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09:私は夜まで待っていられる自信がない
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「ねえ、九鼎」
『なにお姉さん?』
お守りの中にいる九鼎が念話で答えた。
「血糊がベトベトでちょっと気になるのよ」
『我慢すればいいんだよ! お姉さん』
「着替えたいんだけど……」
『う~ん……』
九鼎は即答しなかった。
彼は、ショタけも耳のキツネの神様だ。
もふもふの髪の毛から可愛いキツネ耳の生えた本当に可愛らしい神様なのだ。
ただ、その姿は今は見えない。
九鼎は、まだ私が首から提げたお守りに入っている。だから会話は「念話」だ。
私は相変わらずの露出の多いエロ巫女コスプレのような姿。
長い髪がポニーテールみたいになって、そこに和風のキツネ面のアクセサリみたいなものが付いている。
おまけに、血まみれ。全身血まみれのスプラッタ状態。
「禍々しい存在」を倒した時に浴びた返り血はどす黒く変色し、ドロドロからゲル化していた。
露出が大きな服なので、肌にもべっとり返り血を浴びていた。
気持ち悪い―― 不愉快――
そして右手に凶器―― いや、お祓いの神具だ。
有刺鉄線を巻いた切っ先に鋭い刃のついた凶器も血まみれだ。
おまけに、私の頭にはキツネ耳が生えている。
普通であれば凶悪で狂気を感じさせる存在だろう。凶器も持ってるし。
おまわりさんに通報される率100%なのは間違いない。
ロサンジェルスなら即射殺されるかもしれないほどの恰好だ。
しかし、鮒橋の駅前まで来たのだが、誰も私には注目しない。
おまわりさんもやってこない。
現在、私の姿は他の人の網膜に映っても、見えていないのと同じだった。
それは、九鼎が、神力で人の「認識」をずらしているからだ。
ほとんどの神力を私に注ぎ込んだ九鼎だけど、お守りの中にいれば、それくらいの神力が使えるらしい。
だから、ショタけも耳の神様は、その可愛い姿を見せず、お守りの中に引きこもり中だ。
早く満喫にいって、九鼎を出してあげよう――
私はそう思う。
九鼎はお守りの中で、私の血まみれ、スプラッタな異常な恰好が注目されることがない。
そんな感じで、鮒橋駅前の目抜き通りを歩いているのだった。
『うーん、戦闘巫女の装束は、きちんと手順を踏まないと着替えられないんだ』
「普通に脱いで着替えるとかできないの?」
『脱ぐだけならすぐできるけど、そのまま別の服を着るのは。お姉さんの神力をボクに戻してもらわないとだめなんだ』
鮒橋駅前の目抜き通りなので、服も下着も売っている店がある。
もう着替えの下着と服は買った。ちなみに、店員は私の姿をみても普通に対応した。
お金は「禍々しい存在」に殺された哀れな犠牲者の財布から集めたものがある。
数えたら22万7000円あった。
まあ、神に対する喜捨のようなものだから、ありがたく私が遣ってあげようと思う。
「手順って?」
『儀式、神事といってもいいかな。それをすればいいんだけど…… 詳しい説明は、落ち着いた場所についてからするよ』
「ん~ そうね…… でもベトベトして気持ち悪い」
血液型が大気に触れることでプロトロンビンがフィブリノーゲンと反応してフィブリンが生成され、網構造のようなものができて、血液はゲル化する。
中学生の理科の範囲ではないけど、この血糊と言うのはそうやって出来る。
理科の教師である私はそれを知っているけど、だからどうしたという話だ。
とにかく、裸にはすぐなれそうなので、とりあえずシャワーは浴びたい。
「禍々しい存在」をぶち殺し殲滅し一方的に殺戮する「ハイ」な状態から徐々に精神は平常運転に戻ってきた気がする。
先ほどまで戦っていたのが、なにかボンヤリした遠い過去のように感じられる。
気のせいだろうか……
ただ、体の芯の方には「熾火(おきび)」のような昂ぶりがまだ少しは残っている。
兇悪で穢れた「禍々しい存在」を一方的にぶちのめしたのは、今までの私であれば信じられないことだ。
そして、私はそれを確実に「楽しい」と感じているのだ。
◇◇◇◇◇◇
私と九鼎は、カップル用の防音個室のある満喫に入った。
船橋の満喫、ネットカフェではここにしかないと思う。
フラットのベッドのようなシートが引きつめられた個室。
でもって、40インチくらいありそうなテレビ。パソコンは2台あった。
「あーすっきりしたわ」
この満喫にはシャワーもある。
私はシャワーで血糊を荒い流した。この満喫にはシャワールームがあった。
部屋に戻って、首からお守りを下げて、バスタオル(店のレンタル)を体に巻いた姿で、ゴロリと横になった。
キツネのようなけも耳はまだ私の頭から生えた状態。
この個室は、個室と言うより床すべてがベッドのようになっているのだ。
手足を伸ばしても十分な広さがある。
「九鼎も出てきて、大丈夫よ」
『うん、分かった』
お守りから、すっと青白い狐火のようなものが、出てきて実体化する。
ふかふかの床の上にちょこんと座る九鼎。
大きなリュックを背負った可愛い小学校高学年男子という感じだ。
私が最初に出会った九鼎の姿。ただ、けも耳が生えているのが違っていて+50点。
超かわいい!! かわいい!! かわいい!! かわいい!! かわいい!! かわいい!! かわいい!!
