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二章 〜思惑〜
二十四話 『夢と日常』
しおりを挟む『ローラ・クレーヴ!あなた、平民の癖に生意気なのよ』
睨みつけるように、私――ナタリー・アルディはローラを睨みつけている。悪意を剥き出しにしながら、私はローラに向かってそう言い放った。
これはきっと漫画の中の『ナタリー・アルディ』が行ったこと。
漫画の中の私は、平民の癖に魔法の才能があるローラのことを妬み、そして虐めていた。
そしてレオン・メルヴィルとの仲を邪魔していた。ある時はローラに水をぶっかけて、ある時はローラの教科書を破いたり、またある時は階段から突き落としたりしていた。
どれもこれも、事前にレオン様やローラが仕組んだ罠だったらしいが、そんなことも知らずにナタリー・アルディはまんまと罠にハマった。そして、最後は国外追放。自業自得としか言いようがない。
でも、それはあくまでも漫画の中だけの話。今の私はローラ大好き人間になってしまったし。
「好きよ。ローラ」
なんて夢の中だから言えることを呟いた。
△▼△▼
「ん……」
目を覚ますと、そこは見慣れた自分の部屋だった。
まだ眠たい目を擦りながら辺りを見渡すと、そこにはいつも通りの光景が広がっていた。
「……リリィは……いないか」
リリィの姿はなかった。まぁ、専属メイドとはいえ、四六時中一緒にいるわけではないから、リリィがいないのは当たり前なんだけど。
それにしても、なんだか不思議な夢を見た気がする。
「漫画を見とくべきだったなぁ……」
何度目かわからない後悔をする。
『恋と魔法とチョコレート』の漫画を今世でも読んでおけば、どんなストーリーなのかが分かったはずだ。そうすれば、私が今後どのような行動を取ればいいのかが分かるのに。
「まぁ、今更後悔しても遅いんだけどね」
私はベッドから起き上がり、着替えを始めた。今日は休日なので、特にこれといってやることがない。どうしようかな……なんて考えながら、私は髪を梳かしていると、コンコンと扉を叩く音が聞こえてきた。返事をすると扉がゆっくりと開かれた。
そして入ってきたのはリリィだった。
リリィはいつも通りの表情で、私に向かって言った。
「おはようございます。ナタリー様」
「おはよう、リリィ」
いつも通りの日常の始まりを実感しながら、私は支度を続けた。
「今日はテストですよねー。憂鬱です」
「そうだね。でも、頑張らないと」
私とリリィは朝食を食べながらそんな会話をしていた。今日のテストが不安なのか。リリィは憂鬱そうにため息を吐いていた。
「ナタリー様はテスト、自信ありますか?とゆうか、ナタリー様の前世はどうでしたか?」
珍しい。リリィが前世の話題を振ってくるなんて。
私は少し驚きながらも、正直に答えた。
正直、前世ではテストで良い点を取ったことがないし、大学なんて行ってないし勉強もしてねーからテストなんて大嫌いだった。
だからバカになってブラック企業ぐらいしか入れなかった。
「私は……あんまり勉強は得意じゃなかったかな」
故に、私は誤魔化した。リリィは、そうなんですかーと相槌を打ちながら、
「因みに私は、勉強は得意でしたよ。テストもいつも満点でした」
リリィが凄くドヤ顔していた。そのドヤ顔が凄く腹が立ったのでデコピンしておいた。
「い、痛っ!?ち、ちょっと!ナタリー様、何するんですか!?」
「リリィが悪いわよ。ドヤ顔するから」
淡々と私がそう言うと、リリィは涙目になりながらおでこをさすっていた。
そして私は朝食を食べ終わり、学園に行く準備を始めた。制服に着替えて、鞄を持ち、玄関に向かった。
今日はいよいよテスト。具体的な勉強は全くしていないが……まぁ、何とかなるだろう。
「じゃあ、行きましょう。リリィ」
「はい。ナタリー様」
私はリリィと一緒に学園に向かった。
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