翼をもった旭日の魔女 ~ソロモンの空に舞う~

中七七三

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7.少尉の修羅場はまだこれからだった

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「四織の相手が一番の手練れだな――」

 久遠少尉のつぶやきは双発複座攻撃機「爆星」の2基のエンジン音の中に溶け込んでいく。

『あははは! 四織ぃぃ、何やってんだよ。手伝ってやろうか?』

『3人でなぶり殺しにするのも、いいわよね』

『もう、そろそろですわ――』

 二葉と三恵の挑発的な念話にも冷静な四織だった。
 彼女は慎重だった。決して無理はしない。
 まるで、詰将棋のように敵を追いこむ。
 機械のようにミスをしない。

 戦場で敵にしたとき、一番やっかいなのは、四織のようなタイプかもしれない。
 派手さはないが、一番恐ろしい。
 久遠少尉は、敵機を追い詰めつつある烈風を見て思った。

「やった! 少尉! アメ公の敵機が火を!」

 カメラを操作しながら、一花が言った。
 敵機は翼から火を吹きだしていた。しかし、それはやがて小さくなり消える。
 黒い煙の尾となった。
 アメリカ機の頑丈さは、敵ながら呆れるしかない。

「なんだ! コイツ、こっちに!」

 久遠少尉は声を上げると同時にフットバーを蹴った。

「あ――!! 少尉!!」

 後部座席から一花の叫びが聞こえるがそれどころではない。
 青黒くのっぺりした機体が、機首をこっちに向け突っ込んできたのだ。
 チカチカと翼が光る。撃ってきた。こっちを狙っている。

『少尉! 一花!』

『この糞アメ公、なにやってんのよ!』

 二葉と三恵の念話。
 彼女たちの烈風も翼を翻し、こちらに向かってきた。

 久遠少尉は「爆星」を降下させる。
 それに追従するF8F。
 
「あ、分解! 空中分解! って…… あれ?」

 一花の言葉が止まった。
 敵機は、翼端を弾き飛ばすように切り離したのだ。
 分解じゃない。あれはそういう仕組みだ。
 おそらく、降下中の翼の強度を上げるため、翼端を切り離す仕組みになっている。

 久遠少尉はそのことを理解する。しかし、分かったからといって状況が変わるわけでもなかった。

 その間も、敵機は3機の烈風に袋叩きにされていた。
 火だるまとなりながら、こちらに向け、銃弾をぶっ放してくる。

「キャッ!」

 後部座席で一花が声を上げた。

「どうした! 一花!」

 少尉は装甲板の隙間から、後部座席を見た。

「な、なんでもないです。大丈夫です…… かすっただけです」

 彼女の声にいつもの快活さが無い。顔色も悪い。
 その手にはカメラがない。落としていた。足元でカタカタと転がるカメラ。

「莫迦! 怪我は!」

「たいしたことないです。本当です」

 一花は後ろの方に手を回している。
 
「おい! 背中か!」

「違います! 大丈夫です」

 そういって慌てて、押さえていた手を前に出した。
 その手には真っ赤な血がついていた。

「おい……莫迦! 血を止めろ!」

「あッ、落ちます」

 一花の声に、久遠少尉は敵機を見た。
 火だるまとなった敵機はバラバラになって落ちて行った。

(なんで、こっちを攻撃してきたんだ……)

 少尉は思う。いや、自分が甘いのだと思った。
 実際、戦争を甘く見ていたのは、自分ではないかと久遠少尉は思ったのだ。

「一花、帰るぞ。大丈夫か?」

「はい…… あの、本当に大丈夫です……」

 久遠少尉は操縦桿を握る手に力を込めた。

        ◇◇◇◇◇◇

 帰路にいつも、少尉の分のキャラメルまで欲しがる一花がなにも言わなかった。
 久遠少尉は途中何度も声をかけた。

 その度に、か細い声で返事をする一花。
 意識だけはなんとか、保っているようだと少尉は確認する。

「爆星」と「烈風」は帰還した。
 狭い滑走路に降りる緊張感など感じる暇がないほど、久遠少尉は焦っていた。
 
 滑走路に機体を停止させる。
 
「一花! 一花! 着いたぞ! 大丈夫か!」

「あ、あ、あ、あ、大丈夫です…… 先に、先に降りてください」

「莫迦、なに言ってんだ。どこだ! どこだ!」

 ワラワラと整備兵が集まる。

「衛生兵! 担架! 担架の用意をしろ!」

 久遠少尉は叫ぶ。

「少尉、大丈夫です。だから、先に…… お願いです……」

 久遠少尉はベルトを外すと、操縦席を出た。
 そして、後部座席の風防を空ける。
 真っ青な顔で、一花が久遠少尉を見上げていた。
 その黒く大きな瞳には涙が浮かんでいる。

