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5.やりすぎ? 戦乱の大陸と俺覚醒
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その日――
10歳になったばかりのその日だった。
俺は凄まじい爆発音で目を覚ました。
俺はベッドから跳ね起きた。
窓に飛びつき、外を確認する。
早朝――
いや、まだ日は登っておらず、濃紺の空が広がっていた。
ただ、地平の底が薄らと明るくなっている。
そして見えた――
無数の――
敵……
俺のいる城を攻めている敵だった。
「なんで! 親父のいないときに、奇襲くらうんだ! この城がぁぁ!」
「敵勢50,000すでに城を囲み、城壁を突破、堀に対しては橋を架け、進行を――」
「ワッ!! いつの間に!!」
いつの間にか頭の禿げた老騎士脇に膝をついていた。
でもって、俺に淡々と事実を告げる。
肝が据わって落ち着いているのか、現実に恐怖がおいつかないかどっちかだ。
俺は薄明かりの中に浮き上がる敵の大軍を見つめた。
確かに「5万」と言う数に誇張はなさそうだった。
「この城の兵は?」
「300!」
「アホウかぁぁ!5万対300かよ!」
「御意!」
「御意じゃねーよ。無理だろ? 落城するぞ、洒落にならねーじゃないか!」
夜間浸透奇襲だ――
くそ、武器の変化――
進歩に人間は対応して、対策をたたてきやがる。
鉄砲を中心とする、火砲はこの世界で急激に発達した。
そして、その対策の戦法だって生み出されていく。
「夜間の見張りはなにをしていた! 5万軍勢が近づいてきたのをなんで気が付かねぇんだよ!」
「まさしく不覚、不覚にも…… 酒飲んで……」
「……」
もはや返す言葉もない。
親父は国の命令でありたっけの軍勢を引いて出撃した。
でもって、城の残っているのは、じじぃとかガキ(まあ、俺も今はそうだが)とか、病人とか――
多分、あとは莫迦だ。親父は莫迦が嫌いなのだ。
「戦争末期、本土決戦に備えた日本軍かよ!!」
「はぁ?」
「なんでもねーよ!!」
俺は一応軍服を身にまとう。
くそ、ここで俺は死ぬのか?
ああああ、なんでこの世界は戦争ばっかしてるの?
バカなの? 人類は愚かなの?
もっと、平和を愛して生きていけないの?
「しかし、武勇で響くヴァンガード家の主城に奇襲仕掛けるなど、あまりにも無謀――」
無謀もくそもねーよ。
300人しか残っていないんだから。
しかも、そのうちにひとりはキミのようなジジイだからな。
しかしだ――
「兵の動きを掴まれていたな。くそ―― 兵站か…… 情報管理が甘かったんだよ」
親父には一応忠告はしたのだが、どうも連戦連勝の親父には、俺の忠告がピンとこないようだ。
それよりも、俺の生み出した兵器、武器の素晴らしさに酔っていた。
「こんなときに、10歳の俺が指揮官かよ」
「御意!」
「うっせー!」
親父が留守の間、10歳の俺がこの城の主代行なのだ。
「くそぉぉ! 戦争が多ぎるんだよ! この国は!」
この世界の戦乱の多さは半端ない。
以前も、ヴァンガード家の主城に対し、攻撃を仕掛けてきた敵もいた。
迂回攻撃、包囲攻撃、強硬正面突破――
そのことごとくを、少数の兵による火力防衛で打ち破ってきたのだ。
この城を攻めてきたアホウの99%以上はあの世に今いるはずだ。
俺の創り上げた、火薬と銃。
火器を連動させた、鋼と火薬の槍衾に守られたこの城は「盤石」と言うイメージが強すぎた。
「結局のところ、相手もアホウじゃないってことだし、どうにも武器を使いすぎた」
魔法使いしかあり得なかった石弓や長弓を超えた攻撃レンジを持った銃。
原始的な火縄銃ではある。
ただ、原始的で単純であるがゆえに、戦乱に狂ったこの大陸では一気に広まった。
ちなみに、俺にはパテントも、特許料も入っていないのだ。
なんという理不尽。
つまるところ……
俺はだ。
あまりにも――
安易に――
この異世界に、危険な現代知識を拡散しすぎてしまっていたのだった。
それは俺が「儀式」を受け、「すっごい武器を発明しちゃう「固有スキル」を得てますよ」というようなイメージを強めるためだ。
まあ、儀式以前も、現代知識を持ち活用はしていた。
しかし、俺は儀式後、とにかく、必死に頭を搾ってあらゆる武器をこの異世界に再現させた。
あははは――
「迫撃砲までもってやがるぜ」
俺は窓を見やっていった。
構造は簡単。ただの筒で、先から砲弾を落とすことで、砲弾を発射できる武器。
完全な近代兵器だ――
この中世ヨーロッパレベルでも何とかできてしまったもののひとつだった。
「こっちに、銃があるっていうのが油断を産んだか――」
「御意」
「御意じゃねーよ! 肯定しても状況かわらねーよ」
敵の奇襲を伝えにきたのだろう(もう俺は先に目を覚ましていたが)、老騎士に俺はいった。
まあ、親父の軍勢の選抜に漏れたという時点で、その能力は問題ありだ。
多分、バカ。
この大陸は、いくつかの王国と緩やかな領主貴族のつながりで、統治されている大陸だ。
とにかく、銃と火薬を使った火器兵器の拡散は戦乱を激化させた。
あはははは――
歴史は繰り返す。
まさに、日本の戦国時代を更に「修羅の国」にして、地獄にしたような感じ?
