Olympus Quest

狩野 理穂

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OLYMPUS QUEST Ⅱ ~原初の神々~

神器ケラウノス

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 目の前に巨大な神殿が聳えている。オリンポスだ。
 イザナミ、イザナギの協力により、俺はまたこの場所に来ることができた。

「待っていたぞ、我が息子よ」

 一筋の稲妻と共にゼウスが現れた。その手には本物のケラウノスが握られている。

「ニュクスと戦うのか」
「ああ。奴を倒したあと、胸を張って村に帰るんだ」
「そうか……」

 あれ?一瞬だけ、ゼウスの顔が曇った気がする。

「たしか、お前にはケラウノスの模造品を与えていたな」

 俺は頷く。

「本物を渡さなかった理由は二つある。一つ目は、業務に差し支えるからだ。そして、二つ目として、お前の身体のことだ」

 神器ケラウノスは、オリンポス十二神の頂点であるゼウスの力を利用し、その真価を発揮する。それを人間が使ったらどうなるだろう。塵になるとも、影すら残らないとも言われている。
 いくら神の血を受け継いでいても、所詮は人間だ。ゼウスが危惧するのも無理はない。

「だが、お前は成長した。いや、成長しすぎた。まさか不死の領域に立ち入るとはな……」

 ゼウスは何を言いたいんだろう。

「今ここで、ケラウノスを預けよう」
「!!」
「一度は共に旅をした仲だ。ケラウノスもお前を認めるだろう。さらに、残酷なことではあるがお前は死なない。どれだけ散り散りになろうとも、命ある限り蘇生は可能だ」

 ゼウスがケラウノスを差し出す。

「選択はお前次第だ」

 神殿を静寂が包む。
 俺をアテから護ってくれたゼウスのことだ。嘘はついていないだろう。しかも、俺の今の力ではニュクスやガイアに勝つことは難しい。そんな時にこの誘い。もし断れば、俺は一生後悔するだろう。

「ありがとう、ゼウス」

 俺の延ばした手がケラウノスに触れた途端、全身に電気が走った。──いや、そんな生易しいものじゃない。まるで雷が落ちたかのようだ。全身が痺れる。
 ケラウノスの雷による"死"とイザナギの能力"不滅"の矛盾。こんな苦しみは一度も感じたことがない。
 一体、どれくらいの時間が経ったのだろう。槍だったケラウノスは、一本の杖になっていた。

「これは──!」

 ゼウスが目を丸くしている。

「ケラウノスは、杖なのだ。いや、違うな……杖の姿が真なのだ」

 どういうことだろう。

「通常、ケラウノスは槍だ。だがケラウノスが認めた人物には杖に戻って真なる力を差し出す。槍でも充分な力だが、杖では格が違う」

 俺が槍のケラウノスを最初に持ったとき──その時も身体が痺れたが、今ほどではなかった。

「さあ、ルーシュよ。ケラウノスに認められたお前は正真正銘、俺の息子だ。せっかくだ。ユピテルの名を授けよう」

 ユピテル──ゼウスのローマ名だ。

「今こそ旅立つのだ、ルーシュ=ユピテル!」

 足下の床が開く。上昇気流が服をはためかせるが、俺が落ちることはない。

「今は夕刻。夜の神は本来の力も出せず逃げることもできない。ニュクスとの戦闘にはうってつけの時間だ」

 暴風のなか、微かにゼウスの声が聞こえる。

「ユピテリアの皆に協力してもらえば、ニュクスを倒すのはそう難しいことではない。健闘を祈る」

 俺は一本の雷霆を手に、大空へ飛び出した。
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