21 / 29
21.りんごを握りつぶすには、約80キロの握力が必要です
しおりを挟む
薄く淡い月明かりが、ブラインド越しに降り注ぐ。光は、わたしを抱きしめる肩に、腕に頬に落ち、すべらかな肌と産毛を際立たせる。
新しく用意された大きなベッドの上。
裸のまま抱き合って眠るのが日常となった。
わたしを愛したまま、わたしを求めたままに。ううん、違う。
わたしにすがったまま。わたしに助けを求めたまま。
わたしが彼の懐に抱かれてるんじゃない。彼がわたしの懐に抱かれて眠る。
「――ンっ」
彼の規則正しかった寝息がわずかに揺れる。秀麗な眉間がぐらつく。背中に回された腕に力がこもり、軽く爪を立てられる。
「大丈夫。だいじょうぶです」
その寝乱れた髪を優しく梳き、こわばった身体から力が抜けるように促す。もう一度深く眠れるように。もう、うなされたりしないように。
何度もなんども、くり返し髪を梳いて彼をなだめる。
彼が再び眠りに落ちるのを確認して、ようやく手を止める。
彼はこうして毎晩わたしを愛してくれる。托卵の子でしかなかったわたしでも受け入れてくれる。
でも。
彼の心には、癒えない悲しみが、抜けない楔のように突き立っている。
時に深く。時に浅く。時に血を流し。時に苦しみをもたらす。
彼女とのことは、わたしを愛したところで、決して癒えない傷となって残っている。
――アナタのせいじゃない。
――そんなに悲しまないで。
言うのは簡単だ。
彼だって、表面上は過去のこととして扱っている。普段は、なんでもない顔して過ごしてる。
だけど。
こうしていっしょに眠るようになって知ったこと。彼は毎晩のようにうなされている。失った彼女の名を呼び、涙を流す。彼女を求めて必死に手を伸ばす。
いつかこの傷が癒えますように。
わたしだけを見てと言うんじゃない。彼女のことを忘れてなんて言わない。
ただ。こんなふうに毎晩うなされる日々が、少しでも遠ざかってくれたらいい。それだけを願う。
こんな辛そうな彼を、わたしは見ていたくない。
* * * *
「こんばんわぁ~、まるふく弁当でーす!」
「あら、こんばんは、透子さん」
「美菜さん!」
ギイっと音を立てて開けた、武智ジムのクソ重いガラスドア。その先のカウンターで書類に目を落としていたのは美菜さん。
「珍しいわね、今日は透子さんが配達なの?」
「うん。乙丸くんがお休みだから」
「ごめんね、配達お願いしちゃって」
「いいよぉ、これぐらい」
ってことで、持ってたビニール袋と交換で料金をいただく。袋の中身は、大量のコロッケと炊き込みご飯おにぎり。お弁当のメニュー表にはない、お得意様だけの特別メニュー。
「それに、わたしも美菜さんに会いたかったんだよね。だからここに居てくれて助かった」
「会いたかった?」
私に?
美菜さんが、軽く首をかしげる。
「うん。あの美菜さんとゆう……武智くんの結婚式ってさ、まだ席を増やしてもらうことって――できる?」
「え?」
「あの、ウチのオッ……旦那がさ、二次会だけじゃなくて、結婚式自体にも出席できるって、時間に余裕ができたって言い出してさ。ムリなら、二次会だけ出席のままでもいいんだけど。せっかくだし、夫婦そろってお祝いさせてもらえたらな~って。――ダメ、かな?」
急な話で申し訳ないけど。
ホントは、今までも彼は結婚式にも参加できた。けど、さすがに~ってことで二次会だけって遠慮していたんだけど。それが、最近になって「二次会だけではなく、結婚式も夫婦そろって参加したい」と言い出した。式に参加することで、ラブラブをアピールしたいって魂胆なのかもしれない。雄吾とのことは、一応理解してくれたけど、それでも牽制かけておきたいらしい。
どうやら彼、意外とヤキモチ焼きっていうか、狭量っていうか、独占欲強めっていうか。そういう人だったみたい。
「いいよ。喜んで!」
「ホントにっ!?」
「ええ。最初に誘ったのはこっちなんだし。是非、旦那さんといっしょに参加してくれたらうれしい」
「ありがとっ!」
美菜さんの手を取って、ブンブン振ることで喜びを表現。
「おう。なんだいい匂いがするなって思ったらお前か、とお……入海」
ノシノシと奥から出てきた雄吾。わたしと同じで、呼び方を「苗字呼び」にすることを決めたはずなのに、慣れてないので一瞬詰まる。
「ってか、わたし、そんな匂いする?」
「メッチャする。旨そうな飯の匂い」
「マジで?」
自分ではわかんないけど。
思わず自分の腕とか肩とか、匂いを嗅ぎかぎ。
「匂いの元は、透子さんじゃなくて、こっちの袋でしょ? ほら、みんなも気にしてるみたいだし」
そんなに匂いしてる?
