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自分を機械だと思って動いていたら、マジで壊れたバカの話
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「あなたは、今どこにいるかわかりますか?」
「……医者」
たぶんそうだと思ったので、僕は言った。
さっきまでは、会社にいたと思ったら、どうみても医者の診察室みたいなとこにいた。
自分の名前とか、年とか、職業とか聞かれたと思う。
たぶん、普通に答えたのではないかと思う。
なんかアンケートみたいなのもやったかもしれない。
今となってはよく覚えていないけども。
「この状態で、どうやって仕事していたんですか?」
「いや…… 確かに最近ミスが多いと思ってましたが――」
上司がいた。医者と話していた。
いきなり出現したような、現実感のなさ。
ただ、そのときは「そうだなぁ、ミスが多いなぁ」と思っていたような気もする。
だってやった覚えのない仕事がいつの間には終わっているのだ。
で、ミスだらけなのだ。
僕の会社には、小人さんがいて、僕の仕事をやってくれているかのようだった。
バカな小人なのだろうけど。
つまり、自分が書いた記憶のない書類とか、設計書とか、テスト仕様書とか、そんなものがあるのだ。
なんか滅茶苦茶なやつだ。
「新入社員のことも完全に忘れていたんですよね」
「ええ」
上司と医者は話をつづけ、僕はそれを網膜に映しているだけだった。
ああ、あのことかと僕は思ったような気がした。他人事のような記憶。
会社内に、知らん顔の人間がうろうろ歩いていたのだ。以前のことだ。
なんか、仕事している。部長とかと話してるし。
外注はこのオフィスには入れないはずなのにだ。
くそちゃちな「指紋認証」システムをいれたら全然だめで、結局カードで入退室管理しているというオフィス。
僕が「誰あれ?」と隣のでかい後輩に聞いた。体重は130キロを超えている。
こんなくだらないことは覚えているが、名前は忘れた。
「え、誰のこと言っているんですか?」
「あの部長と話している若い人は誰なの?」
「新入社員の○×○×じゃないですか」
「え? 新入社員――」
気がつくといつの間にかGWも終わっていた。
脳内で断片化された記憶が、一瞬だけつながっていくような気がしたが、人間のことは思い出せない。
僕は新入社員の顔も名前も忘れていた。数か月間話もしていた相手なのに。
「昨日も、ちゃんと話していたじゃないですか」
「そうなのか?」
言われて考えてみると、昨日のことが、なにか思い出せそうで思い出せない夢のような感じになっている。
そんな自分に疑問すら感じなかった。
ということで、よく確認してみると、新入社員が入ってきたあたりから、2か月くらいの記憶が断片化して、新入社員の記憶がなかったのだ。
なんかそのときは、笑話になった。
僕が「ボケ」ているか、疲れているんじゃね?ってことで終わったわけだ。
僕もそんなもんかと思ったのだろう。多分ではあるが。
で、なんか毎日会社に行ったのは確かだ。
仕事はした。よく泊まったようだけど、辛いときは「お前は機械だ、機械なのだ!」という思いで動く。
高校時代から、朝起きるのが苦手で、そんな工夫をしていたのだ。
感情をアーカイブできるような感じ。棚をつくって、そこに格納できるような感じだった。
確か元ネタは漫画か何かであったと思う。
自分を機械だと思えば「心を殺して活動だけはできる」とかそんな感じのだ。
で、それをずっと使っていた。やってみたらできたのでつづけていた。
受験勉強で眠くなっても「お前は暗記する機械だ」と思った。
高校、大学と卒業して就職した。
コンピュータの仕事がしたくて、独立系のシステム開発会社に入った。
同期が30人入って5年で自分だけになった会社だった。
そんなとこで、僕は自分を機械と思い続け、稼働をしていた。
20年間ほど。
◇◇◇◇◇◇
その時の記憶は薄らぼんやりしてよくわからない。
なんで、会社と契約しているメンタル系の医師のところに自分がいたのか、経緯はよくわからない。
後から、聞いた話では「あまりにひどい感じがする」「やばいのではないか」という周りの判断があったらしい。
どうも、小人さんの仕事っぷりは、靴を作るようなわけにはいかなかったようだ。
コンピュータは苦手だったのだろう。というかバカだったのだ。
「自宅休養ですね」
医者と上司が話し合い、僕の合意は形だけで、自宅休養になったらしいのだ。
さきほどから「らしい」ばかり申し訳ない。
