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1.生贄となりし少女とドラゴンの王太子
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そのダンジョンにはドラゴンがいる。
ドラゴン――
この異世界でも最も強大で、神にも近いとされる存在だと聞いている。
わたしは今日生贄になる。
村のためだった。
わたしを乗せた御輿はゆっくりと地に置かれる。
「可哀想にな……シャノーラ」
御輿を担いできた男の人がポツリと言った。
「シャノーラ」という名前を呼ばれるのは久しぶりだった。
ああ、わたしは可哀想なんだと、そのとき初めて思った。
でも、可哀想というのが何か分からなかった。
ここで、わたしは十四年の人生を終えるんだなと、思う。
死ぬんだと思う。
でも、それは決してわたしにとって可哀想ではないと思う。
わたしには親はいなかった。
だから可哀想なのか?
違うと思うけど、なにが違うのか分からなかった。
村の養い子として、生きてきた。
口をきけるような友達は――
わたしは村のひとたちの顔を思い浮かべる。
(多分、いない)
と、そう思う。
わたしはあの村ではお荷物だったし、ここ数年、天候が悪くなって食べ物が作れなくなったら、もっとお荷物になった。
だから、ドラゴンの生贄に選ばれたのだと思う。
いなくてもいい人はわたしくらいだ。
(ああ、一度でいいからお腹いっぱい食べたかったかなぁ)
わたしの心残りといえばこれくらいだった。
なにか、わたしの胸の中にはぽっかり穴があいて、他の人みたいな「心」というものが良く分からなかった。
だから、わたしは決して可哀想ではなかった。
可哀想が分からない。
今日か明日、ドラゴンに食べられ死んでしまうとしても……
◇◇◇◇◇◇
「な、なんだあの女は? あ、あ、あ、あ――」
シャープな顔つき。
精悍さみせる若い男が慄くように言った。
その視線の先には、ダンジョンの入り口にある「祭壇」を映し出す魔道具があった。
ダンジョンの奥で男はそれを見ていた。
「国王様が旅に出た後、生贄なんてよこした人間などおりませんでしたなぁ――」
男の後ろに立つ「見るからに執事」「執事の国から執事になるために執事の要素を結晶化」したような老紳士が立っていた。
「……」
「なに黙っているんですか? リューク王太子殿下」
「いや、これが人間の女の子? なんかくそ可愛いじゃないか! え? どうするの? 親父いないし。これ、オレの生贄ってことでいいんだよね? で、なに? オレに捧げられたわけ?」
「ま――、そういうことになりますなぁ」
「そ、そうなのか……」
若い男は言った。
男は人間ではなかった。
その証拠に、二本の黒い角が金色の髪を掻き分け突き立っていた。
精悍で美麗といっていいほどに整った顔。
彼は、人の姿に変じていたドラゴン王の息子――
いわゆる、ドラゴンの王太子だった。
「さて、どのような調理法を―― 王陛下は、刺身がたいそうお好きでしたが」
「食べるの?」
「はい」
そううなづく老紳士の頭にも二本の角。
ただし、若い男ほど見事さはない。
彼もまたドラゴンであった
「セバスチャン…… オマエ阿呆か?」
「阿呆と申されますと?」
淡々とセバスチャンは答えた。
「食うか! 食わないよ。あんな可愛い娘! 連れてくるんだ! 早く!」
ドラゴン・リューク王太子は眷属に命じた。
わらわらと、眷属たちが、ダンジョンの出口へと向かう――
生贄となりし少女――
シャノーラを迎えるためであった。
ドラゴン――
この異世界でも最も強大で、神にも近いとされる存在だと聞いている。
わたしは今日生贄になる。
村のためだった。
わたしを乗せた御輿はゆっくりと地に置かれる。
「可哀想にな……シャノーラ」
御輿を担いできた男の人がポツリと言った。
「シャノーラ」という名前を呼ばれるのは久しぶりだった。
ああ、わたしは可哀想なんだと、そのとき初めて思った。
でも、可哀想というのが何か分からなかった。
ここで、わたしは十四年の人生を終えるんだなと、思う。
死ぬんだと思う。
でも、それは決してわたしにとって可哀想ではないと思う。
わたしには親はいなかった。
だから可哀想なのか?
違うと思うけど、なにが違うのか分からなかった。
村の養い子として、生きてきた。
口をきけるような友達は――
わたしは村のひとたちの顔を思い浮かべる。
(多分、いない)
と、そう思う。
わたしはあの村ではお荷物だったし、ここ数年、天候が悪くなって食べ物が作れなくなったら、もっとお荷物になった。
だから、ドラゴンの生贄に選ばれたのだと思う。
いなくてもいい人はわたしくらいだ。
(ああ、一度でいいからお腹いっぱい食べたかったかなぁ)
わたしの心残りといえばこれくらいだった。
なにか、わたしの胸の中にはぽっかり穴があいて、他の人みたいな「心」というものが良く分からなかった。
だから、わたしは決して可哀想ではなかった。
可哀想が分からない。
今日か明日、ドラゴンに食べられ死んでしまうとしても……
◇◇◇◇◇◇
「な、なんだあの女は? あ、あ、あ、あ――」
シャープな顔つき。
精悍さみせる若い男が慄くように言った。
その視線の先には、ダンジョンの入り口にある「祭壇」を映し出す魔道具があった。
ダンジョンの奥で男はそれを見ていた。
「国王様が旅に出た後、生贄なんてよこした人間などおりませんでしたなぁ――」
男の後ろに立つ「見るからに執事」「執事の国から執事になるために執事の要素を結晶化」したような老紳士が立っていた。
「……」
「なに黙っているんですか? リューク王太子殿下」
「いや、これが人間の女の子? なんかくそ可愛いじゃないか! え? どうするの? 親父いないし。これ、オレの生贄ってことでいいんだよね? で、なに? オレに捧げられたわけ?」
「ま――、そういうことになりますなぁ」
「そ、そうなのか……」
若い男は言った。
男は人間ではなかった。
その証拠に、二本の黒い角が金色の髪を掻き分け突き立っていた。
精悍で美麗といっていいほどに整った顔。
彼は、人の姿に変じていたドラゴン王の息子――
いわゆる、ドラゴンの王太子だった。
「さて、どのような調理法を―― 王陛下は、刺身がたいそうお好きでしたが」
「食べるの?」
「はい」
そううなづく老紳士の頭にも二本の角。
ただし、若い男ほど見事さはない。
彼もまたドラゴンであった
「セバスチャン…… オマエ阿呆か?」
「阿呆と申されますと?」
淡々とセバスチャンは答えた。
「食うか! 食わないよ。あんな可愛い娘! 連れてくるんだ! 早く!」
ドラゴン・リューク王太子は眷属に命じた。
わらわらと、眷属たちが、ダンジョンの出口へと向かう――
生贄となりし少女――
シャノーラを迎えるためであった。
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