ボクが女体化したのは、初恋の最強女教師を倒して恋人にしたいから

中七七三

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47.ボクはまだギブアッ――

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「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 
 圧倒的な殺意。
 尖鋭的な狂気。
 闇よりもどす黒いオーラを全身から溢れ出させる百鬼なぎり先生。

 ボクは、恐怖と歓喜がまぜこぜになったまま、つっかけていった。
 ブォンと唸りを上げ、鉄槌のような一撃が顔を掠める。
 ボクの髪が風圧で煽られて舞い上がった。

 一撃で死を想起させる拳だった。
 とても女性というか……
 人間のものとは思えなかった。

 男子と戦うことがフェア(生物的に)ではないと先生は言った。
 でも、この先生に勝てる男などいるのだろうか?

 地下闘技場チャンピオン・百鬼薙子――
  
 その存在自体がすでにフェアではないのではないか。
 性別なんか超えている。
 いや、生物種すら超えているかもしれない。

 トラやライオンのメス相手に人の戦闘力を比較する意味もない。
 それほどまでに、百鬼先生は圧倒的だった。

 それでも。
 それでもボクは、先生の正面に立った。
 愛があるから。
 先生が好きだから。
 この世で一番、この一瞬も、永遠も全て、先生が好きなのだ。

「ボクの女になれぇぇぇ」

 ボクは突きを放つ。
 無事な方の腕をあえて出さない。
 指がへし折れ、捻じ曲がり、手首を粉砕骨折した腕を使う。
 先生をボクの物にできるなら、腕一本なんて惜しくない。

「がはぁぁッ!!」

 先生は避けることなく、ボクのパンチを顔面で受けた。
 骨が飛び出た。
 その骨が先生の頬の上を滑っていく。
 
 赤い筋が真っ白な先生の肌の上に走った。
 ボクの骨で傷つけた。
 ――ああ、先生に傷を負わせた――
 その思いは、ある種の快美感に似たものをボクの脳内に迸らせる。
 
「ふふ、股間をびしょびしょにして戦うのね…… 御楯君」
「駄目ですか、先生」
「別に、私も濡れてきているから。ふふ」

 言葉と同時に蹴りが吹っ飛んできた。
 地の底から天に向かって突き抜ける蹴り。
 仰け反る。
 辛うじてかわした。
 真空に焦げ目をつくるほどの速度と切れのある蹴りだった。

「がはぁぁぁ!!」

 次の瞬間、ドンと脳天に衝撃が走った。
 頭が真っ白になる。
 何か――
 この地下闘技場の天井の何かが落ちてきて当たったのか?
 そんな風に思った。

「御楯君、油断しちゃ駄目。蹴り脚が戻ってくる場合もあるのよ」
 
 薄れゆく意識のどこかで、先生の言葉をなんとか捉える。
 蹴り上がった足が、振り下ろされ脳天を直撃したことをボクは理解した。

 そこから先――
 それは、一方的だった。
 先生の突きが、下腹の子宮に突き刺さる。
 
「げほぉぉぉぉ!」

 衝撃で浮き上がった卵巣に、抜き手が叩き込まれた。

(あ―― 排卵…… は、排卵してしまうかも)

 女の急所への容赦ない攻撃が、襲い掛かる。
 ボクは、下着の中に、卵子を噴出してしまうのではないかと思った。
 
(駄目だ…… この卵子は先生の卵子と受精させて…… TS百合妊娠で……)

 ボクの脳裏に孕んでハラボテになった先生の姿が浮かぶ。
 ボクの夢だ。そして、この瞬間は幻想であった。
 
「せ、先生…… な、百鬼先生…… す、好きです」

 どごぉぉぉッ!
 返事の代わりに強烈な衝撃が全身を貫いた。

 殴られたのか?
 蹴られたのか?
 投げられたのか?

 それすらも、ボクは分らなくなっていた。
  
 どこか遠くで「仕合終了」告げるような声が響いたような気がした。
 駄目だよ……
 ボクはまだギブアッ――

 ボクはそこで意識を失った。
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