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11.昭和の乙女
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百瀬の衝撃的な言葉に、山田が目を白黒させる。
これが昭和の乙女なのか?
「ええ!? 惚れる!? 片桐さんに!?」
百瀬が山田を睨む。
「何か文句?」
鋭い視線で山田を見つめる。片桐を見る目と全然違う。
「片桐さんは私の理想の男です」
「あなたみたいな軟弱な人は関係ないでしょ?」
山田がムキになる。
「軟弱!?」
くいっと眼鏡を持ち上げ、山田は立ち上がった。
「僕だって広東で漫才やって……」
「おい、山田……」
「片桐さん」
「それは、面白いが誇ることじゃないな」
きょとんとして山田を見る百瀬。
「いや、まあ、それは置いといて! 片桐さんは僕の先輩なんです!」
「だから?」
「簡単に渡しませんよ!」
ガタッと椅子から落ちそうになる片桐。
百瀬が笑う。
「ふーん、ライバルってわけ?」
「いいでしょう、受けて立ちます」
二人の間に火花が散る。
片桐がため息をつく。
「ったく、騒がしい連中だ。いいかげんにしろ。仕事の話に戻れ」
事務所の机に書類が置かれる。
百瀬が説明する。
「実は、緊急の案件です」
「緊急?」
「中国の軍閥からクレームが入りました」
「納めた三八式歩兵銃が不良品だと」
片桐が眉をひそめる。
「三八式? 確かか」
「そんなはずはないですよ。昭和通商の納めた銃は中古だけど、良品のはずです。検査もしている」
山田が書類をパラパラとめくり、言った。
「どんなクレームだ?」
百瀬が書類を広げる。
「銃が全く命中しない、らしいです」
「それだけか?」
「軍閥の兵士が外しまくるようです。だから不良品だと騒いでます」
山田が首をかしげる。
「うちが納品したのは、良品の三八式ですよ。そもそも反動も少なく、命中率は世界でもトップクラスです。そんなに外れるなんて、おかしい」
「まあ、私なら絶対当てます。不良品でも関係ありません」
「不良品でも当たるだと?」
片桐は鋭く百瀬を見つめた。
「試し撃ちしてみませんか?」
百瀬が自信満々に言う。
片桐が頷く。
「面白え」
片桐が笑みを浮かべる。獰猛な笑みであった。
「じゃあ、明日の朝だ射撃場で試すぞ」
百瀬が目を輝かせる。
「片桐さんと一緒なら、楽しみです! 絶対、いいところ見せます!」
山田が焦る。
「ちょ、ちょっと待って!僕も行くんですよね!? 置いてかれないですよね!?」
「山田、お前は書類整理しとけ」
片桐が冷たく言う。
山田が悲痛な声を上げる。
「ええ!?」
「書類整理も仕事だ」
「そんなあ! 僕だって役に立ちたいんです!」
百瀬が笑う。
「山田さん、頑張ってくださいね」
「片桐さんは私と一緒で十分です」
山田が地団駄を踏む。
「くそー!負けないぞ!」
片桐がタバコに火をつける。
「めんどくせえ連中だな……」
呟きながら、口元に笑みが浮かぶ。
◇◇◇◇◇◇
百瀬彩子は、昭和通商の新人だ。
マタギの祖父に射撃を叩き込まれた異色の経歴。
銃の名手として採用された。
彼女のモーゼルC九六は、個人所有だった。
どんな不良銃でも命中させる。
その腕前は噂になる。
片桐に一目惚れした理由は、広東での活躍もあったが、実物を見て本物を確信した。
彼女にとって、片桐は「本物の男」であった。
事務所の夕暮れ。赤い陽の光が入ってくる。
片桐が窓の外を見る。
上海の空は赤く染まる。
百瀬が片桐を見つめる。
「片桐さん、明日、期待してください。私の銃、絶対裏切りません」
山田が割り込む。
「僕だって、負けませんよ! 何か面白いことやりますから!」
片桐がため息をつく。
「書類仕事で面白いことをされても困るんだが……」
新しいコンビが動き出す。
中国戦線の次の試練が待つ。
これが昭和の乙女なのか?