この時点では、記憶がほとんどなく、後からの伝聞であるということを承知願いたい。
だから僕は、またしても気が付くと「自宅休養」になっていたという感じだ。
「なぜ、僕は会社に行かないで家にいるのか?」なんて何回も思った。
病名は「うつ病」といわれたが、気分障害はない。落ち込んだりしていない。
そもそも、落ち込むような感情自体が摩耗していた。
やる気とか、そんなの関係なく「自分は機械だ」と思うと動ける感じだった。
食欲ゼロでも、食わないと死ぬからという理由で食う。味もくそもない。
よー考えてみると、その頃はまさに「哲学的ゾンビ」のような様態。
外からの受け答えはできた。
でも、何の感情もないし、そもそも、現実感がない。全くない。
この点は、言葉でうまく説明できない。
言葉は正常な感覚の人間が作り出したもので、異常感覚の状態での内面から生まれた言葉はないからだと思う。
異常を外からみて作り出した言葉はあるにせよだ。
無理やり言ってみれば――
自分の中に自分がいて、自分を操縦しており、目の前の光景は薄っぺらなフィルムから投影された景色に見えた。
時々、記憶が飛んでいる。現実が連続性を保てない。不幸もなければ幸福もない。
もしかしたら「無我の境地」だったのかもしれない。自我がないから。
で、医者に通うことになった。
ガチの専門病院だ。あしたのジョーの時代なら「き○ちがい病院」と表現されるべき場所。
で、専門医もよくわからんなりに、薬だしたり、アンケートしたり、テストしたりした。
そのときの、知能指数は60を割っていたようだ。後から聞いた。
ほぼ生活能力はない。仕事などできるわけがない。たぶん、その状態でもやっていたのだろうけど。
バカなのは小人ではなく、知能指数60の僕だったかもしれない。
そして、僕の断片化された現実が徐々に、治ってきた。
現代医学はなかなかやるものだと思うが、今度は「幻覚」「幻聴」「すさまじい疲労感」が発生。
「今まで何かの理由で抑え込んでいたものが、出てきているので、逆にいい方向に向かっている」
とかなんとか医者に言われたような気がする。
ただ復職はどうも無理っぽい感じだなとうすうす思っていた。
この時点で、半年以上経過しているのだ。求職期間は残り半年で、それを過ぎると自動的に病気理由の退職となる。
で、結局退職することになる。
焦りもなければ、悲嘆もない、何の感慨もない。20年間務めた会社だったが「そうかな」程度にしか思わなかった。
ただ、今度は時々、体を電気ショックののようなもが走り抜けるのだ。
電流火花が体を走る感じだが、チェンジしないという感じのすごいやつ。
一瞬で、収まるので、てんかん発作ではない。
皮膚感覚も異常になって、1日中、日焼け後のように皮膚がひりひりする。
とくに、ふくらはぎとか、肩とか、おなかもあった。
で、冷たい水をかけられたような錯覚もおきる。
このあたりの感覚異常は今もって治っていない。
そして会社を辞めたが、求職活動は医者から止められた。
「だって、今の状態で仕事できるわけないじゃない」
ということだ。それはそうだと思う。できるわけがない。
「そもそも、まっすぐ歩けないでしょう」
「そうですね」
肯定するしかない。
パンチドランカーのように二足歩行時に蛇行するのだ。あしたのジョーか、僕は。そんなかっこよくないのな。ちなみに、四足歩行は試していない。おそらく四足歩行する人間を雇う会社もないだろう。
なんでも、激しい脳や神経の過負荷で、よーわからんダメージが蓄積しているようだったのである。
だもんで、医者も「原因不明」とりあえず最初の病名の「鬱」のまま、来ているが、世間一般の鬱じゃないことは確かだろう。
「解離性障害に近いかもしれない。離人症かな」とか言われたこともある。
でも、病気を分類したとて、僕の壊れた脳や精神は元には戻らないのである。
てんこ盛りの薬を飲んで、やっとこ日常生活を送れるような感じだった。
仕事していないし、妻も体が悪いので仕事ができない。
子供はまだ小学生だった。
貯金はどんどん減った。
でも、未来に対する不安を感じない。たぶん、もともと未来に対する期待とか、夢がなかったからだろう。
流れに抗うような気力もわかないということだ。
不安は、漠然とした未来に抗う気持ちがなければ、生まれようもない。
諦観からは、どんな感情も生まれない。高濃度汚染水でできた明鏡止水だ。
まあでも、会社をやめて5年間――
今、生きているし、娘も独立したので、何とかなるのだろうと思う。
特に、努力はしていない。そもそもできない。
流れるままに身をまかせていたら、こうなったのだ。
