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一章 〜始まり〜
九話 『婚約者』
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あれから数ヶ月が経った。私達はあれから楽しく学園生活を送っていた。学園に行き、友達(ローラとリリィ)と話し、授業を受けて、お昼ご飯は友達(ローラとリリィ)と一緒に食べて、放課後も一緒に過ごして……そこで気づいたことがある。
「(………あれ。私……ローラとリリィ以外友達いない……?)」
もちろん、グループ活動や、選択科目など、他の生徒と交流する場面はあるのだが、それだけだし、そもそもそこまで仲良くなった人がいないのだ。
まぁ、元々ローラとリリィ以外の人とは距離を置いていたのもあるのだが、それにしてもあまりにも交流が少ない気がするのだ。
しかし、私はこの生活に満足していたし、特に問題はなかった。てゆうか、ローラもリリィも言っちゃなんだけど、友達少ないしね……! そうして今日もまたいつものように過ごしていたのだけど――。
「あー……ローラ。今日は一緒に帰らないか?」
ローラとレオン様の仲も順調っぽいし。リリィはなんか面白くなさそうにこっちを見てるけど……でも、これって私のせいじゃないよね?
『ナタリー様はいいんですか!?』とか言われても困るもの。確かにローラのことは可愛いと思ってるし、親友だと思っているけれど、恋愛感情はないし。リリィが望むような展開に出来なくてごめんね。そんなことを思っていると、
「ナタリー、いいか?」
「お祖父様……」
そこに現れたのは私の唯一の親である祖父のローガス・アルディだ。私の両親は幼い頃に亡くなったらしく、物心ついた時にはもう祖父しかいなかった。祖父は厳しい人だったが、私が寂しくないように気を使ってくれていたと思う。
だからだろうか。私は祖父を尊敬しているし、大好きだった。その気持ちは今も変わらない。
そして、今年で75歳になるというのにまだまだ現役バリバリらしい。昔は冒険者として活躍していて、ランクSSの冒険者として名を馳せていたということだ。
私も冒険者になってもいいかなーなんて思ったこともあるけれど、体力がないし、何より危ない目に合うかもしれないと考えると無理だと諦めた。
それに――。
「実はお前に婚約の話がきているんだ」
「えっ……?」
いきなりのことで驚いたものの、貴族の娘として生まれた以上、いつかは婚約者が出来るだろうと思っていたため、あまり驚きはない。むしろ、こんなにも早く来るとは思ってなかったくらいだ。
それにしても相手は誰なんだろう?と、思いながら祖父を見つめると、
「婚約者の名前はニコラス・シャトレ公爵令息だ」
…ニコラス・シャトレ……?誰やねん……リリィに聞いたら分かるかなー?漫画の主要キャラクターなのかな……?
「明後日の日曜日にアルディ家主催でパーティがあるからその時に会うからよろしく頼むぞ」
「はい……わかりましたわ」
そもそも、まだ会ったこともない人のところに行くのか……。しかも、急すぎない?とも思うが、これが貴族の常識なのだと言われればそれまでなので何も言えないし。
「ナタリー様。今の話……!」
私の部屋に来たリリィは慌てている。まぁ、リリィはローラ×ナタリーのカップリング推しで百合好きでもあるから仕方がないといえばそうなんだけどね……。
「ねぇ……リリィは……ニコラス・シャトレ公爵令息知ってる?漫画に出てこないの?……やっぱり主要キャラなの?」
「えぇっと…そうですね。…簡単に言うと……当て馬です」
サラリとリリィはそう言った。当て馬か……ナタリーと同じ立場……ではないか。だって、ニコラス様はローラのことをストーカーしないだろうし。
「………でも、漫画では、ナタリーには婚約者なんて出てこなかった……つまり、ここからは世界線は捻じ曲がり、違う未来になる可能性があるということね……」
リリィが何やらブツブツと言っているが気にしないことにした。それよりも私は……
「(………結婚……)」
結婚を前提にお付き合いしていた彼のことを思い出す。彼は優しくて、紳士的で……とても素敵な人だったのに……妹とは浮気してたし……最後にはひどい言葉も浴びせられたし……
本当に最悪な男だったなぁ……と思ったし、婚約者とか大丈夫かぁ?って不安にもなってる。
「………ナタリー様、大丈夫ですよー。ニコラス・シャトレ様はクズではありませんし、漫画でも誠実な人でナタリー・アルディと違い、正々堂々とローラを取り合っていたし。ナタリー・アルディと違い」
「二回言わなくても………」
「大事な事なので」
きっぱりとそう言ったリリィに私はまた苦笑した。そっか……誠実な人かぁ、なら、安心かな……?