なんせ、火器さえあれば、少数の傭兵隊でも、旧来型の騎士・騎兵を中心とする強大な兵力を粉砕できるのだ。
今や戦場は銃弾が飛びかう。
原始的な手りゅう弾は飛びまくる。
フランスのストークブラン社が「特許料払え」と言い出すこと間違いなしの迫撃砲までバカスカ弾丸を打ち出す戦場だ。
あははは――
俺やりすぎた。
無煙火薬の破壊力は、黒色火薬の50倍。
戦場はメガデス――
とにかく俺の現代知識が異世界の戦乱のバランスを崩してしまった。
元々多かった戦乱が広がった。戦に無縁だった小勢力まで、今では恐るべき存在だ。
まさに俺の暮らすこの異世界は「修羅の国」と化している。
なんか、多分……
俺のせいかもしれないなー
とは薄っすらと思っていた。
「しかし、城が攻められるとかぁぁ!!」
鉄と硝煙の匂いがここまで香る。
もすでに、城の外は5万の軍に包囲され、魔女がかき混ぜる鍋に放り込まれる寸前だった。
あははは――
乾いた笑いが口元に浮かぶ俺。
カクンと力なく首が曲がった。なんかそれどーでもいい。
爆音とともに、壁が粉砕された。
まさしく爆速が黒色火薬の50倍近くとなる「コルダイト」という無煙火薬が爆発し、壁を吹き飛ばしたわけだ。
「火薬か…… くそぉぉ、火薬と鉄砲がこんなに拡散するとは……」
そのときだった。
俺の尻がムズムズしだした。
そう言えば、朝トイレに言っていない。
しかし、それどころではない。
そもそも、戦場では垂れ流して戦うのが普通だ。
あははは―― 俺もそうするか?
俺は尻から流れ出そうとする者に抵抗することをやめた。
にゅりゅんぬるるるるるうるるる゛――
ぱっ!!
尻の穴から何か出た感触はあった。
しかし、それは…… 食べたモノを消化して出したそいつじゃない。
「傘にございます。御曹司の尻から傘がでました」
淡々とジジイの騎士が状況説明した。
確かにそうだった。
俺の尻から、傘が生えていた。
というか、「俺の尻に傘が刺さっている」と言うような状況だ。
俺は5万の軍勢に城を攻められ、「俺の尻に傘が刺さっている」状態だった。
「なんだこれ?」
「傘にござります」
「ナンで尻に傘が?」
「御意!」
「御意じゃねーよ。な理由だ! 理由を――」
しかし、俺はこのアホウの老騎士と遊んでる暇などなかったのだ。
そもそも、コイツに理由が分かるわけがない。
「いたぞぉぉ!! 敵だ!! 大将首だぁぁ!」
爆発が連続し、火焔が吹き上がる音も聞こえる。
まさに、城は「絶賛落城中」な訳だろう――
落城初体験中――
でもって、俺も――
「くそがぁぁぁ!!! 死んでたまるかよぉぉ!!」
気がつくと、俺は敵に突撃した。
まるで、自分の身体全身がベタ塗となり、目だけがくっきりと描かれているかのような錯覚。
うひひひひひ。
なぜか、死ぬ気が微塵もなかった。
「なんだぁぁ!! 尻に傘が刺さって―― あああああ」
俺は剣を構えていた男を素手でぶん殴っていた。
剣ごとたたき折って、兜で守られた敵の首が引きちぎた。
でもって、くるくると真っ赤な血の尾を引いて、吹っ飛んでいった。
「あははははは、来いよぉぉ!! 死にたい奴はかかってこいよぉぉ!!」
俺の尻に刺さった傘がぱっと大きく開いた。
まるで、俺の魂と共鳴するかのようにだった――
皆殺し――
殺戮――
蹂躙――
凌辱――
阿鼻叫喚――
血まみれの地獄を俺は作りだしていた。
圧倒的な暴力だけで。素手による圧倒的な暴力だけでだ。
「コイツが!! 喰らえ!!」
爆炎が響き至近距離からの銃撃。
しかし、俺のケツに刺さった傘が、ひゅんと動いてその銃弾を開いた傘で防いだ。
「ぬぉぉぉ、我が魔力を食らいて、眼前に立つ者を――」
魔法使いもいたようだ。珍しい。
しかし、そいつの魔法によって生じた激しい火焔も、俺のケツに刺さった傘が防ぐ。
あははははは!!