愛らしくて、キューティーなショタけも耳の神様。
神など本気拝んだことはないが、この姿の九鼎であれば拝んでもいい。
別バージョンの姿も超絶美形だけど、私は断然こっちが好みだ。
ショタフェチ傾向のある私の超ストライクのど真ん中。
鼻血が…… ああ、鼻血がでそうになるわ……
「お姉さん。大丈夫。どこか痛いの? 急に呼吸が荒くなったけど?」
純真無垢。穢れなき少年の瞳が私を見つめるのだ。
あああ、ギュッとしたい。けも耳の頭をモフモフのしたい。
しっぽも、かわいい…… あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ♡
「お姉さん、本当に大丈夫?」
「あ…… 大丈夫よ。大丈夫。私は正気よ」
九鼎は首を回し周囲をみた。ピクピクと耳を動かしている。キュートぉぉぉ♡
「ふーん…… こんなところがあるんだね。でも、お姉さんの家は壊れちゃったし、いつまでもここってわけにもいかないよね」
「そうだけど―― 今はこれが幸せ」
満喫のカップル用個室など、私には絶対に縁のないところだと思っていた
誰にも邪魔されない空間にショタけも耳神様と二人きり……
ちなみに、生活圏は生徒と被らないように、2駅は離れている。
ここに入ったのを生徒にみられる心配もない。
そもそも今は、認識をずらしてあるのだから、杞憂意外なにものでもない。
「いつまでも、その格好じゃまずいよね」
「そうね」
シャワーで体を洗ったが、血まみれの戦闘巫女の装束になる気はない。
あの衣装も神力で生成されたものだが、なぜか洗濯しないと血糊は落ちないらしい。
今は、九鼎の持っている大きなリュックにしまってある。
「服はいっぱいあるんだけど、儀式を済ませてからじゃないとそれも着れないしなぁ」
「買った服を着るからいいです」
そこは、私はきっぱり言った
そのリュックには色々な衣装がある。
エナメルボンテージや、紐ビキニ、エロチャイナ服などなどだ。
その名前を知らないような、胸丸出しのとんでもない服もある。
服として、用をなさない物ばかりだ。
辛うじて体操服ブルマは我慢できたけど――
それも家の中だけだ。
だから、新しい服を買ったのだ。
同じくらい露出の多い、エロ巫女服は「戦闘巫女」として「禍々しい存在」を倒す装束なので仕方がない。
が、他の衣装を着るのは嫌だ。
「今のままでは、他の服は切れないんでしょ?」
バスタオルを体に巻いたままの姿で私はいった。
「うん、儀式をすれば、着れるよ。どんな服でも、エナメルボンテージでも、紐ビキニでも、童貞を殺す服でも――」
「だから、それは着ません…… いや、あの…… ここじゃちょっと……」
ウルウルした瞳でじっと私を見つめる九鼎。
愛らしい顔をして言われると、心がくじけて、この子のために着たくなってしまいそうになる。
堂地美奈子(27)は中学校理科教諭であるが、神に選らばれし巫女なのだから、神の言うことは「ご神託」であり、着ろと言うなら来てしまいそうに……
ショタけも耳の愛らしい神様を見ていると、私の心が揺らぐ。
「とにかく、儀式ってなにを?」
私は質問することで精神の動揺を隠す。
「簡単だよ。もう一回やってるよ、ボクとお姉さんは――」
「え?」
「裸で抱き合って、一晩過ごすんだよ。朝が来れば、服がきれるようになっているから」
全く屈託のない明るい笑顔でいわれた。
とんでもなくエロいこと。いや、確かに一度やってるけど。酔ってたし。
私は鼻を押さえた。
つーっと鼻血が流れてきたのだった。
「お姉さん、ティッシュ」
「ありがと。ああ、戦いの傷が開いたのかしら?」
私は受け取ったティッシュを丸め鼻につめた。
またしてもだ。これで何回目だ?
