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絡まれた

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 あれから約二年が経過した
 2年の間、私は勉強にも魔術にも体術にも力を入れた
 今では勉強は大体出来るし、魔術に関しては公爵家一だ
 体術は……余り向いていなかったがそこら辺の男になら負けない自身はある!
 そうして今日は……念願の入試試験当日だ
 本当に本当に屋敷に出るまでが大変だった
 特にお父さんとお兄ちゃんが
 お父さんは、「シエル?本当に行くのかい?行かなくてもいいんだよ?ずっと家にいても…」
 とすごい質問攻めをされた
 あれは、お母さんが「うるさいわよ」と喝を入れなければ絶対に止まらない勢いだった
 そしてお兄ちゃんもお兄ちゃんで…「気に入らない奴がいれば直ぐに言いなさい?そしたら家を潰して社会的にも潰してあげるから」
 そうニコニコとした笑みで言っていた
 お母さんもそれには賛成なのか
「そうね。確かに嫌な人とかいたら教えてね?」
 と言っていて、まるでこれが普通なのかと錯覚したほどだ
 けれど、馬車でカイルとリーナに聞いた時「これが普通だったら世の中やっていけません」と言っていたから普通では無いのだろう
 そうしてやっとの思いで家を出た私は、3年ぶりの学園の前にいた

「ではシエルお嬢様頑張ってください」
「頑張ってくださいねぇ~」
「うん!頑張ってくる!」 
 学園は執事やメイドの同行は禁止だ
 その理由は自らの自立を促すためらしいが……
「うげぇ」
 つい目の前の光景に顔を顰め、令嬢らしからぬ声を出してしまった
 なぜなら…
「なぁお前俺の愛人になれ」
 すごく太った変な男に言い寄られてるから
 そもそも愛人とは何だ?公式の遊び相手のようなものじゃないか
 というか………この人私より爵位低いよね?
 私自分より爵位が高いか同じ相手、また仲良くした方がいい人は覚えている
 その私の記憶にない=関係がない人
 私がそんな事を考え固まっていると、そんな私にイラついたのか、肩を掴んで強引に距離を縮めてきた
「聞いてるのか?」
「お断りします」
 私がそう言うと周りで見ていた貴族はざわめいた
 そしてそれと同時に同情と哀れみの目を向けてきた
「は?」
 ワナワナと"変な"男は震える
 そうして怒鳴った
「お前!俺はカルリッジ侯爵家の次男ブーラン・カルリッジだぞ!逆らえると思ってるのか!?」
 カルリッジ侯爵家………!
 そういえばお父さんが言ってた
 曰く「カルリッジ侯爵家の次男は、女癖が悪く綺麗な女を見ると真っ先に愛人になる様に話しかけるんだよ。シエルは綺麗だからすごくすごく気をつけてね?何かあったら直ぐに言ってそれ相応の事をするから」
「わかった!」

 完全に油断してたよ
 でもまさか入試試験の日に言われるなんて思わないでしょう?
 私がそれでも無言でいると、更にムカついたのかついに手を出してきた
「この!!何とか言えよ!」
「え…」
 やばい完全にこいつが目の前にいること忘れてた
 私は殴られる事覚悟で目を瞑ったが…痛みは一向にやってこない
 不思議に思い目を開けると…真っ黒な髪が目に入った
「ブーラン殿?女性に手を挙げるのは感心しないな?」
「お、王太子殿下!でも…殿下には関係ありません」
 王太子殿下!?乙女ゲームで一番人気な人か
 うん、確かにビジュがいい
 親友が最推し!と言っていたのも頷ける顔だ
「いや関係あるよ?私達の民だもの」
「………この女は俺の愛人になったんです。なので殿下には関係ありません」
 …何言ってるんだろうこの人は
 もうお父さんの名前出した方が早く収まりそう
 いや絶対そっちの方が、早く収まるよね
 早く試験を受けたいしそうしよう
「すみません王太子殿下。少々この者と話をつけるので話してもいいでしょうか?」
 私がそう言うとリアムは、驚いたように少し目を見開きそして頷いた
「わかりました。ですが二人にするのは危ないので…ここで話をつけてください。それに周りに人が集まりすぎて動けないので」
「わかりました」
 私はその言葉に周りを見渡し、頷いた
 いつの間にか私達が話している間に、すごい人だかりが出来ていて、周りの人はその一部始終を見ているようだ
 けれど私は、そんな事は気にせずブーラン・カートリッジに視線を向けた
 ブーランのその顔はどこまでも下品な考えが見え透いていた
「カルリッジ侯爵家次男ブーラン・カルリッジ殿。愛人の件は謹んでお断りします」
 ブーランのただでさえ醜いその顔が、更に歪みそして怒鳴った
「はぁ?この俺の愛人になれるんだぞ?平民ごときが!そこは笑顔で「喜んで」と言うところだろうが!」 
 ……私、平民じゃないんだけど
「……悪いのですがブーラン殿。私は平民ではないですよ?」
「はぁ?じゃあ田舎貴族かなにかだろう?名前を言ってみろよ」
 その言葉に王太子殿下は、心配そうにこちらに視線を向けていた
 多分王太子殿下も私の事を知らないのだろう
「私は…」
「ほら。言えないのだろう?早く愛人になれよ。お前の家族がどうなってもいいのか?」
 何かこいつウザイ
 しかも言葉被せてきたじゃん
 その様子を見きれなかったのか王子が助けに入った
「そろそろやめろブーラン殿」
「王太子殿下は関係ないです」
 この人なんで不敬罪で投獄されないの?すごい疑問…もしかしてリアムが広い心で許しているとか?
 というか、さっさと名乗るか
「あの…ブーラン殿?私の名前は、シエル・スファルニアと申します。一応公爵家なんですけど…初めて知りました公爵家ってなんですね?」
 私のその言葉を聞いた周りの人は全員固まった
 王太子殿下に至っては小さな声で「まじか」と声が漏れてしまっている
 幸い聞こえていたのは私だけだが
 そうして数分後、我に返った人達により瞬く間に話が広がり、あちこちから言葉が聞こえる 
「あれがスファルニア公爵家の天使」
「本当に見つかってたんだ」
「確かに色が公爵夫妻と同じだわ」
「それにとても美しいわ」
 などなど
 そして私がブーランに顔を向けるとブーランの顔は一瞬で青くなった
 私はそんなブーランにトドメとばかりに朗らかな笑みで言い切った
「この事…お父様に報告しますから」と
 その言葉を聞いたブーランは顔を真っ青にし、速攻で家に帰っていった
 私がそれを見送っていると王太子殿下が話しかけてきた
「初めましてシエル・スファルニア嬢。私の名前はリアム・A・ベグニアスです。よろしくお願いします。」
 ニコニコの王子様スマイルで話しかけてきた尚、目は笑っていないが
 怖いなぁと思いながら私も返した
「初めまして王太子殿下。こちらこそよろしくお願いします」
 これは典型的な挨拶だ
 普通の普通のその挨拶にリアムは少し目を見開いた
 そして直ぐに戻りこう言った
「貴方と学園生活を共にできることを楽しみにしているよ。シエル嬢」と
 もちろん私も「はい。私もです。」と返し別れた


 そしてこれを見ていた人は思った
「スファルニア公爵家の天使容赦ない」と


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 ブーランは、ね?皆様おわかりの通りまぁ消されました
 親バカとシスコンにね
 あぁついでに使用人も参戦したとか?
 





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