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二章 〜思惑〜
九話 『私たちのその後②』
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――私は今、元婚約者であるニコラス・シャトレと一緒に人気のない場所へと来ていた。
どうしてこうなったのか、正直分からない。ただ、スティーブン様が、
『これからは俺の言うとおりに行動してくれ』
と真剣な表情で言われたから、仕方なく従ってるだけだ。その後の発言は魔法で脳内直接送るということ。そして、今に至る。
それ魔法じゃなくて超能力じゃね?と思うが、今はどうでもいい。
「それで。ナタリー・アルディ、元婚約者である君が一体何の用かな?」
『……話がしたくて。私の話ではなく、ローラの話よ』
脳内に直接送られてくる声をそのまんま言っているだけなので、変な感じがしつつも、返事をしていると。
「………なぁ。お前は誰だ」
突然、ニコラス様が鋭い目つきで睨みつけながら聞いてきた。
その問いに一瞬動揺するが、なんとか平然を保つ。
「な、なんのことかしら?」
「とぼけるな。ナタリー・アルディの意思で話してないだろう?……そうだな、スティーブンか?」
何故わかったのだろうか。そんなに私は分かりやすいのか……?
「あー、ここらで潮時?」
どこからともなく聞こえた声に驚いていると、目の前に光が現れ、そこからスティーブン様が現れた。
「よっ!ニコラス!」
「スティーブン……嫌がらせか?ナタリー・アルディにこんなことをさせてるのは」
いつもより低い声で怒りを抑えているような口調だった。それに怯むことなく、スティーブン様は答える。
「いやー、ね?ニコラスが俺と話してくれなかったからさ。ちょっとナタリーちゃんに頼んだんだよ。だから、もういいよー。ナタリーちゃんもありがとう!あとは俺が話すから。お疲れさま~」
「え、……あ、はい」
スティーブン様がそう言うと、一気に身体が軽くなり、楽になった。
「じゃ、後の話は……ナタリーちゃん、聞く?それとも聞かない?」
スティーブン様の顔が険しく、声もどこか威圧的な感じがした。
何故そんな顔をするのか分からなかったが――聞くという選択肢しか、私には無かった。
「ええ。聞きます」
「わかった。じゃあ、話すけどこいつ闇の魔法にかかってるんだよね。だから別人なの」
スティーブン様がさっきまで話していたニコラス様に指を指す。
「闇の……魔法?」
「そう!それでこいつ――ニコラスは闇の魔法に取り憑かれたんだ。それで今は、身体も心も乗っ取られてる状態だ。こいつは兄にコンプレックスがあるからなー。闇魔法は少しでも闇があると、入りやすいし。多分、ニコラスは兄のことを憎んでいたから、取り憑かれやすい体質だったんだと思う」
淡々と説明するスティーブン様だが、内容に驚きを隠せない。まさかニコラス様がそんな状態になっていたなんて……。
「そ、そうだったんですか……」
「で、婚約破棄してきたのも多分それが原因。いろいろ邪魔だとか言って、こんなことしちゃったんだねー。ターゲットはナタリーちゃんになってたのはよく分からないけど」
「と、とりあえずニコラス様の闇の魔法?を解けば、元に戻るんですよね?」
「うん。恐らくね」
「何をさっきからごちゃごちゃ話してるんだ?」
ニコラス様の姿をした何かが、私たちを睨みつけてくる。
……闇の魔法。こんな恐ろしいものがあるなんて知らなかった。
でも、この状態のままでいい訳がないし!
