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第八話 同行二人。
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「じゃあね、おばあちゃん。ホントに無理しちゃだめだよ」
門扉の手前、スーツケースと共に立つ真奈美が言った。
ここを訪れた時と似たような格好。だが、その手には一つ、レジ袋に入ったタッパーが加わる。ここに来て、節子と真奈美が漬けた梅干しの詰まったタッパー。
あれから、節子は京都に出かけることなく、ここで大人しく真奈美と梅干しを作った。梅雨の晴れ間を利用して天日干しされた梅干しは、去年と同じように紫蘇にまみれ、赤くしわがれ、吾輩の唾を誘う。猫の身では食せないことが口惜しい。
「わかっとる。わかっとるから、早う行き。電車に乗り遅れるで」
見送る節子。
梅が漬かるまでの間、真奈美と我輩で無理せぬよう監視していたおかげが、その頬にはかすかに赤みが戻ってきている。声にもハリ出て、倒れるようなことはなさそうだ。
「いい? 今度旅行に行くときは、私も連れて行くこと」
「はいはい」
「一人でなんか行っちゃダメだかんね? 行きたい所があるなら、私かお父さんたちにちゃんと相談して。一緒に行ってあげるから」
「はいはい」
「あ、あと、あの座布団は捨てたらダメだよ? ミドリのお気に入りだからね? 忠猫ミドリのためにも、残してあげてね」
「わかっとる、わかっとる」
「……ねえ、ミドリ。アンタ、おばあちゃんが無理しないよう、ちゃんと見張っててよ?」
節子の相槌が信用ならなかったのか。真奈美が吾輩に膝を曲げて頼みこんだ。
――大丈夫だ。ちゃんと吾輩が見張っておいてやる。
言葉の代わりに、孫を見上げる。
真奈美が同棲相手とケンカをしたのは事実だが、ここに飛び込んできたのは、別の理由があったからだと言っていた。
――おじいちゃんが亡くなってから、おばあちゃんが変だって、連絡があったんだよ。
気忙しくどこかへ出かける節子。夫というしがらみが無くなって、自由を満喫し、妻がはっちゃけるのはよくある話だが、あれはどこか少し様子がおかしいと、息子夫婦に伝えた者がいた。節子が出かける前に必ず連絡を取っていた男、斎藤だ。
斎藤は、節子の若いそういうのではなく、スーパーに居を構える旅行代理店の社員だった。
何度も頻繁に旅行に行きたがる節子の相談にのっていたものの、その回数の多さ、頻度の高さを気にかけていたらしい。旅行の申し込みの時、万が一のため、高齢者の方には誰か連絡のつく相手の名が欲しいとか言い繕って、息子夫婦の連絡先を聞き出し、そうして真奈美らに節子の現状を伝えてくれていた。
その話を聞いた時、吾輩は、心の底から斎藤なる男に謝罪の念を持った。京一朗が生きていたら、あの店の店員は良いやつだ、旅行を頼むならあそこにするといいと、喧伝して回るのに。猫の身では致し方ない。
そして、訪れてくれた真奈美にも。
真奈美がいてくれなかったら、吾輩一人では、倒れた節子を前にオロオロするしかなかった。こうして節子が元気になったのも、真奈美のおかげだと思っている。
「ほら、早う行かんと。遼介くんとも仲良うな」
「うん」
「もう、ケンカなんかするんやないで? ちゃんと話しおうて解決するんやで?」
「わかってる」
真奈美が笑う。
「私、遼介と、おばあちゃんとおじいちゃんみたいな素敵な夫婦になりたいから。頑張ってみる」
いや、吾輩たちは、そんな憧れられるような素敵な夫婦では……。
京一朗は、夫として、とてもじゃないが褒められた男ではなかったぞ?
