女忍者は、俺に全裸を見せつけると最強になる

中七七三

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22.決戦・大神宮3

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 鎖々木と由良はガトリング砲を乗っけた大八車を引いていく。
 キィキィと車軸が軋む音がした。

 大神宮の入り口に近づいていく。
 見張りの者が鎖々木と由良を訝しげに見やる。

 ――うまくごまかせるか……
 と、鎖々木は思う。
 由良は殺意と欲情を押さえ込む。
 一応彼女は「忍者くのいち」であるから、その程度のことはできた。
 ただの淫乱・痴女の殺人鬼ではない。
 
「御主らなんだ? この荷はいったい?」
「聞いていないのか。これは幕府打倒のための最重要・最終兵器『ガトリング砲』だ」
「ガトリング砲? なんだ蛮夷の武器か?」

 西洋の物は汚らわしいと言う感じで言い放つ。

「鉄砲だってそもそも蛮夷の武器ではないか」

 鎖々木が言った。見張りの者が持っている銃を指差して。
 火縄銃ではない。
 最新式ではないが、十分現役で使える小銃だった。

「大和心で使えば、なんら問題なし!」

 鎖々木は強く言い張った。
 
「うむ…… そうか、確かにそうか」
「そうだな。然り」

 うんうんと頷く反乱軍の見張りたち。
 
「では、急ぐからここを通らせてもらうぞ」
「うむ…… そうか」
「早くせねばいかん。これこそが倒幕の切り札なのだ」
 
 鎖々木は芝居がかった口調で言った。
 そして、おもむろに筵をめくった。
 黒光りのする銃身(バレル)と何やらよくわからない機械のかたまりが置いてあった。

「おお…… これが……」
「そう、これこそが決戦兵器、我らが倒幕のための切り札『ガトリング砲』だ」
 
 分解されているとはいえガトリング砲の異様さ。
 凶悪さ圧倒された。
 重大なものであろうと見張りは勝手に判断したのであった。 

 おそらく合言葉、符牒はあっただろう。
 が、唐突に現れた新兵器と、倒幕の切り札という言葉が彼らを圧した。

 見張りは、鎖々木と由良を大神宮の中に通してしまったのであった。

        ◇◇◇◇◇◇
 
 一応、中に入ることは出来たが――
 と、鎖々木は周囲を見やり思う。
 チンピラゴロツキ、食い詰めて凶悪化した浪人という風体の者どもがうろうろしている。
 大神宮全体では、ざっと三〇〇から五〇〇人ぐらいであろうか。
 一〇〇〇を超えることはあるまいと、鎖々木は見当をつける。
 
(とにかく、ペリーのカツラを取り戻さねばならぬが……)

 のんびりしていれば、幕府の鎮圧軍がやってきて現場は大混乱だろう。
 カツラを取り返すことが、難しくなることは明白だった。

(こちらが主導権をもって何かを起こすか――)

 と、鎖々木は考える。

「おお! これがガトリング砲かぁ!」

 鎖々木の思案を遮るようにして、声が響く。
 陣羽織を着込んだ男だった。
 兵を引き連れ、その尊大な態度からも反乱の首謀者であることは丸分りだ。

「これよ! これさえあれば、幕府軍など物の数ではないわッ!」
「左様ですな」
「さて、ではこれを早々に設置せねばならぬが……」

 ガトリング砲は銃身やその他の機械部品がバラバラになっている。
 まず組み立てないことには設置も出来ない。

「では、組み立ては拙者が――」

 鎖々木は微塵の迷いも感じさせず、自信たっぷりに言い切ったのであった。
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