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第9話 囚われ令嬢脱出作戦!!
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退屈。
もんのすごぉぉぉく、退屈。
お茶会は緊張したし、戸惑ったし、混乱したし、振り回されたし。そりゃあ、いろいろあったよ? でも、でもね。
それが過ぎてしまえば、特に代わり映えのない日常なのよね。
朝起きて、することもないから食事を終えたらボヘェッと部屋で過ごす。だって出かける用事もないし。やることといったら、ジュディスと他愛のない話をしたりするぐらい。本当は速攻逃げ出したいんだけど。アイツが……ねえ。
お前は門番か看守かってぐらい、ピッタリミッチリそばにいる。部屋の中で一定の距離を置いて彫像かなんかのように突っ立ってるだけだけど、それでもずっとそばにいるのよ。間違ってもボディガード、護衛じゃない。
すごく気が詰まる。
気晴らしに近所の公園を散策……って言ってもコイツ、ついてくるし。
一緒にいるジュディスも落ち着かないみたい。時折、アイツを見ては気まずそうに視線を外す。まあ、なんかあったら「いけませんよ、ジュディス」とか、「そんなことでは小間使いは務まりませんよ」とか言ってくるもんなあ。アタシと同じように一挙手一投足見張られてるみたいで、居心地悪いよね。スッゴクわかる。
だから。
「ねえ、キース」
それまで、せめてもの時間つぶしにと、やりかけの刺繍をテーブルの上に置く。
「ちょっと買い物を頼まれてくれないかしら」
「買い物……でございますか?」
「ええ。退屈なの。だから本でも買うか借りてきてほしいなって」
「本ならそちらに取り揃えておりますが?」
キースの視線が向かったのは、オーク材で作られた猫脚瀟洒なコンソールテーブル。上には数冊の本。誰が選んだの?って聞きたくなるぐらい、厳しい本が積み上がってる。
「読み飽きちゃったのよ」
「……お嬢さまは、そこまで熱心に読まれていらっしゃいましたか?」
う、うるさいわね。たいして読んでないわよ。ちょっと手に取ってみたけど、クッソ難しくって面白くなかったし。
「アタシはもっと娯楽めいたものが読みたいの。三巻本なんか好きなんだけど」
なければ二巻本でもいい。とりあえず、ここにないような娯楽本。
「恋愛中心になってるやつがいいわ。素敵なヒーローが出てくるやつなんて最高ね」
どっちかっていうと、恋愛より冒険のが好きだけど。新大陸の、まだ誰も知らないジャングルとか異民族とか、そういうの、ワクワクしない? 推理小説なんかもいいわね。
「レディ……」
「なによ。恋愛小説を読むのって、これからの夫探しに役立つんじゃない?」
小説で恋愛とはなんたるかを学ぶ。いい案だと思うんだけど。
ああいう手合いの小説って、普通の令嬢の当たり前をぶっ壊すようなエキゾチックな男性が現れて、嵐のような? めくるめく? 恋愛が繰り広げられたりするのよね。例えば、新大陸帰りの男性とか。異国の公爵とか。突然現れて、いきなりものすごい恋に落ちるの。まあ、ありえなさ満点の展開だけどね。
ちょっとだけ。ちょっとだけ学校にいた時、同級生から借りて読んだ。夢物語、荒唐無稽すぎ、こんなのにときめくってありえない、ご都合主義すぎって思ったけど。
「まあ、なんでもいいわ。とりあえず、何か借りてきてくれない?」
「では、ホテルの者に借りに行かせましょう」
「だ、ダメ!!」
それじゃあダメなの!!
