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七話 『準備』

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――作戦は驚くほど簡単に成功してしまった。マリー様は男なら誰でも良かったのか、レオナルド様からあっさりジール様に乗り換えた。


まぁ、言っちゃなんだが、レオナルド様よりジール様の方がイケメンなんだよなぁ。マリー様は……面食いっぽいんだよなぁ。乗り換えた……と言っても、クラウス様と違い、キープ状態なのだが。


「俺、あの女に本気で惚れてたんだぜ?ホラーだよな……」


クラウス様は濁った目でそう言いながら紅茶を飲みながらため息を吐きながらお菓子を食べていた。


「まぁ……キープではなく、捨ててくれただけ楽なのでは?次の恋に専念出来ますし」


「うーん……そうなんだけどよ。いい女がいねーんだわ。あいつに持ってかれてから、本当にろくな女いねーの!お前は恋愛対象に見れねーし」


あいつって……ああ。ジール様のことか。それにしても……めちゃくちゃ失礼なこと言われてるー!私に色気なんてないと自覚してはいるが、傷つくなぁー! そんなことを思いながら私はクッキーを食べながら。


「奇遇ですね。私もクラウス様のことを恋愛対象だなんて全然見ていませんわ!」


まぁ、嘘ではないし、事実だ。私はクラウス様を恋愛対象なんて見れないし、見たくもない。
すると、クラウス様は……


「おー。本当?奇遇だなー」


「ええ。本当に……そうですわね」


私の嫌味に気づいているのかいないのか、クラウス様は笑顔でそう返事をしていると。


「戻ったぞ」


ジール様がため息を吐きながら、疲れたようにクラウス様の向かい側のソファに座った。
作戦から、1週間経っているが……


「俺はいつまで……あの女……マリー・アルメイダに付き纏われればいいんだ」


マジで疲れてる。相当参っているようだ。


「ごめんな。後もう少し、耐えてくれ」


クラウス様はそう言って謝り、紅茶を飲んだ。全然悪いと思ってなさそうですね……


「お前なぁ……」


ジール様はそんなクラウス様を睨みながら、ため息を吐く。相当お疲れのようだ。まぁ……


「確かに……あれを一週間はきついですよね」


私もため息を吐きながら、お菓子を食べていた。だってちょっとだけ覗き見したけどマリー様の声めちゃくちゃ高かったもん。聞いてるだけで疲れるからあんな間近で言われてたら余計に疲れるだろうなぁ。


だって遠くでも胃もたれするくらいの台詞だぞ?それを間近で言われ、笑顔で対応してるのか……恐ろしいわ。
そんなことを思っていると、


「じゃあ、俺は次、用事あるから。マリーのことは任せたぜ!」


そう言ってクラウス様は部屋から出ていった。二人になった途端、シーンと部屋の空気は変わっていく。クラウス様のことは嫌いだけど……ジール様と二人っきりは空気が気まずい雰囲気になる。それに、思えば私はジール様と二人っきりになったことはなかった。
ジール様と何を話したらいいんだ!?と思っていると、


「なぁ……お前………カトリーヌ・エルノーだったよな?」


「え……?あ、はい。そうですが…?」


突然ジール様に名前を呼ばれ、私はちょっと驚きながら返事をする。すると、


「お前さ……クラウスのことどう思ってる?」


ジール様はそんなことを聞いてきた。クラウス様のことをどう思っているのか?うーん……


「正直、タイプではありません。苦手だし、出来ればあまり関わりたくありません。この復讐が終わったら恐らく、話すことはありません」


嘘偽りのない真実を私はジール様に話した。すると、ジール様は苦笑いしながら、


「それは……はっきりと言うな?」


「ええ。はっきりと言いますよ。だってクラウス様も私みたいな女はタイプではないと言ってたし。私もタイプではありません」


嘘偽りのない言葉を並べると、ジール様は……


「……そうか」


ジール様はそれだけ言って、紅茶を一口飲みながら、


「またマリー・アルメイダに呼ばれてるからそろそろ行くわ」


そう言ってジール様は去っていった。


△▼△▼


そして次の日もジール様ははぁ……とため息を吐き、疲れた顔を浮かべている。
私はそんなに復讐にはそんなに関与してないんだよなぁ。していることと言えば盗撮しかしてないし……訴えられる可能性有る。まぁ、クラウス様が庇ってくれるでしょう!……流石に。


「ふふっ!いよいよ出来たぞ!資料も出来上がったし!これでやっと復讐を果たせる!」


クラウス様は満面の笑みで手に持つ資料を握りしめた。
クラウス様は最近凄く機嫌がいい。やっと復讐が出来ることが嬉しいのだろう。


「ジール、待たせたね!これでマリーの相手しなくて済むぞ!」


「もっと早く、復讐出来たことを望んでいましたよ。ええ」


ジール様、凄くイライラしてる……まぁ、そうだろうなぁ。
ずっとあのマリー様の相手をしてたんだもん。やっと解放されるって喜ぶよね……気持ちは凄く分かる。


「ごめんって。それじゃあ、復讐を始めようか」


そう言ってクラウス様はニッコリと微笑みながら。


「あぁ、やっとこの日がやって来た。あの憎い女の悔しがる顔が早く見たい。後、レオナルド・オルコットに復讐が出来るのも楽しみだなぁ!」


クラウス様、凄く嬉しそうに話している。楽しそうで何よりだ。


「レオナルド・オルコットの方も探ったんだが、あいつも、あいつで中々のクズだったわ。あんなのに将来王国任せたくねーわ、と内心思ったわ。浮気してるし」


浮気してたのか……まぁ、あれだけ女の人囲ってたら浮気の一つや二つしてるよね。レオナルド様は女にだらしないことは私が婚約者の時から有名だったし。


「さてーと。ささっと復讐終わらせますか!」


そう言ってクラウス様は意気揚々と部屋を出た。
私はそんなクラウス様の後ろ姿を、ジール様と見て苦笑いした。
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