くたびれた手帳(カードワースリプレイのような何か)

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彼は普通

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僕の父は「普通の」冒険者だ。
冒険者という職業の時点で、普通とは言えないかもしれないけど、
僕と一緒に冒険者をしている。


・ゴブリン討伐依頼
今日はいい依頼を見つけられた。
報酬は山分けなので、人数次第では普通の依頼よりも実入りが良い。

・・・
普通に即席6人パーティを組んで、普通に依頼は成功した。
少ない報酬を山分けした結果、ほとんどが経費に消えた。

僕たち2人だけでもやれたかもしれないけど
冒険者に求められる強さは
「完全武装で獅子に勝つことでなく、素手でも野犬から生き残ること」だ。


・廃屋調査依頼
主な敵はウィスプ。
一体一体は大したことはないけれど数が多い。
かといって廃屋は再利用予定のため、火気使用厳禁。
聖水?経費超過です。

そこで父さんが考えてきたのが
「掌破」
レベル1技能カード(技)。突き出した掌より高密度の気弾を発し、敵一体を打ち据える。闘気術の最も基本的な技として広く知られる。実体を持たない敵に対しても有効である。


無数の亡霊の前に、個人の精神力は無力であった。
結局かつての仲間である神官を呼んで浄化してもらった。
あれだけ無数にいた亡霊たちが、
安らかに浄化されていくのは幻想的でさえあった。

その傍らで、精神力が切れた父さんは今にも死にそうな顔をしていた。

教会生まれはスゴイ、僕はいろんな意味で思った。
神官「(教会生まれじゃ)ないです」

神官と山分けしたのと、掌破の購入費用で
またしてもほとんどが経費に消えた。


・下水道掃除依頼
「対毒魔法と解毒薬良いか?」
対毒魔法と解毒薬ヨシ!
「全身防護服良いか?」
全身防護服ヨシ!
「体調良いか?」
体調ヨシ!
「今日の依頼もご安全に!」
ご安全に!

直近では一番気合の入った掛け声と共に、依頼を開始した。

・・・
下水道に魔法生物や恐竜がいるはずもなく、
ただただ汚物掃除で仕事は終わった。
最近では一番実入りは良かったけど、
2人揃って体調を崩して寝込んだので、やっぱりほとんどが経費に消えた。


・トロール討伐依頼
トロール
 オランウータンのような容貌に、岩色の肌を持つ巨人。
主に荒野に棲息し、単体で行動する事が多い。
巨人族の中では比較的知力が高く、また動きも素早い。
熟練の戦士からも恐れられる怪物である。
(「モンスター図鑑」より)

その討伐依頼を、宿の親父さんから指名されたのは父さんだった。
いつもの依頼をこなすように父さんは出かけ、親父さんも見送った。
当分は僕一人でこなせる簡単な依頼をすることにしよう。

翌日
ゴブリン討伐時に組んだパーティの人たちから慰められた。
確かにゴブリン討伐に徒党を組んでいく人が、
トロール討伐に単独で行くのは「普通」ではありえない。

3日後
先日のパーティの人たちから同情混じりに加入を誘われた。
丁重にお断りした。
親父さんは
「依頼場所が遠方で、お前さんも待たせてしまってすまんな」
と気にしている風もない。

一週間後
先日の人たちからは、憐れむような視線を向けられている。
このままだと体がなまるので、
親父さんから紹介されたオーク討伐依頼を受けることにする。
あの人たちからは「後を追う必要はない」といった感じのことを言われたが、
行き先が違うのでいまいち言われた内容が分からない。
怪訝な顔をしていると一層憐れまれた。なぜだろう?


二週間後
彼の父が帰ってきた。
普段と一切変わりなく、自身の足で歩き扉を開けて。

「おかえり。すまんな無理聞いてもらって」
宿の亭主も普段と同じように出迎える。

死んだものと思っていた者たちは、皆気まずそうに目を背けた。
「仕方ないだろう。熟練が一人いるだけで生還率が大違いなんだ。
 かといって『引率』じゃ意味がない。」

「…ああ、あの子ならオーク討伐依頼に向かっているよ。
 心配することなんてないだろう?あの子は…


カードワースシナリオ「彼は特別」へ続く
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