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二章 〜思惑〜
三十二話 『罵倒と怒り』
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「おい。ナタリー・アルディ。ちょっといいか?」
レオン様に話しかけられた。レオン様が私に声をかけた理由は分かっている。でも、私は知らないふりをする。だってそうしないと私の心が持たないから。
「何ですか?レオン・メルヴィル様」
私はレオン様に返事をしながら、私は横目で見る。すると、レオン様は不機嫌そうな顔をしていた。
「……お前さ。何ローラのこと無視してんの?俺のことも無視してるし……。何か言いたいことがあるならハッキリ言えよ」
やっぱりバレた。レオン様には私がローラに無視をしているように見えたらしい。いや。実際そうなんだけど
でも、レオン様にローラのことを無視してる理由を聞かせるわけにはいかない。
「……だから何だというのですか?レオン様」
私はあえて惚けてみせる。しかし、それがいけなかったらしい。レオン様は苛立った様子で舌打ちをしたが、私は素知らぬ顔を貫く。
すると、レオン様は私の肩を掴み強引に振り向かせる。そして顔を近づけると、私を睨みつけてきた。
その瞳には怒りの感情がこもっていることが分かる。正直言って怖かったが、ここで引くわけにはいかない。私もレオン様を睨みつけるが。
「私はもうローラのことが嫌いになったんです。だから、もう話す気はありません」
私がそう言うと、レオン様はますます不機嫌そうな顔になった。私だってこんなこと言いたくないよ。でも、私はもう決めたのだ。これからはローラのことを無視して過ごすって。そうしないと、私の心が持たないから。
レオン様は少しの間黙ったままだったが、やがて口を開いて話し始めた。
「嘘をつくなよ。お前、まだローラのこと好きなんじゃないのか?」
心臓が止まるかと思った。図星だったから。でも、ここで認めてはいけない。認めてしまったらきっと私はローラのことをずっと想い続けてしまうから。
だから、私はレオン様の言葉を否定した。
「何故お前はローラを避ける。理由があるなら話せ」
レオン様の言葉に、私は何も答えなかった。いや。答えられなかったのだ。だって、言えるわけないじゃない。私の頭の中で『ローラ・クレーヴを殺せ!』という声が響くだなんて。
そんなもん、信じてもらう以前の問題だ。それに、これは私の問題だ。誰かに話したところで解決するわけがない。
だから、私は何も言わずにレオン様から離れようとしたのだが、それは叶わなかった。レオン様は私の手を掴むと、
「……嘘つき」
そう言って私を睨んだ。その目は私のことを全部分かっているよと言わんばかりだった。
私はその目に耐えきれなくなり、その場から逃げ出した。レオン様は追いかけて来なかったけど、私の頭の中ではレオン様の言葉がぐるぐると回っていた。
嘘つき……か。そうだよね。私、嘘ついてるもんね。本当はローラのことまだ好きなのに、嫌いになった振りをしてるんだから……。
「………おい。ナタリー」
また声がする。今度はニコラス様か。私は振り向かずに無視をする。
しかし、ニコラス様は構わず私の腕を引っ張る。私は転びそうになったが、なんとか踏ん張った。
危ないじゃないか!と文句を言ってやろうと思って振り返ると、
「………話聞いたぞ。僕との婚約を早く進めたいこと」
その言葉を聞いた瞬間、私は頭が真っ白になった。いや、お爺様に私がそう言ったから本人の耳に届くのも当たり前か。でも、まさかこんなに早く本人に聞かれるとは思いもしなかった。どうしよう……。私は必死に言い訳を考えるが何も思いつかない。すると、ニコラス様が口を開いた。
「別に婚約を早めるのはいいけども……その、なんだ……ローラ・クレーヴはもういいのか?」
私はニコラス様の言葉に息を吞んだ。まさか彼の口からそんなことを聞けるとは夢にも思っていなかったからだ。でも、私は首を縦に振る。もういい。この気持ちを諦めた方が楽になれるし。
「ええ。もういいんです」