「求職活動していいよ」といわれたのは、1年後くらいだった。
日本という国の破たん仕掛けた社会保障システムから、失業保険がでた。
支給額は、辞める前の給料で決まるらしい。
で、ハローワークにいかないと出ない。
職を探した。誰でもできる脳に負荷のかからない職業。
でも、職にはつけない。面接すらできない。
履歴書ではねられる。
求職カウンセラーに相談した。
「キャリアギャップ」という言葉を初めて聞いた。
簡単な誰でもできるような仕事を探したのだが、そういう仕事に就くのは僕にはできないという現実だった。
それだけだ。人生において、学歴が逆目にでることもあるという貴重な事例だろうと思う。
とりあえず、持っているけど、関係ない資格は履歴書に書かないこと。
自作のパソコンで作った履歴書ではなく市販の履歴書を使うように言われたと思う。
ただ、どうにかせんといけないので、ネットの在宅仕事やりはじめたら、普通に食えた。
仕事やっていたときのコネの仕事もあった。
また、別口のコネで、塾講師もやった。
き○がい病院に通っていたが、受験勉強の内容だけは覚えていた。
なんでか知らんけど。小4から高2まで、主に算数・数学を教えた。
一番脳に負荷がかからない。ロジカルさゆえにだろうと思う。
気分障害の鬱は、脳が警報を出しているのだと思う。
僕はその警報器すらぶち壊れていた。
誰のせいでもなく自分が悪いわけでもなく、こうなるのは仕方ねーと今は思っている。
ただ、気分障害のある人、疲れがひどいと思う人は早めに医者に行くほうがいい。
鬱は心の風邪だという。
で、風邪は万病のもとだという。
風邪であることに気付かず、悪化させれば、肺炎とか、いろいろな病気になる。
で、死ぬこともある。
鬱は心の風邪だという。
だから、鬱で心が死んでしまうこともあるのだと僕は思うのだ。
本当に自殺する人もいるけれど。
だから、どうということではないけど、意識を生み出す脳も臓器の一つであり、特別ではなく、無理すりゃ壊れる器官なのだということだ。
人は機械じゃないというけれど、機械と思い込むと、壊れますという話です。
10年使っていたパソコンも壊れた。
そのデータ移行、設定をやり終えた。
人間は精神の移行はできないし、そもそも壊れた精神を移行してもしょうがない。
僕は、この壊れた精神のまま、日常を生きていくのだと思う。
まあ、それも意外に悪くはない生活なので、今のところ気にはならない。
気にできないだけかもしれないが。
「……医者」
たぶんそうだと思ったので、僕は言った。
さっきまでは、会社にいたと思ったら、どうみても医者の診察室みたいなとこにいた。
自分の名前とか、年とか、職業とか聞かれたと思う。
たぶん、普通に答えたのではないかと思う。
なんかアンケートみたいなのもやったかもしれない。
今となってはよく覚えていないけども。
「この状態で、どうやって仕事していたんですか?」
「いや…… 確かに最近ミスが多いと思ってましたが――」
上司がいた。医者と話していた。
いきなり出現したような、現実感のなさ。
ただ、そのときは「そうだなぁ、ミスが多いなぁ」と思っていたような気もする。
だってやった覚えのない仕事がいつの間には終わっているのだ。
で、ミスだらけなのだ。
僕の会社には、小人さんがいて、僕の仕事をやってくれているかのようだった。
バカな小人なのだろうけど。
つまり、自分が書いた記憶のない書類とか、設計書とか、テスト仕様書とか、そんなものがあるのだ。
なんか滅茶苦茶なやつだ。
「新入社員のことも完全に忘れていたんですよね」
「ええ」
上司と医者は話をつづけ、僕はそれを網膜に映しているだけだった。
ああ、あのことかと僕は思ったような気がした。他人事のような記憶。
会社内に、知らん顔の人間がうろうろ歩いていたのだ。以前のことだ。
なんか、仕事している。部長とかと話してるし。
外注はこのオフィスには入れないはずなのにだ。
くそちゃちな「指紋認証」システムをいれたら全然だめで、結局カードで入退室管理しているというオフィス。
僕が「誰あれ?」と隣のでかい後輩に聞いた。体重は130キロを超えている。
こんなくだらないことは覚えているが、名前は忘れた。
「え、誰のこと言っているんですか?」
「あの部長と話している若い人は誰なの?」
「新入社員の○×○×じゃないですか」
「え? 新入社員――」
気がつくといつの間にかGWも終わっていた。
脳内で断片化された記憶が、一瞬だけつながっていくような気がしたが、人間のことは思い出せない。
僕は新入社員の顔も名前も忘れていた。数か月間話もしていた相手なのに。
「昨日も、ちゃんと話していたじゃないですか」
