オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ

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その29 この世界にて ルース視点(2)

「カール!ルース!」
突然窓の方からから声がした。

「父上!」
「2人とも大丈夫みたいだな。遅くなったな。カール、少し弱めてくれ?」

兄様が少しだけ魔法を弱めた。
アイザックはガクリと膝を着いて倒れ込んだ。
「氷の王、アイザック。
先程シルバーサ王国の貴族の家に囚われていた老人と娘は保護したことを確認した。少し衰弱しているが元気だ。」

「無事…無事…?」

「ああ、大丈夫だ。君に会いたがっていたよ。さあ君はどうしたい?」

答えは決まっている。
アイザックは崩れ落ちて泣き出した。もうこれ以上戦う必要はない。
兄様は手を下に下げて魔法を止めた。
赤の光が兄様の周りから消えた。

「こちらも情報不足で申し訳なかった。
初めからシルバーサのことがわかっていれば、他に方法があったと思う。
君には辛い思いをさせてしまった。
あの時捕らえた氷の魔族はみんな我が国に北の塔に閉じ込めてある。
君たちに反乱の意思がなければしばらくしたら解放しよう。
今、君がこのまま大人く私達と一緒に来てくれればそれを約束しよう。」

アイザックは背中を丸くして顔を床に付けたままうなずいた。

しばらく号泣していた。

母上と一緒に部屋を出て行く。
途中僕の前を通り過ぎようとした時、立ち止まった。
青い目が僕を見た。

「君がルースか。羨ましいよ。
彼女は強いな。すまなかった。」

頭を下げて部屋を後にした。

シャーリー…こんな時までヒロインの力を発揮しなくていいよ。

残るは…。
「ひぃ!何卒命だけは…」
「君が悪いんだよ。だってここはゲームじゃないんだよ。怪我をすれば痛い、人を傷つければ心は痛くなるんだ。君の中にあるゲームの登場人物ではないんだ。君はそれに気づかなかった。僕はこの世界で生きているんだ。君の世界で生きていたくはないんだよ。」

彼女は恐怖で少し後ろに下がった。
「君だけが主役じゃないんだ。」

「助けて……。た、たすけ……」

僕は赤の瞳を光らせた。
彼女はバタッとその場に倒れこんだ。

「こいつはひとまずまたマルクのところに送ろうか。」
父上が言った。
「青の魔法で元に戻されるなんてルースもまだまだ修行がたりないね。」
兄様が笑う。
「いやいや言うようになったな。ルースと同じ歳の頃のお前はサボってばかりで酷かったけどな。」
「父上、昔の話はやめましょうか…」
「兄様、父上…」
「まあ、更に私が赤の魔法を三重くらいかけておくよ。」

兄様が手をひょいと振り上げてルピアに向かって赤の魔法をかけた。
やはり僕とは比較できないほど強い赤の魔法だった。

「で、すごい告白じゃん。なあルース?」
と、いいながら兄様は僕の頭に大きな手を置いた。

いやいや、忘れてた!そういえばかなり衝撃な言葉を聞いた。あ~!良く思い出せない。しかし…確かに…

「おっ!お前真っ赤じゃないか。いやいやかわいい奴だ。」
頭をワシャワシャされた。
「兄様…今すごく感動してるんだからやめてよ。」

「お父様、カール、ルースお疲れ様。」
「姉様!」
「まあ、ひとまずシャーリーが無事でよかったわ。あんたの声聞いて緊張の糸が切れたのね。
愛されてるわね~。気を失っているだけだから大丈夫よ。怪我は治癒魔法かけたから傷と骨折は大丈夫。だけど縛られた跡はしばらく残るわね。」

シャーリーはサンドラに連れて帰ってもらったらしい。
今頃心地よく寝ているはずだ。
早く会いたい。

「ルースもだめね。いくら氷の魔族の青の魔力がすごいからって精神崩壊の魔法が解けるなんてね。まだまだ修行が足りないわね。」
「だからそれ!さっきも兄様に言われたから!!」
「そうそうそれにシャーリーの場所探すのにかなり時間かかったな。王太子殿下にヒントまでもらったし。ザイン家たるもの愛する者の場所なんて3分でみつけなきゃ。ねぇ父上?」
「私はザイン家当主だよ。タチヒアを見つけて助けるのに30秒もいらないさ。ああ、タチヒアに会いたくなったよ。さあガーシュイン、後は任せたよ。さあ、子供達帰ろうか。」

「私は別荘に帰るよ。ラリサが心配してるからね。せっかく今日は非番だからゆっくりしてたらエルシーに突然呼び出されたしね。休みの続きをしなきゃ。美味しい料理を作っておいてくれるらしいから楽しみだ。ああ、父上、週末には産まれると思うから母上にお願いしておいて下さい。」
「おや、じゃあ明日から別荘に行くようにさせるよ。」
「え~っ!私今日泊まっていくから明後日からにして。」

「ルース、大丈夫かい?」
父上の目は暖かい。
父上は僕の頭に手を載せた。
手も暖かい。
この家族で僕は本当に幸せだ。
「いろいろすみません。僕が未熟なばかりに…」
「いや、私達のミスでこんなことになってしまったんだ。こっちこそ申し訳ない。でもお前にとっては結果よかったんじゃないか?これでお前達も前に進めるな。」

父上が頭に載せた手に少し力を入れた。
僕はそれが心地よく感じていた。

「はい。」
顔をあげて真っ直ぐに父上を見て笑った。
兄様が優しく頷いた。

「で、シャーリーはいつお嫁さんに来てくれるんだい?
今日からでもいいぞ。大歓迎だ。」

「だから…あ、いや…もう少し余韻に浸らせてほしいな…。
ま、いいか。みんなありがとう。」

この家族はなんて暖かいんだろう。
僕は思いっきり笑ってみせた。

少し涙が出てきた。
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