「い、痛いのか……」
 
 少尉はそういうと、彼女のベルトを外した。

「いや、いいです! 行けます! 1人で、だから、お願いだからぁぁ!」

 パタパタと手を振りまわす一花を久遠少尉は抱えた。
 小柄だと思っていたが、抱きかかえたことで、その細さを実感した。

 こんな少女が――

「あ―― 止めて下さい!!」
 
 なぜ、彼女がそんなに嫌がるのか。そこまで頭が回らない。 
 抱き上げた彼女が細かく震えていた。

 痙攣か――
 
「爆星」の翼の上で固まる久遠少佐。

 しかしだ――。

 集まって来ている整備兵たちの様子が変だった。
 下を向いて肩を震わせている人間が何人もいる。
 その他には、呆れたようにこっちを見ている兵もいた。

 それは、唐突だった。
 爆笑だ。

 整備兵が笑い出したのだ。
 転げまわっている奴までいる。
 なんだ、いったい。

「ばかぁぁ~! 止めてって言ったのにぃぃ~ 少尉のばかぁぁぁ~」

 一花が泣きだした。
 久遠少尉は状況が分からず、ただ一花を抱きかかえていた。

「し、少尉…… し、尻がっぁ。白風一飛の尻がぁぁぁ、ぎゃはははははは、ゲホゲホ――」

「尻…… 尻? なにそれ?」

 整備兵の1人の言葉に、久遠少尉はつぶやく。
 
 一花は背中ではなく尻を押さえていた。
 飛行服が破け、白い肌が露出していた。お尻だ。手で隠してはいるが、お尻が見えているのだ。
 しかも、整備兵たちが集まる中、久遠少尉は、乙女のお尻を開帳させてしまったのだった。

「あ、あ、あ、あ、あ~、お嫁にいけないぃぃぃ~、あああああーー!! 少尉のバカぁぁぁ!!」

 帝大数学科出身の明晰な頭脳を持つ久遠少尉は徐々に事態を理解する。

 一花は敵の機銃弾を受けた。尻にだ。傷はおそらく大したことないのだろう。
 多分、掠めただけだ。でなければ、尻であっても無事じゃすまない。
 しかし、飛行服の尻が破れたのだ…… 
 だから、先に行けと言ったのだろう。

「いや、一花ゴメン…… すまん。いや、本当に……」

「あ、あ、あ、あ、あ~ お嫁に行けないぃぃ~。ああああーーん」

 泣きじゃくる一花をギュッと抱きしめる久遠少尉。
 隠すように腕の部分を彼女のお尻に回した。
 そして、そのまま地上に降り立つ。
 
 尻の開帳はともかく、血が出てるのは確かだ。
 軍医に見せる。それからだ。

「どけ! 去れ! 散れ! 今見たことは忘れろ!! いいな!」

 笑い崩れる整備員を後にし、久遠少尉は軍医のところに向かった。
 抱きかかえられていた一花はいつの間にか、泣くのを止めていた。
 そして、ギュッと久遠少尉にしがみ付いていた。

        ◇◇◇◇◇◇

「こんな、傷、ヨーチン塗っときゃ、一日にで治るわッ!」
 
 いつも酔っぱらっているという評判の軍医が言った。
 少尉はそうだろうとは、思いつつ、ホッと胸をなでおろす。

 薄い毛布を頭からかぶっている一花。

 もしかしたら、これは非常にまずいことではないかと少尉は考えた。
 彼女たち、異能者は精神的なショックでその能力を無くす可能性もある。
 彼はそのように聞かされていた。
 
『お嫁に行けない……』
 
 念話だった。少なくとも現時点で一花が能力を無くしているということは無かった。
 
「おい――」

 少尉が口を開きかけたとき、ドアが開き、烈風に乗っていた三人が入ってきた。
 四織、二葉、三恵だった。

「なあ、一花、お尻を皆に見せたんだって? やるなぁ~」

 空では敵を落としまくり、地上で男を堕しまくる二葉が声をかけた。

「この淫売の売女のやっていることに比べたら、大したことないわよ。一花」

 三恵の言葉だ。まあ、本当のことであるが、あまり慰めになっていない。

「ああああ~ん。ふぇぇぇぇ~ん。やっぱり、お嫁にいけないよぉぉ~」

 声に出して泣きだした一花。

「別に、お嫁に行かなくても生きていけるわ」

 四織だ。それも正しいとは思うが、この場で言う言葉ではない。
 慰めているつもりなのか?