「そうか……。分かった」
たったそれだけの言葉を言うと、ニコラス様は私から手を離しスタスタと歩いて行った。なんだかずいぶん呆気ない。私はニコラス様の背中を見つめるが、彼は一度も振り返らなかった。
「だって…そうでしょう?」
私は一人呟く。私はニコラス・シャトレ様の婚約者なのだ。婚約を早めたところで問題はないはずなのだ。表上は。
『なんであんな男との婚約を早めるのよ!私の狙いはレオン・メルヴィル様なんだから!』
頭の中でナタリー・アルディの声が響く。うるさいな……!私は頭を振ってその声を振り払うが――。
『何、私を消そうとしているの!貴方が私の身体を乗っ取ったくせに!早く出ていってよ!』
ナタリー・アルディは叫ぶ。私は耳を塞ぎながらその場にしゃがみ込んだ。
「うるさいなぁ……!私だって好きでこうなったわけじゃないんだから!」
そう叫んだ瞬間、目の前が真っ暗になった。もう最悪。周りに人がいないのが不幸中の幸いだけど、こんな姿誰かに見られたら大変だ。
「よー。ナタリーちゃん」
スティーブン・マーティン様が私に話しかけてきた。私は慌てて立ち上がると、何事もなかったかのように振る舞う。
しかし、スティブン様はいつもの調子で……
「その下手くそな演技はすぐにやめたら?」
辛辣な言葉だ。私は思わずムッとするが、スティブン様は気にせず続ける。
そして、彼は衝撃的なことを言ったのだ。
「ナタリーちゃんって嘘を隠すのが下手だよねぇ。レオンはともかく、ニコラスにバレてるとかヘタクソだと思うけど」
スティーブン様の言葉に、私は動揺を隠しきれなかった。何故バレた?どうしてバレたの? 私が黙っていると、スティブン様は続けて言った。
「……ナタリーちゃんはどうしたいの?そんなヘタクソな演技で誤魔化して……」
「………スティーブン様の……」
怒りが込み上げてくる。私は拳を強く握りしめながらスティブン様を睨んだ。
「何?大きな声で言ってくれよ」
スティブン様は余裕そうな表情を浮かべている。それが余計に私を苛立たせた。私は大きく息を吸うと、大声で叫んだ。
「スティーブン様に何が分かるんですかーーーっ!」
そんな声が出てしまった。
レオン様に話しかけられた。レオン様が私に声をかけた理由は分かっている。でも、私は知らないふりをする。だってそうしないと私の心が持たないから。
「何ですか?レオン・メルヴィル様」
私はレオン様に返事をしながら、私は横目で見る。すると、レオン様は不機嫌そうな顔をしていた。
「……お前さ。何ローラのこと無視してんの?俺のことも無視してるし……。何か言いたいことがあるならハッキリ言えよ」
やっぱりバレた。レオン様には私がローラに無視をしているように見えたらしい。いや。実際そうなんだけど
でも、レオン様にローラのことを無視してる理由を聞かせるわけにはいかない。
「……だから何だというのですか?レオン様」
私はあえて惚けてみせる。しかし、それがいけなかったらしい。レオン様は苛立った様子で舌打ちをしたが、私は素知らぬ顔を貫く。
すると、レオン様は私の肩を掴み強引に振り向かせる。そして顔を近づけると、私を睨みつけてきた。
その瞳には怒りの感情がこもっていることが分かる。正直言って怖かったが、ここで引くわけにはいかない。私もレオン様を睨みつけるが。
「私はもうローラのことが嫌いになったんです。だから、もう話す気はありません」
私がそう言うと、レオン様はますます不機嫌そうな顔になった。私だってこんなこと言いたくないよ。でも、私はもう決めたのだ。これからはローラのことを無視して過ごすって。そうしないと、私の心が持たないから。
レオン様は少しの間黙ったままだったが、やがて口を開いて話し始めた。
「嘘をつくなよ。お前、まだローラのこと好きなんじゃないのか?」
心臓が止まるかと思った。図星だったから。でも、ここで認めてはいけない。認めてしまったらきっと私はローラのことをずっと想い続けてしまうから。
だから、私はレオン様の言葉を否定した。
「何故お前はローラを避ける。理由があるなら話せ」