「え、と……。その……、は、恥ずかしいじゃない!! 恋愛もの読みたいって思ってるの、知られたら恥ずかしいの!!」
「そうなのですか?」
「そうよ!! そうなの!!」
ちょっと力説。
「お嬢さまがそのような恥じらいを持っていらしたとは……」
う、うるさい。持ってて悪いか。
「それと、ランチェスター伯爵夫人に教えていただいたんだけど、淑女のためのマナー雑誌なんてのもあるのよね?」
「ええ。いくつかありますが……」
「それ!! それも読みたいの!! 淑女としてのたしなみについても知りたいから。でも、アタシがそんなの読みたいって思ってるの、誰かに知られるのは恥ずかしくって……」
軽く口に手を当て、体をくねらせる。ちょっとだけ上目遣いにキースを見やる。
「ねえ、アタシの代わりに借りてきてくれないかな?」
恥ずかしがり屋の内気な令嬢のために。
「あ、あとこれも教えてもらったのだけど、最近とおぉぉぉっても美味しいタルトのお店ができたんですって? フルーツのたくさん載せられたキレイなタルトのお店」
「ええ。『カロッズ』ですね」
「そう!! カロッズ!! そこのタルト、一度食べてみたいの。それも合わせて買ってきてくれないかしら」
貸本屋にタルト屋。カロッズでもナロッズでもなんでもいいから出かけてきてよ。
「……、かしこまりました、レディ」
軽く嘆息してからの一礼。
「では、しばらく留守にしますが……、ジュディス、お嬢さまのこと、頼みましたよ」
「はい」
何を「頼む」っていうのよ。
「ああ、そうだ。ジュディス、キースが帰ってきたら一緒にタルトを食べられるように、お茶を用意してきてくれないかな?」
「お茶? 一緒に?」
ジュディスはもちろん、キースも目を丸くした。
まあ、そうだよね。普通、令嬢が目下の者と一緒にお茶なんてしないよね。
「せっかくだし、一緒に食べよう? ほら、キースも一緒だったら文句も言わないでしょ?」
アタシは普通の令嬢じゃないもん。ちょっと前まで下町育ちの規格外令嬢だもん。楽しく食べられるのであれば、誰とだって気にしないもん。
「だから、キースは三人分、買ってきてよね。部屋で食べるんだったら、誰に見られるわけでもないから、マナーもうるさく言わなくていいでしょ」
「レディ……」
うわ、言いたいことたっぷりあるかんじの顔。
「いい? これは命令なの。だから、キースは三人分のタルトと頼んだ本を持ってくる。ジュディスは三人分のお茶を用意する。――わかった?」
「はい」
「承知いたしました」
二人がそれぞれ部屋を出ていく。
ジュディスは、ホテルの階下にある台所キッチンへ。
キースは、遠い遠いタルト屋と貸本屋へ。
ジュディスはすぐに戻ってくるかもしれないけど、キースはそう簡単に戻ってこない。
廊下から二人の足音が消えたことを確認して、そっとドアノブを回す。
よし!!
鍵のかけられなかったドアを開け、滑るように廊下に出る。
一度や二度失敗したからって、諦めないのがこのティーナさまなのよ!!
ってことで、アタシ、三たび、脱出しまーっす!!
もんのすごぉぉぉく、退屈。
お茶会は緊張したし、戸惑ったし、混乱したし、振り回されたし。そりゃあ、いろいろあったよ? でも、でもね。
それが過ぎてしまえば、特に代わり映えのない日常なのよね。
朝起きて、することもないから食事を終えたらボヘェッと部屋で過ごす。だって出かける用事もないし。やることといったら、ジュディスと他愛のない話をしたりするぐらい。本当は速攻逃げ出したいんだけど。アイツが……ねえ。
お前は門番か看守かってぐらい、ピッタリミッチリそばにいる。部屋の中で一定の距離を置いて彫像かなんかのように突っ立ってるだけだけど、それでもずっとそばにいるのよ。間違ってもボディガード、護衛じゃない。
すごく気が詰まる。
気晴らしに近所の公園を散策……って言ってもコイツ、ついてくるし。
一緒にいるジュディスも落ち着かないみたい。時折、アイツを見ては気まずそうに視線を外す。まあ、なんかあったら「いけませんよ、ジュディス」とか、「そんなことでは小間使いは務まりませんよ」とか言ってくるもんなあ。アタシと同じように一挙手一投足見張られてるみたいで、居心地悪いよね。スッゴクわかる。
だから。
「ねえ、キース」
それまで、せめてもの時間つぶしにと、やりかけの刺繍をテーブルの上に置く。
「ちょっと買い物を頼まれてくれないかしら」
「買い物……でございますか?」
「ええ。退屈なの。だから本でも買うか借りてきてほしいなって」
「本ならそちらに取り揃えておりますが?」
キースの視線が向かったのは、オーク材で作られた猫脚瀟洒なコンソールテーブル。上には数冊の本。誰が選んだの?って聞きたくなるぐらい、厳しい本が積み上がってる。
「読み飽きちゃったのよ」
「……お嬢さまは、そこまで熱心に読まれていらっしゃいましたか?」
う、うるさいわね。たいして読んでないわよ。ちょっと手に取ってみたけど、クッソ難しくって面白くなかったし。
「アタシはもっと娯楽めいたものが読みたいの。三巻本なんか好きなんだけど」
なければ二巻本でもいい。とりあえず、ここにないような娯楽本。
「恋愛中心になってるやつがいいわ。素敵なヒーローが出てくるやつなんて最高ね」
どっちかっていうと、恋愛より冒険のが好きだけど。新大陸の、まだ誰も知らないジャングルとか異民族とか、そういうの、ワクワクしない? 推理小説なんかもいいわね。
「レディ……」
「なによ。恋愛小説を読むのって、これからの夫探しに役立つんじゃない?」
小説で恋愛とはなんたるかを学ぶ。いい案だと思うんだけど。
ああいう手合いの小説って、普通の令嬢の当たり前をぶっ壊すようなエキゾチックな男性が現れて、嵐のような? めくるめく? 恋愛が繰り広げられたりするのよね。例えば、新大陸帰りの男性とか。異国の公爵とか。突然現れて、いきなりものすごい恋に落ちるの。まあ、ありえなさ満点の展開だけどね。
ちょっとだけ。ちょっとだけ学校にいた時、同級生から借りて読んだ。夢物語、荒唐無稽すぎ、こんなのにときめくってありえない、ご都合主義すぎって思ったけど。
「まあ、なんでもいいわ。とりあえず、何か借りてきてくれない?」
「では、ホテルの者に借りに行かせましょう」
「だ、ダメ!!」
それじゃあダメなの!!
