狂━クルイ━

狩野 理穂

文字の大きさ
上 下
9 / 12
消失

彩香

しおりを挟む
「ねえ、さやかちゃん。一緒に帰ろ」
 たしか、幼稚園の年長さんの時だったと思う。初めて優奈と話した。
「え……ゴ、ゴメン!」
 引っ込み思案な性格は今も昔も変わらない。でも、当時は挨拶すら出来ないような子供だった。
 それなのに優奈は何度も私に話しかけてくれた。そのおかげで、私と優奈は友達になれた。
 それからは━━楽しかった。毎日優奈と遊び、話し、一緒に帰った。でも、何か満たされないものがあったのも事実。
 小学校にあがり、いろんな人と知り合った。
 そんな中、優奈が友達をつくり、3人の仲良しグループができた━━見かけ上は。
 実際には、その娘が社会的地位を確立するためだったらしい。
 そんな関係が長続きするはずもない。いつの間にか関係は崩壊していた。
 私と優奈は今まで通りだったが、いつしか私たちは新しい友達を棄てていた━━いや、棄てられていた。
 そんな時に私たちは何を感じたか。その娘は既にクラス内での一軍だったから、何も思わなかっただろう。優奈は友達と思っていた人に裏切られてしばらく悲しんでいた。私は━━嬉しかった。トモダチでもないヤツとのつまらない関係が途切れたのだ。肩の荷が降りた気がした。
 それから数ヶ月後━━優奈の祖父が死んだ。私も優奈もとても悲しかった。それなのに、周りの大人は1週間もすれば何も無かったかのように働いていた。
 それを見て私は悟った。人間は『機械』だ。
 何かのイベントがあれば、それに応じた反応を示すが、そのイベントが終われば作業に戻る。その繰り返し。
 私は、そんな人生はいやだ。あまりにつまらない。
 そうだ。それなら『機械』じゃない『私』を作ればいい。世間で騙られている『人間』を。
 次のイベントまで、この機械は電源を切ろう━━
しおりを挟む

処理中です...