乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

雨夜 零

文字の大きさ
30 / 53

ヒロインの狂気と地獄のお茶会

しおりを挟む
 次の日、私は学園に着いてすぐリリーに話しかけた
「ごきげんようリリーさん。先日頂いた手紙の事なんですけど…本などを調べてもあの言葉を翻訳できなくて読めなかったんです。ごめんなさい」
 私はそう言いながら手紙をリリーの前に差し出した
 リリーは受け取りながら、私のこの言葉に目を見開いて小さな声で「ありえない…」と呟いた
 そして次の瞬間私の手を掴んで、早歩きで歩き始めた
 そうして裏庭に着いた途端……とてもヒロインとは、言い難い顔で怒鳴った
「貴方転生者でしょう?そうじゃないならよ!?この世界は、私が中心なのそれなのに……あぁでもそうだった。私が中心なら…一人くらい人を殺しても大丈夫よね?それになんていらないものねブツブツ」
 もう最後の方からは何を言っているか聞こえなかった
 ただ一つ分かった事は、リリーの中で私はこの世の異端者バグだと、決められているそれは間違いない
 それでも私は、リリーの言葉を理解出来ないとでも言いたげな表情と声で言った
「えっとリリーさん?失礼なのですが"てんせいしゃ"やら"ばぐ"とは?それとこの世界の中心は四神では無いのですか?」
 四神それは
 春のフローラ、夏のオーシャン、秋のメープル、冬のスノーこの四柱の神のことだ
 この神達は季節の神だけでなく、創世の神とも呼ばれている
 もちろん、この世界には前世で言う宗教のようなものはは、一つ四神しか存在しない
 だからこそ、この世界には宗教による差別などはないし、神はこの四神だけと決められている
 なのでの人ならこの世界の中心は四神だと言う
 だが、転生者でありヒロインのリリーは違う
 この世界の中心は自分リリーであり、四神ではない。そういう考えの持ち主だ
 そんなリリーに誰もが知っている常識を言った所で…意味が無いだろう
「は?私がこの世界の中心に決まっているじゃない。あぁでも貴方には理解できないわね…。まぁ貴方でもわかるように言うなら…そうね世界が決めている常識が、私をこの世界の中心と言っているのよ」
 傍から見れば大変痛い人である
 前世でも、今世でもあった事の無い人種で正直対応に困る
 私が困惑した表情で見ている事に気づいたリリーは、イラついた様子で捨て台詞を吐き去っていった
「もういいわ!話の通じない人と話してる暇はないから」
 その際ドスンドスンと音を鳴らしていて、つい呟いてしまった
「…お相撲さん?」

 リリーとの話が終わり私は教室に戻った。まだ入学二日目のこともあって半日で終わり帰ろうとした所、悪役令嬢シュリに捕まりお茶会に連れてかれた
 それからゾロゾロと人が集まってきて、40人くらい集まった所でお茶会が始まった
 始まってから数時間後、私は今…悪口大会となったお茶会に参加している
 それも私の悪口をシュリの取り巻きが言い、シュリの機嫌を取ると言う……本当になんの為に呼ばれたのか分からないお茶会だ
 ただ一つ私から言いたい事がある、私の悪口を言っている令嬢方…私が公爵令嬢であることを知ってます?
 これがもし、私の家族にバレたら社会的に潰されますよ?
 私がそう思いながら表情を変えず会場の椅子に座り紅茶を飲んでいたら、一人の令嬢にバシャッと、突然紅茶を浴びせられた
「あら、すいません。影が薄すぎて見えませんでしたわ」
 途中チラチラと私の顔色を伺い変化を見ているのに気づいていたが、ついに表情が変わらない事に焦って手まで出してきたか
「あははっハイーナ嬢やりすぎよ」
 そう取り巻きが醜悪な笑みを浮かべながら言い、そしてシュリもこの行動には気に入ったのか笑顔で言った
「いい働きをしたわねハイーナ」と
 私はポタポタと紅茶が制服やネックレスに垂れるのを見て………ブチ切れた
 普段私はそこまで切れることはない。何故ならどうでもいいから
 けれど大切な人から貰った物を、理由で汚されるのは心底不愉快だった
 私が怒りで震えていると、私が泣いていると勘違いしたのかシュリが口角が上がりきらない、邪悪な笑みで言った
「私王子様に手を出した自分を憎む事ね」
 その言葉に私が言い返そうとした時…男性の叱責するような声が聞こえた
「何をしている?」
 シュリはその声の持ち主の方を向き…目を見開いた
「リ、リアム様!」
 シュリは、我に返った途端リアムの名前を呼びながら抱きつ…こうとした
「抱きつくのはやめてくれないかシュリ嬢。そして私は何をしている?と聞いたのだが?」
 その言葉にシュリは妖艶な笑みを浮かべ言った
「何もしてませんわよ?あれは洗礼ですし、私は何もやっていないもの」
 シュリの言葉にリアムが言った
「…なら、誰がやったんだ?もちろんシエル嬢がスファルニア公爵の愛娘だと知っていての行動だろう?」
 王太子殿下であるリアムの言葉に、分かりやすくハイーナの顔が真っ青になった
 それに気づいたリアムは無情にも言い放った
「この事はシエル嬢の父親…スファルニア現当主に報告させてもらうよ」
 それを聞きハイーナは真っ青になり頭を下げ叫んだ
「申し訳ありません王太子殿下。それだけは…」
 リアムはハイーナの方を向きニコリと美しい笑顔で言った
「シュリ嬢に助けてもらったらどうだい?」
 私はそれを見ていて思った。やっぱり王太子殿下って腹黒だなと。シュリ嬢がハイーナ嬢の事を助けない事を分かっていてそう言っているのだから
 けれどなりふり構っていられないハイーナは助けを求めた
「シュリ様助けてください。お願いします」
 そんなハイーナをシュリはまるでゴミを見るような目で言った
「無理よ」
 その言葉にハイーナは絶望的な顔で崩れ落ちた
 私がその一部始終を見ているといきなり体が浮かび上がった
「わっ」
「暴れないでくれ。今から救護室に行くから」
「え、王太子殿下!?」
 なんと私の事を持ち上げたのはリアムだった
 そんなリアムは、どこかムスッという表情をしている
「私の事はリアムと呼んでくれと言っただろう?」
「え!?でも私も呼べませんと言いました」
 私がそう返すとニヤッと笑った
「では私の事をリアムと呼んでくれないのなら…このまま教室に行こうかな」
 私はその発言に真っ青になった。リアム王太子殿下にお姫様抱っこで皆の前に出たら下手すると、第一婚約者候補に認定される可能性がある。もしそうならなかったとしても王太子殿下は、スファルニアの天使にご執心だとか言われたら…精神的に色々と死ぬ
「………リアム様」
 私がしぶしぶそう呼ぶとリアムはにこりと笑い
「まあ一応合格」と笑いながら言った
  そんなリアムを見て私は思った。これが━━の言っていたインパクトの強いイベントか、と
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

処理中です...