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第10話 脱出は計画的に。
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――古本屋で本を借りてきて。タルトも買ってきて。
これがまず最初の作戦。
本が読みたかったわけでもなければ、タルトが食べたかったわけでもない。
貸本屋もタルト屋もこのホテルの近辺にはない。だから、そこに行けと命じれば、キースの帰りは自然と遅くなる。
これが、「ドレスに合うリボンを買ってきて」とか、「新しい髪飾りが欲しいの」ではダメ。それだと「では、買い物にご一緒します」とか、「御用聞き商人をここに呼びましょう」となって、キースが離れることなくペッタリついてくる。本とタルトっていう、アタシが一緒に行かなくてもよくて、誰かに持ってきてもらうことのできないアイテムを頼む。これがいいのよ。
で。
アイツの場合、この部屋を離れるとなると鍵をかけてこっちを閉じ込めちゃうけど、今回はそれができない。
だって、同時にジュディスも部屋を出ているから。
ジュディスに頼んだのはお茶。ホテルの台所キッチンへ取りに行っただけだから、キースより早く戻ってくる。
となると、キースは扉に鍵をかけられない。自分より先に戻るだろうジュディスを締め出すことになっちゃうし。そこまで厳重にアタシを閉じ込めたって、戻ったジュディスがホテルの人に鍵を開けるようにお願いしたら意味ないし。
だから。
だから、キースは何も鍵をかけずに出ていった。
すべてはアタシの作戦通り。
ジュディスには悪いけど、アタシはチャンスを逃さない女なの。
二度がダメなら三度でも。自分のためなら、何度でも挑戦するのよ。
タルトを食べたくない、お茶を楽しみたくないって言えばウソになるけど、今は自分の命が大事。
(ごめんね、ジュディス。落ち着いたら迎えに来るから。そしたら下町で一緒に暮らそうね)
軽く心のなかで謝っておく。
ホントは階下に駆け下りてジュディスも一緒に逃げるように伝えたいけど、万が一、アイツが帰ってきたらまずいので諦める。遠くに行くように命じたけど、アイツ、神出鬼没、いつ帰ってくるかわかんないし。
そして。
(甘かったわね。アタシはそう簡単に囚われるご令嬢じゃないのよ)
アイツがタルト片手に青ざめる姿を想像する。――ちょっと楽しい。
(さて――)
初めての脱出はメイドで失敗した。
二度目は窓からで失敗した。
だから、三度目は……。
(堂々!! 堂々と令嬢らしく出ていく!!)
これでいく。
ホテルなんて紳士だの淑女だのそういうのがいっぱいいるところだし。まあ、もちろんメイドとかボーイとかそういうのもいるけどさ。
とにかく、令嬢が普通に歩いていてもおかしくない場所なのよ。
だから、別にメイドにならなくっても、窓から逃げ出さなくっても怪しまれたりしない。まあ、お付の者がいないから? ちょっと不思議には思われるかもしれないけど、紛れてしまえばそんなに目立たない。
気は焦るけど、なるべく優雅に平然と歩けば問題ナシ。ちょっとグランドフロアにあるサロンに顔を出しに行きますのホホホ、みたいな。サロンにあるピアノ、それを聴きたくて急いで出てきたから、召使いは後から来ますわフフフ、みたいに。
実際、階段にまでピアノの音は聞こえてきてる。口実、ピッタリ。
(ま、今はピアノなんか興味ないけどね~)
逃げるのが大事。素敵なメロディだとは思うけど。
階段を降りていくシルクハットを被った紳士。楽しくお喋りをしながら階段を上る淑女たち。
さり気なくその流れに乗るようにして階段を降りる。踊り場で少しもたつくけれど、確実に下へ下へ、一階、グランドフロアへと近づいていく。
(あと少し。ここを曲がれば……)
最後の踊り場。ここを過ぎたら、あとはまっすぐ階段を降りて、その先にあるのはホール。緋色の制服に身を包んだドアマンが待つエントランスはもうすぐそこ!!
(もうすぐ。もうすぐよ!! ……って、え?)
グラリ。
体が前のめりに崩れる。足元にあったはずの階段の赤い毛氈が、みるみる間に目の前に迫ってくる!!
「きゃああっ!!」
声も出せないアタシ。代わりに誰かの悲鳴が聞こえた。
(うぎゃあぁぁぁっ!!)
目をつむり、身を固くする。
――ガシッ。
「大丈夫ですか、レディ」
真っ暗ななか、前からドンッとぶつかった衝撃。でも柔らかい。
聞こえた声は知らない声。
「え、っと……」
恐るおそる目を開ける。脇に回された腕。多分、落ちてきたアタシを受け止めてくれた腕。ガッシリとした体型の男の人――ではな黒髪の年若い少年。受け止めてくれた胸板は少々薄い。多分、アタシより若い。ドアマンと同じ緋色の制服に身を包んだ、おそらくフロアで荷運びをするページボーイ。
「あ、ありがと……」
「いえ。ご無事でなによりです」
驚きと安堵。恐怖と戸惑い。
いろんなものがごっちゃ混ぜになって、止まりかけてた心臓が一気に動き出す。
(アタシ、抱きとめられちゃったの? こんなみんなが見てる前で?)