「死ね!! 死んでしまえ!! このゴミがぁぁぁ!! あははははは!!」
俺は銃を撃った男の脳天を拳で叩きつぶした。
頭が胴体にめり込んで、ぴゅーっと血が噴水みたいにでてきた。
魔法使いには蹴りをぶち込んだから、ビューん゛っと飛んで、壁に激突。
そこに、血と肉で彩る前衛芸術を作った。笑える。
俺は戦った。戦った。ケツに開いた傘を刺したまま戦った。
全く負ける気がしないのだ――
そして、俺は勝った。
返り血を浴び、血まみれで哄笑していた。
爆炎と血と鋼の匂いの満ちた、崩れ、廃墟と化した城でひとり笑っていたのだ。
銃で武装され――
大量火器兵器を保持する攻城兵団。
その数5万人――
ケツに開いた傘の刺さった俺は、その敵に完全に勝っていた。
それはもう、完璧な圧勝であった。
そうだ――
このケツに刺さった開いた傘こそが俺の「魔具」なのだ。
そして、俺の肛門に刺さって今までその奥底に潜んでいたのだ。
今、その全貌を明らかとした。
俺は、ケツに刺さった傘外来ている状態では、無敵であり無双だった。
10歳になったばかりのその日だった。
俺は凄まじい爆発音で目を覚ました。
俺はベッドから跳ね起きた。
窓に飛びつき、外を確認する。
早朝――
いや、まだ日は登っておらず、濃紺の空が広がっていた。
ただ、地平の底が薄らと明るくなっている。
そして見えた――
無数の――
敵……
俺のいる城を攻めている敵だった。
「なんで! 親父のいないときに、奇襲くらうんだ! この城がぁぁ!」
「敵勢50,000すでに城を囲み、城壁を突破、堀に対しては橋を架け、進行を――」
「ワッ!! いつの間に!!」
いつの間にか頭の禿げた老騎士脇に膝をついていた。
でもって、俺に淡々と事実を告げる。
肝が据わって落ち着いているのか、現実に恐怖がおいつかないかどっちかだ。
俺は薄明かりの中に浮き上がる敵の大軍を見つめた。
確かに「5万」と言う数に誇張はなさそうだった。
「この城の兵は?」
「300!」
「アホウかぁぁ!5万対300かよ!」
「御意!」
「御意じゃねーよ。無理だろ? 落城するぞ、洒落にならねーじゃないか!」
夜間浸透奇襲だ――
くそ、武器の変化――
進歩に人間は対応して、対策をたたてきやがる。
鉄砲を中心とする、火砲はこの世界で急激に発達した。
そして、その対策の戦法だって生み出されていく。
「夜間の見張りはなにをしていた! 5万軍勢が近づいてきたのをなんで気が付かねぇんだよ!」
「まさしく不覚、不覚にも…… 酒飲んで……」
「……」
もはや返す言葉もない。
親父は国の命令でありたっけの軍勢を引いて出撃した。
でもって、城の残っているのは、じじぃとかガキ(まあ、俺も今はそうだが)とか、病人とか――
多分、あとは莫迦だ。親父は莫迦が嫌いなのだ。
「戦争末期、本土決戦に備えた日本軍かよ!!」
「はぁ?」
「なんでもねーよ!!」
俺は一応軍服を身にまとう。
くそ、ここで俺は死ぬのか?
ああああ、なんでこの世界は戦争ばっかしてるの?