「何か違和感あったし、おかしいと思ってたんだよね。……ニコラスの身体に、別の人がいるって」
「は?俺は俺だ。何を言っているんだ、スティーブン」
「とぼけなくていいって。だって、君はニコラスじゃないでしょ?」
スティーブン様が、指をパチンと鳴らすと。目の前にいたはずのニコラス様の姿が一瞬にして消えた。
「え……?ど、どこにっ!?」
「えー。めんどくさー。……まぁ、いいや。じゃ、ナタリーちゃん。俺が何とかしておくからさ。あとは俺に任せてよ」
そう言って、スティーブン様はその場から去っていく。俺に任せとけ、て言われたし、私は何もしない方がいいよね……。
そう思い、その場から立ち去った。
△▼△▼
結局、なんの話をしたのかは知らない
が、ニコラス様との婚約が復縁した。ということは闇魔法が解けた、ということなのだろうか。
ニコラス様はめちゃくちゃ謝ってくれたし、もう気にしてはいない。
寧ろ、よかったー、という感想が1番強いし……
だけど――
「それ本気で言っているのか?」
目の前にいるのはニコラス様。
彼は私を呆れた目で見つめている。こんなことをするのがバカバカしい、とでも言いたげに。
「なぁ、お前は……本当にそんなことを思っているのか?」
「はい。これについては私は正しいと思っています」
私ははっきりと、自分の考えを述べる。他人から聞いたらバカバカしくなる話だとは思うが、それでも、私達には大事なことなのだ。
「………はぁ」
だが、ニコラス様は大きなため息をつく。失望した、そう言わんばかりの表情だ。
これはもう、何を言っても無駄だなという諦めの表情にも見えた。
「お前は……」
「…私、ニコラス様とは分かり合えると信じてました。ですが、この考えは違ったようですね」
そう言って私は去っていく。ニコラス様は何か言いたげだったけれど、私はそれを無視して立ち去った。
△▼△▼
ニコラス様と喧嘩した放課後。私はため息を吐きながら、学園から帰路を歩いていた。
「はぁ~……もう、どうしてこんなにうまくいかないんだろう」
私の呟きは、夕焼け色に染まった道の喧騒へと消えていく。せっかく、闇魔法が解けたのに。……スティーブン様任せにしちゃったけど。
そんなことを思っていると、
ドンッと誰かにぶつかったようだ。
前をよく見ていなかったため、すぐに謝罪をするべく顔を上げると――
そこには、ローラ並みの美少女がいた。
髪の色は金髪で腰まで伸びている。目は赤色で、肌は透き通るように白い。まるで人形のような容姿だった。
身長は普通の女子よりは高く、胸も大きいとは言えないが、普通にある。
つまり、全体的にバランスが良いということだ。
「……あ、あの……ごめんなさい」
と、私が呆然としていると、彼女が話しかけてきた。
「あ、いえ、こちらこそすみません。ナタリー・アルディ様」
そう言って少女は去っていく。待ってー!あなたの名前を教えてくださーい!!!と心の中で叫んでいたが、当然彼女は振り向かなかった。
あれだけ可愛ければ目立つはずなのに、全く見たことがない。……それに、どこかで会ったことがあるような気がするのだが……
「会えるかしら……あの子に」
なんて呟いてみた。
どうしてこうなったのか、正直分からない。ただ、スティーブン様が、
『これからは俺の言うとおりに行動してくれ』
と真剣な表情で言われたから、仕方なく従ってるだけだ。その後の発言は魔法で脳内直接送るということ。そして、今に至る。
それ魔法じゃなくて超能力じゃね?と思うが、今はどうでもいい。
「それで。ナタリー・アルディ、元婚約者である君が一体何の用かな?」
『……話がしたくて。私の話ではなく、ローラの話よ』
脳内に直接送られてくる声をそのまんま言っているだけなので、変な感じがしつつも、返事をしていると。
「………なぁ。お前は誰だ」
突然、ニコラス様が鋭い目つきで睨みつけながら聞いてきた。
その問いに一瞬動揺するが、なんとか平然を保つ。
「な、なんのことかしら?」
「とぼけるな。ナタリー・アルディの意思で話してないだろう?……そうだな、スティーブンか?」
何故わかったのだろうか。そんなに私は分かりやすいのか……?