「そうなのか?」
言われて考えてみると、昨日のことが、なにか思い出せそうで思い出せない夢のような感じになっている。
そんな自分に疑問すら感じなかった。
ということで、よく確認してみると、新入社員が入ってきたあたりから、2か月くらいの記憶が断片化して、新入社員の記憶がなかったのだ。
なんかそのときは、笑話になった。
僕が「ボケ」ているか、疲れているんじゃね?ってことで終わったわけだ。
僕もそんなもんかと思ったのだろう。多分ではあるが。
で、なんか毎日会社に行ったのは確かだ。
仕事はした。よく泊まったようだけど、辛いときは「お前は機械だ、機械なのだ!」という思いで動く。
高校時代から、朝起きるのが苦手で、そんな工夫をしていたのだ。
感情をアーカイブできるような感じ。棚をつくって、そこに格納できるような感じだった。
確か元ネタは漫画か何かであったと思う。
自分を機械だと思えば「心を殺して活動だけはできる」とかそんな感じのだ。
で、それをずっと使っていた。やってみたらできたのでつづけていた。
受験勉強で眠くなっても「お前は暗記する機械だ」と思った。
高校、大学と卒業して就職した。
コンピュータの仕事がしたくて、独立系のシステム開発会社に入った。
同期が30人入って5年で自分だけになった会社だった。
そんなとこで、僕は自分を機械と思い続け、稼働をしていた。
20年間ほど。
◇◇◇◇◇◇
その時の記憶は薄らぼんやりしてよくわからない。
なんで、会社と契約しているメンタル系の医師のところに自分がいたのか、経緯はよくわからない。
後から、聞いた話では「あまりにひどい感じがする」「やばいのではないか」という周りの判断があったらしい。
どうも、小人さんの仕事っぷりは、靴を作るようなわけにはいかなかったようだ。
コンピュータは苦手だったのだろう。というかバカだったのだ。
「自宅休養ですね」
医者と上司が話し合い、僕の合意は形だけで、自宅休養になったらしいのだ。
さきほどから「らしい」ばかり申し訳ない。
この時点では、記憶がほとんどなく、後からの伝聞であるということを承知願いたい。
だから僕は、またしても気が付くと「自宅休養」になっていたという感じだ。
「なぜ、僕は会社に行かないで家にいるのか?」なんて何回も思った。
病名は「うつ病」といわれたが、気分障害はない。落ち込んだりしていない。
そもそも、落ち込むような感情自体が摩耗していた。
やる気とか、そんなの関係なく「自分は機械だ」と思うと動ける感じだった。
食欲ゼロでも、食わないと死ぬからという理由で食う。味もくそもない。
よー考えてみると、その頃はまさに「哲学的ゾンビ」のような様態。
外からの受け答えはできた。
でも、何の感情もないし、そもそも、現実感がない。全くない。
この点は、言葉でうまく説明できない。
言葉は正常な感覚の人間が作り出したもので、異常感覚の状態での内面から生まれた言葉はないからだと思う。
異常を外からみて作り出した言葉はあるにせよだ。
無理やり言ってみれば――
自分の中に自分がいて、自分を操縦しており、目の前の光景は薄っぺらなフィルムから投影された景色に見えた。
時々、記憶が飛んでいる。現実が連続性を保てない。不幸もなければ幸福もない。
もしかしたら「無我の境地」だったのかもしれない。自我がないから。
で、医者に通うことになった。
ガチの専門病院だ。あしたのジョーの時代なら「き○ちがい病院」と表現されるべき場所。
で、専門医もよくわからんなりに、薬だしたり、アンケートしたり、テストしたりした。
そのときの、知能指数は60を割っていたようだ。後から聞いた。
ほぼ生活能力はない。仕事などできるわけがない。たぶん、その状態でもやっていたのだろうけど。
バカなのは小人ではなく、知能指数60の僕だったかもしれない。
そして、僕の断片化された現実が徐々に、治ってきた。
現代医学はなかなかやるものだと思うが、今度は「幻覚」「幻聴」「すさまじい疲労感」が発生。
「今まで何かの理由で抑え込んでいたものが、出てきているので、逆にいい方向に向かっている」
とかなんとか医者に言われたような気がする。
ただ復職はどうも無理っぽい感じだなとうすうす思っていた。
この時点で、半年以上経過しているのだ。求職期間は残り半年で、それを過ぎると自動的に病気理由の退職となる。
で、結局退職することになる。
焦りもなければ、悲嘆もない、何の感慨もない。20年間務めた会社だったが「そうかな」程度にしか思わなかった。
ただ、今度は時々、体を電気ショックののようなもが走り抜けるのだ。
