オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ

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その30 ルースの部屋にて

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目が覚めたらルースのベッドに寝ていた。
ルースは隣に置いた椅子に座ってベッドに顔だけつけて寝ていた。手をずっと握っていたくれたみたいだ。
彼の手は暖かい。

「ルース…」
助かったんだ。
助けに来てくれたんだ。
彼のさらさらとした金色の髪が揺れた。
「ん…シャーリー?!」
私を見たルースは泣きそうだった。
「よかった…目を覚さなかったらどうしようかと思った。」
「心配かけてごめんね。でもありがとう。」
「もともと僕達のせいだから謝るのは僕の方だ。」
「あら?もう赤くないのね。」
「ああ、力の使い具合で違うけど半日くらいで戻るよ」

半日…私はそのくらい寝ていたんだ。

私はルピアさんの言葉からルースの秘密、ザイン家の秘密が少しわかったような気がした。
ルースの目が赤いのはザイン家特別の魔法を使ったからだと言う事。そしてその魔法のせいでザイン家は闇の仕事を担っていると言う事。

しかし関係ない。
ルースが誰だろうと何であろうとかまわない。
彼が彼であることには何も変わりはない。 

「綺麗だったのにな。」

私は彼の目を見て言った。
その一言で彼には足りるはずだ。
彼は安心したように笑った。

「あの人達は?」
「シャーリーが心配することないよ。大丈夫。父上がちゃんと考えてくれてるから。」
「よかった。」
私はルースの手を借りて体を起き上がらせた。
傷は消えている。多分誰かが治癒魔法で治してくれたんだ。ただ縛られた跡は残っている。
それをみるとやはり恐怖は蘇る。
じっと見ていた。

「痛かった?怖かった?」
「ん、痛かったし、怖かった。何よりルースが助けに来てくれるのが怖かった。」
「助けに行ってはダメだった?」
「ううん、嬉しかった。でもルースが危ない目にあってほしくなかった。そんなこと思ってるのにルースは助けに来てくれるって信じてる私がいたの。ふふ可笑しいでしょう?」
「シャーリー…どんなところでも僕は助けに行くよ。」
「ありがとう。」
ルースが優しく微笑みながら立ち上がって窓を開けた。
離された手が少し寂しく感じた。

「寒い。」
「あ、ごめん。閉めようか?」
「ううん、開けておいて。」

冷たい風が入ってくる寒い朝だ。
まだ日差しが弱い。朝早いのだろう。
寒いってことは生きてるってこと。
少し実感が湧いてきた。
私は生きている。

窓から見える木の枝に青い鳥が止まっていた。
気持ちよさそうだ。

ルースが椅子にかかっていた上着をかけてくれた。

「ルース、私ね。この世界に転生して浮かれてたのね。なんか夢みてるみたいだった。だからあなたには申し訳ないことしたわ。変なことばかり言って、おかしな子だって思ったでしょう?」
「初めて聞いた時は何なんだ?こいつって思ったかな?」
「そこはそんなことないって言うべきじゃない?」

こんなやり取りが嬉しい。もう手放さなきゃならないと思ってた。

ん??
「あっ!!」
「えっ?どうしたの?」
私は髪の毛を触った。
そして落胆した。

「ごめんなさい…大事にするって言ったんだけどこの前もらったリボン無くしちゃったの。あの部屋で気づいた時にはもう無くて…だめね…私。」
ルースはすっと窓際にある机の上から何かを取り、私の目の前に差し出した。
あのリボンだ。
「えっ…どうして?どこにあったの。」
「君が囚われていた建物の入り口付近で青色の鳥が加えていたんだ。だから君を割と早く見つけることができたんだ。」
「青色の鳥?」
私は窓を見たがさっきの鳥はもういなかった。
「ん?どうしたの?」
「ううん。よかった。ありがとう。私を見つけてくれて。」
「シャーリー…」
「このリボンだけじゃなくてルースのくれたリボンはみんな大事。でも初めてもらったものとこれは特に大事なの。」
私はすこし汚れてしまったリボンを見つめた。
「ふふふ、やっぱりルースが守ってくれてるのね。」

リボンを撫でた。

「シャーリー…実はね。」
「この間、お茶会でリボンが破れた時、悲しかったの。」

ルースは何か言いかけたが、彼の言葉を遮った。
わかったかのようにルースはベッドの縁に腰を下ろした。
「ルースがくれたものだったから。でもね違ったの。」
「違った??」
ルースの瞳がわたしを見つめる。彼は私が話す時はちゃんと私の目をみてくれる。
「私はリボンが大事なんかじゃなかった。ああ、誤解しないでリボンも大事なのよ。あ、順番が違うわね。先に謝らないといけない。」
「謝る??」
「ごめんなさい、ルース…ううんルースだけじゃないみんなに謝らなきゃいけない。」
「シャーリー、僕は何も怒ってないんだけど、謝るって?」
「ルース、ごめんなさい。私は自分のことばかり考えていた。夢ばかり見ていて目の前にいるあなたを、この世界の人をみんな見ていなかった。私はリボンが破れてルースとの仲が壊れてしまったみたいで悲しかったの。それは私の今の気持ち。今ここに生きている私の気持ち。シャーロレットとしての私の気持ちだった。
この地に生きている私がちゃんといたの。そして私を見守ってくれる人達がいた。私と一緒に笑ってくれる人達がいたの。」

そう…みんな私の大事な人達。その中でも…。
私はルースを真っ直ぐに見た。

「みんな私の大切な人よ。だけどそれ以上にルース、あなたが大事だったの。」

「シャーリー?なんだかよくわからないけど結局それは君が僕を好きだと言ってるように聞こえるんだけど、違うかい?」 

「違わない…。ん…やっぱり違うかな?」

ルースの眉間にシワが寄った。
私は目を一度閉じて深呼吸をした。

そしてルースを見た。

「好き…ではない。好きでなんて表せない。愛してる。」

ルースはこれ以上ない嬉しそうな顔をした。

知っていたことを再度確認したみたいな穏やかな顔をしていた。
「知ってた?」
「うん…」

ルースがリボンを持っている私の手の上に自分の手を重ねた。暖かい。
「私ね、少し前にこのリボンいつもと違うことに気づいたの。別荘から帰ってからレイクルーゼ様に聞いたのよ。」
「ふふ、君は気づかないと思ったよ。」
「そう、あなたの…ザイン家の紋章が刺繍されている。いくら鈍くてもおかしいとは思うわよ。」
「ごめんね…黙ってて。」
「ううん、大丈夫。嬉しかったから。今までルースがプレゼント並べてみたわ。あなたはずっと待っててくれたのね。待たせてごめんね。ねぇ、ルース、縛って…」
「ん…」
ルースは私の手からリボンを取り、髪につけてくれた。
「ふふふっ。似合う?」
「うん、似合ってる。」
「ねぇ、欲しいものがあるの。プレゼントしてくれる?」
「ん、何?」
「赤のリボン。」
「シャーリー…?」
「赤もあなたの色でしょ?両方で縛ってもらわないとね。
あ、当然紋章入りでね。」

ルースが抱きしめてきた。
「シャーリー…愛してる…」
私を見たルースの顔はは泣きそうなのに笑っていた。
ルースの手が私の頬に伸ばされた、

「あなたの全てでずっとあなたに縛り付けて。
ルース…愛してる。」

私はルースの首に手をまわして目を閉じた。
ゆっくりと優しくルースがキスをしてきた。
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