レオン様の言葉に、私は何も答えなかった。いや。答えられなかったのだ。だって、言えるわけないじゃない。私の頭の中で『ローラ・クレーヴを殺せ!』という声が響くだなんて。
そんなもん、信じてもらう以前の問題だ。それに、これは私の問題だ。誰かに話したところで解決するわけがない。
だから、私は何も言わずにレオン様から離れようとしたのだが、それは叶わなかった。レオン様は私の手を掴むと、
「……嘘つき」
そう言って私を睨んだ。その目は私のことを全部分かっているよと言わんばかりだった。
私はその目に耐えきれなくなり、その場から逃げ出した。レオン様は追いかけて来なかったけど、私の頭の中ではレオン様の言葉がぐるぐると回っていた。
嘘つき……か。そうだよね。私、嘘ついてるもんね。本当はローラのことまだ好きなのに、嫌いになった振りをしてるんだから……。
「………おい。ナタリー」
また声がする。今度はニコラス様か。私は振り向かずに無視をする。
しかし、ニコラス様は構わず私の腕を引っ張る。私は転びそうになったが、なんとか踏ん張った。
危ないじゃないか!と文句を言ってやろうと思って振り返ると、
「………話聞いたぞ。僕との婚約を早く進めたいこと」
その言葉を聞いた瞬間、私は頭が真っ白になった。いや、お爺様に私がそう言ったから本人の耳に届くのも当たり前か。でも、まさかこんなに早く本人に聞かれるとは思いもしなかった。どうしよう……。私は必死に言い訳を考えるが何も思いつかない。すると、ニコラス様が口を開いた。
「別に婚約を早めるのはいいけども……その、なんだ……ローラ・クレーヴはもういいのか?」
私はニコラス様の言葉に息を吞んだ。まさか彼の口からそんなことを聞けるとは夢にも思っていなかったからだ。でも、私は首を縦に振る。もういい。この気持ちを諦めた方が楽になれるし。
「ええ。もういいんです」
「そうか……。分かった」
たったそれだけの言葉を言うと、ニコラス様は私から手を離しスタスタと歩いて行った。なんだかずいぶん呆気ない。私はニコラス様の背中を見つめるが、彼は一度も振り返らなかった。
「だって…そうでしょう?」
私は一人呟く。私はニコラス・シャトレ様の婚約者なのだ。婚約を早めたところで問題はないはずなのだ。表上は。
『なんであんな男との婚約を早めるのよ!私の狙いはレオン・メルヴィル様なんだから!』
頭の中でナタリー・アルディの声が響く。うるさいな……!私は頭を振ってその声を振り払うが――。
『何、私を消そうとしているの!貴方が私の身体を乗っ取ったくせに!早く出ていってよ!』
ナタリー・アルディは叫ぶ。私は耳を塞ぎながらその場にしゃがみ込んだ。
「うるさいなぁ……!私だって好きでこうなったわけじゃないんだから!」
そう叫んだ瞬間、目の前が真っ暗になった。もう最悪。周りに人がいないのが不幸中の幸いだけど、こんな姿誰かに見られたら大変だ。
「よー。ナタリーちゃん」
スティーブン・マーティン様が私に話しかけてきた。私は慌てて立ち上がると、何事もなかったかのように振る舞う。
しかし、スティブン様はいつもの調子で……
「その下手くそな演技はすぐにやめたら?」
辛辣な言葉だ。私は思わずムッとするが、スティブン様は気にせず続ける。
そして、彼は衝撃的なことを言ったのだ。
「ナタリーちゃんって嘘を隠すのが下手だよねぇ。レオンはともかく、ニコラスにバレてるとかヘタクソだと思うけど」
スティーブン様の言葉に、私は動揺を隠しきれなかった。何故バレた?どうしてバレたの? 私が黙っていると、スティブン様は続けて言った。
「……ナタリーちゃんはどうしたいの?そんなヘタクソな演技で誤魔化して……」
「………スティーブン様の……」
怒りが込み上げてくる。私は拳を強く握りしめながらスティブン様を睨んだ。
「何?大きな声で言ってくれよ」
スティブン様は余裕そうな表情を浮かべている。それが余計に私を苛立たせた。私は大きく息を吸うと、大声で叫んだ。
「スティーブン様に何が分かるんですかーーーっ!」
そんな声が出てしまった。
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