バカなの? 人類は愚かなの?
もっと、平和を愛して生きていけないの?
「しかし、武勇で響くヴァンガード家の主城に奇襲仕掛けるなど、あまりにも無謀――」
無謀もくそもねーよ。
300人しか残っていないんだから。
しかも、そのうちにひとりはキミのようなジジイだからな。
しかしだ――
「兵の動きを掴まれていたな。くそ―― 兵站か…… 情報管理が甘かったんだよ」
親父には一応忠告はしたのだが、どうも連戦連勝の親父には、俺の忠告がピンとこないようだ。
それよりも、俺の生み出した兵器、武器の素晴らしさに酔っていた。
「こんなときに、10歳の俺が指揮官かよ」
「御意!」
「うっせー!」
親父が留守の間、10歳の俺がこの城の主代行なのだ。
「くそぉぉ! 戦争が多ぎるんだよ! この国は!」
この世界の戦乱の多さは半端ない。
以前も、ヴァンガード家の主城に対し、攻撃を仕掛けてきた敵もいた。
迂回攻撃、包囲攻撃、強硬正面突破――
そのことごとくを、少数の兵による火力防衛で打ち破ってきたのだ。
この城を攻めてきたアホウの99%以上はあの世に今いるはずだ。
俺の創り上げた、火薬と銃。
火器を連動させた、鋼と火薬の槍衾に守られたこの城は「盤石」と言うイメージが強すぎた。
「結局のところ、相手もアホウじゃないってことだし、どうにも武器を使いすぎた」
魔法使いしかあり得なかった石弓や長弓を超えた攻撃レンジを持った銃。
原始的な火縄銃ではある。
ただ、原始的で単純であるがゆえに、戦乱に狂ったこの大陸では一気に広まった。
ちなみに、俺にはパテントも、特許料も入っていないのだ。
なんという理不尽。
つまるところ……
俺はだ。
あまりにも――
安易に――
この異世界に、危険な現代知識を拡散しすぎてしまっていたのだった。
それは俺が「儀式」を受け、「すっごい武器を発明しちゃう「固有スキル」を得てますよ」というようなイメージを強めるためだ。
まあ、儀式以前も、現代知識を持ち活用はしていた。
しかし、俺は儀式後、とにかく、必死に頭を搾ってあらゆる武器をこの異世界に再現させた。
あははは――
「迫撃砲までもってやがるぜ」
俺は窓を見やっていった。
構造は簡単。ただの筒で、先から砲弾を落とすことで、砲弾を発射できる武器。
完全な近代兵器だ――
この中世ヨーロッパレベルでも何とかできてしまったもののひとつだった。
「こっちに、銃があるっていうのが油断を産んだか――」
「御意」
「御意じゃねーよ! 肯定しても状況かわらねーよ」
敵の奇襲を伝えにきたのだろう(もう俺は先に目を覚ましていたが)、老騎士に俺はいった。
まあ、親父の軍勢の選抜に漏れたという時点で、その能力は問題ありだ。
多分、バカ。
この大陸は、いくつかの王国と緩やかな領主貴族のつながりで、統治されている大陸だ。
とにかく、銃と火薬を使った火器兵器の拡散は戦乱を激化させた。
あはははは――
歴史は繰り返す。
まさに、日本の戦国時代を更に「修羅の国」にして、地獄にしたような感じ?
なんせ、火器さえあれば、少数の傭兵隊でも、旧来型の騎士・騎兵を中心とする強大な兵力を粉砕できるのだ。
今や戦場は銃弾が飛びかう。
原始的な手りゅう弾は飛びまくる。
フランスのストークブラン社が「特許料払え」と言い出すこと間違いなしの迫撃砲までバカスカ弾丸を打ち出す戦場だ。
あははは――
俺やりすぎた。
無煙火薬の破壊力は、黒色火薬の50倍。
戦場はメガデス――
とにかく俺の現代知識が異世界の戦乱のバランスを崩してしまった。
元々多かった戦乱が広がった。戦に無縁だった小勢力まで、今では恐るべき存在だ。
まさに俺の暮らすこの異世界は「修羅の国」と化している。
なんか、多分……
俺のせいかもしれないなー
とは薄っすらと思っていた。
「しかし、城が攻められるとかぁぁ!!」
鉄と硝煙の匂いがここまで香る。
もすでに、城の外は5万の軍に包囲され、魔女がかき混ぜる鍋に放り込まれる寸前だった。
あははは――
乾いた笑いが口元に浮かぶ俺。
カクンと力なく首が曲がった。なんかそれどーでもいい。
爆音とともに、壁が粉砕された。
まさしく爆速が黒色火薬の50倍近くとなる「コルダイト」という無煙火薬が爆発し、壁を吹き飛ばしたわけだ。
「火薬か…… くそぉぉ、火薬と鉄砲がこんなに拡散するとは……」
そのときだった。
俺の尻がムズムズしだした。
そう言えば、朝トイレに言っていない。
しかし、それどころではない。
そもそも、戦場では垂れ流して戦うのが普通だ。
あははは―― 俺もそうするか?