「まあ、まだ早いよ。おひるご飯も食べてないし。ここには、今日はずっといられるんでしょ?」
「え…… ええ。まあ12時間コースだから…… でも寝るならもっと……」
私は27年間、まだ一度も入ったことのない「そういうことをするホテル」の存在を考えた。
線路に沿って何件かあったのを思い出す。
夕方にここを出て、寝るのは―― そっちの方で……
私の理系脳が、裸で抱き合って寝るまでの「プロセス」の最適化手順を作り上げようとしていた。
「ボクはどこでもいいよ。お姉さんにまかせる」
そういって、けも耳ショタ神様はゴロリと横になっている私に添い寝してきた。
「お姉さんの体―― いい匂いがするし、柔らかくてボクは好き」
そういってキュッとバスタオルで包まれた私に抱きつき、それほど自慢ではない胸に顔をうずめる九鼎。
至福。圧倒的な至福――
体の芯から湧き上がる多幸福感は、エンドルフィンの多量分泌と、A10神経の興奮のせいかしら?
「あ、お姉さん!」
「ふふ、もっとくっ付きましょう」
私、アラサー理科教師であり、神の使徒となった堂地美奈子(27)は、ショタけも耳神様を抱き返していた。
まだ、お互いの肌の間には布があったが、それも私は幸せで死にそうぬなるのだった。
「お姉さんの脚って柔らかいし、すべすべ―― ボク好き……」
九鼎の幼いと言っていい手が私の太ももに伸びてきた。
やさしく、ゆっくりと私の肌の上を子どもらしい可愛い手が滑るようにさする。
もはや、私は夜まで待っていられる自信がなくなってきた。
『なにお姉さん?』
お守りの中にいる九鼎が念話で答えた。
「血糊がベトベトでちょっと気になるのよ」
『我慢すればいいんだよ! お姉さん』
「着替えたいんだけど……」
『う~ん……』
九鼎は即答しなかった。
彼は、ショタけも耳のキツネの神様だ。
もふもふの髪の毛から可愛いキツネ耳の生えた本当に可愛らしい神様なのだ。
ただ、その姿は今は見えない。
九鼎は、まだ私が首から提げたお守りに入っている。だから会話は「念話」だ。
私は相変わらずの露出の多いエロ巫女コスプレのような姿。
長い髪がポニーテールみたいになって、そこに和風のキツネ面のアクセサリみたいなものが付いている。
おまけに、血まみれ。全身血まみれのスプラッタ状態。
「禍々しい存在」を倒した時に浴びた返り血はどす黒く変色し、ドロドロからゲル化していた。
露出が大きな服なので、肌にもべっとり返り血を浴びていた。
気持ち悪い―― 不愉快――
そして右手に凶器―― いや、お祓いの神具だ。
有刺鉄線を巻いた切っ先に鋭い刃のついた凶器も血まみれだ。
おまけに、私の頭にはキツネ耳が生えている。
普通であれば凶悪で狂気を感じさせる存在だろう。凶器も持ってるし。
おまわりさんに通報される率100%なのは間違いない。
ロサンジェルスなら即射殺されるかもしれないほどの恰好だ。
しかし、鮒橋の駅前まで来たのだが、誰も私には注目しない。
おまわりさんもやってこない。
現在、私の姿は他の人の網膜に映っても、見えていないのと同じだった。
それは、九鼎が、神力で人の「認識」をずらしているからだ。
ほとんどの神力を私に注ぎ込んだ九鼎だけど、お守りの中にいれば、それくらいの神力が使えるらしい。