そんな京一朗を真似た男が夫になったら、真奈美が苦労することになる。だから、真似なんぞしようとするな。
「じゃあね」
真奈美が笑って歩き出す。何度もふり返りながら歩いていく姿を、節子と並んで見送る。
「さて、と」
節子が言った。
「せっかくのええ天気やし、シーツでも洗うかね。真奈美の使とった布団も干さなならんし」
腰に手を当て、グイッと背を伸ばす節子。
そのまま玄関からではなく、庭先、開け放たれた縁側から家に入っていく。
節子の足の形に馴染んだピンクのサンダルが、ブロックで作った沓脱石の上に脱ぎ散らかされる。
それを眺め、吾輩もいつもの定位置に腰を落ち着ける。
ジジくささがわずかに抜け、代わりに節子が“ミドリ”と言った毛がまとわりつく座布団。
かつて京一朗のだったもの。今は吾輩、ミドリのもの。京一朗が残した座布団のヘコみは、ミドリの体に程よくフィットする。
「これでヨシ」
洗濯機が止まり、洗い上がったシーツを節子が干した。初夏の抜けるような青空に、白いシーツが翻る。
「遊びに来てくれるのはうれしいけど、さすがに疲れるわ」
気にかけてわざわざ来てくれることに孫の成長を感じるが、こうやって世話を焼いてやらねばならぬところがあることに、まだまだ子供だなとも思い笑みがこぼれる。
「やれやれ。あー、しんど」
縁側に腰掛け、大仰に息を吐いた節子。
「これからどうするかねえ」
誰に問うでもなく節子がごちる。
「旅行は……真奈美に止められてしもうたしねえ」
当たり前だ。倒れるまで無理して旅行をするなど、吾輩でも止めるわ。あんなふうに無理しても行こうとするなら、今度は吾輩が引っ掻いてでも止めてやる。
「仕方ないから、橘でも浸けてお酒でも作るかねえ」
梅酒ではなく橘酒。
庭に橘を植えたのは、その果実を使って酒を作るためだと、節子は言っていた。オレンジ色の橘の実は、酸っぱすぎて生食には向かないが、果実酒にすると程よく旨い。
だが、まだ庭先の橘は実をつけていない。
ようやく長雨が終わり、その白い花を咲かせ始めたばかり。白い花弁の中から、ニョキッと黄色い花芯が姿を現す。
「――五月まつ 花橘の 香を嗅げば 昔の人の 袖の香ぞする。『古今和歌集』だよ」
ん?と首を傾げた吾輩に、節子が語った。
「旦那は、あの人はきっと知らへんかったやろうけどなあ。橘の実は不老不死の仙薬やとも言うんやで。時じく香く木の実。四季を通じて香る素晴らしい木の実。この実を食べると不老長寿になれるって言われてるから、橘を植えたんやけどなあ」
実は酸っぱいから果実酒を作った。不老は無理でも、少しでも長く、共に生きられるようにと願って植えた。
「それなのに、あの人は、『一緒はイヤや~』って先にさっさと逝ってしもうて。ホント、薄情な男さね」
そ、そんなことはない。そんなことはないぞ。
薄情じゃないから、猫になってまで、こうしてここにいるんだぞ。
慌てた吾輩の背に、節子の手が下りてくる。
「フフッ、あんな薄情者のことは置いといて。今はゆっくりこの世を楽しもうかねえ」
しわがれ、節くれだった手が、吾輩のミドリ髪、ミドリ毛を撫でる。
「あっちこっちいろんな所に行って。美味しいもんを食べて。ゆっくりのんびりして。あの人が知らんようなことをいっぱい覚えて。それからあの世で会うことにするよ」
そうだ。それがいい。のんびり腹いっぱい、たらふく味わって、それからゆっくりこっちへ来い。
人生五十年ではないが、節子の寿命はまだまだあるだろう? 女は男よりも何年も寿命が長いと聞く。あと五年か十年か。はたまた二十年か、三十年か。
その寿命が尽きるまで、吾輩はこうしてお前のそばにいてやる。なあに、猫の寿命もお前の余命とよく似た時間だろう。次に巡るは、共連れになれるよう、ずっとそばにいてやる。猫で足りなくなったら、もう一回ネズミにでも巡って帳尻を合わせ、最期までそばにいてやる。