「あー、ここらで潮時?」
どこからともなく聞こえた声に驚いていると、目の前に光が現れ、そこからスティーブン様が現れた。
「よっ!ニコラス!」
「スティーブン……嫌がらせか?ナタリー・アルディにこんなことをさせてるのは」
いつもより低い声で怒りを抑えているような口調だった。それに怯むことなく、スティーブン様は答える。
「いやー、ね?ニコラスが俺と話してくれなかったからさ。ちょっとナタリーちゃんに頼んだんだよ。だから、もういいよー。ナタリーちゃんもありがとう!あとは俺が話すから。お疲れさま~」
「え、……あ、はい」
スティーブン様がそう言うと、一気に身体が軽くなり、楽になった。
「じゃ、後の話は……ナタリーちゃん、聞く?それとも聞かない?」
スティーブン様の顔が険しく、声もどこか威圧的な感じがした。
何故そんな顔をするのか分からなかったが――聞くという選択肢しか、私には無かった。
「ええ。聞きます」
「わかった。じゃあ、話すけどこいつ闇の魔法にかかってるんだよね。だから別人なの」
スティーブン様がさっきまで話していたニコラス様に指を指す。
「闇の……魔法?」
「そう!それでこいつ――ニコラスは闇の魔法に取り憑かれたんだ。それで今は、身体も心も乗っ取られてる状態だ。こいつは兄にコンプレックスがあるからなー。闇魔法は少しでも闇があると、入りやすいし。多分、ニコラスは兄のことを憎んでいたから、取り憑かれやすい体質だったんだと思う」
淡々と説明するスティーブン様だが、内容に驚きを隠せない。まさかニコラス様がそんな状態になっていたなんて……。
「そ、そうだったんですか……」
「で、婚約破棄してきたのも多分それが原因。いろいろ邪魔だとか言って、こんなことしちゃったんだねー。ターゲットはナタリーちゃんになってたのはよく分からないけど」
「と、とりあえずニコラス様の闇の魔法?を解けば、元に戻るんですよね?」
「うん。恐らくね」
「何をさっきからごちゃごちゃ話してるんだ?」
ニコラス様の姿をした何かが、私たちを睨みつけてくる。
……闇の魔法。こんな恐ろしいものがあるなんて知らなかった。
でも、この状態のままでいい訳がないし!
「何か違和感あったし、おかしいと思ってたんだよね。……ニコラスの身体に、別の人がいるって」
「は?俺は俺だ。何を言っているんだ、スティーブン」
「とぼけなくていいって。だって、君はニコラスじゃないでしょ?」
スティーブン様が、指をパチンと鳴らすと。目の前にいたはずのニコラス様の姿が一瞬にして消えた。
「え……?ど、どこにっ!?」
「えー。めんどくさー。……まぁ、いいや。じゃ、ナタリーちゃん。俺が何とかしておくからさ。あとは俺に任せてよ」
そう言って、スティーブン様はその場から去っていく。俺に任せとけ、て言われたし、私は何もしない方がいいよね……。
そう思い、その場から立ち去った。
△▼△▼
結局、なんの話をしたのかは知らない
が、ニコラス様との婚約が復縁した。ということは闇魔法が解けた、ということなのだろうか。
ニコラス様はめちゃくちゃ謝ってくれたし、もう気にしてはいない。
寧ろ、よかったー、という感想が1番強いし……
だけど――
「それ本気で言っているのか?」
目の前にいるのはニコラス様。
彼は私を呆れた目で見つめている。こんなことをするのがバカバカしい、とでも言いたげに。
「なぁ、お前は……本当にそんなことを思っているのか?」
「はい。これについては私は正しいと思っています」
私ははっきりと、自分の考えを述べる。他人から聞いたらバカバカしくなる話だとは思うが、それでも、私達には大事なことなのだ。
「………はぁ」
だが、ニコラス様は大きなため息をつく。失望した、そう言わんばかりの表情だ。
これはもう、何を言っても無駄だなという諦めの表情にも見えた。
「お前は……」
「…私、ニコラス様とは分かり合えると信じてました。ですが、この考えは違ったようですね」
そう言って私は去っていく。ニコラス様は何か言いたげだったけれど、私はそれを無視して立ち去った。
△▼△▼
ニコラス様と喧嘩した放課後。私はため息を吐きながら、学園から帰路を歩いていた。
「はぁ~……もう、どうしてこんなにうまくいかないんだろう」
私の呟きは、夕焼け色に染まった道の喧騒へと消えていく。せっかく、闇魔法が解けたのに。……スティーブン様任せにしちゃったけど。
そんなことを思っていると、
ドンッと誰かにぶつかったようだ。
前をよく見ていなかったため、すぐに謝罪をするべく顔を上げると――
そこには、ローラ並みの美少女がいた。
髪の色は金髪で腰まで伸びている。目は赤色で、肌は透き通るように白い。まるで人形のような容姿だった。
身長は普通の女子よりは高く、胸も大きいとは言えないが、普通にある。
つまり、全体的にバランスが良いということだ。
「……あ、あの……ごめんなさい」
と、私が呆然としていると、彼女が話しかけてきた。
「あ、いえ、こちらこそすみません。ナタリー・アルディ様」
そう言って少女は去っていく。待ってー!あなたの名前を教えてくださーい!!!と心の中で叫んでいたが、当然彼女は振り向かなかった。
あれだけ可愛ければ目立つはずなのに、全く見たことがない。……それに、どこかで会ったことがあるような気がするのだが……
「会えるかしら……あの子に」
なんて呟いてみた。
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