だから、ショタけも耳の神様は、その可愛い姿を見せず、お守りの中に引きこもり中だ。
早く満喫にいって、九鼎を出してあげよう――
私はそう思う。
九鼎はお守りの中で、私の血まみれ、スプラッタな異常な恰好が注目されることがない。
そんな感じで、鮒橋駅前の目抜き通りを歩いているのだった。
『うーん、戦闘巫女の装束は、きちんと手順を踏まないと着替えられないんだ』
「普通に脱いで着替えるとかできないの?」
『脱ぐだけならすぐできるけど、そのまま別の服を着るのは。お姉さんの神力をボクに戻してもらわないとだめなんだ』
鮒橋駅前の目抜き通りなので、服も下着も売っている店がある。
もう着替えの下着と服は買った。ちなみに、店員は私の姿をみても普通に対応した。
お金は「禍々しい存在」に殺された哀れな犠牲者の財布から集めたものがある。
数えたら22万7000円あった。
まあ、神に対する喜捨のようなものだから、ありがたく私が遣ってあげようと思う。
「手順って?」
『儀式、神事といってもいいかな。それをすればいいんだけど…… 詳しい説明は、落ち着いた場所についてからするよ』
「ん~ そうね…… でもベトベトして気持ち悪い」
血液型が大気に触れることでプロトロンビンがフィブリノーゲンと反応してフィブリンが生成され、網構造のようなものができて、血液はゲル化する。
中学生の理科の範囲ではないけど、この血糊と言うのはそうやって出来る。
理科の教師である私はそれを知っているけど、だからどうしたという話だ。
とにかく、裸にはすぐなれそうなので、とりあえずシャワーは浴びたい。
「禍々しい存在」をぶち殺し殲滅し一方的に殺戮する「ハイ」な状態から徐々に精神は平常運転に戻ってきた気がする。
先ほどまで戦っていたのが、なにかボンヤリした遠い過去のように感じられる。
気のせいだろうか……
ただ、体の芯の方には「熾火(おきび)」のような昂ぶりがまだ少しは残っている。
兇悪で穢れた「禍々しい存在」を一方的にぶちのめしたのは、今までの私であれば信じられないことだ。
そして、私はそれを確実に「楽しい」と感じているのだ。
◇◇◇◇◇◇
私と九鼎は、カップル用の防音個室のある満喫に入った。
船橋の満喫、ネットカフェではここにしかないと思う。
フラットのベッドのようなシートが引きつめられた個室。
でもって、40インチくらいありそうなテレビ。パソコンは2台あった。
「あーすっきりしたわ」
この満喫にはシャワーもある。
私はシャワーで血糊を荒い流した。この満喫にはシャワールームがあった。
部屋に戻って、首からお守りを下げて、バスタオル(店のレンタル)を体に巻いた姿で、ゴロリと横になった。
キツネのようなけも耳はまだ私の頭から生えた状態。
この個室は、個室と言うより床すべてがベッドのようになっているのだ。
手足を伸ばしても十分な広さがある。
「九鼎も出てきて、大丈夫よ」
『うん、分かった』
お守りから、すっと青白い狐火のようなものが、出てきて実体化する。
ふかふかの床の上にちょこんと座る九鼎。
大きなリュックを背負った可愛い小学校高学年男子という感じだ。
私が最初に出会った九鼎の姿。ただ、けも耳が生えているのが違っていて+50点。
超かわいい!! かわいい!! かわいい!! かわいい!! かわいい!! かわいい!! かわいい!!
