乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

入試試験

　あの騒ぎの後私は囲まれた…正確には私と王太子殿下が囲まれた
　それもその筈だこの国の王太子とこの国で一番爵位の高い令嬢
　どんな人間でも仲良くなりたいはずだ
　けれど私はそういうのは苦手なので、囲まれた瞬間即転移をして会場に移動した
　そうして移動した教室には座る席順が書かれたれていた
　そこに座ると私の隣に先に座っていた青い髪に銀の瞳に黒縁眼鏡の男性に話しかけられた
「初めまして私はアルフィー・スペンサーと申します。以後お見知り置きを」
　………アルフィー・スペンサーどっかで聞いたことあるような

　『ねぇねぇ蒼蘭そら見て！時期天才宰相様どう？これ絶対黒縁眼鏡好きにハマるから。名前はアルフィー・スペンサー。腹黒で最高な攻略キャラなんだぁ。もちろんビジュは100点ね！ついでに攻略次第ではヤンデレだよ！』
『そういえば━━はヤンデレ好きだったね』
『ヤンデレしか勝たん♡』
『愛しの王太子は？』
『ビジュ一位リアム様最推し！次に性格一位アルフィー様二位推し』 
『都合よすぎない？』
『ついでに同担拒否で！』
『うわぁ』
『引かないでよ蒼蘭。私悲しい』
　シクシクと━━が泣き真似をする
『泣き真似は気持ち悪いよ？』
『グハッ私の心は傷つきました。コンビニでアイスを買ってきて癒してください』
『理不尽！！』
『というかそんなに腹黒眼鏡好きなの？』
　そう聞いた瞬間カッと目を開き肩をガシッと抑えられた
『貴様それは私の推しに対する冒涜か？せめて天才時期宰相様と呼びなさい！』
　そう笑いながら軽く言った…そう軽く！目が笑っていなかったし、背後に般若が浮かんでいるように見えたんだけど
『わ・か・っ・た・？』
『ハイワカリマシタ』
　その時、私はあまりの圧と迫力に冷や汗が流れ、推しへの愛は世界一怖いと学んだ

　思い出した腹黒眼鏡だ……訂正天才宰相様だ
　何だろうこの世界に親友がいるはずがないのに腹黒眼鏡って言った瞬間脳裏に般若が見えた
　と、挨拶しなきゃ
「初めましてスペンサー様。私はシエル・スファルニアと申します。以後お見知り置きを」
　私がそう言うと腹黒…天才時期宰相様は、微かな声で「君が…」と呟いた
「君が？」
「あぁ済まない聞こえていたか。スファルニア嬢は色々と有名なんだ。」
　色々とね色々と…なんか含まれてるな
「そうなんですか。では改めてよろしくお願いします。」
　私はにこやかにそう返した
「こちらこそよろしくお願いします。私の事はアルフィーと呼んでください。私もシエルと呼んでも？」
　難易度高い！
　………もし私の親友に見られたら助走つけて蹴っ飛ばされそうだな
　流石にタイキックまではされないだろうけど…あれ何でだろう「されない」って言いきれない
　まぁ、いっか親友いないし…うん大丈夫だよ……きっと
「はい。よろしくお願いしますアルフィー」
「こちらこそよろしくシエル」 
　確かアルフィーって頭いいんだよね天才時期宰相って呼ばれるくらいだし
　テスト勝ちたいな…やっぱり目指すなら首席だよね！全力出しきって頑張ろう

　そうしてテストが始まったが…
　まず数学
　〈計算を解け〉
　①84689＋287599
　②428975÷25
　・
　・
　・
　など単純な問題だらけで
　
　社会も
　〈問題を解け〉
　①初代国王の名前は？
　②この国で一番土地を持っている貴族は？
　③セレスティア学園の教師の服を描け
　・
　・
　など常識的な問題だらけ
　③に至っては試験官を見れば一発だし
　でも試験官面白かったな
　問題を知らないのかみんなに見られて「あははっそんなに見ても答えは教えないぞ～」って、鼻の下を伸ばしながら言っていて本当に面白かった
　数人の生徒は笑っていたし

　そして最後教科が唯一難しいテストだった
　それは…
　〈この魔術式を説明せよ〉
　魔術だ
　私は仕組んだとしか思えない
　何故なら私が得意な教科の問題が専門的な事ばかりで難しいからだ
「なんか複雑」
　お金で解決ズルしたくないとは言ったけどこれもお金で解決ズルと一緒だと思うんだけど…でも確かに魔術科の入試問題だから問題はないのか？
　
　そうして数時間後全てのテストが終わった

　けれど私は別の意味で国語が一番難しかった…
　まさかの最初に〈40文字から60文字以内で自分の家族の好きな所を書きなさい〉という問題が出るとは…しかも配点が100点中35点
「絶対お父さん仕組んだでしょ」と私は密かに問い詰めて、罰を与える事を決めた

　ハックシュン
「風邪ですか？」
　セバスが問う
「いやそんな事ないと思うけど…誰か噂でもしてるのかな？」
「それなら一生くしゃみしっぱなしですよ。…シエルお嬢様にあの問題がバレたのでは？」
　〈40文字から60文字以内で自分の家族の好きな所を書きなさい〉これは、シエルから見た私たちのことが知りたくて出した問題だ
「……大丈夫…だよ」
　少し挙動不審な公爵家当主にセバスがトドメを刺す
「ちなみにですけど…私がシエルお嬢様なら一瞬で気づきますよ？」
「………気づかれていない事を祈る」
　この時はまだ知らなかった
　帰ってきたシエルに1週間接触禁止令を出される事など…