せいぜいその寿命が尽きるまで、ゆっくりゆっくり牛歩で参れ。そしたら、あの世でお前の話をいっぱいいっぱい聴いてやる。
お前はタップリ橘酒でも飲んで長生きしろ。話の種をたくさん作ってこい。それまで吾輩は、こうしてそばでお前のやること見届けてやるからの。
初夏の日ざしを浴び、庭にたちこめる橘の香り。
撫でられる心地よさ。
吾輩は、一言だけ「ニャー」と鳴いた。
門扉の手前、スーツケースと共に立つ真奈美が言った。
ここを訪れた時と似たような格好。だが、その手には一つ、レジ袋に入ったタッパーが加わる。ここに来て、節子と真奈美が漬けた梅干しの詰まったタッパー。
あれから、節子は京都に出かけることなく、ここで大人しく真奈美と梅干しを作った。梅雨の晴れ間を利用して天日干しされた梅干しは、去年と同じように紫蘇にまみれ、赤くしわがれ、吾輩の唾を誘う。猫の身では食せないことが口惜しい。
「わかっとる。わかっとるから、早う行き。電車に乗り遅れるで」
見送る節子。
梅が漬かるまでの間、真奈美と我輩で無理せぬよう監視していたおかげが、その頬にはかすかに赤みが戻ってきている。声にもハリ出て、倒れるようなことはなさそうだ。
「いい? 今度旅行に行くときは、私も連れて行くこと」
「はいはい」
「一人でなんか行っちゃダメだかんね? 行きたい所があるなら、私かお父さんたちにちゃんと相談して。一緒に行ってあげるから」
「はいはい」
「あ、あと、あの座布団は捨てたらダメだよ? ミドリのお気に入りだからね? 忠猫ミドリのためにも、残してあげてね」
「わかっとる、わかっとる」
「……ねえ、ミドリ。アンタ、おばあちゃんが無理しないよう、ちゃんと見張っててよ?」
節子の相槌が信用ならなかったのか。真奈美が吾輩に膝を曲げて頼みこんだ。
――大丈夫だ。ちゃんと吾輩が見張っておいてやる。
言葉の代わりに、孫を見上げる。
真奈美が同棲相手とケンカをしたのは事実だが、ここに飛び込んできたのは、別の理由があったからだと言っていた。
――おじいちゃんが亡くなってから、おばあちゃんが変だって、連絡があったんだよ。
気忙しくどこかへ出かける節子。夫というしがらみが無くなって、自由を満喫し、妻がはっちゃけるのはよくある話だが、あれはどこか少し様子がおかしいと、息子夫婦に伝えた者がいた。節子が出かける前に必ず連絡を取っていた男、斎藤だ。
斎藤は、節子の若いそういうのではなく、スーパーに居を構える旅行代理店の社員だった。
何度も頻繁に旅行に行きたがる節子の相談にのっていたものの、その回数の多さ、頻度の高さを気にかけていたらしい。旅行の申し込みの時、万が一のため、高齢者の方には誰か連絡のつく相手の名が欲しいとか言い繕って、息子夫婦の連絡先を聞き出し、そうして真奈美らに節子の現状を伝えてくれていた。
その話を聞いた時、吾輩は、心の底から斎藤なる男に謝罪の念を持った。京一朗が生きていたら、あの店の店員は良いやつだ、旅行を頼むならあそこにするといいと、喧伝して回るのに。猫の身では致し方ない。
そして、訪れてくれた真奈美にも。
真奈美がいてくれなかったら、吾輩一人では、倒れた節子を前にオロオロするしかなかった。こうして節子が元気になったのも、真奈美のおかげだと思っている。
「ほら、早う行かんと。遼介くんとも仲良うな」
「うん」
「もう、ケンカなんかするんやないで? ちゃんと話しおうて解決するんやで?」
「わかってる」
真奈美が笑う。
「私、遼介と、おばあちゃんとおじいちゃんみたいな素敵な夫婦になりたいから。頑張ってみる」
いや、吾輩たちは、そんな憧れられるような素敵な夫婦では……。
京一朗は、夫として、とてもじゃないが褒められた男ではなかったぞ?