訊きたくなるぐらい、ジムにいた人たちの視線がカウンターに集まってる。――って。
「あれ? 新しい人?」
わたし愛用の(?)サンドバッグを打っていた、若い男性。
「ああ。新しく入門してきた。更科だ」
「へえ……」
この武智ジム。古くからの練習生は多いけど、逆に新規入門者は珍しい。
「おーい、みんな。一旦休憩にするぞ! こっち取りに来い!」
雄吾の呼びかけに、それまで騒がしかったジムの音が消え、どやどやと人が集まってくる。
「ふくまる弁当のコロッケ弁当よ。夕飯に持っていきなさい」
集まった人たち、といってもそこまで多くもないけど、その人達に、袋から取り出した弁当を美菜さんが渡していく。
(ああ、こうやって渡すから、コロッケとおにぎりを一パックずつに個別包装してほしいって注文してきたわけね)
普段ならドカ盛りパックで渡すのに。パック分けを指定してきた意味がわかった。
「チッス!」
集まってきた人の最後尾。現れたのは、その新人、更科さんだった。
何気ない黒のTシャツにハーパン姿。ボクシングでは珍しい、マッシュカットの髪型。
イケメンというか、やさ男というか、ちょっとチャラそうっていうか。少なくともボクシングやってます! なイメージからは程遠い人。
「ほら、まるふく弁当のよ。味わって食べなさい」
「ありがとうございます! これ、メチャクチャ美味しいんっスよね~」
「そう?」
「ええ。さっきからいい匂いしてきて、オレ、ガマンできなかったっス!」
そ、そんなにか。
そんなに匂い漂ってたんだ。
美菜さんに渡された弁当を手に、幸せそうに笑う更科さん。
「これって、アナタが作ったんっスか?」
「ええ、まあ」
「うわあ。こんな旨い飯食えるって、旦那さんは幸せだなあ」
へ?
「なんでそのことを……」
「だってまるふく弁当の奥さまっしょ? 最近結婚したって、噂で聞きましたけど?」
えっと。まあ、隠してることでもないし。知られたって困らないけど。
でも、こうして初対面の人に言われると、照れていいのか、むず痒いっていうのか。
「いいなあ。こんな旨い料理を食べられて、いっしょに働いて。あの旦那さん、果報者っスね」
――は? いっしょに働いて?
「ちょっ、ちょっと待って! なんか誤解してない?」
「へ? 何がっスか? まるふく弁当の旦那さんって、あの人ですよね。ほら、店にいるふくよかな、人の良さそうな、恰幅のいい人っスよね? 次期店長としての貫禄たっぷりの人」
「ちょちょちょっ! それ間違い! 間違いだからっ!」
ふくよか、人の良さそう、恰幅のいいって。それって、乙丸くんのことでしょっ!?
「違うんっスか?」
「まったく違う!」
乙丸くんには申し訳ないけど、彼をそういう対象に見たことは一度もない!
そりゃあ、あのふくよかすぎる顔の、笑ってペコっとへっこむエクボとか、かわいいなって思うけど。男女の感情なんて、一度も抱いたことない!