っていうのもある。階段を落ちかけたんだから仕方ないとは思うけど、男性に抱きとめられるってどうなのって。けど。
(痛い……)
右足首にズキンッと走る鈍い痛み。階段から落ちたときにひねったとかじゃない。あれは――。
「足をくじかれたのですか?」
「あ、えと、その……、だ、大丈夫よ、ありがとう」
アタシが階段の途中で座り込んだまま立とうとしないから不審がられた。慌てて立ち上がって元気なふりをする。実際、足首の痛みは、立って歩くのに問題ない程度。
「一度部屋にお戻りいただいたほうがよろしいですね」
「大丈夫、大丈夫!! ほら、なんにも問題ないから」
さすがに階段途中で飛び跳ねるわけにはいかないけど、平らなところならピョンピョンできる。
「ミスター・ウィリアムズももうすぐお帰りになりますので、お部屋にお戻りください」
へ?
ミスター・ウィリアムズ?
「誰、それ」
「貴女さまの執事ですよ。キース・ウィリアムズ。ご存じなかったのですか?」
うん。
アイツ、そんな名前だっけ? すっかり忘れてた。
だって、どうでもよかったし。いっつも「アイツ」とか「コイツ」とか「ソイツ」呼ばわりだったし。
「ウィリアムズ殿がお帰りになるまで僕がお世話をさせていただきますので、どうか、お部屋にお戻りください」
「え、いや、そこまでしていただかなくても……」
せっかくの逃げるチャンスなのだから、放っておいてくださいな。ホホホ。
「お気になさらずに。これも、主に仕える従僕の役目ですから」
へ? え? 従僕?
ホテルのページボーイが従僕?
「申し遅れました。僕は、メイフォード子爵家の従僕、テオ・ロビンソンと申します。ウィリアムズ殿の下で働かせていただいております」
ななななんですってぇぇぇっ!!
せっかく。せっかく逃げる機会ができたって思ったのに。
アイツの小型版(少年版?)、恭しく胸に手を当てての一礼。助けてくれた恩人、ただのページボーイだと思ったら、アイツの一味だったのね? ページボーイのフリして、アタシを見張ってたってこと?
――逃亡、失敗。
これがまず最初の作戦。
本が読みたかったわけでもなければ、タルトが食べたかったわけでもない。
貸本屋もタルト屋もこのホテルの近辺にはない。だから、そこに行けと命じれば、キースの帰りは自然と遅くなる。
これが、「ドレスに合うリボンを買ってきて」とか、「新しい髪飾りが欲しいの」ではダメ。それだと「では、買い物にご一緒します」とか、「御用聞き商人をここに呼びましょう」となって、キースが離れることなくペッタリついてくる。本とタルトっていう、アタシが一緒に行かなくてもよくて、誰かに持ってきてもらうことのできないアイテムを頼む。これがいいのよ。
で。
アイツの場合、この部屋を離れるとなると鍵をかけてこっちを閉じ込めちゃうけど、今回はそれができない。
だって、同時にジュディスも部屋を出ているから。
ジュディスに頼んだのはお茶。ホテルの台所キッチンへ取りに行っただけだから、キースより早く戻ってくる。
となると、キースは扉に鍵をかけられない。自分より先に戻るだろうジュディスを締め出すことになっちゃうし。そこまで厳重にアタシを閉じ込めたって、戻ったジュディスがホテルの人に鍵を開けるようにお願いしたら意味ないし。
だから。
だから、キースは何も鍵をかけずに出ていった。
すべてはアタシの作戦通り。
ジュディスには悪いけど、アタシはチャンスを逃さない女なの。
二度がダメなら三度でも。自分のためなら、何度でも挑戦するのよ。
タルトを食べたくない、お茶を楽しみたくないって言えばウソになるけど、今は自分の命が大事。
(ごめんね、ジュディス。落ち着いたら迎えに来るから。そしたら下町で一緒に暮らそうね)
軽く心のなかで謝っておく。
ホントは階下に駆け下りてジュディスも一緒に逃げるように伝えたいけど、万が一、アイツが帰ってきたらまずいので諦める。遠くに行くように命じたけど、アイツ、神出鬼没、いつ帰ってくるかわかんないし。
そして。
(甘かったわね。アタシはそう簡単に囚われるご令嬢じゃないのよ)
アイツがタルト片手に青ざめる姿を想像する。――ちょっと楽しい。
(さて――)
初めての脱出はメイドで失敗した。
二度目は窓からで失敗した。
だから、三度目は……。
(堂々!! 堂々と令嬢らしく出ていく!!)
