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二章 〜思惑〜
三十一話 『全てを終わらす』
しおりを挟む自殺。それは一番簡単な方法。
でも、怖いのだ。死ぬのがこわい。死にたいと思う反面、死にたくないと思っている自分がいるから。
「……」
私は考え込んだ後、静かに目を閉じて眠った。そして次に目が覚めた時は朝になっていた。カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。
私はボーッとした頭で身体を起こすと、ベッドから降りて身支度をし始めた。顔を洗い、化粧水を塗る。髪を梳かして、丁寧に編み込んでいく。そして制服に着替えて、準備完了。
「よし」
最近眠れてない。だから睡眠不足なのをみんなに悟られたくないから私は化粧で誤魔化す。クマができているなんて、絶対にバレたくないし、心配されるから。
「バカみたい」
私は小さな声でつぶやいた後、部屋を出る。廊下に出ると――、
「……ナタリー様…」
心配そうに、リリィが私のことを見ていた。私はそんな彼女に微笑みかける。すると彼女は怪しげに眉をひそめた。恐らく……とゆうか間違いなく無理しているのがバレているのだろう。
でも、私は彼女に何かを言うつもりはなかった。
心配させたくないし、迷惑をかけたくないからだ。
「おはよう、リリィ」
私は彼女の横を通りすぎる。その際に、リリィは何か言いたげな顔をしていたけれど、私は気づかないフリをした。
食堂に入り、席に座る。そして朝食を食べ始めたのだが……食欲がなかった。お腹は空いているはずなのに食べる気にならないのだ。
でも、残すなんてことはしたくないので無理やり胃に押し込んだ。そして授業を受けるために教室へと向かう。
「ナタリー様、大丈夫ですか……?」
教室に入ると真っ先に声をかけてきたのはリリィだった。彼女は不安そうな表情を浮かべている。私は大丈夫だと言って笑ったが、上手く笑っている自信がない。
「ナタリー様。無理してるでしょう?顔色が悪いですよ?」
「……そんなことないわよ。私はいつもこんな感じでしょう」
「でも――」
尚、食い下がろうとするリリィ。そんなリリィを無視し、私は馬車に乗る。そして学園に向かって出発したのだった。
「(……死にたい。消えたい)」
何かの歌の歌詞みたいだけど、私は本気でそう思っていた。死にたい。消えたい。私なんて必要ないから。消えてしまいたい。……そんなことを思いながら、私は馬車に揺られていた。
「(死にたい)」
何千回と、何万回も私は思っている。
死にたい。消えたい。死んでしまいたい。
でも、死ぬのは怖いから自殺はしない。痛いことをするのは嫌だし怖いから。
だから私は今日も生きているのだ。
「臆病者。そう呼ばれても仕方ないよね」
私は自嘲気味に笑った。でも、それで良いと思う。だって事実だから。だってそうでしょう?愛するローラのことを殺したくないから……
「(だから……もう……)」
全てを終わらせに行こう――と私は心の中で誓った。
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