「え、と……。その……、は、恥ずかしいじゃない!! 恋愛もの読みたいって思ってるの、知られたら恥ずかしいの!!」
「そうなのですか?」
「そうよ!! そうなの!!」
ちょっと力説。
「お嬢さまがそのような恥じらいを持っていらしたとは……」
う、うるさい。持ってて悪いか。
「それと、ランチェスター伯爵夫人に教えていただいたんだけど、淑女のためのマナー雑誌なんてのもあるのよね?」
「ええ。いくつかありますが……」
「それ!! それも読みたいの!! 淑女としてのたしなみについても知りたいから。でも、アタシがそんなの読みたいって思ってるの、誰かに知られるのは恥ずかしくって……」
軽く口に手を当て、体をくねらせる。ちょっとだけ上目遣いにキースを見やる。
「ねえ、アタシの代わりに借りてきてくれないかな?」
恥ずかしがり屋の内気な令嬢のために。
「あ、あとこれも教えてもらったのだけど、最近とおぉぉぉっても美味しいタルトのお店ができたんですって? フルーツのたくさん載せられたキレイなタルトのお店」
「ええ。『カロッズ』ですね」
「そう!! カロッズ!! そこのタルト、一度食べてみたいの。それも合わせて買ってきてくれないかしら」
貸本屋にタルト屋。カロッズでもナロッズでもなんでもいいから出かけてきてよ。
「……、かしこまりました、レディ」
軽く嘆息してからの一礼。
「では、しばらく留守にしますが……、ジュディス、お嬢さまのこと、頼みましたよ」
「はい」
何を「頼む」っていうのよ。
「ああ、そうだ。ジュディス、キースが帰ってきたら一緒にタルトを食べられるように、お茶を用意してきてくれないかな?」
「お茶? 一緒に?」
ジュディスはもちろん、キースも目を丸くした。
まあ、そうだよね。普通、令嬢が目下の者と一緒にお茶なんてしないよね。
「せっかくだし、一緒に食べよう? ほら、キースも一緒だったら文句も言わないでしょ?」
アタシは普通の令嬢じゃないもん。ちょっと前まで下町育ちの規格外令嬢だもん。楽しく食べられるのであれば、誰とだって気にしないもん。
「だから、キースは三人分、買ってきてよね。部屋で食べるんだったら、誰に見られるわけでもないから、マナーもうるさく言わなくていいでしょ」
「レディ……」
うわ、言いたいことたっぷりあるかんじの顔。
「いい? これは命令なの。だから、キースは三人分のタルトと頼んだ本を持ってくる。ジュディスは三人分のお茶を用意する。――わかった?」
「はい」
「承知いたしました」
二人がそれぞれ部屋を出ていく。
ジュディスは、ホテルの階下にある台所キッチンへ。
キースは、遠い遠いタルト屋と貸本屋へ。
ジュディスはすぐに戻ってくるかもしれないけど、キースはそう簡単に戻ってこない。
廊下から二人の足音が消えたことを確認して、そっとドアノブを回す。
よし!!
鍵のかけられなかったドアを開け、滑るように廊下に出る。
一度や二度失敗したからって、諦めないのがこのティーナさまなのよ!!
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