知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

花宮

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三章 〜半年が経って〜

四話 『いつもの調子に戻った人と告白』

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あれから三日が経った。私はあの後からずっとローラにべったりくっついている。朝も昼も一緒だ。流石に夜は一緒じゃないけども。


ローラはニコニコとしている。
彼女はとても優しい。私がくっついていても、文句ひとつ言わないのだ。むしろ積極的に手をつないでくれる。
その光景を見てリリィの濁った目から途端にキラキラした目になる。


あれは『推しカプ来たーー!』という気持ちが溢れ出ていた。推しカプが供給されすぎて鼻血を出しそうになっている。
私はリリィに話しかけた。


「………大丈夫?鼻血出してない?」


「だ、大丈夫ですわっ!そんなことよりも!尊すぎますわっ!」


リリィは胸を抑えながら悶えている。ちょっと気持ち悪い。今は人があんまりいないのが唯一の救いだわ。


「そんなことよりどうしたんですか?急に……半年前みたいに関係に戻っててびっくりしましたわ。お陰で私の覇気が戻ったので良かったですけれども」


そう言いながらリリィは親指を立てる。
本当にこの半年間、いいなり人形のようになっていたが……リリィが元気になってよかった。
私は苦笑いを浮かべながら言った。


「本当にあの半年間は地獄でしたよー。もう本当……私もナタリー様もあの半年間感情殺してましたけど……でも、もう大丈夫ですの!これからまた私の推しカプ生活が始まるんですわ!」


リリィは目を輝かせながらそう言った。私はそんなリリィに苦笑いをするしかなかった。元気になったのは嬉しいけどねぇ……


「推しカプ……といってもローラ、レオン様との婚約受け入れてるじゃないですか」


「そんなのは関係ありませんわ!ここからでも無理矢理軌道修正させてみせますわ!」


拳を上に突き上げながらリリィは叫んだ。
……あぁ、やっぱりリリィは変わってないな、と私は思った。別に私はローラのことはもう略奪するつもりはないんだよなぁ。


ただ、傍に居たいだけなのだ。しかし、レオン様からローラを奪おうとするリリィの気持ちはよくわかる。


「でも、レオン様と婚約してるなら奪うのは無理でしょ?それに私はニコラス様の婚約者なんだけど………一応」


「ニコラス様……。あの方も中々に厄介ですわね……しかし!私は絶対に諦めませんわっ!」


リリィがそう言うと、拳を握りしめていた。……ったく。本当にこの子はブレないなぁ。


「……まあ、頑張りなさいな。応援してるわ」


適当に返事しておいた。だって……ねぇ?私はもう略奪するつもりはないもの。でも――、


「(リリィが暴走したら……私が止めるしかなさそうだなぁ)」


私はそんなことを考えながらため息をはいた。


△▼△▼


「なぁ。ナタリー。愛してるよ」


そう言って私に愛を囁くニコラス様なんだけど……。
私は今、ニコラス様に抱きしめられている状況だ。しかも逃げられないように固定されているのだ。
私が離れようとすると、彼は私の腰に手を回してきたりして離してくれない。そのため逃げることが出来ないでいる状態だ。


「…愛してる……ですか。ニコラス様、最近それしか言いませんよね……」


この半年間の間、ずっと彼は私に愛を囁いていた。私がどれだけ拒否してもだ。……いや、別に嫌ではないんだけども……!


「そうか?」


「……そうです」 


私がそう言ってもニコラス様は、ニッコリと微笑んでいる。……これは絶対に気づいてる顔だわ。


「ねぇ、ニコラス様。私は……」


「ローラ・クレーヴのことが好きなんだろう?分かってるよ。ナタリーが僕のことを恋愛対象として見ていないことくらい」


否定の言葉は出ない。だってその通りだから。確かに私は彼を恋愛対象として見たことはない。だって、ニコラス様とは友達だもの。
そう答えると彼は少し寂しそうな顔をした。


私はすぐに彼に言葉を返そうとした。けど、彼が先に口を開いた。


「でも、僕は諦めないから」


「そうですか……もう離してくれませんか?」


ニコラス様はいい人だと思う。……でも、やっぱり恋愛対象として見ることは出来ない。婚約者なのに、ニコラス様に対して恋愛感情がないなんて最悪だわ。
私は、彼の目を見てはっきりと答えた。すると、彼は一瞬寂しそうな顔をしながら、


「……じゃあ、また後でな」


そう言って彼は私の頭を撫でた後去っていった。私はそれを見届けてからため息をついた。


「(……ごめんなさい)」


と、心の中で呟きながら。
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