電流火花が体を走る感じだが、チェンジしないという感じのすごいやつ。
一瞬で、収まるので、てんかん発作ではない。
皮膚感覚も異常になって、1日中、日焼け後のように皮膚がひりひりする。
とくに、ふくらはぎとか、肩とか、おなかもあった。
で、冷たい水をかけられたような錯覚もおきる。
このあたりの感覚異常は今もって治っていない。
そして会社を辞めたが、求職活動は医者から止められた。
「だって、今の状態で仕事できるわけないじゃない」
ということだ。それはそうだと思う。できるわけがない。
「そもそも、まっすぐ歩けないでしょう」
「そうですね」
肯定するしかない。
パンチドランカーのように二足歩行時に蛇行するのだ。あしたのジョーか、僕は。そんなかっこよくないのな。ちなみに、四足歩行は試していない。おそらく四足歩行する人間を雇う会社もないだろう。
なんでも、激しい脳や神経の過負荷で、よーわからんダメージが蓄積しているようだったのである。
だもんで、医者も「原因不明」とりあえず最初の病名の「鬱」のまま、来ているが、世間一般の鬱じゃないことは確かだろう。
「解離性障害に近いかもしれない。離人症かな」とか言われたこともある。
でも、病気を分類したとて、僕の壊れた脳や精神は元には戻らないのである。
てんこ盛りの薬を飲んで、やっとこ日常生活を送れるような感じだった。
仕事していないし、妻も体が悪いので仕事ができない。
子供はまだ小学生だった。
貯金はどんどん減った。
でも、未来に対する不安を感じない。たぶん、もともと未来に対する期待とか、夢がなかったからだろう。
流れに抗うような気力もわかないということだ。
不安は、漠然とした未来に抗う気持ちがなければ、生まれようもない。
諦観からは、どんな感情も生まれない。高濃度汚染水でできた明鏡止水だ。
まあでも、会社をやめて5年間――
今、生きているし、娘も独立したので、何とかなるのだろうと思う。
特に、努力はしていない。そもそもできない。
流れるままに身をまかせていたら、こうなったのだ。
「求職活動していいよ」といわれたのは、1年後くらいだった。
日本という国の破たん仕掛けた社会保障システムから、失業保険がでた。
支給額は、辞める前の給料で決まるらしい。
で、ハローワークにいかないと出ない。
職を探した。誰でもできる脳に負荷のかからない職業。
でも、職にはつけない。面接すらできない。
履歴書ではねられる。
求職カウンセラーに相談した。
「キャリアギャップ」という言葉を初めて聞いた。
簡単な誰でもできるような仕事を探したのだが、そういう仕事に就くのは僕にはできないという現実だった。
それだけだ。人生において、学歴が逆目にでることもあるという貴重な事例だろうと思う。
とりあえず、持っているけど、関係ない資格は履歴書に書かないこと。
自作のパソコンで作った履歴書ではなく市販の履歴書を使うように言われたと思う。
ただ、どうにかせんといけないので、ネットの在宅仕事やりはじめたら、普通に食えた。
仕事やっていたときのコネの仕事もあった。
また、別口のコネで、塾講師もやった。
き○がい病院に通っていたが、受験勉強の内容だけは覚えていた。
なんでか知らんけど。小4から高2まで、主に算数・数学を教えた。
一番脳に負荷がかからない。ロジカルさゆえにだろうと思う。
気分障害の鬱は、脳が警報を出しているのだと思う。
僕はその警報器すらぶち壊れていた。
誰のせいでもなく自分が悪いわけでもなく、こうなるのは仕方ねーと今は思っている。
ただ、気分障害のある人、疲れがひどいと思う人は早めに医者に行くほうがいい。
鬱は心の風邪だという。
で、風邪は万病のもとだという。
風邪であることに気付かず、悪化させれば、肺炎とか、いろいろな病気になる。
で、死ぬこともある。
鬱は心の風邪だという。
だから、鬱で心が死んでしまうこともあるのだと僕は思うのだ。
本当に自殺する人もいるけれど。
だから、どうということではないけど、意識を生み出す脳も臓器の一つであり、特別ではなく、無理すりゃ壊れる器官なのだということだ。
人は機械じゃないというけれど、機械と思い込むと、壊れますという話です。
10年使っていたパソコンも壊れた。
そのデータ移行、設定をやり終えた。
人間は精神の移行はできないし、そもそも壊れた精神を移行してもしょうがない。
僕は、この壊れた精神のまま、日常を生きていくのだと思う。
まあ、それも意外に悪くはない生活なので、今のところ気にはならない。
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