俺は尻から流れ出そうとする者に抵抗することをやめた。
にゅりゅんぬるるるるるうるるる゛――
ぱっ!!
尻の穴から何か出た感触はあった。
しかし、それは…… 食べたモノを消化して出したそいつじゃない。
「傘にございます。御曹司の尻から傘がでました」
淡々とジジイの騎士が状況説明した。
確かにそうだった。
俺の尻から、傘が生えていた。
というか、「俺の尻に傘が刺さっている」と言うような状況だ。
俺は5万の軍勢に城を攻められ、「俺の尻に傘が刺さっている」状態だった。
「なんだこれ?」
「傘にござります」
「ナンで尻に傘が?」
「御意!」
「御意じゃねーよ。な理由だ! 理由を――」
しかし、俺はこのアホウの老騎士と遊んでる暇などなかったのだ。
そもそも、コイツに理由が分かるわけがない。
「いたぞぉぉ!! 敵だ!! 大将首だぁぁ!」
爆発が連続し、火焔が吹き上がる音も聞こえる。
まさに、城は「絶賛落城中」な訳だろう――
落城初体験中――
でもって、俺も――
「くそがぁぁぁ!!! 死んでたまるかよぉぉ!!」
気がつくと、俺は敵に突撃した。
まるで、自分の身体全身がベタ塗となり、目だけがくっきりと描かれているかのような錯覚。
うひひひひひ。
なぜか、死ぬ気が微塵もなかった。
「なんだぁぁ!! 尻に傘が刺さって―― あああああ」
俺は剣を構えていた男を素手でぶん殴っていた。
剣ごとたたき折って、兜で守られた敵の首が引きちぎた。
でもって、くるくると真っ赤な血の尾を引いて、吹っ飛んでいった。
「あははははは、来いよぉぉ!! 死にたい奴はかかってこいよぉぉ!!」
俺の尻に刺さった傘がぱっと大きく開いた。
まるで、俺の魂と共鳴するかのようにだった――
皆殺し――
殺戮――
蹂躙――
凌辱――
阿鼻叫喚――
血まみれの地獄を俺は作りだしていた。
圧倒的な暴力だけで。素手による圧倒的な暴力だけでだ。
「コイツが!! 喰らえ!!」
爆炎が響き至近距離からの銃撃。
しかし、俺のケツに刺さった傘が、ひゅんと動いてその銃弾を開いた傘で防いだ。
「ぬぉぉぉ、我が魔力を食らいて、眼前に立つ者を――」
魔法使いもいたようだ。珍しい。
しかし、そいつの魔法によって生じた激しい火焔も、俺のケツに刺さった傘が防ぐ。
あははははは!!
「死ね!! 死んでしまえ!! このゴミがぁぁぁ!! あははははは!!」
俺は銃を撃った男の脳天を拳で叩きつぶした。
頭が胴体にめり込んで、ぴゅーっと血が噴水みたいにでてきた。
魔法使いには蹴りをぶち込んだから、ビューん゛っと飛んで、壁に激突。
そこに、血と肉で彩る前衛芸術を作った。笑える。
俺は戦った。戦った。ケツに開いた傘を刺したまま戦った。
全く負ける気がしないのだ――
そして、俺は勝った。
返り血を浴び、血まみれで哄笑していた。
爆炎と血と鋼の匂いの満ちた、崩れ、廃墟と化した城でひとり笑っていたのだ。
銃で武装され――
大量火器兵器を保持する攻城兵団。
その数5万人――
ケツに開いた傘の刺さった俺は、その敵に完全に勝っていた。
それはもう、完璧な圧勝であった。
そうだ――
このケツに刺さった開いた傘こそが俺の「魔具」なのだ。
そして、俺の肛門に刺さって今までその奥底に潜んでいたのだ。
今、その全貌を明らかとした。
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ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
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