「違う、ちがう。コイツの旦那は、あの入海商事の副社長だよ。ほら、駅の向こうにあるだろ? クッソデッカいビルのさ」
ポンポンと、馴れ馴れしくわたしの頭を叩いて、雄吾が説明する。
「入海って!? あの入海商事ですかっ!?」
「どの入海だよ」
「その入海よ、更科くん。彼女は、そこの副社長の妻、言わば、副社長夫人ってわけ」
「ほぇぇ~」
笑う雄吾と、説明補足する美菜さん。
更科さんの「ほぇぇ~」には、どんな感情が含まれてるのか。
「人は見かけによらないていうか、お弁当屋のお嬢さんがどうやったらあんなスッゲー会社の副社長なんかと出会えるのか。副社長なんて雲の上の人を落とす秘訣があれば、ぜひ教えて欲しいっスね~」
「お前が副社長落としてどうすんだよ」
雄吾がツッコむ。
「違いますよ! オレは、そういう雲の上の人、例えば社長令嬢とか? そういうすっごい人を落として、逆玉に乗るんです。そのために、こうして体鍛えてるんっスから」
筋肉ムキムキバキバキになって、女性に惚れてもらうって魂胆?
「こうやってボクシング続けて筋肉つけたら、ワンチャン惚れてもらえるじゃないっスか。この顔に、腹割れ筋肉が付与されたら、最強っスよ!」
ムン!
更科さんが、力こぶを作ってみせる。小さいけど。
「武智さんでも、美菜さんっていう美しい方を手に入れられたんだし。オレだって鍛えたら、どんな女性にだって惚れてもらえるっスよ! 確実っス!」
「さ~ら~し~な~ぁ~」
ガシッとその頭を鷲掴みにした、雄吾。
「そんなに筋肉つけてえのなら、みっちりしごいてやるぞぉ」
あ、野獣ゴリラが怒った。背景に「ズゴゴゴゴ」とかの擬音がくっついてそう。
「そうだなぁ。まずはりんごを握りつぶせるようにならねえとなあ」
「――ちょっと待って。雄吾ってりんご握りつぶせるの?」
「潰せるわよ、アイツ」
雄吾の代わりに、美菜さんが答えてくれるけど。
(ほえぇぇぇ。まさしく野獣、筋肉ゴリラ)
その野獣に掴まれ、引きずられてった更科さん。生きて還ることをお祈りしておく。
新しく用意された大きなベッドの上。
裸のまま抱き合って眠るのが日常となった。
わたしを愛したまま、わたしを求めたままに。ううん、違う。
わたしにすがったまま。わたしに助けを求めたまま。
わたしが彼の懐に抱かれてるんじゃない。彼がわたしの懐に抱かれて眠る。
「――ンっ」
彼の規則正しかった寝息がわずかに揺れる。秀麗な眉間がぐらつく。背中に回された腕に力がこもり、軽く爪を立てられる。
「大丈夫。だいじょうぶです」
その寝乱れた髪を優しく梳き、こわばった身体から力が抜けるように促す。もう一度深く眠れるように。もう、うなされたりしないように。
何度もなんども、くり返し髪を梳いて彼をなだめる。
彼が再び眠りに落ちるのを確認して、ようやく手を止める。
彼はこうして毎晩わたしを愛してくれる。托卵の子でしかなかったわたしでも受け入れてくれる。
でも。
彼の心には、癒えない悲しみが、抜けない楔のように突き立っている。
時に深く。時に浅く。時に血を流し。時に苦しみをもたらす。
彼女とのことは、わたしを愛したところで、決して癒えない傷となって残っている。
――アナタのせいじゃない。
――そんなに悲しまないで。
言うのは簡単だ。
彼だって、表面上は過去のこととして扱っている。普段は、なんでもない顔して過ごしてる。
だけど。
こうしていっしょに眠るようになって知ったこと。彼は毎晩のようにうなされている。失った彼女の名を呼び、涙を流す。彼女を求めて必死に手を伸ばす。
いつかこの傷が癒えますように。
わたしだけを見てと言うんじゃない。彼女のことを忘れてなんて言わない。
ただ。こんなふうに毎晩うなされる日々が、少しでも遠ざかってくれたらいい。それだけを願う。
こんな辛そうな彼を、わたしは見ていたくない。
* * * *
「こんばんわぁ~、まるふく弁当でーす!」
「あら、こんばんは、透子さん」
「美菜さん!」
ギイっと音を立てて開けた、武智ジムのクソ重いガラスドア。その先のカウンターで書類に目を落としていたのは美菜さん。
「珍しいわね、今日は透子さんが配達なの?」
「うん。乙丸くんがお休みだから」
「ごめんね、配達お願いしちゃって」
「いいよぉ、これぐらい」
ってことで、持ってたビニール袋と交換で料金をいただく。袋の中身は、大量のコロッケと炊き込みご飯おにぎり。お弁当のメニュー表にはない、お得意様だけの特別メニュー。
「それに、わたしも美菜さんに会いたかったんだよね。だからここに居てくれて助かった」
「会いたかった?」
私に?
