生贄になりし少女はドラゴンの王太子に溺愛される

中七七三

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5.外に出たいんですけど

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「どうだ? 料理は」

「はい、とても美味しいです」

「では、俺が食べさせてやろう」

「は、はい……」

「では、アーんしろ」

「はい…… あ~ん」

 わたしはアーンして、フォークに刺さったお肉を食べた。
 もくもぐ―― ああ、美味しい。本当に美味しい、ほっぺが溶け落ちるような美味しさ……

 美形の男の人は、ドラゴンの王太子でリュークと名乗った。
 リュークはわたしを「絶対に食べない!」と言ったけど、本当かどうか分らない。
 だから逆らわず、わたしは「アーン」してお肉を食べるのだった。美味しい。

 わたしはトロリとした蜂蜜入りミルクを飲んだ。

「そのミルクは美味しいか?(うう、可愛い……)」

「はい、とっても」

 ジッとわたしを見つめるリューク。

「あの……」

「ん、なんだ?」

「わたしは本当に食べられないんですよね」

「ああ、王太子の名にかけて嘘偽りない。シャノーラ嬢を食べることなどありえん!(ああ、別の意味で食べてしまいたいが)」

「じゃあ、なんでわたしはここに囚われているのですか?」

「ん?」

 リュークはくるっと周囲を見た。

「ここは不快か? ベッドも人間用の最高のものを用意したはずだが…… 照明も太陽光と同じ魔力光を出しているし」

「ベッドは快適です。明るさもいいんですけど……」

「では、何が問題だ?」

 リュークは心底意味が分らんという顔で訊いてきた。

「外へ行きたいんです」

「外! もしかして村に帰りたいのか! オマエを捨てた村に!」

「いえいえ、今更帰っても、わたしに居場所はありませんから」

「では、いいではないか! ここで食べて寝て、十分ではないのか?」

 リュークは本気でそう言った。

        ◇◇◇◇◇◇

「セバスチャン! セバスチャンはどこだぁぁぁ!!」

 リュークがドラゴンの咆哮を上げた。
 言葉に灼熱の炎がこもっていそうだった。

「は、ここに!」

「セバスチャン、一緒に食事をしたぞ」

「それは、よろしゅうございました」

「しかし、大きな問題が、新たで大きな問題がでてきたのだ」

「ほほう、それは一体?」

「外に出たいと言っておるのだ。シャノーラ嬢は」

「では、出させてやればよろしいのでは? 元の村に帰るわけにもいきますまい」

「確かにそれは、言っておったのだが…… 外は危険であろう」

 リュークは心底心配そうに言った。

「人間は弱い。その弱い人間を襲う『モンスター』がそこかしこにおるだろう」

 自分がその「モンスター」の最たる者であることを忘れたかのようにリュークは言い募る。

「では、ここは一緒に出かけたらよろしいかと――」

「何? 一緒にだとぉぉ!」

 それは考えても見なかったという感じ。
「その手があったかぁ!」という感じでリュークは言った。

「この近くの浜辺にでも散策すれば、人間の気も晴れるかと」

「おお!! なるほどぉぉ」

 ということで、リュークはシャノーラ嬢を連れて出ることになった。
 リュークは緊張でドキドキするのだが、なんでドキドキするのか、いまひとつよく分からなかった。
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