これでいく。
ホテルなんて紳士だの淑女だのそういうのがいっぱいいるところだし。まあ、もちろんメイドとかボーイとかそういうのもいるけどさ。
とにかく、令嬢が普通に歩いていてもおかしくない場所なのよ。
だから、別にメイドにならなくっても、窓から逃げ出さなくっても怪しまれたりしない。まあ、お付の者がいないから? ちょっと不思議には思われるかもしれないけど、紛れてしまえばそんなに目立たない。
気は焦るけど、なるべく優雅に平然と歩けば問題ナシ。ちょっとグランドフロアにあるサロンに顔を出しに行きますのホホホ、みたいな。サロンにあるピアノ、それを聴きたくて急いで出てきたから、召使いは後から来ますわフフフ、みたいに。
実際、階段にまでピアノの音は聞こえてきてる。口実、ピッタリ。
(ま、今はピアノなんか興味ないけどね~)
逃げるのが大事。素敵なメロディだとは思うけど。
階段を降りていくシルクハットを被った紳士。楽しくお喋りをしながら階段を上る淑女たち。
さり気なくその流れに乗るようにして階段を降りる。踊り場で少しもたつくけれど、確実に下へ下へ、一階、グランドフロアへと近づいていく。
(あと少し。ここを曲がれば……)
最後の踊り場。ここを過ぎたら、あとはまっすぐ階段を降りて、その先にあるのはホール。緋色の制服に身を包んだドアマンが待つエントランスはもうすぐそこ!!
(もうすぐ。もうすぐよ!! ……って、え?)
グラリ。
体が前のめりに崩れる。足元にあったはずの階段の赤い毛氈が、みるみる間に目の前に迫ってくる!!
「きゃああっ!!」
声も出せないアタシ。代わりに誰かの悲鳴が聞こえた。
(うぎゃあぁぁぁっ!!)
目をつむり、身を固くする。
――ガシッ。
「大丈夫ですか、レディ」
真っ暗ななか、前からドンッとぶつかった衝撃。でも柔らかい。
聞こえた声は知らない声。
「え、っと……」
恐るおそる目を開ける。脇に回された腕。多分、落ちてきたアタシを受け止めてくれた腕。ガッシリとした体型の男の人――ではな黒髪の年若い少年。受け止めてくれた胸板は少々薄い。多分、アタシより若い。ドアマンと同じ緋色の制服に身を包んだ、おそらくフロアで荷運びをするページボーイ。
「あ、ありがと……」
「いえ。ご無事でなによりです」
驚きと安堵。恐怖と戸惑い。
いろんなものがごっちゃ混ぜになって、止まりかけてた心臓が一気に動き出す。
(アタシ、抱きとめられちゃったの? こんなみんなが見てる前で?)
っていうのもある。階段を落ちかけたんだから仕方ないとは思うけど、男性に抱きとめられるってどうなのって。けど。
(痛い……)
右足首にズキンッと走る鈍い痛み。階段から落ちたときにひねったとかじゃない。あれは――。
「足をくじかれたのですか?」
「あ、えと、その……、だ、大丈夫よ、ありがとう」
アタシが階段の途中で座り込んだまま立とうとしないから不審がられた。慌てて立ち上がって元気なふりをする。実際、足首の痛みは、立って歩くのに問題ない程度。
「一度部屋にお戻りいただいたほうがよろしいですね」
「大丈夫、大丈夫!! ほら、なんにも問題ないから」
さすがに階段途中で飛び跳ねるわけにはいかないけど、平らなところならピョンピョンできる。
「ミスター・ウィリアムズももうすぐお帰りになりますので、お部屋にお戻りください」
へ?
ミスター・ウィリアムズ?
「誰、それ」
「貴女さまの執事ですよ。キース・ウィリアムズ。ご存じなかったのですか?」
うん。
アイツ、そんな名前だっけ? すっかり忘れてた。
だって、どうでもよかったし。いっつも「アイツ」とか「コイツ」とか「ソイツ」呼ばわりだったし。
「ウィリアムズ殿がお帰りになるまで僕がお世話をさせていただきますので、どうか、お部屋にお戻りください」
「え、いや、そこまでしていただかなくても……」
せっかくの逃げるチャンスなのだから、放っておいてくださいな。ホホホ。
「お気になさらずに。これも、主に仕える従僕の役目ですから」
へ? え? 従僕?
ホテルのページボーイが従僕?
「申し遅れました。僕は、メイフォード子爵家の従僕、テオ・ロビンソンと申します。ウィリアムズ殿の下で働かせていただいております」
ななななんですってぇぇぇっ!!
せっかく。せっかく逃げる機会ができたって思ったのに。
アイツの小型版(少年版?)、恭しく胸に手を当てての一礼。助けてくれた恩人、ただのページボーイだと思ったら、アイツの一味だったのね? ページボーイのフリして、アタシを見張ってたってこと?
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