そんな京一朗を真似た男が夫になったら、真奈美が苦労することになる。だから、真似なんぞしようとするな。
「じゃあね」
真奈美が笑って歩き出す。何度もふり返りながら歩いていく姿を、節子と並んで見送る。
「さて、と」
節子が言った。
「せっかくのええ天気やし、シーツでも洗うかね。真奈美の使とった布団も干さなならんし」
腰に手を当て、グイッと背を伸ばす節子。
そのまま玄関からではなく、庭先、開け放たれた縁側から家に入っていく。
節子の足の形に馴染んだピンクのサンダルが、ブロックで作った沓脱石の上に脱ぎ散らかされる。
それを眺め、吾輩もいつもの定位置に腰を落ち着ける。
ジジくささがわずかに抜け、代わりに節子が“ミドリ”と言った毛がまとわりつく座布団。
かつて京一朗のだったもの。今は吾輩、ミドリのもの。京一朗が残した座布団のヘコみは、ミドリの体に程よくフィットする。
「これでヨシ」
洗濯機が止まり、洗い上がったシーツを節子が干した。初夏の抜けるような青空に、白いシーツが翻る。
「遊びに来てくれるのはうれしいけど、さすがに疲れるわ」
気にかけてわざわざ来てくれることに孫の成長を感じるが、こうやって世話を焼いてやらねばならぬところがあることに、まだまだ子供だなとも思い笑みがこぼれる。
「やれやれ。あー、しんど」
縁側に腰掛け、大仰に息を吐いた節子。
「これからどうするかねえ」
誰に問うでもなく節子がごちる。
「旅行は……真奈美に止められてしもうたしねえ」
当たり前だ。倒れるまで無理して旅行をするなど、吾輩でも止めるわ。あんなふうに無理しても行こうとするなら、今度は吾輩が引っ掻いてでも止めてやる。
「仕方ないから、橘でも浸けてお酒でも作るかねえ」
梅酒ではなく橘酒。
庭に橘を植えたのは、その果実を使って酒を作るためだと、節子は言っていた。オレンジ色の橘の実は、酸っぱすぎて生食には向かないが、果実酒にすると程よく旨い。
だが、まだ庭先の橘は実をつけていない。
ようやく長雨が終わり、その白い花を咲かせ始めたばかり。白い花弁の中から、ニョキッと黄色い花芯が姿を現す。
「――五月まつ 花橘の 香を嗅げば 昔の人の 袖の香ぞする。『古今和歌集』だよ」
ん?と首を傾げた吾輩に、節子が語った。
「旦那は、あの人はきっと知らへんかったやろうけどなあ。橘の実は不老不死の仙薬やとも言うんやで。時じく香く木の実。四季を通じて香る素晴らしい木の実。この実を食べると不老長寿になれるって言われてるから、橘を植えたんやけどなあ」
実は酸っぱいから果実酒を作った。不老は無理でも、少しでも長く、共に生きられるようにと願って植えた。
「それなのに、あの人は、『一緒はイヤや~』って先にさっさと逝ってしもうて。ホント、薄情な男さね」
そ、そんなことはない。そんなことはないぞ。
薄情じゃないから、猫になってまで、こうしてここにいるんだぞ。
慌てた吾輩の背に、節子の手が下りてくる。
「フフッ、あんな薄情者のことは置いといて。今はゆっくりこの世を楽しもうかねえ」
しわがれ、節くれだった手が、吾輩のミドリ髪、ミドリ毛を撫でる。
「あっちこっちいろんな所に行って。美味しいもんを食べて。ゆっくりのんびりして。あの人が知らんようなことをいっぱい覚えて。それからあの世で会うことにするよ」
そうだ。それがいい。のんびり腹いっぱい、たらふく味わって、それからゆっくりこっちへ来い。
人生五十年ではないが、節子の寿命はまだまだあるだろう? 女は男よりも何年も寿命が長いと聞く。あと五年か十年か。はたまた二十年か、三十年か。
その寿命が尽きるまで、吾輩はこうしてお前のそばにいてやる。なあに、猫の寿命もお前の余命とよく似た時間だろう。次に巡るは、共連れになれるよう、ずっとそばにいてやる。猫で足りなくなったら、もう一回ネズミにでも巡って帳尻を合わせ、最期までそばにいてやる。
せいぜいその寿命が尽きるまで、ゆっくりゆっくり牛歩で参れ。そしたら、あの世でお前の話をいっぱいいっぱい聴いてやる。
お前はタップリ橘酒でも飲んで長生きしろ。話の種をたくさん作ってこい。それまで吾輩は、こうしてそばでお前のやること見届けてやるからの。
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