知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

花宮

文字の大きさ
41 / 75
二章 〜思惑〜

三十二話 『罵倒と怒り』

しおりを挟む
「おい。ナタリー・アルディ。ちょっといいか?」


レオン様に話しかけられた。レオン様が私に声をかけた理由は分かっている。でも、私は知らないふりをする。だってそうしないと私の心が持たないから。


「何ですか?レオン・メルヴィル様」


私はレオン様に返事をしながら、私は横目で見る。すると、レオン様は不機嫌そうな顔をしていた。


「……お前さ。何ローラのこと無視してんの?俺のことも無視してるし……。何か言いたいことがあるならハッキリ言えよ」


やっぱりバレた。レオン様には私がローラに無視をしているように見えたらしい。いや。実際そうなんだけど
でも、レオン様にローラのことを無視してる理由を聞かせるわけにはいかない。


「……だから何だというのですか?レオン様」


私はあえて惚けてみせる。しかし、それがいけなかったらしい。レオン様は苛立った様子で舌打ちをしたが、私は素知らぬ顔を貫く。
すると、レオン様は私の肩を掴み強引に振り向かせる。そして顔を近づけると、私を睨みつけてきた。


その瞳には怒りの感情がこもっていることが分かる。正直言って怖かったが、ここで引くわけにはいかない。私もレオン様を睨みつけるが。


「私はもうローラのことが嫌いになったんです。だから、もう話す気はありません」


私がそう言うと、レオン様はますます不機嫌そうな顔になった。私だってこんなこと言いたくないよ。でも、私はもう決めたのだ。これからはローラのことを無視して過ごすって。そうしないと、私の心が持たないから。
レオン様は少しの間黙ったままだったが、やがて口を開いて話し始めた。


「嘘をつくなよ。お前、まだローラのこと好きなんじゃないのか?」


心臓が止まるかと思った。図星だったから。でも、ここで認めてはいけない。認めてしまったらきっと私はローラのことをずっと想い続けてしまうから。
だから、私はレオン様の言葉を否定した。


「何故お前はローラを避ける。理由があるなら話せ」


レオン様の言葉に、私は何も答えなかった。いや。答えられなかったのだ。だって、言えるわけないじゃない。私の頭の中で『ローラ・クレーヴを殺せ!』という声が響くだなんて。


そんなもん、信じてもらう以前の問題だ。それに、これは私の問題だ。誰かに話したところで解決するわけがない。
だから、私は何も言わずにレオン様から離れようとしたのだが、それは叶わなかった。レオン様は私の手を掴むと、


「……嘘つき」


そう言って私を睨んだ。その目は私のことを全部分かっているよと言わんばかりだった。
私はその目に耐えきれなくなり、その場から逃げ出した。レオン様は追いかけて来なかったけど、私の頭の中ではレオン様の言葉がぐるぐると回っていた。
嘘つき……か。そうだよね。私、嘘ついてるもんね。本当はローラのことまだ好きなのに、嫌いになった振りをしてるんだから……。


「………おい。ナタリー」


また声がする。今度はニコラス様か。私は振り向かずに無視をする。
しかし、ニコラス様は構わず私の腕を引っ張る。私は転びそうになったが、なんとか踏ん張った。
危ないじゃないか!と文句を言ってやろうと思って振り返ると、


「………話聞いたぞ。僕との婚約を早く進めたいこと」


その言葉を聞いた瞬間、私は頭が真っ白になった。いや、お爺様に私がそう言ったから本人の耳に届くのも当たり前か。でも、まさかこんなに早く本人に聞かれるとは思いもしなかった。どうしよう……。私は必死に言い訳を考えるが何も思いつかない。すると、ニコラス様が口を開いた。


「別に婚約を早めるのはいいけども……その、なんだ……ローラ・クレーヴはもういいのか?」


私はニコラス様の言葉に息を吞んだ。まさか彼の口からそんなことを聞けるとは夢にも思っていなかったからだ。でも、私は首を縦に振る。もういい。この気持ちを諦めた方が楽になれるし。


「ええ。もういいんです」


「そうか……。分かった」


たったそれだけの言葉を言うと、ニコラス様は私から手を離しスタスタと歩いて行った。なんだかずいぶん呆気ない。私はニコラス様の背中を見つめるが、彼は一度も振り返らなかった。


「だって…そうでしょう?」


私は一人呟く。私はニコラス・シャトレ様の婚約者なのだ。婚約を早めたところで問題はないはずなのだ。表上は。


『なんであんな男との婚約を早めるのよ!私の狙いはレオン・メルヴィル様なんだから!』
頭の中でナタリー・アルディの声が響く。うるさいな……!私は頭を振ってその声を振り払うが――。


『何、私を消そうとしているの!貴方が私の身体を乗っ取ったくせに!早く出ていってよ!』


ナタリー・アルディは叫ぶ。私は耳を塞ぎながらその場にしゃがみ込んだ。


「うるさいなぁ……!私だって好きでこうなったわけじゃないんだから!」


そう叫んだ瞬間、目の前が真っ暗になった。もう最悪。周りに人がいないのが不幸中の幸いだけど、こんな姿誰かに見られたら大変だ。


「よー。ナタリーちゃん」


スティーブン・マーティン様が私に話しかけてきた。私は慌てて立ち上がると、何事もなかったかのように振る舞う。
しかし、スティブン様はいつもの調子で……


「その下手くそな演技はすぐにやめたら?」


辛辣な言葉だ。私は思わずムッとするが、スティブン様は気にせず続ける。
そして、彼は衝撃的なことを言ったのだ。


「ナタリーちゃんって嘘を隠すのが下手だよねぇ。レオンはともかく、ニコラスにバレてるとかヘタクソだと思うけど」


スティーブン様の言葉に、私は動揺を隠しきれなかった。何故バレた?どうしてバレたの? 私が黙っていると、スティブン様は続けて言った。


「……ナタリーちゃんはどうしたいの?そんなヘタクソな演技で誤魔化して……」


「………スティーブン様の……」


怒りが込み上げてくる。私は拳を強く握りしめながらスティブン様を睨んだ。


「何?大きな声で言ってくれよ」

スティブン様は余裕そうな表情を浮かべている。それが余計に私を苛立たせた。私は大きく息を吸うと、大声で叫んだ。


「スティーブン様に何が分かるんですかーーーっ!」


そんな声が出てしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...