「ええ!? 惚れる!? 片桐さんに!?」
百瀬が山田を睨む。
「何か文句?」
鋭い視線で山田を見つめる。片桐を見る目と全然違う。
「片桐さんは私の理想の男です」
「あなたみたいな軟弱な人は関係ないでしょ?」
山田がムキになる。
「軟弱!?」
くいっと眼鏡を持ち上げ、山田は立ち上がった。
「僕だって広東で漫才やって……」
「おい、山田……」
「片桐さん」
「それは、面白いが誇ることじゃないな」
きょとんとして山田を見る百瀬。
「いや、まあ、それは置いといて! 片桐さんは僕の先輩なんです!」
「だから?」
「簡単に渡しませんよ!」
ガタッと椅子から落ちそうになる片桐。
百瀬が笑う。
「ふーん、ライバルってわけ?」
「いいでしょう、受けて立ちます」
二人の間に火花が散る。
片桐がため息をつく。
「ったく、騒がしい連中だ。いいかげんにしろ。仕事の話に戻れ」
事務所の机に書類が置かれる。
百瀬が説明する。
「実は、緊急の案件です」
「緊急?」
「中国の軍閥からクレームが入りました」
「納めた三八式歩兵銃が不良品だと」
片桐が眉をひそめる。
「三八式? 確かか」
「そんなはずはないですよ。昭和通商の納めた銃は中古だけど、良品のはずです。検査もしている」
山田が書類をパラパラとめくり、言った。
「どんなクレームだ?」
百瀬が書類を広げる。
「銃が全く命中しない、らしいです」
「それだけか?」
「軍閥の兵士が外しまくるようです。だから不良品だと騒いでます」
山田が首をかしげる。
「うちが納品したのは、良品の三八式ですよ。そもそも反動も少なく、命中率は世界でもトップクラスです。そんなに外れるなんて、おかしい」
「まあ、私なら絶対当てます。不良品でも関係ありません」
「不良品でも当たるだと?」
片桐は鋭く百瀬を見つめた。
「試し撃ちしてみませんか?」
百瀬が自信満々に言う。
片桐が頷く。
「面白え」
片桐が笑みを浮かべる。獰猛な笑みであった。
「じゃあ、明日の朝だ射撃場で試すぞ」
百瀬が目を輝かせる。
「片桐さんと一緒なら、楽しみです! 絶対、いいところ見せます!」
山田が焦る。
「ちょ、ちょっと待って!僕も行くんですよね!? 置いてかれないですよね!?」
「山田、お前は書類整理しとけ」
片桐が冷たく言う。
山田が悲痛な声を上げる。
「ええ!?」
「書類整理も仕事だ」
「そんなあ! 僕だって役に立ちたいんです!」
百瀬が笑う。
「山田さん、頑張ってくださいね」
「片桐さんは私と一緒で十分です」
山田が地団駄を踏む。
「くそー!負けないぞ!」
片桐がタバコに火をつける。
「めんどくせえ連中だな……」
呟きながら、口元に笑みが浮かぶ。
◇◇◇◇◇◇
百瀬彩子は、昭和通商の新人だ。
マタギの祖父に射撃を叩き込まれた異色の経歴。
銃の名手として採用された。
彼女のモーゼルC九六は、個人所有だった。
どんな不良銃でも命中させる。
その腕前は噂になる。
片桐に一目惚れした理由は、広東での活躍もあったが、実物を見て本物を確信した。
彼女にとって、片桐は「本物の男」であった。
事務所の夕暮れ。赤い陽の光が入ってくる。
片桐が窓の外を見る。
上海の空は赤く染まる。
百瀬が片桐を見つめる。
「片桐さん、明日、期待してください。私の銃、絶対裏切りません」
山田が割り込む。
「僕だって、負けませんよ! 何か面白いことやりますから!」
片桐がため息をつく。
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