 毛布の下で一花は「お嫁に行けない」と泣くばかりだった。

「ふぅぅぅ」っと久遠少尉は息を吸いこむ。

「泣くな! 一花!」

 思いのほか大きな声だった。
 久遠少尉の声で、病室内が静かになる。

「戦争が終わって―― 俺が生きていたら、俺がオマエをもらってやる」

 久遠少尉の言葉。そして、ゴソゴソと毛布が動く。
 ゆっくりと顔を出す一花。
 黒く大きな瞳で、ジッと久遠少尉を見つめた。

「本当?」

 小さな声で一花は言った。

「ああ」

「じゃあ、死なないで。戦争で死なないで。それも約束して」

「分かった、俺は死なない。大丈夫だろ。『爆星』の後ろにお前が乗っている限り、俺は死なんよ――」

 毛布から顔を出している一花が「にへらぁ」という感じで笑った。そして顔が真っ赤になる。
 また、毛布をかぶった。

『約束だから―― 絶対に』

 念話が少尉の頭に響く。  

「あーー!! 一花、ずるいぃ! 尻見せて、少尉を落すとか!」

 二葉だった。二葉が頬を膨らませ言った。
 少尉はその言葉の意味を咀嚼できずに、ポカーンとする。

「一花! アンタ、みんな少尉を狙ってるの知ってるでしょ! なに! その手管! この売女より怖いわよ」

 三恵の言葉に、久遠少尉は更に混乱する。「みんな少尉を狙ってる」というのは、どういうことだ?

「別に私は、愛人でもいい――」

 四織までもが訳の分からんことを言い出した。

 帝大出身の久遠少尉は、ここにきてようやく事態を把握しだした。
 思えば、なぜあの二葉が自分にだけ手を出さなかったのか……
 そして、一花の態度、他の3人の態度……

 コイツら、全員俺を狙って牽制し合っていたのか……
 なんだこれは。

 ガバっと毛布が飛んだ。一花が跳ね起きた。

「ああー!! ダメ!! だって、今のは、少尉から言ってきたんだもん! 私が少尉のお嫁さんになるの!」

 先ほどまで泣いていた気配を微塵も感じさせず、一花は言い放った。

(なんだこれは……)

 70年後であれば「ラノベ主人公」、「鈍感ハーレム野郎」と指摘されそうな状況だった。
 しかし、戦争中にそのような概念はない。
 
 そして、「俺は戦争が終わったら結婚するんだ」が死亡フラグであるという概念もなかった。

 そう――
 
 全員この戦争を生き残る。
 
 ただ、少尉の新たな修羅場はここから始まることだけは確実だった。

 ―完―
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感想 4

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みんなの感想(4件)

三菱F-2
2018.01.09 三菱F-2

作中では烈風22型の武装は13.2mm機銃なのに架空機説明で12.7mm機銃になってます。

解除
三菱F-2
2017.02.01 三菱F-2

その1
その戦闘指揮所(CIC)は、まさに魔女の釜をひっくり返したような様になっている。
→ひっくり返したようになっている
あるいはひっくり返した様な状況になっている。
第22空母部隊の指揮官であるトーマス・スプレイグ少将は、帽子を掴んで叩きつた。
→叩きつけた
その2
おそらく通信機器もブチ壊れているアメリカ海軍機にとっては、なすすべがないであろう。
→為す術
「ロ式大和弾。当たれば、いかに頑強な米空母で無事じゃすまない――」
→米空母でも
このことが、あの恐怖を結晶化したような上官知られたら、どうなるか……
→上官に知られたら
その5
でかい練乳の缶詰を抱えて混んで、それを一気に食べたことがある。
→抱え込んで
その6
黒山羊(ブラック・ゴーツ)隊のリーダであった。
→リーダー

46cm砲弾の重量は1460kgあります。それに対してロ式大和弾の1.5tは軽いと思います。
1.5tにするなら40cm砲弾を流用すると良いと思います。

2017.02.07 中七七三

感想ありがとうございます。後で直します。今眠いのです。すいませんです。

解除
にんげんだもの

これ長編書く予定ないですか?

2016.12.23 中七七三

女性パイロットの話は書くかもしれませんが、完全な続きは書かないとおもいます。すいませんです。

解除

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