美菜さんが、軽く首をかしげる。
「うん。あの美菜さんとゆう……武智くんの結婚式ってさ、まだ席を増やしてもらうことって――できる?」
「え?」
「あの、ウチのオッ……旦那がさ、二次会だけじゃなくて、結婚式自体にも出席できるって、時間に余裕ができたって言い出してさ。ムリなら、二次会だけ出席のままでもいいんだけど。せっかくだし、夫婦そろってお祝いさせてもらえたらな~って。――ダメ、かな?」
急な話で申し訳ないけど。
ホントは、今までも彼は結婚式にも参加できた。けど、さすがに~ってことで二次会だけって遠慮していたんだけど。それが、最近になって「二次会だけではなく、結婚式も夫婦そろって参加したい」と言い出した。式に参加することで、ラブラブをアピールしたいって魂胆なのかもしれない。雄吾とのことは、一応理解してくれたけど、それでも牽制かけておきたいらしい。
どうやら彼、意外とヤキモチ焼きっていうか、狭量っていうか、独占欲強めっていうか。そういう人だったみたい。
「いいよ。喜んで!」
「ホントにっ!?」
「ええ。最初に誘ったのはこっちなんだし。是非、旦那さんといっしょに参加してくれたらうれしい」
「ありがとっ!」
美菜さんの手を取って、ブンブン振ることで喜びを表現。
「おう。なんだいい匂いがするなって思ったらお前か、とお……入海」
ノシノシと奥から出てきた雄吾。わたしと同じで、呼び方を「苗字呼び」にすることを決めたはずなのに、慣れてないので一瞬詰まる。
「ってか、わたし、そんな匂いする?」
「メッチャする。旨そうな飯の匂い」
「マジで?」
自分ではわかんないけど。
思わず自分の腕とか肩とか、匂いを嗅ぎかぎ。
「匂いの元は、透子さんじゃなくて、こっちの袋でしょ? ほら、みんなも気にしてるみたいだし」
そんなに匂いしてる?
訊きたくなるぐらい、ジムにいた人たちの視線がカウンターに集まってる。――って。
「あれ? 新しい人?」
わたし愛用の(?)サンドバッグを打っていた、若い男性。
「ああ。新しく入門してきた。更科だ」
「へえ……」
この武智ジム。古くからの練習生は多いけど、逆に新規入門者は珍しい。
「おーい、みんな。一旦休憩にするぞ! こっち取りに来い!」
雄吾の呼びかけに、それまで騒がしかったジムの音が消え、どやどやと人が集まってくる。
「ふくまる弁当のコロッケ弁当よ。夕飯に持っていきなさい」
集まった人たち、といってもそこまで多くもないけど、その人達に、袋から取り出した弁当を美菜さんが渡していく。
(ああ、こうやって渡すから、コロッケとおにぎりを一パックずつに個別包装してほしいって注文してきたわけね)
普段ならドカ盛りパックで渡すのに。パック分けを指定してきた意味がわかった。
「チッス!」
集まってきた人の最後尾。現れたのは、その新人、更科さんだった。
何気ない黒のTシャツにハーパン姿。ボクシングでは珍しい、マッシュカットの髪型。
イケメンというか、やさ男というか、ちょっとチャラそうっていうか。少なくともボクシングやってます! なイメージからは程遠い人。
「ほら、まるふく弁当のよ。味わって食べなさい」
「ありがとうございます! これ、メチャクチャ美味しいんっスよね~」
「そう?」
「ええ。さっきからいい匂いしてきて、オレ、ガマンできなかったっス!」
そ、そんなにか。
そんなに匂い漂ってたんだ。
美菜さんに渡された弁当を手に、幸せそうに笑う更科さん。
「これって、アナタが作ったんっスか?」
「ええ、まあ」
「うわあ。こんな旨い飯食えるって、旦那さんは幸せだなあ」
へ?
