知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

花宮

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二章 〜思惑〜

十九話 『相談』

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――どうしてこんなことになったのだろう。私は、目の前でニコニコ笑っているスティブーン様を見て、深いため息を吐いた。……というか、なんでこの人ここにいるの?


「スティーブン、何でここにいるんだ」


私の気持ちを代弁してくれたのは、スティブーン様の隣に立つニコラス様だった。…それはそう。だって私が相談したのはニコラス様で、スティブーン様には一言も相談していない。


いや、相談してないというかスティーブン様のアドバイス通り、ニコラス様に相談したはずだったんだけど、何故かスティブーン様が一緒に来た。
……いや、なんで? 私は思わず首を傾げた。すると、スティブーン様はニコッと笑って口を開いた。


「だって、ナタリーちゃんが相談する内容気になるだもーん。後、喧嘩しているらしいしー。だから、俺が入ったら解決するんじゃないかなーって。ナタリーちゃんに聞いたところどうでもいい喧嘩らしいし」


「どうでもよくないです」


むっとした。確かに、他人から見たら、どうでもいいことかもしれない。……けれど、私にとってはそうじゃない。
私がスティブーン様を睨むと、彼はニコニコ笑うだけだった。……あぁ、本当にムカつく人だな!


「おい。ラーメンはどうでもよくないぞ」


真顔のニコラス様がそう言って、スティブーン様の肩をガシッと掴んだ。…そうだ!そうだ!私はニコラス様のその言葉に、激しく首を縦に振った。しかし、スティブーン様は「え?そう?」と首を傾げていた。


「でも、ニコラスはともかく、ナタリーちゃんもラーメンとか庶民的なもの好むんだねー。意外だわー」


まぁ、それは私が転生者だということが大きいし、そもそも、この世界でラーメンがあるとは思ってなかったし。


「まぁ、そんなもん、どうでもいいんだよー。喧嘩は勝手にやればいいと思うけど、ナタリーちゃん、悩みがあるんでしょ?ささっと仲直りしたらー?仲直りしないと相談出来ないし」


「私は頼んでません」


「またまたー。ナタリーちゃん、ほんとはニコラスと仲直りしたいくせにー」


ニコニコ笑うスティブーン様を見て、私はなんだか苛立っていた気持ちが更に膨れ上がる。本当に、この人と話すと苛立つ。
私はスティブーン様から視線を逸らしてニコラス様を見ると、


「……分かった。ナタリーさんとは仲直りする。だから、ナタリーさんと二人きりにさせてくれ」


ニコラス様は真剣な顔でそう言った。スティブーン様は不満げにしながら、


「えー?何でよー。俺にも聞かせてくれても良くない?」


……この人暇なの? 確か今年卒業だよね? 大丈夫?? そんな私の気持ちが通じたのか、


「スティブーン……お前は暇なのか?今年卒業はだろう?」


と、ニコラス様が呆れた表情を浮かべながら尋ねた。すると、スティブーン様はニコッと笑って口を開いた。


「俺、卒業したら騎士団に入るからいいのー!」


「……とか言って令嬢と遊ぶんだろ?遊ぶのも程々にしとけよ」


令嬢!リリィが言っていた!やっぱり、スティブーン様は令嬢を妊娠させるフラグか?これ……?


「……スティーブン様。もし令嬢を妊娠させても責任は取ってくださいね」


「ナタリーちゃん、俺のことなんだと思ってるのー?」


私が真顔で告げると、スティブーン様は不満げに頬を膨らませた。いや、だって……ねぇ?リリィの言葉だけどリリィが嘘を付くメリットなんてないし、スティブーン様は女好きの遊び人って噂だし……


「お前……妊娠させたのか?女遊びも程々にしとけよ」


「だから、違うってー!確かに女遊びはしているけど妊娠はさせてないってー!」


女遊びはしているのは認めるのか……
私が若干引きながらスティブーン様を見ていると、ニコラス様がため息を吐いて、


「とりあえず、スティブーンは帰れ」と言った。
すると、スティブーン様は不満げに頬を膨らませたあと、


「ふーんだ!いいもんいいもん!じゃあ、ローラちゃんと遊んでくるもんね!」


と言って、走って何処かに行ってしまった。


「だ、大丈夫かしら……」


「大丈夫だと思うよ、ローラさんにはレオンがついているから」


………それもそうか。
私は、スティブーン様が走って行った方を見ながらため息を吐いた。……はぁ、なんかどっと疲れた気がする。
すると、ニコラス様は私を見て口を開いた。 


「で?僕に何の相談ですか?ナタリーさん」


「あ、はい。実は……」


ここで、私はスティブーン様には相談できなかったことをニコラス様に話そうとしたところではたっと気付く。


「(これ婚約者であるニコラス様に相談してもいいのかな……?)」


何も考えずにここまで来てしまったけど、婚約者に相談する内容ではない気がする。いや、でもここまで来て何も相談してないっていうのも……
私が悩んでいると、ニコラス様は不思議そうに首を傾げた。


「どうした?相談したいことってなんだ?」


「あ、いえ……その……」


私は少し悩んだ後、覚悟を決めて口を開いた。


「……実は……その、ローラを見るとモヤモヤするんです」


「モヤモヤ?」


「……はい。その、ローラが誰かと楽しそうに話していると胸が苦しくなったり、イライラしたり……それに、私が知らないローラを知っている人物がいると思うとイライラしてしまって……」


素直に自分の気持ちを打ち明けると、ニコラス様は驚いた表情を浮かべた。
……まぁ、いきなりこんなことを言われたら驚くよね。でも、これが私の正直な気持ちだ。


「それは僕との婚約を破棄したいってことか?」


ニコラス様がそういった。
私が小さく首を横に振る。別にそう言うわけじゃない。でも、そのモヤモヤの正体が何なのか分からない。


「でも、その話を聞く限り恋なんじゃないのか?」


「……これが恋……」


これは恋なのか。私にはよく分からない。でも、なんだか納得できた気がする。


「……闇の魔法に取り憑かれていたとはいえ、僕は君に酷いことをした。だから、ナタリーさんが婚約破棄したいというならそれでも構わない。ただ……」


「ただ?」


「…僕は……いや、何でもない……とにかく、僕はナタリーさんはローラさんに恋してるようにしか見えないけど……」


私はその言葉に何も言えなかった。
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