ったのかリリィが説明してくれた。
なんでも、公爵家の跡取り息子であり、社交界の人気者らしい。…チャラ男であり、ナルシストでもあるらしいが。
そんな人もローラのことを好きになるらしい。ローラ、マジすげーな……
「おー。君があのローガス・アルディの孫娘?俺の名前はスティーブン・マーティン。よろしくついでに俺と一曲どうですか?お嬢様」
「え……?」
戸惑う私に構わず、スティーブン様は強引に私をダンスに誘おうとする。
てか、私を誘うとか意味わかんないんですけど!? そんなことを思っているとニコラス様が私とスティーブン様の間に割って入り……
「スティーブン、彼女は僕の婚約者だから悪いけど、遠慮してくれるかな?」
「ほーん。ニコラスが婚約者?そっかー。じゃあ、別の令嬢に声かけた方がいいかな」
そう言い、スティーブン様は去っていく。随分とあっさりだなぁ……それにしてもTHE・遊び人!みたいな感じでちょっと苦手かも……
「ナタリーさん。よろしければ僕と踊ってくれませんか?」
「あ、はい」
私が返事をすると、ニコラス様は私の手を取り、ダンスをする場所へエスコートしてくれる。まぁ、婚約者になったしな。周りからは殺意を感じるけども。
「ナタリーさんは踊れる?」
「はい、多少は」
ダンスは貴族令嬢の嗜みの一つだからね。私は習ってないけど身体が自然についているので、幼少期の頃からナタリー・アルディが頑張っていたんだろうなぁ……と、そんなことを思いながら私はニコラス様と踊った。
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