「……だからローラ様が好きだから婚約破棄しようという展開はあると思いますが……そうなったときにはナタリー様も争奪戦に参戦すればいいんですよ!」
「……え?私も参戦するの!?」
話がややこしくなると思うけど大丈夫?それ……と、不安げにリリィを見るとリリィは笑顔でこう言った。
「私はナタリー様とローラ様が付き合ってくれるのが一番嬉しいんです!そのために応援してますよ!!」
そうだった。この子……百合好きだった……!今のローラとレオン様が順調なのが面白くない、ということなんだろうけども。だけど、ローラもレオン様のことを話すと頬を赤らめるしなぁ……
「……まぁ、ありがとう」
……まぁ……でも……とりあえず、リリィに話を合わせておこう。話を合わせておかないと面倒くさい話になりそうだし。
………だけど私は知らなかった。でも……まさかあんなことになるなんて……私も、リリィも想像さえしていなかった。
――――――――――――――――――――――――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。一章はここで終わりで次からは二章に入ります。
「(………あれ。私……ローラとリリィ以外友達いない……?)」
もちろん、グループ活動や、選択科目など、他の生徒と交流する場面はあるのだが、それだけだし、そもそもそこまで仲良くなった人がいないのだ。
まぁ、元々ローラとリリィ以外の人とは距離を置いていたのもあるのだが、それにしてもあまりにも交流が少ない気がするのだ。
しかし、私はこの生活に満足していたし、特に問題はなかった。てゆうか、ローラもリリィも言っちゃなんだけど、友達少ないしね……! そうして今日もまたいつものように過ごしていたのだけど――。
「あー……ローラ。今日は一緒に帰らないか?」
ローラとレオン様の仲も順調っぽいし。リリィはなんか面白くなさそうにこっちを見てるけど……でも、これって私のせいじゃないよね?
『ナタリー様はいいんですか!?』とか言われても困るもの。確かにローラのことは可愛いと思ってるし、親友だと思っているけれど、恋愛感情はないし。リリィが望むような展開に出来なくてごめんね。そんなことを思っていると、
「ナタリー、いいか?」
「お祖父様……」
そこに現れたのは私の唯一の親である祖父のローガス・アルディだ。私の両親は幼い頃に亡くなったらしく、物心ついた時にはもう祖父しかいなかった。祖父は厳しい人だったが、私が寂しくないように気を使ってくれていたと思う。
だからだろうか。私は祖父を尊敬しているし、大好きだった。その気持ちは今も変わらない。
そして、今年で75歳になるというのにまだまだ現役バリバリらしい。昔は冒険者として活躍していて、ランクSSの冒険者として名を馳せていたということだ。
私も冒険者になってもいいかなーなんて思ったこともあるけれど、体力がないし、何より危ない目に合うかもしれないと考えると無理だと諦めた。
それに――。
「実はお前に婚約の話がきているんだ」
「えっ……?」
いきなりのことで驚いたものの、貴族の娘として生まれた以上、いつかは婚約者が出来るだろうと思っていたため、あまり驚きはない。むしろ、こんなにも早く来るとは思ってなかったくらいだ。
それにしても相手は誰なんだろう?と、思いながら祖父を見つめると、
「婚約者の名前はニコラス・シャトレ公爵令息だ」
…ニコラス・シャトレ……?誰やねん……リリィに聞いたら分かるかなー?漫画の主要キャラクターなのかな……?
「明後日の日曜日にアルディ家主催でパーティがあるからその時に会うからよろしく頼むぞ」
「はい……わかりましたわ」
そもそも、まだ会ったこともない人のところに行くのか……。しかも、急すぎない?とも思うが、これが貴族の常識なのだと言われればそれまでなので何も言えないし。
「ナタリー様。今の話……!」
私の部屋に来たリリィは慌てている。まぁ、リリィはローラ×ナタリーのカップリング推しで百合好きでもあるから仕方がないといえばそうなんだけどね……。
「ねぇ……リリィは……ニコラス・シャトレ公爵令息知ってる?漫画に出てこないの?……やっぱり主要キャラなの?」
「えぇっと…そうですね。…簡単に言うと……当て馬です」
サラリとリリィはそう言った。当て馬か……ナタリーと同じ立場……ではないか。だって、ニコラス様はローラのことをストーカーしないだろうし。
「………でも、漫画では、ナタリーには婚約者なんて出てこなかった……つまり、ここからは世界線は捻じ曲がり、違う未来になる可能性があるということね……」
リリィが何やらブツブツと言っているが気にしないことにした。それよりも私は……
「(………結婚……)」
結婚を前提にお付き合いしていた彼のことを思い出す。彼は優しくて、紳士的で……とても素敵な人だったのに……妹とは浮気してたし……最後にはひどい言葉も浴びせられたし……
本当に最悪な男だったなぁ……と思ったし、婚約者とか大丈夫かぁ?って不安にもなってる。
「………ナタリー様、大丈夫ですよー。ニコラス・シャトレ様はクズではありませんし、漫画でも誠実な人でナタリー・アルディと違い、正々堂々とローラを取り合っていたし。ナタリー・アルディと違い」
「二回言わなくても………」
「大事な事なので」
きっぱりとそう言ったリリィに私はまた苦笑した。そっか……誠実な人かぁ、なら、安心かな……?
「……だからローラ様が好きだから婚約破棄しようという展開はあると思いますが……そうなったときにはナタリー様も争奪戦に参戦すればいいんですよ!」
「……え?私も参戦するの!?」
話がややこしくなると思うけど大丈夫?それ……と、不安げにリリィを見るとリリィは笑顔でこう言った。
「私はナタリー様とローラ様が付き合ってくれるのが一番嬉しいんです!そのために応援してますよ!!」
そうだった。この子……百合好きだった……!今のローラとレオン様が順調なのが面白くない、ということなんだろうけども。だけど、ローラもレオン様のことを話すと頬を赤らめるしなぁ……
「……まぁ、ありがとう」
……まぁ……でも……とりあえず、リリィに話を合わせておこう。話を合わせておかないと面倒くさい話になりそうだし。
………だけど私は知らなかった。でも……まさかあんなことになるなんて……私も、リリィも想像さえしていなかった。
――――――――――――――――――――――――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。一章はここで終わりで次からは二章に入ります。
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