異世界のおっさんフリー冒険者は固有スキル「傘を刺す」で最強無双だった

中七七三

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4.魔具降臨の儀式、俺の「固有スキル」は?

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 真夜中、深夜――

 俺は祭壇に寝かされている。睡眠はしていない。
 起きてる。要するに横になっているのだ。
 
 城の中――
  
 要するに儀式は始まったのだ。 

 ここは、このアホウな儀式を行うための場所だ。
 城の中の最も高い塔。

 お姫様がロリコン伯爵に閉じ込められそうな場所だ。
 でもって、天井が開くようになっている。

 夜だから、空は深い闇の色をみせている。
 ただ、この異世界の夜光は、元の世界よりも明るいのだろう。

 夜天には、降ってきそうな星の群れだった。

 上を向いて俺はそれをが見ていた。
 この世界で月はひとつしかない。
 天井からは見えないが、星明りは薄く広く夜天を染めている気がした。

 月は天空にあるだけで、地上に十分な夜光が注ぎ込んでいるのだろう。

 部屋の壁には松明が備え付けられている。
 炎の作る揺れる灯りと、流れ込む夜光の混ざり合った空間だった。


 そんなことで――
 
 俺は、全身を「聖なる香油」に塗られヌルヌル。
 
 でもって儀式開始。

「儀式を始める――」

 なんか、偉そうな人が言った。
 司祭的な何かな人だろう。

 ちなみに、この場にいるのは儀式を行う祭司ばかりが10人ほど。
 俺のねっ転がっている寝台を囲んでいる。
 なんか、彼らが祈りをささげようとしたときだった。

 凄まじい光と轟音が俺を直撃する。
 その衝撃波で、祭司たちも吹っ飛ばされた。

 まさに落雷直撃だった。

「どっかーん」って感じだ。
 
「あばばばばばばばーぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 俺は5歳児とは思えな絶叫を上げた。
 ビリビリと全身が痺れてバラバラになるかと思った。

「おおお!! このような…… このような…… これはいったい……」

 でもって、儀式を行った祭司たちが、俺の身体を入念に調べた。
 俺は白目をむいて失神していたが、回復。
 なんか、すっきりして気持ちいい感じがしたくらいだった。

「雷…… ではないのか……」

「御曹司の身体には全く傷もありませぬ」

 俺の身体を調べた司祭のおっさんが言った。

 俺は黒こげになったかと思ったがそんなことはなかった。
 生きていた。俺はまだこの異世界で生きていて、二回目の死亡を経験することはなかった。

 ということは、あれは「落雷」ではなかったのだろう。

「魔具降臨の衝撃か……」

「ぬうぅ…… そのような衝撃を発するなど、過去の歴史もないが――」

「いや、1500年ほど前に、そのような伝えが……」

「知ってはおるが、それは古すぎる。神話、伝承の類に近い」

「しかし、では今のは?」

 おっさんたちは好き勝手なことを言って俺の身体をおさわりしまくり。
 10歳のいたいけな少年は、香油でヌルヌルになって、おっさんたちにいじくりまわされてている。
 まあ、俺も元々はおっさんで、中身はおっさんだけど。

「ない…… 降臨したはずの、魔具が見当たりません」
「バカな、よく探すのだ!」
「しかし…… ここにも……」
「めくれ! 皮をめくっても構わん!」

 おっさんたちに引き続き、俺の体をいじくりまわす。
 絵的は「青少年保護法」違反的な光景が続く。
 
 なに?
 凌辱?
 蹂躙?

 しかし、この異世界には俺をおっさんの手から守る物はなにもない。

「青少年保護条例」はない
「強制わいせつ」はない
「児童虐待」と言う考えは一切ない。

 異世界だから。
 民度は中世ヨーロッパレベルだから。
 まあ、俺の中身は「おっさん」だけど、だからと言って体をおっさんに触られるのは堪らんのだ。
 しかも、よってたかってだ。

「やはり、魔具が…… 見つかりません――」
 
 比較的若い男が、おれの身体をいじくりまわしての結論を口にする。

「バカな、あの雷霆らいていは…… あのような一撃が……」

 儀式を指揮っていたジジイがうめくようにいった。

「あのぉ、もういいんじゃないですかね? ない物はないで――」

 俺はおっさんたちに肢体を晒し触らせ放題にさせる趣味はない。
 ヌルヌルの素っ裸の美少年の肉体を――

「しかし、そうなると、この儀式は失敗で、私たちの責任問題に……」

 責任者と思える司祭が怯えきった声で言った。
 まあ、分かる。
 俺の親父に「息子さんの儀式失敗して、魔具降臨しませんでした。てへ♥」とか言ったら。
 まあ、最後までそのセリフが言えたらラッキーだ。
 途中で、見えない斬撃食らって死ぬ。

 だから、俺はかばうことにした。
 まあ、おっさんは色々大変なのだ。
 この異世界でも俺のいた世界でもだ。

「まあ、それは―― いいよ。俺の方から両親には話を合わせておくからさ」

 俺は寝台に座ると言った。タオルかなにか、身体を拭くものを持ってきてほしいとも言った。

 この儀式の目的は、5歳になった俺に魔具を天から降臨させること。
 まあ、実際、雷みたいなのは落ちてきたので、なんかあったのかもしれん。

 俺は「何かの条件を満たさないと見えない魔具ってのもあるんじゃない」と助け船を出した。
 渡されたタオルで体を拭きながらだら。

 本当であれば「アホウでは見えない魔具」と言ってやってもよかったが。

 まあ、侃々諤々と言う感じで、しばらく話は続いた。
 まあ、祭司たちも責任とるのはいやなんだろう。
  
 俺の魔具は「何やら体内に埋没した」とかいう話になったようだ。
 適当な感じで決めた。


 まあ、「固有スキル」は前例のないことで調査中ということになった。

「御曹司は、天才で神童であらせまするので……」

「ま、知的能力の部分で『固有スキル』が発動したとか、今以上に見せつけてつじつまつけるって感じか」

「もそ、そうしていただけるなら……」

 司祭はペコペコする。

 まあ、実際のところ、親父みたいに、戦場で有用な「武具」「兵器」の固有スキルなんかが身に宿るのは勘弁だった。
 だから、司祭と共犯関係を作るのも悪くはなかった。

「しかし…… 本当に体の中に……」

 俺の身体を最後まで熱心に調べていた司祭が言った。

「ま、それはないんじゃないかな」

 俺の身体には全く違和感がなかった。


 しかしだ。

 彼の言ったことは一部正しかった。
 そして、その「魔具」は俺の身体のある部分から、飛び出してくることになるのだった。
 
 恐るべき固有スキルをもった「魔具」がだ。
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