「なんでそのことを……」
「だってまるふく弁当の奥さまっしょ? 最近結婚したって、噂で聞きましたけど?」
えっと。まあ、隠してることでもないし。知られたって困らないけど。
でも、こうして初対面の人に言われると、照れていいのか、むず痒いっていうのか。
「いいなあ。こんな旨い料理を食べられて、いっしょに働いて。あの旦那さん、果報者っスね」
――は? いっしょに働いて?
「ちょっ、ちょっと待って! なんか誤解してない?」
「へ? 何がっスか? まるふく弁当の旦那さんって、あの人ですよね。ほら、店にいるふくよかな、人の良さそうな、恰幅のいい人っスよね? 次期店長としての貫禄たっぷりの人」
「ちょちょちょっ! それ間違い! 間違いだからっ!」
ふくよか、人の良さそう、恰幅のいいって。それって、乙丸くんのことでしょっ!?
「違うんっスか?」
「まったく違う!」
乙丸くんには申し訳ないけど、彼をそういう対象に見たことは一度もない!
そりゃあ、あのふくよかすぎる顔の、笑ってペコっとへっこむエクボとか、かわいいなって思うけど。男女の感情なんて、一度も抱いたことない!
「違う、ちがう。コイツの旦那は、あの入海商事の副社長だよ。ほら、駅の向こうにあるだろ? クッソデッカいビルのさ」
ポンポンと、馴れ馴れしくわたしの頭を叩いて、雄吾が説明する。
「入海って!? あの入海商事ですかっ!?」
「どの入海だよ」
「その入海よ、更科くん。彼女は、そこの副社長の妻、言わば、副社長夫人ってわけ」
「ほぇぇ~」
笑う雄吾と、説明補足する美菜さん。
更科さんの「ほぇぇ~」には、どんな感情が含まれてるのか。
「人は見かけによらないていうか、お弁当屋のお嬢さんがどうやったらあんなスッゲー会社の副社長なんかと出会えるのか。副社長なんて雲の上の人を落とす秘訣があれば、ぜひ教えて欲しいっスね~」
「お前が副社長落としてどうすんだよ」
雄吾がツッコむ。
「違いますよ! オレは、そういう雲の上の人、例えば社長令嬢とか? そういうすっごい人を落として、逆玉に乗るんです。そのために、こうして体鍛えてるんっスから」
筋肉ムキムキバキバキになって、女性に惚れてもらうって魂胆?
「こうやってボクシング続けて筋肉つけたら、ワンチャン惚れてもらえるじゃないっスか。この顔に、腹割れ筋肉が付与されたら、最強っスよ!」
ムン!
更科さんが、力こぶを作ってみせる。小さいけど。
「武智さんでも、美菜さんっていう美しい方を手に入れられたんだし。オレだって鍛えたら、どんな女性にだって惚れてもらえるっスよ! 確実っス!」
「さ~ら~し~な~ぁ~」
ガシッとその頭を鷲掴みにした、雄吾。
「そんなに筋肉つけてえのなら、みっちりしごいてやるぞぉ」
あ、野獣ゴリラが怒った。背景に「ズゴゴゴゴ」とかの擬音がくっついてそう。
「そうだなぁ。まずはりんごを握りつぶせるようにならねえとなあ」
「――ちょっと待って。雄吾ってりんご握りつぶせるの?」
「潰せるわよ、アイツ」
雄吾の代わりに、美菜さんが答えてくれるけど。
(ほえぇぇぇ。まさしく野獣、筋肉ゴリラ)
その野獣に掴まれ、引きずられてった更科さん。生きて還ることをお祈りしておく。
11
あなたにおすすめの小説
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました
せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~
救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。
どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。
乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。
受け取ろうとすると邪魔だと言われる。
そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。
医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。
最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇
作品はフィクションです。
本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
契約書は婚姻届
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」
突然、降って湧いた結婚の話。
しかも、父親の工場と引き替えに。
「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」
突きつけられる契約書という名の婚姻届。
父親の工場を救えるのは自分ひとり。
「わかりました。
あなたと結婚します」
はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!?
若園朋香、26歳
ごくごく普通の、町工場の社長の娘
×
押部尚一郎、36歳
日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司
さらに
自分もグループ会社のひとつの社長
さらに
ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡
そして
極度の溺愛体質??
******
表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる