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二章 〜思惑〜
八話 『私たちのその後①』
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婚約破棄の一件があって以来、ニコラス・シャトレとは一切話していない。まぁ、話しかける気もないけど。……それにしても、
「本当、とんでもない男でしたね!ナタリー様!!」
リリィは興奮気味にそう言った。あの後、私たちはお互いの家族に報告をしたのだ。お祖父様からは、
『……ニコラス・シャトレと婚約破棄した……?……そうか。分かった』
という短い返事だけ返ってきただけだった。唯一の家族である私からの報告だというのにこの反応とは……いや、別に良いんだけどさ。転生して急に性格が変わった私にも寛大だっだし、むしろ優しいくらいだけどさ。
今思うと――
「(………優しさじゃなくて……)」
私に興味がなかったという方が正しいかもしれない。……でも、私に良くはしてくれる。お金もくれるし、欲しいものも買ってくれるし。それに使用人には好かれているみたいだし……
「………例え、興味がなかったとしても」
それでもいいと思う。だって前世より断然マシだしな………前世は両親が露骨に私に興味がなさすぎたし。それに比べたら全然良いし。それに――。
「あー、あいつささっと破滅しないかしらー」
横でブツブツ呟いているリリィを見て私は苦笑いを浮かべた。ニコラス様と婚約破棄してからというもの、リリィの機嫌が悪い。そして、それを宥めるのが私の役目になっている。
まぁ、ローラを見れば一発で機嫌は治るからそこは分かりやすいけどね……
「リリィ、落ち着きなさいよ……」
私がそういうとリリィはキッとこちらを見た。うわ、こわい。
「これが落ち着いていられますか!あんなクズ野郎のせいでナタリー様もローラ様も傷ついているんですよ!?」
「私は傷ついてないわよ。でも、ローラの件については許してないわ。ローラの貴重な時間を奪ったわけだし」
心優しいローラのことだから、きっとまだ引きずっているに違いない。現に私と会う時でさえ、どこかぎごちないし……
早く立ち直ってもらいたいものだけれど……!すると、その時扉がノックされた。こんな時間に誰だろうと思いながら入室を許可すると入ってきた人物を見て驚いた。
「よぉ!リリィちゃんにナタリーちゃーん」
スティーブン様が片手を軽く上げながら空き教室へと入っていく。スティーブン様が入ってきたことでリリィは盛大に顔を歪めている。
「げぇ!!なんですか、いきなり!」
「そんな嫌な顔しなくてもいいじゃーん。俺とお前の仲なんだしさぁ?」
「………は?」
絶対零度。その言葉が一番似合うような声音だった。しかし、スティーブン様はまったく気にせずニコニコしながら話を続ける。
「いやぁ~、まさか本当に婚約破棄するなんて思わなかったぜ?あの後のニコラスめっちゃ焦った表情をしててウケたんだよねぇ」
ケラケラ笑うスティーブン様に苛立ってはいるが内容は同意出来るのだろう。リリィは大きくため息をつくと口を開いた。
「確かに滑稽だったのは認めますけど」
そこで一旦区切るとリリィは再びため息をついた。うん、分かる。気持ちはよくわかるけど。
「だろー?あのときのニコラスの顔は傑作だったよな。自分の早とちりだった挙句に婚約者に逃げられるんだもんな!しかも学園にも居づらい状況になってるとか!ザマァって感じ?」
ゲラゲラと腹を抱えて笑っているスティーブン様。それをみてリリィは呆れたように肩をすくめたが、それ以上は何も言わなかった。
リリィも多分『ザマァみろ』と思っているのかもしれない。というかさっきまで私も同じことを思っていた。
それにしてもスティーブン様は一体何の用事で来たのかしら……?
「それで、スティーブン様は何をしに来たんですか」
「お、そうそう!実はさ、ナタリーちゃんとリリィちゃんに頼みがあるんだけど」
「は?貴方の頼み事なんて聞いて何の得が?」
「酷いなー」
眉を下げて困ったような表情をしているものの、まったくそう思ってはいないであろうことが丸わかりである。まぁ、私も同意見だけど。
「じゃ、ローラちゃんに関係することっていったらどうだ?」
ピクリとリリィの身体が小さく跳ねる。そして、ゆっくりとした動作でこちらに振り返ってきた。
「……ローラ様に関することなら仕方ありませんね。聞きましょう」
「お、流石リリィちゃん。話が早い」
ニヤッとした笑顔を浮かべている。相変わらず、ローラのことになるとちょろい女だ。
それにしてもローラに関わることとは……?私とリリィは顔を見合わせて首を傾げた。
スティーブン様から聞いた話はこうだ。
「最近ねー。ローラちゃんに相談受けてるんだよね。主にニコラスのことでねー」
「………は?ローラ様がスティーブン様の相談事を……!?私とか……ナタリー様ではなく……!?」
ショックのあまりガクっと項垂れてしまったリリィだが、ローラ的にはニコラス様の悩みは私には言いづらいよね……元婚約者だしね……ローラの思いはよーく分かるんだけど……
「ま、んなもん、どうでもいいんだよ。問題はローラちゃんが悩んでるってことだからさ」
そう言ってスティーブン様は私の方を見た。まぁ、確かにそうだ。ローラが元気がないのは私も心配だしね……
「だからこれはローラちゃんに頼まれたわけじゃなくて俺の独断と偏見による提案だからさ、聞きたくなかったら聞かなくてもいいぜ」
そう言うとスティーブン様はニコリと微笑んだ。その微笑みにリリィはポカーンとしていたが、すぐに我に返り。