愛らしくて、キューティーなショタけも耳の神様。
神など本気拝んだことはないが、この姿の九鼎であれば拝んでもいい。
別バージョンの姿も超絶美形だけど、私は断然こっちが好みだ。
ショタフェチ傾向のある私の超ストライクのど真ん中。
鼻血が…… ああ、鼻血がでそうになるわ……
「お姉さん。大丈夫。どこか痛いの? 急に呼吸が荒くなったけど?」
純真無垢。穢れなき少年の瞳が私を見つめるのだ。
あああ、ギュッとしたい。けも耳の頭をモフモフのしたい。
しっぽも、かわいい…… あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ♡
「お姉さん、本当に大丈夫?」
「あ…… 大丈夫よ。大丈夫。私は正気よ」
九鼎は首を回し周囲をみた。ピクピクと耳を動かしている。キュートぉぉぉ♡
「ふーん…… こんなところがあるんだね。でも、お姉さんの家は壊れちゃったし、いつまでもここってわけにもいかないよね」
「そうだけど―― 今はこれが幸せ」
満喫のカップル用個室など、私には絶対に縁のないところだと思っていた
誰にも邪魔されない空間にショタけも耳神様と二人きり……
ちなみに、生活圏は生徒と被らないように、2駅は離れている。
ここに入ったのを生徒にみられる心配もない。
そもそも今は、認識をずらしてあるのだから、杞憂意外なにものでもない。
「いつまでも、その格好じゃまずいよね」
「そうね」
シャワーで体を洗ったが、血まみれの戦闘巫女の装束になる気はない。
あの衣装も神力で生成されたものだが、なぜか洗濯しないと血糊は落ちないらしい。
今は、九鼎の持っている大きなリュックにしまってある。
「服はいっぱいあるんだけど、儀式を済ませてからじゃないとそれも着れないしなぁ」
「買った服を着るからいいです」
そこは、私はきっぱり言った
そのリュックには色々な衣装がある。
エナメルボンテージや、紐ビキニ、エロチャイナ服などなどだ。
その名前を知らないような、胸丸出しのとんでもない服もある。
服として、用をなさない物ばかりだ。
辛うじて体操服ブルマは我慢できたけど――
それも家の中だけだ。
だから、新しい服を買ったのだ。
同じくらい露出の多い、エロ巫女服は「戦闘巫女」として「禍々しい存在」を倒す装束なので仕方がない。
が、他の衣装を着るのは嫌だ。
「今のままでは、他の服は切れないんでしょ?」
バスタオルを体に巻いたままの姿で私はいった。
「うん、儀式をすれば、着れるよ。どんな服でも、エナメルボンテージでも、紐ビキニでも、童貞を殺す服でも――」
「だから、それは着ません…… いや、あの…… ここじゃちょっと……」
ウルウルした瞳でじっと私を見つめる九鼎。
愛らしい顔をして言われると、心がくじけて、この子のために着たくなってしまいそうになる。
堂地美奈子(27)は中学校理科教諭であるが、神に選らばれし巫女なのだから、神の言うことは「ご神託」であり、着ろと言うなら来てしまいそうに……
ショタけも耳の愛らしい神様を見ていると、私の心が揺らぐ。
「とにかく、儀式ってなにを?」
私は質問することで精神の動揺を隠す。
「簡単だよ。もう一回やってるよ、ボクとお姉さんは――」
「え?」
「裸で抱き合って、一晩過ごすんだよ。朝が来れば、服がきれるようになっているから」
全く屈託のない明るい笑顔でいわれた。
とんでもなくエロいこと。いや、確かに一度やってるけど。酔ってたし。
私は鼻を押さえた。
つーっと鼻血が流れてきたのだった。
「お姉さん、ティッシュ」
「ありがと。ああ、戦いの傷が開いたのかしら?」
私は受け取ったティッシュを丸め鼻につめた。
またしてもだ。これで何回目だ?
「まあ、まだ早いよ。おひるご飯も食べてないし。ここには、今日はずっといられるんでしょ?」
「え…… ええ。まあ12時間コースだから…… でも寝るならもっと……」
私は27年間、まだ一度も入ったことのない「そういうことをするホテル」の存在を考えた。
線路に沿って何件かあったのを思い出す。
夕方にここを出て、寝るのは―― そっちの方で……
私の理系脳が、裸で抱き合って寝るまでの「プロセス」の最適化手順を作り上げようとしていた。
「ボクはどこでもいいよ。お姉さんにまかせる」
そういって、けも耳ショタ神様はゴロリと横になっている私に添い寝してきた。
「お姉さんの体―― いい匂いがするし、柔らかくてボクは好き」
そういってキュッとバスタオルで包まれた私に抱きつき、それほど自慢ではない胸に顔をうずめる九鼎。
至福。圧倒的な至福――
体の芯から湧き上がる多幸福感は、エンドルフィンの多量分泌と、A10神経の興奮のせいかしら?
「あ、お姉さん!」
「ふふ、もっとくっ付きましょう」
私、アラサー理科教師であり、神の使徒となった堂地美奈子(27)は、ショタけも耳神様を抱き返していた。
まだ、お互いの肌の間には布があったが、それも私は幸せで死にそうぬなるのだった。
「お姉さんの脚って柔らかいし、すべすべ―― ボク好き……」
九鼎の幼いと言っていい手が私の太ももに伸びてきた。
やさしく、ゆっくりと私の肌の上を子どもらしい可愛い手が滑るようにさする。
もはや、私は夜まで待っていられる自信がなくなってきた。
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