「いいえ!聞きます!スティーブン・マーティン様!その提案とはなんですか!」
「ああ、うん。……それは――」
スティーブン様の提案を聞いた私たちは目を大きく見開いた。
「本当、とんでもない男でしたね!ナタリー様!!」
リリィは興奮気味にそう言った。あの後、私たちはお互いの家族に報告をしたのだ。お祖父様からは、
『……ニコラス・シャトレと婚約破棄した……?……そうか。分かった』
という短い返事だけ返ってきただけだった。唯一の家族である私からの報告だというのにこの反応とは……いや、別に良いんだけどさ。転生して急に性格が変わった私にも寛大だっだし、むしろ優しいくらいだけどさ。
今思うと――
「(………優しさじゃなくて……)」
私に興味がなかったという方が正しいかもしれない。……でも、私に良くはしてくれる。お金もくれるし、欲しいものも買ってくれるし。それに使用人には好かれているみたいだし……
「………例え、興味がなかったとしても」
それでもいいと思う。だって前世より断然マシだしな………前世は両親が露骨に私に興味がなさすぎたし。それに比べたら全然良いし。それに――。
「あー、あいつささっと破滅しないかしらー」
横でブツブツ呟いているリリィを見て私は苦笑いを浮かべた。ニコラス様と婚約破棄してからというもの、リリィの機嫌が悪い。そして、それを宥めるのが私の役目になっている。
まぁ、ローラを見れば一発で機嫌は治るからそこは分かりやすいけどね……
「リリィ、落ち着きなさいよ……」
私がそういうとリリィはキッとこちらを見た。うわ、こわい。
「これが落ち着いていられますか!あんなクズ野郎のせいでナタリー様もローラ様も傷ついているんですよ!?」
「私は傷ついてないわよ。でも、ローラの件については許してないわ。ローラの貴重な時間を奪ったわけだし」
心優しいローラのことだから、きっとまだ引きずっているに違いない。現に私と会う時でさえ、どこかぎごちないし……
早く立ち直ってもらいたいものだけれど……!すると、その時扉がノックされた。こんな時間に誰だろうと思いながら入室を許可すると入ってきた人物を見て驚いた。
「よぉ!リリィちゃんにナタリーちゃーん」
スティーブン様が片手を軽く上げながら空き教室へと入っていく。スティーブン様が入ってきたことでリリィは盛大に顔を歪めている。
「げぇ!!なんですか、いきなり!」
「そんな嫌な顔しなくてもいいじゃーん。俺とお前の仲なんだしさぁ?」
「………は?」
絶対零度。その言葉が一番似合うような声音だった。しかし、スティーブン様はまったく気にせずニコニコしながら話を続ける。
「いやぁ~、まさか本当に婚約破棄するなんて思わなかったぜ?あの後のニコラスめっちゃ焦った表情をしててウケたんだよねぇ」
ケラケラ笑うスティーブン様に苛立ってはいるが内容は同意出来るのだろう。リリィは大きくため息をつくと口を開いた。
「確かに滑稽だったのは認めますけど」
そこで一旦区切るとリリィは再びため息をついた。うん、分かる。気持ちはよくわかるけど。
「だろー?あのときのニコラスの顔は傑作だったよな。自分の早とちりだった挙句に婚約者に逃げられるんだもんな!しかも学園にも居づらい状況になってるとか!ザマァって感じ?」
ゲラゲラと腹を抱えて笑っているスティーブン様。それをみてリリィは呆れたように肩をすくめたが、それ以上は何も言わなかった。
リリィも多分『ザマァみろ』と思っているのかもしれない。というかさっきまで私も同じことを思っていた。
それにしてもスティーブン様は一体何の用事で来たのかしら……?
「それで、スティーブン様は何をしに来たんですか」
「お、そうそう!実はさ、ナタリーちゃんとリリィちゃんに頼みがあるんだけど」
「は?貴方の頼み事なんて聞いて何の得が?」
「酷いなー」
眉を下げて困ったような表情をしているものの、まったくそう思ってはいないであろうことが丸わかりである。まぁ、私も同意見だけど。
「じゃ、ローラちゃんに関係することっていったらどうだ?」
ピクリとリリィの身体が小さく跳ねる。そして、ゆっくりとした動作でこちらに振り返ってきた。
「……ローラ様に関することなら仕方ありませんね。聞きましょう」
「お、流石リリィちゃん。話が早い」
ニヤッとした笑顔を浮かべている。相変わらず、ローラのことになるとちょろい女だ。
それにしてもローラに関わることとは……?私とリリィは顔を見合わせて首を傾げた。
スティーブン様から聞いた話はこうだ。
「最近ねー。ローラちゃんに相談受けてるんだよね。主にニコラスのことでねー」
「………は?ローラ様がスティーブン様の相談事を……!?私とか……ナタリー様ではなく……!?」
ショックのあまりガクっと項垂れてしまったリリィだが、ローラ的にはニコラス様の悩みは私には言いづらいよね……元婚約者だしね……ローラの思いはよーく分かるんだけど……
「ま、んなもん、どうでもいいんだよ。問題はローラちゃんが悩んでるってことだからさ」
そう言ってスティーブン様は私の方を見た。まぁ、確かにそうだ。ローラが元気がないのは私も心配だしね……
「だからこれはローラちゃんに頼まれたわけじゃなくて俺の独断と偏見による提案だからさ、聞きたくなかったら聞かなくてもいいぜ」
そう言うとスティーブン様はニコリと微笑んだ。その微笑みにリリィはポカーンとしていたが、すぐに我に返り。
「いいえ!聞きます!スティーブン・マーティン様!その提案とはなんですか!」
「ああ、うん。……それは――」
スティーブン様の提案を聞いた私たちは目を大きく見開いた。
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